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1章・戦火繚乱編
34、空散る火花
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デーノが港要塞へと戻るとすぐに軍艦が出港してハルアーダ達はラドウィンを追った。
同型の艦であるからその差は縮まらず、先にラドウィン達の艦が対岸に到着する。
すると、その艦から火の手が上がった。
軍艦を利用させない為に燃やしたのだ。
人の物だというのに貴重な軍艦に何という事をするのかと兵達は喚いた。
しかしこれはカルチュアの指示であった。
どうせ使えないなら燃やしてしまえば良いですわ。なんて領主の娘が言うから、ラドウィンも気兼ねなく高価な軍艦を燃やしてやったのだ。
そうしてラドウィン達はモンタアナを目指した。
ハルアーダも上陸すると騎馬部隊を率いてラドウィンへと肉薄する。
さて、クヮンラブル河を越えた所にブダーブィアという町があった。
かつてはターラーハッタやタンドスの領土であった町で、今は一応ラドウィンの領土となっている。
その町はずっと昔も昔、まだアーランドラ帝国が帝王制を採択する前に、アーランドラと戦っていた国がアーランドラからの侵攻に備える為に造った防塞でもあった。
キルムはここで数百人残して足止めし、その間に全員で逃げるしか方法は無いと提案する。
しかし、アーランドラでも有数の城塞都市であるサスパランドが陥とされているので、ブダーブィアに残るという事は死も同義であった。
残酷な提案だが合理的な作戦でもある。
だが、誰が好んで死地に残ろうか?
そんな者はまずもっていないものだ。
そう思うであろうが、それに名乗り上げたのはシュラだ。
彼の華々しいデビューはサスパランド撤退時にハルアーダを退けた所だが、彼が本格的に歴史の表舞台へと現れたのはこの戦いからだと言っても過言無かろう。
シュラはかつてトルムトの反乱に加わった人達をモンタアナへと連れて行ってもらう必要があった。
しかし、あのような大規模な反乱を起こした人々には世間の目が冷たい。
なので、命を賭けてでも、心から改心したのだという姿を見せなくてはならなかった。
罪を償うというのは、命を賭けることだとシュラは思う。
ブダーブィアの人々を連れてラドウィン達はモンタアナを目指し、残った彼は五百の手勢を率いて籠城の構えを見せた。
そこにハルアーダの騎馬部隊がやって来るのだが、騎馬で攻城は難しい。
ハルアーダは後続のデーノに攻城を任せて、彼自身は大きく迂回してラドウィンを追うことにした。
ブダーブィアの城壁で兵士たちは迂回するハルアーダを指さし、「討って出ましょう!」と喚く。
しかし、この若い男のシュラは固く腕組みして仁王立ち、「行くな」と厳命した。
若い男というものは血気に逸るものだ。
ところがシュラは血潮が冷たく落ち着いている男であった。
「良いかい。狩りの基本は辛抱強く待つ事さ。なぜ待つか分かるか? 獣は人間よりもずっと強いからさ。戦人の間じゃ攻城三倍と言うだろう。つまり待つ方が強いのさ。狩りも戦争も本質はきっと同じなのだろうよ。強い奴と戦うにゃ辛抱強くまたにゃならんのさ」
城壁を出れば負ける。
ハルアーダの騎馬部隊はそう数も多くないから、ラドウィン達には悪いが自力で何とかして貰う事にした。
代わりにシュラ自身は街道を歩いてくる諸侯軍、今となってはハルアーダの指揮下に入った帝国軍の兵士達を相手取るのだ。
帝国軍の数はどれほど多かろうか?
