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42 身代わりの華とカイルのスキル
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――カイルside――
その後、店内をお騒がせして申し訳なった旨を客に伝えると、「あんな野郎はクズだクズ!」「店主は何も悪くねぇ!」と言って貰えてホッとした。
更に雪の園の面子も階段から降りてくると、俺の許へやってきて「災難だったな」と労ってくれた。
きっと元リーダーは前に拠点としていた町から王都へ来たばかりだったんだろうが、また移動する羽目になるだろうと予想される。
「それで」
「お守りは?」
「ああ、そうでしたね。奥の商談場所へどうぞ。ライト、レジを頼む」
こうして、レジ奥にある机の許へ向かうと、俺はアイテムボックスから二つのラッピングされた箱を取り出した。
それを双子の前に差し出すと、双子はワクワクしているのか「開けていい?」と聞いてきた為、笑顔で頷いた。
ラッピングのリボンを解き、箱を開けると金細工で出来た髪留めに、片方が赤、片方が白の薔薇が細工されており、それはやはり芸術の一品とさえ思ってしまう程綺麗だった。
「凄い……」
「想像以上……」
「喜んでいただけたなら幸いです」
「私は赤」
「私は白」
「取り合いにならず良かったです」
「「こんなお守りがずっとずっと欲しかった!!」」
双子の興奮した声に俺も思わず笑顔になると、二人は早速髪留めを付け、お互いに確認し合いながら微笑んでいる。
レイスさんも「見事な物だな」と感心しているし、リディアが聞いたらさぞかし喜ぶだろう。
「本当にタダで良いのかい? これは相当な品だよ?」
「ええ、付与師様からのお礼の品ですので」
「しかし……」
「今後、道具店に何かあったら手を貸す」
「必ず助ける」
「と、言う訳で、それでも良いかい?」
「勿論です」
雪の園の面子にそこまで言わせるとは……流石リディアだと思うと自慢したくなるが、敢えてそこは我慢する。
だが、素晴らしい付与師としてのスキルも持っている女性だと、いつか胸を張って言いたい気分だ。
「所で話は変わるけれど、あの元リーダーが言っていたカイルのスキルって言うのは、どんなスキルなんだい? 無論チームに入れたいとかそういうのじゃないんだがね」
「俺のスキルですか?」
「気になる」
「聞きたい」
「俺のスキルは【炎の咆哮】と言うスキルです。敵を怯ませ、周囲の仲間の士気を上げるもので」
「「「炎の咆哮」」」
「どうしました?」
「本当に、【炎の咆哮】を持っているのかい?」
まさか、困惑した様子で聞かれるとは思わず「はい」と答えると、レイスさんは暫く考え込んだ様子で黙り込んだ。
双子たちも少々困惑した様子でレイスさんを見ている。
一体どうしたのだろうか?
「いや、うん……ちょっとそのスキル持ちを探している人が居てね。そうか、カイルがそうだったのか……確かに言われてみれば……」
「探しているとは?」
「それ以上は僕からは言えないかな。一応アラクネさんに話をしておくから、今日にでも聞いてみてくれ。理由までは話してくれるか分からないが、アラクネさんが確認に来ると思う」
「わかりました」
別段目立つようなスキルではないと思うんだが、一体このスキル持ちの俺を探しているのは誰なんだろうか?
そっちの方が気になってしまう。
それでも、アラクネさんが来た時にでも相手の事は聞くことだろうし、今は考えるのをやめておこう。
「兎に角、素晴らしい品をありがとう。それにネイルもね」
「模様入れて貰った」
「守りの模様」
「冒険者の間では、ネイルに各々の欲しいシンボルを入れるのが人気みたいですからね。一般のお客様だとシンボルよりも爪を美しく魅せるグラデーションなんかは人気みたいです」
「此れはね、画期的なお洒落だよ? 最早ネイルサロン・サルビアがファッションの発信地ともいえるよ?」
「そう言っていただけると幸いです」
「謙虚だなぁ」
こうして雪の園の面子は冒険者ギルドに向かいアラクネさんと話してくるとの事で帰ったが、まだまだ店には沢山の冒険者やお客で一杯だ。
此れから暑くなるにつれて、既にハッカ水の在庫補充は3回目だ。
二階のネイルサロンでもアイテムは日に日に売れていると言うし、後で計算するのが怖いなと思いつつも、どんどん売れていくアイテムを計算して売りまくったその夜――。
「失礼しますよ」
「こんばんは、アラクネさん」
閉店間近の時間帯に、アラクネさんが店にやってきた。
だが、その顔は険しい。一体何があったのだろうか?
