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123 道具屋の本当の理由――。
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――道具屋side――
流れた放送に、呆然と立ち尽くした。
ワシの店の名は出なかった。だが誰の目から見ても、耳から聞いても、どこの道具屋を言っているのかは一目瞭然だった。
一体何処で漏れた?
ワシが箱庭師を狙っているのも、何もかもが、一体何処で漏れた!?
店の中を見渡しても人の気配などない。
誰かに見られているような感覚さえない。
それなのに――何故こうも筒抜けなのだ?
力が抜けて膝から地面に崩れ落ちると、今までのワシの手にしてきた栄誉が……名誉が……誇りが、しわだらけの手から零れ落ちていくような感覚がした。
若い頃から只管頑張ってきた道具屋だ。
道具屋一筋でやってきた。
多少の汚い事もしてきたが、それは―――の為だと思っていた。
今回だってそうだ。
商店街を潰し、箱庭師を手に入れ、弱みを握ればダンノージュ侯爵家の傘下と言えど、ワシの道具屋に楯突くことは無いのだと思っていた。
なのに、なのに――。
ドンドンドン!!
激しくドアを叩く音が聞こえ、ドアを蹴破って入ってきたのはこの街を守る憲兵達だった。
罪状を読まれたが意味が分からない。
だが唯一分かったのは――ワシが狙ってしまった箱庭師は、ダンノージュ侯爵家の跡取りである孫、カイル様の婚約者であることだけ。
そんな情報何処にもなかった。
カイル様の婚約者だと分かっていたら手を出さなかった!
そう叫んでも意味は最早なく、引きずられるように外に放り出されると縄で縛られ、街の罪人が入る牢へと入れられた。
夏場だと言うのに冷える地下に作られた鉄格子だらけの牢屋は、老骨に染みる。
呆然と、ただ呆然としていた時間がどれくらいあっただろうか。
ワシは何処で間違えた?
商店街を潰しまわった事か、道具屋が来ると追い出していた事か、はたまた違うナニカなのかは分からない。
唯一分かるのは、喧嘩を売ってはならないダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街を狙ったことが、唯一の敗因だと思っている。
もし、どこかのタイミングで箱庭師がカイル様の婚約者だと分かっていたら、ワシはどうしたであろうか?
苦々しい思いをしながらも受け入れることが出来たであろうか?
否。
それはきっとなかっただろう。
もっともっと人を雇い、商店街を破壊する依頼をしていただろう。
それが――後に今の状態に繋がるとしても、留飲は下がって笑っていただろう。
だが今回は笑う暇すら与えられなかった。
完全に包囲されている事にさえ気づかず、結果が此れだ。
その上、ダンノージュ侯爵家に喧嘩を売った道具屋として語り継がれるだろう。
そう思っていると、看守に呼ばれてワシは一つの部屋に入り、椅子に縄で動けぬよう固定されると、尋問されるのだと理解した。
尋問相手は誰が来るのかは分からない。
ダンノージュ侯爵家に喧嘩を売った以上、とんでもない人物がやってくるだろうと思った。
ドアが開き、顔をゆっくりと上げると目に飛び込んできたのは――輝く黄金の髪に燃えるような瞳の少年と、美しい黒髪をしたタレ目の美女だった。
「お前たちは、」
「初めましてでしょうか、酒場通りの道具屋、バルナルディさん。私の名は、ライト・ダンノージュ。ダンノージュ侯爵家の孫です。貴方には色々お聞きしたいことが御座いましたので、私自ら尋問させて頂きますね」
「フン! お前のような小僧に何が出来る!」
「出来るから来ているんですよ。今までの罪状は色々あるようですね。今から嘆いて貰っては困るので最後に嘆いてくださいね」
ドロリ……と、彼の目が濁ったような気がした。
その刹那、ゾクリと背中から鳥肌が立ち、汗が流れ落ちる。
「お爺様が何度もテコ入れしようと道具屋や他の商店をお呼びしましたが、尽く貴方の妨害にあったようですね。中には殺人も入っている」
「何を言う。ワシは人を殺してなど、」
「ええ、貴方は依頼をしただけですから、人殺しはしてないでしょう。けれど、依頼をした事は既に判明してるんですよ……。以前道具屋が入ったと思うんですが、そこの一人娘、ハナンさんを殺すよう指示しましたね? その後、ハナンさんは変わり果てた姿で、川辺で死んでいたのを発見されています。どうでした? 年若い女性を嬲り殺すよう指示を出した時……笑っていたんじゃないですか?」