四千? 五千? いやさもっと多く一万以上だろう。
そんな数を相手にせいぜい五百の兵士がどれほど戦えるというのか。
シュラはこのような状況にも関わらず冷静沈着だったのは勝機を抱いていたからだ。
勝機とはつまり、軍艦の輸送量の問題である。
徒歩行進のラドウィン軍と違って帝国軍には馬車やら馬やらが積んであって人員だけを乗せておけば良いというものでは無かった。
ゆえに、一度に軍艦で輸送出来る兵量は二千人くらいか。
そのうちの数百人はハルアーダが引き連れて迂回路を取っていたから、ブダーブィアへやって来る敵兵はおおよそ千五百! 攻城三倍の法則から五百の兵で抗するのは十分なのである。
その千五百の敵兵を倒し、軍艦が引き返して再び敵兵を連れてくるまでの間に撤退すれば命を拾う事は出来るのだ。
シュラはそう兵に話し、「必ず生きて帰るぞ!」と兵士の指揮を鼓舞すると、袖から投石器を取り出してビュビュンと回す。
そして振り向きざまに石を投げた。
その石は斜め下へと飛んで行き、敵戦列を指揮していた騎士の一人の兜を貫き脳漿を吹き飛ばす。
それが開戦の合図であった。
攻め手の帝国軍がワッと城壁へと駆け出す。
攻城梯子を数人がかりで持ち上げ、城壁に掛けようとするのだ。
それにシュラ隊は弓矢や熱した油で阻止しようとする。
特にシュラの投石は恐ろしい威力を誇った。
これでは梯子を掛ける事能わず。
「きゃつらの攻勢を少しでも緩めろ!」と帝国軍は弓矢を射て応戦するのだが、このブダーブィアはアーランドラ帝国側の城壁が一際高くなっていてギリギリで矢が届かない設計だったのである。
「無駄な努力お疲れ様だ。さあさあ! 存分に矢を射かけろい!」
シュラがそう呼ばわった時、矢が下から飛んで来て、矢を番えていた兵の一人の頭を吹き飛ばした。
何事かと下を見ると、そこには馬に乗っている一人の騎士が弓を構えている。
シュラはその騎士に見覚えがあった。
先の戦いでシュラの投石を弾いてハルアーダを助けた男、バルリエットである。
バルリエットは人の身の丈のゆうに二倍もありそうな弓を構えていた。
「化け物弓……!」
シュラは戦慄した。
この時代、この国の弓矢といえばいわばショートボウと言われるものが一般的であったし、人の身の丈と同じほどのロングボウが一部で使われていたくらいだ。
だのにバルリエットの持つ弓矢は人の身長の二倍もするので馬に乗っていないと使用出来ないような意味不明の物であった。
しかし大きさの分、威力は折り紙付きで、容易に城壁の上にまで矢が届いたのである。
再びバルリエットが矢を番え、ビュンと矢を放った。
そうはさせじとシュラは投石し、矢を石で弾いたのである。
この時、バルリエットも「あの石投げの変人か!」とシュラの存在に気付いた。
シュラが投石器を回し、バルリエットは矢を番える。
二人は全く一緒に互いを攻撃し、石と矢が空中でぶつかって火花を中空に散らした。
バルリエットは腕を回転させるかのように矢を矢筒から抜いては弓に番えて速射する。
シュラの不利は歴然で、一々回転させねばならない投石器では負けると見えていた。
所がシュラは左手の袖から投石器を出して、左手でも石を回し出したのである。
速射に対して両手投げだ。
これにはバルリエットは驚いた。
シュラは両手でも恐ろしいコントロールを見せ、バルリエットの速射に良く対応した。
空中で発せられる幾つもの火花は場合が場合なら、きっと素晴らしく幻想的な風景であっただろう。
もっとも、その幻想的な風景を作り出しているのが死を届ける凶弾である事には変わりないのであるが。
この幻想的な風景を作り出す撃ち合いは数分後、バルリエットの矢が尽きて終わる。
シュラの投石など手頃な石や破片があれば良いので玉突きぬわけで、バルリエットは矢を取ろうとして指先が何もつまめなかった為に矢が尽きた事実に気付いた。