「奥の商談場所でお話しても?」
「わかりました、奥へどうぞ」
「出来れば二人きりで話がしたいのですが」
「では、閉店後でも宜しいでしょうか?」
「畏まりました」
アラクネさんの喋り方が若干硬い気がするのは気のせいだろうか?
取り敢えずネイルサロンの三人も帰宅し、レジを絞めてライトとロキシーに先に箱庭へ行って貰うように指示を出すと、店に残ったのは俺とアラクネさんだけだ。
「お待たせしました。それで、話とは?」
「ええ、実は貴方の持っているスキルの事ですが」
「はい」
「【炎の咆哮】……そのスキル持ちの方を探している、とある身分の方がいらっしゃいましてね? こちらからご連絡差し上げることになりますが宜しいでしょうか」
「俺のスキルは何処にでもあるようなスキルだと思いますが……」
「【炎の咆哮】は、一子相伝のスキルですよ」
――思わぬ言葉に俺は目を見開いた。
確かに父から教わったモノではあったが、それが一子相伝のスキルとは思ってもいなかったのだ。
「貴方のお爺様に当たる方が、そのスキルを持つ子をお探しです」
「王国内にいらっしゃるんでしょうか?」
「隣国となります」
「そう……ですか」
「ですが、丁度良く我が国の建国記念日に来られることになっておりますので、一度会う席を設けたいと思います」
「………」
「悪い方ではありません。そこだけは御間違えないように」
それだけを言うとアラクネさんは店を後にした。
――祖父が、父から受け継いだスキルを持つ者を探している事には驚いたが、今すぐ、どうこう出来る問題でもない。
それに、この国の建国記念日は半年も先だ。
それまでは、今後の身の振り方をどうするべきかは、考えないといけないかも知れないが、俺には守るべき人間も、店もある。
悪い人ではないのであれば、ちゃんとした話し合いが出来るかもしれない。
無論、期待は薄いが……。
「流石にライト達には言えないな」
一人椅子に座ったまま口に出すと、自分に重石が乗ったような感覚に陥り溜息が零れた。
その後、店内をお騒がせして申し訳なった旨を客に伝えると、「あんな野郎はクズだクズ!」「店主は何も悪くねぇ!」と言って貰えてホッとした。
更に雪の園の面子も階段から降りてくると、俺の許へやってきて「災難だったな」と労ってくれた。
きっと元リーダーは前に拠点としていた町から王都へ来たばかりだったんだろうが、また移動する羽目になるだろうと予想される。
「それで」
「お守りは?」
「ああ、そうでしたね。奥の商談場所へどうぞ。ライト、レジを頼む」
こうして、レジ奥にある机の許へ向かうと、俺はアイテムボックスから二つのラッピングされた箱を取り出した。
それを双子の前に差し出すと、双子はワクワクしているのか「開けていい?」と聞いてきた為、笑顔で頷いた。
ラッピングのリボンを解き、箱を開けると金細工で出来た髪留めに、片方が赤、片方が白の薔薇が細工されており、それはやはり芸術の一品とさえ思ってしまう程綺麗だった。
「凄い……」
「想像以上……」
「喜んでいただけたなら幸いです」
「私は赤」
「私は白」
「取り合いにならず良かったです」
「「こんなお守りがずっとずっと欲しかった!!」」
双子の興奮した声に俺も思わず笑顔になると、二人は早速髪留めを付け、お互いに確認し合いながら微笑んでいる。
レイスさんも「見事な物だな」と感心しているし、リディアが聞いたらさぞかし喜ぶだろう。
「本当にタダで良いのかい? これは相当な品だよ?」
「ええ、付与師様からのお礼の品ですので」
「しかし……」
「今後、道具店に何かあったら手を貸す」
「必ず助ける」
「と、言う訳で、それでも良いかい?」
「勿論です」
雪の園の面子にそこまで言わせるとは……流石リディアだと思うと自慢したくなるが、敢えてそこは我慢する。
だが、素晴らしい付与師としてのスキルも持っている女性だと、いつか胸を張って言いたい気分だ。
「所で話は変わるけれど、あの元リーダーが言っていたカイルのスキルって言うのは、どんなスキルなんだい? 無論チームに入れたいとかそういうのじゃないんだがね」
「俺のスキルですか?」
「気になる」
「聞きたい」
「俺のスキルは【炎の咆哮】と言うスキルです。敵を怯ませ、周囲の仲間の士気を上げるもので」
「「「炎の咆哮」」」
「どうしました?」
「本当に、【炎の咆哮】を持っているのかい?」
まさか、困惑した様子で聞かれるとは思わず「はい」と答えると、レイスさんは暫く考え込んだ様子で黙り込んだ。
双子たちも少々困惑した様子でレイスさんを見ている。
一体どうしたのだろうか?