「し、知らん。ワシはなにも知らん!」
「最近だと、今はダンノージュ侯爵家の傘下に入った肉屋のジュダーノさん。貴方、彼を亡き者にしようとしていましたね? ですが彼は元冒険者、刃物の扱いも肉体でも荒くれ者では手が出せず逃げ帰ったでしょう? 覚えてます?」
「知らん、知らん!!」
「では、ダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街に、酒場の荒くれ者を雇って誘拐、及び箱庭師を誘拐しようとした事については、覚えていますよね?」
その一言に、ワシは自分の息が上がっていることに気が付いた。
恐ろしいのだ……目の前にいる少年が。
怖いのだ……まるで、化け物から見られているようで。
「まさか、義姉を狙おうとするとは、思いもよりませんでしたよ」
「ワシは知らなかったんだ! まさかカイル様の婚約者など」
「知っていても、貴方は何かしら手を出したでしょう? 貴方はそう言う生き方しか知らないのだから」
「違う!! 違う!!」
「もう正直になりましょうよ……貴方はクズな人間だと街中の皆さんがご存じですよ? もし貴方が仮に、無事に此処から出ることが出来たとして……また道具屋をやれるとでも思っているんですか?」
「それは……ワシが居なければ成り立たぬ商売は沢山ある!」
「例えばどのようなお力が貴方にあるのか、興味がありますね」
またドロリと瞳が濁った気がした……。
その目を見たくないのに、少年の目から離せない。
「酒場の主人とは結託しているんだ! ワシに何かあれば酒場の主人から報復があるぞ!」
「酒場の主人と懇意にしていらっしゃるんですね? その他にはどのような方々が?」
「冒険者が魔物を肉に卸すための、皮剥ぎ屋だ。あそこの主人は死んだ魔物や人間の皮をはぐのが大好きだからな!」
「なるほど……それで最初に言った女性の肌の皮が無かったんですね。他には?」
「他には彫金師たちとも懇意にしている。付与師たちもだ。ワシの店で売るように契約を交わしている!」
「ああ、とっても壊れやすいと有名な彫金師の作ったアイテムと付与がシッカリと掛かっていないアイテムの事ですね」
「冒険者ギルドの受付のフォリスナルトもそうだ。奴が倉庫管理をしているのだから、ワシの一言で欲しい素材や道具は手に入らなく出来るのだからな!」
「その事は、お二人だけの約束事ですか? それとも、冒険者ギルド全体と取引を?」
「フォリスナルトだけだ。他の奴らはダメだな、頭の固い奴らが多すぎる」
「なるほどなるほど……実に有意義な情報を有難うございます。ところで、若い女性を、結婚が既に決まっていた女性を殺したのは楽しかったですか?」
「ワシに楯突いたのだから殺されても文句は言えないだろう」
「そうですか……。貴方の娘さんも、そうやって殺されたんですよね? 名前は何とおしゃいましたか……ジュリアさんでしたか?」
その一言にワシは立ち上がろうとしたが縄で立ち上がれなくなっていた為、椅子に固定されたまま床に転がった。
「自分の娘を殺されたのが許せませんでしたか?」
「フ――……フゥゥウウウ……おまぇぇぇええ!!」
「だから強い道具屋になろうとしたんですよね。お気持ちは分かりますよ。でも、手を出した相手が悪かったですね。ですが良い話を聞くことが出来ました。どうやら証拠がつかめなかった情報について、あなたの口から、行動から証拠が掴めましたから」
「ジュリアを!! ジュリアを侮辱するな!! あの子は! あの子は!!」
「貴方が傲慢なやり方をしたから、仕返しに別の道具屋に殺されたんでしょう? 調べれば出てきますよ。貴方が最初に潰した商店街、貴方が最初に潰した道具屋。古い情報でしたが、元を辿ればジュリアさんに行きつきました」
「貴様ぁぁあ!!」
「だからと言って、貴方が殺したいほど憎んだ商店街や道具屋と同じことをして、娘さんは喜ぶんでしょうかね? もう一度ゆっくりとお考え下さいませ」
そう言うと少年はワシを見ることなく部屋を出て行った。
ジュリアが。
ワシの大事な一人娘が一体何をした。
あの子は、あの子の為にワシは今まで頑張ってきたのだ!
あの子の無念を晴らすために、ワシの道具屋以外の道具屋がこの街にある事は許さん!