しまった。と思った時には既に石がバルリエットの眼前に迫る。
寸での所で身を逸らして石を避けると、二撃目の石がバルリエットの馬の頭を打ち砕いた。
馬は眼孔から眼球と脳味噌を噴き出し、舌をだらりと垂らしながら横転する。
バルリエットは馬の背から投げ出されて地面をゴロリと転がると仰向けになって、すぐ手近に倒れている兵の死体から矢を抜くと横構えした弓に矢を番えた。
飛んで来る石に矢を数発放って撃ち落としたが、そこで弓が鈍い音をたててへし折れてしまう。
落馬の衝撃で、長い弓に亀裂が入っていたのだ。
それで折れてしまった。
バルリエットは弓を捨てるとすぐに兵の死体を掴んで自身の体の上に覆い被せると盾にした。
鈍い音と衝撃を何度か死体越しにバルリエットは感じる。
しばらくすると、死体に投石する無駄をシュラが悟ってその手を止めた。
その一瞬、騎士の乗る馬がバルリエットの近くを通ったので、その瞬間を逃さずにバルリエットは手綱を掴んだ。
その騎士の乗っている馬は酷く興奮していて、手綱に引きづられるバルリエットは馬に蹴られてしまいそうになったが騎士の助けもあって必死に鞍の上に座る事が出来る。
「バルリエット様、無事ですか」
そう言った騎士はデーノであった。
バルリエットはデーノに退くよう命じたが、デーノはこの酷く興奮する馬を御しきれない。
その様子をシュラは見ていて追撃を加えたが、暴れ馬の不規則な走りに投石は当たらず、そうこうしている間に投石の範囲外にまで逃げられてしまう。
仕方ないのでバルリエットを見逃して攻め寄せる敵兵を投石しようとするのだが、どうも敵兵の様子がおかしい事にシュラは気付いた。
敵兵がどんどんと撤退するのだ。
というのも、この攻城の最中、指揮官である貴族や騎士の多くが既に戦死しており、最後に残っていた数少ない騎士がバルリエットとデーノだったのである。
そのバルリエットらが逃亡したのだから兵士達も堪らず撤退したのである。
敵軍の撤退を確認したシュラは味方の兵達と抱き合うほど喜びたかったが、「俺っちらも撤退するぞ!」と、歓声を上がる兵達に命じた。
すぐに撤退しないと敵は援軍を引き連れてやって来る。
その前に撤退する必要があった。
兵士達は寡兵で衆兵を破った喜びもそこそこに急いで撤退した。
こうして、果たしてシュラはその計画を完遂したのである。
その後、バルリエットや諸侯軍がブダーブィアへとやって来た時、シュラの投石を恐れて近付けなかった為に、誰も防衛していないブダーブィアの町を半日も陥落出来ない程で、ラドウィンの配下にシュラ有りと人々に報せる戦いとなったのであった。
同型の艦であるからその差は縮まらず、先にラドウィン達の艦が対岸に到着する。
すると、その艦から火の手が上がった。
軍艦を利用させない為に燃やしたのだ。
人の物だというのに貴重な軍艦に何という事をするのかと兵達は喚いた。
しかしこれはカルチュアの指示であった。
どうせ使えないなら燃やしてしまえば良いですわ。なんて領主の娘が言うから、ラドウィンも気兼ねなく高価な軍艦を燃やしてやったのだ。
そうしてラドウィン達はモンタアナを目指した。
ハルアーダも上陸すると騎馬部隊を率いてラドウィンへと肉薄する。
さて、クヮンラブル河を越えた所にブダーブィアという町があった。
かつてはターラーハッタやタンドスの領土であった町で、今は一応ラドウィンの領土となっている。
その町はずっと昔も昔、まだアーランドラ帝国が帝王制を採択する前に、アーランドラと戦っていた国がアーランドラからの侵攻に備える為に造った防塞でもあった。
キルムはここで数百人残して足止めし、その間に全員で逃げるしか方法は無いと提案する。
しかし、アーランドラでも有数の城塞都市であるサスパランドが陥とされているので、ブダーブィアに残るという事は死も同義であった。
残酷な提案だが合理的な作戦でもある。
だが、誰が好んで死地に残ろうか?