「いや、うん……ちょっとそのスキル持ちを探している人が居てね。そうか、カイルがそうだったのか……確かに言われてみれば……」
「探しているとは?」
「それ以上は僕からは言えないかな。一応アラクネさんに話をしておくから、今日にでも聞いてみてくれ。理由までは話してくれるか分からないが、アラクネさんが確認に来ると思う」
「わかりました」
別段目立つようなスキルではないと思うんだが、一体このスキル持ちの俺を探しているのは誰なんだろうか?
そっちの方が気になってしまう。
それでも、アラクネさんが来た時にでも相手の事は聞くことだろうし、今は考えるのをやめておこう。
「兎に角、素晴らしい品をありがとう。それにネイルもね」
「模様入れて貰った」
「守りの模様」
「冒険者の間では、ネイルに各々の欲しいシンボルを入れるのが人気みたいですからね。一般のお客様だとシンボルよりも爪を美しく魅せるグラデーションなんかは人気みたいです」
「此れはね、画期的なお洒落だよ? 最早ネイルサロン・サルビアがファッションの発信地ともいえるよ?」
「そう言っていただけると幸いです」
「謙虚だなぁ」
こうして雪の園の面子は冒険者ギルドに向かいアラクネさんと話してくるとの事で帰ったが、まだまだ店には沢山の冒険者やお客で一杯だ。
此れから暑くなるにつれて、既にハッカ水の在庫補充は3回目だ。
二階のネイルサロンでもアイテムは日に日に売れていると言うし、後で計算するのが怖いなと思いつつも、どんどん売れていくアイテムを計算して売りまくったその夜――。
「失礼しますよ」
「こんばんは、アラクネさん」
閉店間近の時間帯に、アラクネさんが店にやってきた。
だが、その顔は険しい。一体何があったのだろうか?
「奥の商談場所でお話しても?」
「わかりました、奥へどうぞ」
「出来れば二人きりで話がしたいのですが」
「では、閉店後でも宜しいでしょうか?」
「畏まりました」
アラクネさんの喋り方が若干硬い気がするのは気のせいだろうか?
取り敢えずネイルサロンの三人も帰宅し、レジを絞めてライトとロキシーに先に箱庭へ行って貰うように指示を出すと、店に残ったのは俺とアラクネさんだけだ。
「お待たせしました。それで、話とは?」
「ええ、実は貴方の持っているスキルの事ですが」
「はい」
「【炎の咆哮】……そのスキル持ちの方を探している、とある身分の方がいらっしゃいましてね? こちらからご連絡差し上げることになりますが宜しいでしょうか」
「俺のスキルは何処にでもあるようなスキルだと思いますが……」
「【炎の咆哮】は、一子相伝のスキルですよ」
――思わぬ言葉に俺は目を見開いた。
確かに父から教わったモノではあったが、それが一子相伝のスキルとは思ってもいなかったのだ。
「貴方のお爺様に当たる方が、そのスキルを持つ子をお探しです」
「王国内にいらっしゃるんでしょうか?」
「隣国となります」
「そう……ですか」
「ですが、丁度良く我が国の建国記念日に来られることになっておりますので、一度会う席を設けたいと思います」
「………」
「悪い方ではありません。そこだけは御間違えないように」
それだけを言うとアラクネさんは店を後にした。
――祖父が、父から受け継いだスキルを持つ者を探している事には驚いたが、今すぐ、どうこう出来る問題でもない。
それに、この国の建国記念日は半年も先だ。
それまでは、今後の身の振り方をどうするべきかは、考えないといけないかも知れないが、俺には守るべき人間も、店もある。
悪い人ではないのであれば、ちゃんとした話し合いが出来るかもしれない。
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