「許さんぞ……カイルにライトォォオオオオ!!!」
流れた放送に、呆然と立ち尽くした。
ワシの店の名は出なかった。だが誰の目から見ても、耳から聞いても、どこの道具屋を言っているのかは一目瞭然だった。
一体何処で漏れた?
ワシが箱庭師を狙っているのも、何もかもが、一体何処で漏れた!?
店の中を見渡しても人の気配などない。
誰かに見られているような感覚さえない。
それなのに――何故こうも筒抜けなのだ?
力が抜けて膝から地面に崩れ落ちると、今までのワシの手にしてきた栄誉が……名誉が……誇りが、しわだらけの手から零れ落ちていくような感覚がした。
若い頃から只管頑張ってきた道具屋だ。
道具屋一筋でやってきた。
多少の汚い事もしてきたが、それは―――の為だと思っていた。
今回だってそうだ。
商店街を潰し、箱庭師を手に入れ、弱みを握ればダンノージュ侯爵家の傘下と言えど、ワシの道具屋に楯突くことは無いのだと思っていた。
なのに、なのに――。
ドンドンドン!!
激しくドアを叩く音が聞こえ、ドアを蹴破って入ってきたのはこの街を守る憲兵達だった。
罪状を読まれたが意味が分からない。
だが唯一分かったのは――ワシが狙ってしまった箱庭師は、ダンノージュ侯爵家の跡取りである孫、カイル様の婚約者であることだけ。
そんな情報何処にもなかった。
カイル様の婚約者だと分かっていたら手を出さなかった!
そう叫んでも意味は最早なく、引きずられるように外に放り出されると縄で縛られ、街の罪人が入る牢へと入れられた。
夏場だと言うのに冷える地下に作られた鉄格子だらけの牢屋は、老骨に染みる。
呆然と、ただ呆然としていた時間がどれくらいあっただろうか。
ワシは何処で間違えた?
商店街を潰しまわった事か、道具屋が来ると追い出していた事か、はたまた違うナニカなのかは分からない。
唯一分かるのは、喧嘩を売ってはならないダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街を狙ったことが、唯一の敗因だと思っている。
もし、どこかのタイミングで箱庭師がカイル様の婚約者だと分かっていたら、ワシはどうしたであろうか?
苦々しい思いをしながらも受け入れることが出来たであろうか?
否。
それはきっとなかっただろう。
もっともっと人を雇い、商店街を破壊する依頼をしていただろう。
それが――後に今の状態に繋がるとしても、留飲は下がって笑っていただろう。
だが今回は笑う暇すら与えられなかった。
完全に包囲されている事にさえ気づかず、結果が此れだ。
その上、ダンノージュ侯爵家に喧嘩を売った道具屋として語り継がれるだろう。
そう思っていると、看守に呼ばれてワシは一つの部屋に入り、椅子に縄で動けぬよう固定されると、尋問されるのだと理解した。
尋問相手は誰が来るのかは分からない。
ダンノージュ侯爵家に喧嘩を売った以上、とんでもない人物がやってくるだろうと思った。
ドアが開き、顔をゆっくりと上げると目に飛び込んできたのは――輝く黄金の髪に燃えるような瞳の少年と、美しい黒髪をしたタレ目の美女だった。
「お前たちは、」
「初めましてでしょうか、酒場通りの道具屋、バルナルディさん。私の名は、ライト・ダンノージュ。ダンノージュ侯爵家の孫です。貴方には色々お聞きしたいことが御座いましたので、私自ら尋問させて頂きますね」
「フン! お前のような小僧に何が出来る!」
「出来るから来ているんですよ。今までの罪状は色々あるようですね。今から嘆いて貰っては困るので最後に嘆いてくださいね」
ドロリ……と、彼の目が濁ったような気がした。
その刹那、ゾクリと背中から鳥肌が立ち、汗が流れ落ちる。
「お爺様が何度もテコ入れしようと道具屋や他の商店をお呼びしましたが、尽く貴方の妨害にあったようですね。中には殺人も入っている」
「何を言う。ワシは人を殺してなど、」
「ええ、貴方は依頼をしただけですから、人殺しはしてないでしょう。けれど、依頼をした事は既に判明してるんですよ……。以前道具屋が入ったと思うんですが、そこの一人娘、ハナンさんを殺すよう指示しましたね? その後、ハナンさんは変わり果てた姿で、川辺で死んでいたのを発見されています。どうでした? 年若い女性を嬲り殺すよう指示を出した時……笑っていたんじゃないですか?」
「し、知らん。ワシはなにも知らん!」