そんな者はまずもっていないものだ。
そう思うであろうが、それに名乗り上げたのはシュラだ。
彼の華々しいデビューはサスパランド撤退時にハルアーダを退けた所だが、彼が本格的に歴史の表舞台へと現れたのはこの戦いからだと言っても過言無かろう。
シュラはかつてトルムトの反乱に加わった人達をモンタアナへと連れて行ってもらう必要があった。
しかし、あのような大規模な反乱を起こした人々には世間の目が冷たい。
なので、命を賭けてでも、心から改心したのだという姿を見せなくてはならなかった。
罪を償うというのは、命を賭けることだとシュラは思う。
ブダーブィアの人々を連れてラドウィン達はモンタアナを目指し、残った彼は五百の手勢を率いて籠城の構えを見せた。
そこにハルアーダの騎馬部隊がやって来るのだが、騎馬で攻城は難しい。
ハルアーダは後続のデーノに攻城を任せて、彼自身は大きく迂回してラドウィンを追うことにした。
ブダーブィアの城壁で兵士たちは迂回するハルアーダを指さし、「討って出ましょう!」と喚く。
しかし、この若い男のシュラは固く腕組みして仁王立ち、「行くな」と厳命した。
若い男というものは血気に逸るものだ。
ところがシュラは血潮が冷たく落ち着いている男であった。
「良いかい。狩りの基本は辛抱強く待つ事さ。なぜ待つか分かるか? 獣は人間よりもずっと強いからさ。戦人の間じゃ攻城三倍と言うだろう。つまり待つ方が強いのさ。狩りも戦争も本質はきっと同じなのだろうよ。強い奴と戦うにゃ辛抱強くまたにゃならんのさ」
城壁を出れば負ける。
ハルアーダの騎馬部隊はそう数も多くないから、ラドウィン達には悪いが自力で何とかして貰う事にした。
代わりにシュラ自身は街道を歩いてくる諸侯軍、今となってはハルアーダの指揮下に入った帝国軍の兵士達を相手取るのだ。
帝国軍の数はどれほど多かろうか?
四千? 五千? いやさもっと多く一万以上だろう。
そんな数を相手にせいぜい五百の兵士がどれほど戦えるというのか。
シュラはこのような状況にも関わらず冷静沈着だったのは勝機を抱いていたからだ。
勝機とはつまり、軍艦の輸送量の問題である。
徒歩行進のラドウィン軍と違って帝国軍には馬車やら馬やらが積んであって人員だけを乗せておけば良いというものでは無かった。
ゆえに、一度に軍艦で輸送出来る兵量は二千人くらいか。
そのうちの数百人はハルアーダが引き連れて迂回路を取っていたから、ブダーブィアへやって来る敵兵はおおよそ千五百! 攻城三倍の法則から五百の兵で抗するのは十分なのである。
その千五百の敵兵を倒し、軍艦が引き返して再び敵兵を連れてくるまでの間に撤退すれば命を拾う事は出来るのだ。
シュラはそう兵に話し、「必ず生きて帰るぞ!」と兵士の指揮を鼓舞すると、袖から投石器を取り出してビュビュンと回す。
そして振り向きざまに石を投げた。
その石は斜め下へと飛んで行き、敵戦列を指揮していた騎士の一人の兜を貫き脳漿を吹き飛ばす。
それが開戦の合図であった。
攻め手の帝国軍がワッと城壁へと駆け出す。
攻城梯子を数人がかりで持ち上げ、城壁に掛けようとするのだ。
それにシュラ隊は弓矢や熱した油で阻止しようとする。
特にシュラの投石は恐ろしい威力を誇った。
これでは梯子を掛ける事能わず。
「きゃつらの攻勢を少しでも緩めろ!」と帝国軍は弓矢を射て応戦するのだが、このブダーブィアはアーランドラ帝国側の城壁が一際高くなっていてギリギリで矢が届かない設計だったのである。
「無駄な努力お疲れ様だ。さあさあ! 存分に矢を射かけろい!」
シュラがそう呼ばわった時、矢が下から飛んで来て、矢を番えていた兵の一人の頭を吹き飛ばした。
何事かと下を見ると、そこには馬に乗っている一人の騎士が弓を構えている。
シュラはその騎士に見覚えがあった。
先の戦いでシュラの投石を弾いてハルアーダを助けた男、バルリエットである。
バルリエットは人の身の丈のゆうに二倍もありそうな弓を構えていた。
「化け物弓……!」
シュラは戦慄した。
この時代、この国の弓矢といえばいわばショートボウと言われるものが一般的であったし、人の身の丈と同じほどのロングボウが一部で使われていたくらいだ。
