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41 カイルと道具店を慕う者と、邪魔者と、ロキシー無双。
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――カイル視点――
翌日、朝から雪の園のメンバーが店にやってきた。
三人共ネイルの予約を入れていたらしく、楽しみにしていたらしい。
「ずっと来たかった」
「でも依頼が多かった」
「リーダーはもう少し依頼を絞るべき」
「休みが少ない」
「週に一度は休みが欲しい」
「ほんとソレ」
「君たちに言われると胃が痛いよ……。まぁネイルの為にも週一回休みを取ろうか」
笑いながら双子に語るリーダーのレイスさんの苦労が何となく見え隠れする。
そう言えば、双子からお守りを頼まれていた事と、リディアからお守りを受け取っていた事を思い出し、ネイルが終わったら商談場所に来て欲しいと話すと、双子の目が輝いたように見える。
「お守り」
「出来た?」
「はい、可愛らしいお守りが出来ております。そちらの品は道具店サルビア専属の付与師様から、以前のお礼としてお渡しするよう頼まれていますので、是非後でお越しください」
「「お礼の品!」」
「良いのかい? 特に俺達は何もしてない気がするけれど」
「ええ。付与師様から、偶然でも居合わせて頂けたことが幸運なのだと。ですので、お代は結構ですよ」
「「良い付与師」」
「素晴らしい付与師だね。是非お近づきになりたいよ」
「ははは、それでしたら是非今後とも道具店サルビアを御懇意にして頂ければと思います」
リディアなら双子と意気投合するだろうなと理解はしているが、諸々の事を考えると不安要素の方が強い為、きっとこの先も会うことは無いだろう。
けれど、もしリディアが一度でも「会いたい」と言って来たら、場を設けても良いのかも知れない。無論、こちらの秘密を守って貰う前提だが。
三人がネイルの為に名を呼ばれ席を外すと、俺はいつも通り店に来る客をさばく。
最近ダンジョンの活性化があるのか、ポーションやMPポーションの減りが早い。ダンジョンの活性化は色々なアイテムが取れやすくなる半面、冒険者が亡くなる事故も多発する為、気が付けば見知った顔が――と言う事も少なくなかった。
元冒険者の俺からすれば、幾ら活性化していようが、経験からして、命を粗末にするような依頼だけは受けたくはないモノだ。
ライトが品出しの為に奥の部屋に行くと、一人の客がまた道具店に入ってきた。
客は俺の姿を見て息を呑んだのが聞こえた為、ドアの方を向くと――魔付きになったのを理由にパーティから追い出した、以前入っていたBランクパーティの元リーダーが立っていた。
「カイル! 無事だったのか!!」
店に轟く元リーダーの声に、俺は眉を顰めた。
他の冒険者を交わしながらレジまでやってくると、俺の肌を見てホッとしたようだ。
「良かった……お前があんな風になってから、どうなったか心配だったんだ」
「そうですか」
「でもその様子だと解除薬は飲めたんだな!」
「お陰様で」
「それなら話が早い! もう一度パーティに戻ってきてくれ!」
――お前は何を言っているんだ?