「最近だと、今はダンノージュ侯爵家の傘下に入った肉屋のジュダーノさん。貴方、彼を亡き者にしようとしていましたね? ですが彼は元冒険者、刃物の扱いも肉体でも荒くれ者では手が出せず逃げ帰ったでしょう? 覚えてます?」
「知らん、知らん!!」
「では、ダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街に、酒場の荒くれ者を雇って誘拐、及び箱庭師を誘拐しようとした事については、覚えていますよね?」
その一言に、ワシは自分の息が上がっていることに気が付いた。
恐ろしいのだ……目の前にいる少年が。
怖いのだ……まるで、化け物から見られているようで。
「まさか、義姉を狙おうとするとは、思いもよりませんでしたよ」
「ワシは知らなかったんだ! まさかカイル様の婚約者など」
「知っていても、貴方は何かしら手を出したでしょう? 貴方はそう言う生き方しか知らないのだから」
「違う!! 違う!!」
「もう正直になりましょうよ……貴方はクズな人間だと街中の皆さんがご存じですよ? もし貴方が仮に、無事に此処から出ることが出来たとして……また道具屋をやれるとでも思っているんですか?」
「それは……ワシが居なければ成り立たぬ商売は沢山ある!」
「例えばどのようなお力が貴方にあるのか、興味がありますね」
またドロリと瞳が濁った気がした……。
その目を見たくないのに、少年の目から離せない。
「酒場の主人とは結託しているんだ! ワシに何かあれば酒場の主人から報復があるぞ!」
「酒場の主人と懇意にしていらっしゃるんですね? その他にはどのような方々が?」
「冒険者が魔物を肉に卸すための、皮剥ぎ屋だ。あそこの主人は死んだ魔物や人間の皮をはぐのが大好きだからな!」
「なるほど……それで最初に言った女性の肌の皮が無かったんですね。他には?」
「他には彫金師たちとも懇意にしている。付与師たちもだ。ワシの店で売るように契約を交わしている!」
「ああ、とっても壊れやすいと有名な彫金師の作ったアイテムと付与がシッカリと掛かっていないアイテムの事ですね」
「冒険者ギルドの受付のフォリスナルトもそうだ。奴が倉庫管理をしているのだから、ワシの一言で欲しい素材や道具は手に入らなく出来るのだからな!」
「その事は、お二人だけの約束事ですか? それとも、冒険者ギルド全体と取引を?」
「フォリスナルトだけだ。他の奴らはダメだな、頭の固い奴らが多すぎる」
「なるほどなるほど……実に有意義な情報を有難うございます。ところで、若い女性を、結婚が既に決まっていた女性を殺したのは楽しかったですか?」
「ワシに楯突いたのだから殺されても文句は言えないだろう」
「そうですか……。貴方の娘さんも、そうやって殺されたんですよね? 名前は何とおしゃいましたか……ジュリアさんでしたか?」
その一言にワシは立ち上がろうとしたが縄で立ち上がれなくなっていた為、椅子に固定されたまま床に転がった。
「自分の娘を殺されたのが許せませんでしたか?」
「フ――……フゥゥウウウ……おまぇぇぇええ!!」
「だから強い道具屋になろうとしたんですよね。お気持ちは分かりますよ。でも、手を出した相手が悪かったですね。ですが良い話を聞くことが出来ました。どうやら証拠がつかめなかった情報について、あなたの口から、行動から証拠が掴めましたから」
「ジュリアを!! ジュリアを侮辱するな!! あの子は! あの子は!!」
「貴方が傲慢なやり方をしたから、仕返しに別の道具屋に殺されたんでしょう? 調べれば出てきますよ。貴方が最初に潰した商店街、貴方が最初に潰した道具屋。古い情報でしたが、元を辿ればジュリアさんに行きつきました」
「貴様ぁぁあ!!」
「だからと言って、貴方が殺したいほど憎んだ商店街や道具屋と同じことをして、娘さんは喜ぶんでしょうかね? もう一度ゆっくりとお考え下さいませ」
そう言うと少年はワシを見ることなく部屋を出て行った。
ジュリアが。
ワシの大事な一人娘が一体何をした。
あの子は、あの子の為にワシは今まで頑張ってきたのだ!
あの子の無念を晴らすために、ワシの道具屋以外の道具屋がこの街にある事は許さん!
「許さんぞ……カイルにライトォォオオオオ!!!」
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