だのにバルリエットの持つ弓矢は人の身長の二倍もするので馬に乗っていないと使用出来ないような意味不明の物であった。
しかし大きさの分、威力は折り紙付きで、容易に城壁の上にまで矢が届いたのである。
再びバルリエットが矢を番え、ビュンと矢を放った。
そうはさせじとシュラは投石し、矢を石で弾いたのである。
この時、バルリエットも「あの石投げの変人か!」とシュラの存在に気付いた。
シュラが投石器を回し、バルリエットは矢を番える。
二人は全く一緒に互いを攻撃し、石と矢が空中でぶつかって火花を中空に散らした。
バルリエットは腕を回転させるかのように矢を矢筒から抜いては弓に番えて速射する。
シュラの不利は歴然で、一々回転させねばならない投石器では負けると見えていた。
所がシュラは左手の袖から投石器を出して、左手でも石を回し出したのである。
速射に対して両手投げだ。
これにはバルリエットは驚いた。
シュラは両手でも恐ろしいコントロールを見せ、バルリエットの速射に良く対応した。
空中で発せられる幾つもの火花は場合が場合なら、きっと素晴らしく幻想的な風景であっただろう。
もっとも、その幻想的な風景を作り出しているのが死を届ける凶弾である事には変わりないのであるが。
この幻想的な風景を作り出す撃ち合いは数分後、バルリエットの矢が尽きて終わる。
シュラの投石など手頃な石や破片があれば良いので玉突きぬわけで、バルリエットは矢を取ろうとして指先が何もつまめなかった為に矢が尽きた事実に気付いた。
しまった。と思った時には既に石がバルリエットの眼前に迫る。
寸での所で身を逸らして石を避けると、二撃目の石がバルリエットの馬の頭を打ち砕いた。
馬は眼孔から眼球と脳味噌を噴き出し、舌をだらりと垂らしながら横転する。
バルリエットは馬の背から投げ出されて地面をゴロリと転がると仰向けになって、すぐ手近に倒れている兵の死体から矢を抜くと横構えした弓に矢を番えた。
飛んで来る石に矢を数発放って撃ち落としたが、そこで弓が鈍い音をたててへし折れてしまう。
落馬の衝撃で、長い弓に亀裂が入っていたのだ。
それで折れてしまった。
バルリエットは弓を捨てるとすぐに兵の死体を掴んで自身の体の上に覆い被せると盾にした。
鈍い音と衝撃を何度か死体越しにバルリエットは感じる。
しばらくすると、死体に投石する無駄をシュラが悟ってその手を止めた。
その一瞬、騎士の乗る馬がバルリエットの近くを通ったので、その瞬間を逃さずにバルリエットは手綱を掴んだ。
その騎士の乗っている馬は酷く興奮していて、手綱に引きづられるバルリエットは馬に蹴られてしまいそうになったが騎士の助けもあって必死に鞍の上に座る事が出来る。
「バルリエット様、無事ですか」
そう言った騎士はデーノであった。
バルリエットはデーノに退くよう命じたが、デーノはこの酷く興奮する馬を御しきれない。
その様子をシュラは見ていて追撃を加えたが、暴れ馬の不規則な走りに投石は当たらず、そうこうしている間に投石の範囲外にまで逃げられてしまう。
仕方ないのでバルリエットを見逃して攻め寄せる敵兵を投石しようとするのだが、どうも敵兵の様子がおかしい事にシュラは気付いた。
敵兵がどんどんと撤退するのだ。
というのも、この攻城の最中、指揮官である貴族や騎士の多くが既に戦死しており、最後に残っていた数少ない騎士がバルリエットとデーノだったのである。
そのバルリエットらが逃亡したのだから兵士達も堪らず撤退したのである。
敵軍の撤退を確認したシュラは味方の兵達と抱き合うほど喜びたかったが、「俺っちらも撤退するぞ!」と、歓声を上がる兵達に命じた。
すぐに撤退しないと敵は援軍を引き連れてやって来る。
その前に撤退する必要があった。
兵士達は寡兵で衆兵を破った喜びもそこそこに急いで撤退した。
こうして、果たしてシュラはその計画を完遂したのである。
その後、バルリエットや諸侯軍がブダーブィアへとやって来た時、シュラの投石を恐れて近付けなかった為に、誰も防衛していないブダーブィアの町を半日も陥落出来ない程で、ラドウィンの配下にシュラ有りと人々に報せる戦いとなったのであった。
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