と言いたげな表情で元リーダーを見ると、俺の表情を見て察したのか少々気まずそうに口を開いた。
「あれからお前みたいな前衛を入れても上手くパーティが回らない。やっぱり、カイルがいたからこそのパーティだったんだって思い知ったんだ。無理な依頼を受けた俺も悪かった。今後はみんなの意見をちゃんと聞くから戻ってきて欲しい」
「お断りします。俺は既にこの道具店のオーナーです。冒険者家業はしません」
「そう言うなよ、折角のスキルが勿体ないだろう? アレは冒険者だからこそのスキルだ」
「今はこうして店を切り盛りするのが楽しいので結構です。それに、無理な依頼を受けて、パーティ面子の一人を見殺しにして、更に何とか倒したものの、魔付きにされた俺をダンジョンで置き去りにして去っていった人間と、また組みたいと思う人間の方が少ないと思いますが?」
「それは」
「貴方、人徳なんてものは既に失っているんですよ。お引き取り下さい」
そこまでキッパリ告げると、元リーダーは怒りを抑えつつ必死に笑顔を作ろうとしていたが、周囲の冒険者達の目は厳しい。
ヒソヒソと、仲間を見殺しにした事や、ダンジョンに置き去りにしたことなどが呟かれ、元リーダーは周囲にヘコヘコと頭を下げながらなんとかその場の空気を換えようとしていたが無駄のようだ。
「お前さえ戻ってきてくれたら、」
「俺が貴方の許へ戻ったりでもしたら、道具店を閉店しなくてはならなくなるじゃないですか」
「良いじゃないか。別にあっても無くても困らないだろう?」
「「「なんてことを言いやがるんだ!!!」」」
それは、他の冒険者達からの心の底からの叫び声だった。
何事かと二階にいたロキシーも眉を寄せて降りてきているが、俺は目で合図して暫く静観することに決めた。
「ここの道具店はな! オーナーの優しさが詰まった道具店なんだよ!」
「他の道具屋にはない画期的なアイテムが沢山あるんだぞ!」
「それを、さも他の道具屋と同じ扱いしやがって……!」
「そんなもの、この店の取扱品なら別の店に卸してもらえば良いだろう!?」
「この店に卸してくれてるアイテムは全て、俺と懇意にしてくれている方ですからね。他の店には出しませんよ」
「君が紹介すればいいじゃないか。そしたら丸く収まる」
「無理ですね」
「君こそ意地を張らないで冒険者に戻るんだ!」
「俺はこの店を大事にしています。貴方のように仲間を使い潰して捨てるような人の元に行って、何か得があるんですか?」
そこまで話した時だった。
「面白い話をしているねぇ……。カイルをこの店から引き抜くって言うのかい?」
満を期してと言うべきか否か。ロキシーは階段をゆっくり降りながら元リーダーに挑戦的な目を向けると、元リーダーは「ロキシー様……?」と困惑した様子で声を出した。
【元紅蓮の華のSランク冒険者ロキシー】と言う名は伊達じゃない。元リーダーは俺とロキシーを交互に見て困惑しているようだ。
「うちの店主を引き抜かれるのは困るんだよねぇ……。アタシの働き口が無くなっちまう」
「なっ! カイルお前、ロキシー様を雇ってるのか!?」
「ええ、ロキシーはこの店の二階で働いていますが?」
「今ではネイルサロン・サルビアのオーナーと言えばロキシーと呼ばれるくらいには有名になったと思ったんだけど?」
「あの……その……」
「で? 仲間を見殺しにした挙句、カイルをダンジョンに置き去りにしたんだって? よくそれでリーダーなんて名乗れるね。恥を知りな!」
「ヒィ!」
ロキシー無双。
なんて思ったが、実際冒険者の間でロキシーを知らない奴なんていないのだから、元リーダーが怯えるのも仕方ないだろう。
「そうだねぇ、アタシから見てアンタは冒険者としても、リーダーとしても失格だと思うけど、アタシは冒険者を辞めてソコソコ経ってるからね。今の時代の有名な冒険者達と、そのリーダーから話を聞こうか。どう思う? レイス、ナナノ、ハスノ」
まさかその名を更に出すとは思わなったが、どうやら三人はネイルが終わって降りてくる所だったようだ。
三人は現在のAランク冒険者だ。うちの元リーダーはBランク。格上からの言葉は重い。
「カイルが居なくなったらこの店無くなる?」
「無くなりますね」
「ネイルサロンも?」
「無くなるんじゃないですかね」
「「そこのお前、ギルティ」」
「だ、そうだよ。そこの場違いなカイルを雇ってた元リーダーさん。どうぞ、店からお引き取りを」
レイスさんも仲間を見殺しにするような冒険者は嫌いなんだろう。
笑っているのに目が笑っていない。
元リーダーは周囲からの厳しい視線とAランク冒険者雪の園、更にロキシーからの厳しい目に耐えきれず脱兎のごとく店から走り去った。
そして、店の奥から戻ってきたライトの手には塩の袋があり、無言で玄関に塩を撒いていた。
弟もきっと『二度と来るな』と思っているんだろう。
無言で塩を撒く姿に、ちょっと俺の方が恐怖した程だ。
「兄さん」
「はい!」
「シッカリお清めしておきましたので、あの様な輩はもう来ないと思いますよ」
「有難うございます!」
ニッコリ笑顔で、塩の袋一つ使い切ったライトは、無言で店の奥へと消えていった。
翌日、朝から雪の園のメンバーが店にやってきた。
三人共ネイルの予約を入れていたらしく、楽しみにしていたらしい。
「ずっと来たかった」
「でも依頼が多かった」
「リーダーはもう少し依頼を絞るべき」
「休みが少ない」
「週に一度は休みが欲しい」
「ほんとソレ」
「君たちに言われると胃が痛いよ……。まぁネイルの為にも週一回休みを取ろうか」
笑いながら双子に語るリーダーのレイスさんの苦労が何となく見え隠れする。
そう言えば、双子からお守りを頼まれていた事と、リディアからお守りを受け取っていた事を思い出し、ネイルが終わったら商談場所に来て欲しいと話すと、双子の目が輝いたように見える。
「お守り」
「出来た?」
「はい、可愛らしいお守りが出来ております。そちらの品は道具店サルビア専属の付与師様から、以前のお礼としてお渡しするよう頼まれていますので、是非後でお越しください」
「「お礼の品!」」
「良いのかい? 特に俺達は何もしてない気がするけれど」
「ええ。付与師様から、偶然でも居合わせて頂けたことが幸運なのだと。ですので、お代は結構ですよ」
「「良い付与師」」
「素晴らしい付与師だね。是非お近づきになりたいよ」
「ははは、それでしたら是非今後とも道具店サルビアを御懇意にして頂ければと思います」
リディアなら双子と意気投合するだろうなと理解はしているが、諸々の事を考えると不安要素の方が強い為、きっとこの先も会うことは無いだろう。
けれど、もしリディアが一度でも「会いたい」と言って来たら、場を設けても良いのかも知れない。無論、こちらの秘密を守って貰う前提だが。
三人がネイルの為に名を呼ばれ席を外すと、俺はいつも通り店に来る客をさばく。
最近ダンジョンの活性化があるのか、ポーションやMPポーションの減りが早い。ダンジョンの活性化は色々なアイテムが取れやすくなる半面、冒険者が亡くなる事故も多発する為、気が付けば見知った顔が――と言う事も少なくなかった。
元冒険者の俺からすれば、幾ら活性化していようが、経験からして、命を粗末にするような依頼だけは受けたくはないモノだ。
ライトが品出しの為に奥の部屋に行くと、一人の客がまた道具店に入ってきた。
客は俺の姿を見て息を呑んだのが聞こえた為、ドアの方を向くと――魔付きになったのを理由にパーティから追い出した、以前入っていたBランクパーティの元リーダーが立っていた。
「カイル! 無事だったのか!!」
店に轟く元リーダーの声に、俺は眉を顰めた。
他の冒険者を交わしながらレジまでやってくると、俺の肌を見てホッとしたようだ。
「良かった……お前があんな風になってから、どうなったか心配だったんだ」
「そうですか」
「でもその様子だと解除薬は飲めたんだな!」
「お陰様で」
「それなら話が早い! もう一度パーティに戻ってきてくれ!」
――お前は何を言っているんだ?
と言いたげな表情で元リーダーを見ると、俺の表情を見て察したのか少々気まずそうに口を開いた。
「あれからお前みたいな前衛を入れても上手くパーティが回らない。やっぱり、カイルがいたからこそのパーティだったんだって思い知ったんだ。無理な依頼を受けた俺も悪かった。今後はみんなの意見をちゃんと聞くから戻ってきて欲しい」
「お断りします。俺は既にこの道具店のオーナーです。冒険者家業はしません」
「そう言うなよ、折角のスキルが勿体ないだろう? アレは冒険者だからこそのスキルだ」
「今はこうして店を切り盛りするのが楽しいので結構です。それに、無理な依頼を受けて、パーティ面子の一人を見殺しにして、更に何とか倒したものの、魔付きにされた俺をダンジョンで置き去りにして去っていった人間と、また組みたいと思う人間の方が少ないと思いますが?」
「それは」
「貴方、人徳なんてものは既に失っているんですよ。お引き取り下さい」
そこまでキッパリ告げると、元リーダーは怒りを抑えつつ必死に笑顔を作ろうとしていたが、周囲の冒険者達の目は厳しい。
ヒソヒソと、仲間を見殺しにした事や、ダンジョンに置き去りにしたことなどが呟かれ、元リーダーは周囲にヘコヘコと頭を下げながらなんとかその場の空気を換えようとしていたが無駄のようだ。
「お前さえ戻ってきてくれたら、」
「俺が貴方の許へ戻ったりでもしたら、道具店を閉店しなくてはならなくなるじゃないですか」
「良いじゃないか。別にあっても無くても困らないだろう?」
「「「なんてことを言いやがるんだ!!!」」」
それは、他の冒険者達からの心の底からの叫び声だった。
何事かと二階にいたロキシーも眉を寄せて降りてきているが、俺は目で合図して暫く静観することに決めた。
「ここの道具店はな! オーナーの優しさが詰まった道具店なんだよ!」
「他の道具屋にはない画期的なアイテムが沢山あるんだぞ!」
「それを、さも他の道具屋と同じ扱いしやがって……!」
「そんなもの、この店の取扱品なら別の店に卸してもらえば良いだろう!?」
「この店に卸してくれてるアイテムは全て、俺と懇意にしてくれている方ですからね。他の店には出しませんよ」
「君が紹介すればいいじゃないか。そしたら丸く収まる」
「無理ですね」
「君こそ意地を張らないで冒険者に戻るんだ!」
「俺はこの店を大事にしています。貴方のように仲間を使い潰して捨てるような人の元に行って、何か得があるんですか?」
そこまで話した時だった。
「面白い話をしているねぇ……。カイルをこの店から引き抜くって言うのかい?」
満を期してと言うべきか否か。ロキシーは階段をゆっくり降りながら元リーダーに挑戦的な目を向けると、元リーダーは「ロキシー様……?」と困惑した様子で声を出した。
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「うちの店主を引き抜かれるのは困るんだよねぇ……。アタシの働き口が無くなっちまう」
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「ええ、ロキシーはこの店の二階で働いていますが?」
「今ではネイルサロン・サルビアのオーナーと言えばロキシーと呼ばれるくらいには有名になったと思ったんだけど?」
「あの……その……」
「で? 仲間を見殺しにした挙句、カイルをダンジョンに置き去りにしたんだって? よくそれでリーダーなんて名乗れるね。恥を知りな!」
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ロキシー無双。
なんて思ったが、実際冒険者の間でロキシーを知らない奴なんていないのだから、元リーダーが怯えるのも仕方ないだろう。
「そうだねぇ、アタシから見てアンタは冒険者としても、リーダーとしても失格だと思うけど、アタシは冒険者を辞めてソコソコ経ってるからね。今の時代の有名な冒険者達と、そのリーダーから話を聞こうか。どう思う? レイス、ナナノ、ハスノ」
まさかその名を更に出すとは思わなったが、どうやら三人はネイルが終わって降りてくる所だったようだ。
三人は現在のAランク冒険者だ。うちの元リーダーはBランク。格上からの言葉は重い。
「カイルが居なくなったらこの店無くなる?」
「無くなりますね」
「ネイルサロンも?」
「無くなるんじゃないですかね」
「「そこのお前、ギルティ」」
「だ、そうだよ。そこの場違いなカイルを雇ってた元リーダーさん。どうぞ、店からお引き取りを」
レイスさんも仲間を見殺しにするような冒険者は嫌いなんだろう。
笑っているのに目が笑っていない。
元リーダーは周囲からの厳しい視線とAランク冒険者雪の園、更にロキシーからの厳しい目に耐えきれず脱兎のごとく店から走り去った。
そして、店の奥から戻ってきたライトの手には塩の袋があり、無言で玄関に塩を撒いていた。
弟もきっと『二度と来るな』と思っているんだろう。
無言で塩を撒く姿に、ちょっと俺の方が恐怖した程だ。
「兄さん」
「はい!」
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