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122 ダンノージュ侯爵領の誉と呼ばれた日。
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――ロキシーside――
時は戻って、本日の朝。
沢山の冒険者や一般市民が行き交う中、魔道具での放送が街全体に領主自らの声が届くと言う異例の放送が流れた。
空に響く放送の声に、アタシたちも冒険者と共に店の外に出て、ダンノージュ侯爵からのお言葉を待った。
すると、アラーシュ様の声で、今のダンノージュ侯爵領の停滞を打破したと言う商店街サルビアへのお褒めの言葉が流れ、周囲はにわかに沸き立つ。
そして――。
『ダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街こそが、真なるダンノージュ侯爵家が求める姿であり、商店街の道具店こそが、真なるダンノージュ侯爵家の求める道具店である。古き考えの元では、この先領地は発展しなかったであろう。商店街サルビアを称えよ!』
この言葉に、周囲は盛大に湧いた。
ダンノージュ侯爵家の傘下に入った酒屋、肉屋や布団店、服屋は余りの言葉に呆然とし、それでも周囲の奴らから沢山の「おめでとう!」に押され我に返った様だ。
そして、涙する者もいれば喜びに雄叫び上げる者、抱きしめ合って喜びを噛み締める者と様々だったが、アタシはその光景を隣に立つライトの手を握って見つめ合った。
「あんたの爺さん最高」
「ええ、私のお爺様ですからね」
「皆喜んじまってまぁ」
「煮え湯をずっと飲まされ続けてきたんですから、やっと解放されたんでしょうね」
「さて、あちらがどう動くのか楽しみだねぇ」
「ある種の断罪でしたからね」
この放送は街全体に流れた放送だ。
酒場の奴らも聞いているだろうし、道具屋も聞いているだろう。
自分たちこそが一番だといっても、所詮は庶民。
ダンノージュ侯爵家当主からの言葉とは、とても重いし、何より停滞していたのは名を出さなくとも誰が原因なのかは一目瞭然だった。
「ロキシー殿にライトくん」
「ナインさん」
「先の放送を聞いたかい? 君たちはこの街の誉だ!」
「はい、そうあり続けたいと思います。兄もこの場にいたら喜んでいた事でしょう」
「カイル君は未だに激務かい?」
「ええ、王太子領の改革も任されているので、あちらこちらに走り回っています」
「流石カイル君だ。だが、シッカリ者の弟がいてこそだと私は思うよ」
「有難うございます」
「昨夜の話をしたいのだが、奥の商談スペースは空いているかな?」
「空いています、どうぞ」
ここでアタシが口を挟むと、後でライトの目が濁るから声を敢えてかけない。
だが、昨夜の事となると冒険者の視点で言葉を出すことになりそうだ。
濁った眼のライトが誕生しない事を祈るよ。
そんな事を思いながら沢山の人々に「おめでとう」と言われ、アタシたちも笑顔で店に入り店員に店を任せると、奥の商談スペースへと入った。
すると――。
「昨夜、見回り中の秋の空のメンバーが5人の荒くれ者を捕らえた。彼らは雇い主の事は頑なに話そうとはしなかった為、自白剤を飲まされ、雇い主が道具屋であることを話したそうだよ」
「へぇ……。やはり動いていましたか」
「サルビア商店街の箱庭師を捕まえる為に、人質を取ろうともしたと言っていたそうだ。何処にも姿を出さない箱庭師を呼び出す為には手段は選んでいられないと言っていた。君たちは箱庭師について何かしっているかい?」
「そうですね、知っています」
「アタシも知ってるよ。カイルの婚約者さ」
「なっ」
「つまり、道具屋はダンノージュ侯爵家の孫、カイルの婚約者を捕らえようとしていたと言う事になる。これは調べが進んだら大変なことになるんじゃないかねぇ?」
「そうですね、ダンノージュ侯爵家の呪いを知らぬ人はいないでしょうから」
「道具屋……終わったな」
「ええ、後は終焉に向けて動くだけでしょうが、逃走させる気はありません。道具店の店主は既に捕まったんですか?」
「今憲兵が動いて捕らえに向かっているそうだ」
「では、もう時間の問題ですね。ジワジワ追い詰める予定でしたが仕方ありません。箱庭師を捕らえる為なのは理解しますが、その相手の事を調べていなかったのはアチラの盲点です」
「侯爵家の跡取りの孫であるカイルの婚約者となれば、罪の重さは計り知れないからな」
「ええ、下手をすれば斬首刑でしょう」
「そうなるだろうな」
「ですが、さらなる取り調べは入るんでしょう?」
「勿論。繋がりは纏めてと言った感じだ」
「では、もう暫く様子を見させてもらいましょう。ナインさん、引き続き商店街の護衛をお願いします」
「承った」
――こうして話が終わるとナインは外へと出て行ったが、ライトは静かに後ろを振り返ると、口元を手で覆いボソリと呟いた。
「芋づる式に悪い芽は潰せるときに潰しましょうかね」
「大きな蔓は酒場だろうね。他はどうなっているのか分からないけれど」
「ジックリ炙り出しましょう。尋問もそうですが、アチラからコンタクトを取ってくる可能性もあります」
「確かにそうだね」
「そう言えば、ロキシーに私のスキルを話していませんでしたね」
「いや、誰も聞いてないと思うけど、アンタのスキルって何なのさ」
「鑑定士だそうです」
「……最強の布陣だね」
「ふふふ」
相手が悪意を持って近づくならそれが分かるのが鑑定士のスキルの一つ。
そして、相手の事を詳しく知る事、覚えられるのも鑑定士のスキルの一つ。
確かに……カイルには最高の弟だろうよ。
「さて、放送も終わった事ですし商店街は忙しくなりますよ! ロキシー、一緒に気を引き締めて頑張りましょう!」
「そうだね、売り上げは凄い事になりそうだ。気合を入れるよ!」
エプロンの紐をきつく縛り直し、アタシたちは店へと戻ったその頃――。
時は戻って、本日の朝。
沢山の冒険者や一般市民が行き交う中、魔道具での放送が街全体に領主自らの声が届くと言う異例の放送が流れた。
空に響く放送の声に、アタシたちも冒険者と共に店の外に出て、ダンノージュ侯爵からのお言葉を待った。
すると、アラーシュ様の声で、今のダンノージュ侯爵領の停滞を打破したと言う商店街サルビアへのお褒めの言葉が流れ、周囲はにわかに沸き立つ。
そして――。
『ダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街こそが、真なるダンノージュ侯爵家が求める姿であり、商店街の道具店こそが、真なるダンノージュ侯爵家の求める道具店である。古き考えの元では、この先領地は発展しなかったであろう。商店街サルビアを称えよ!』
この言葉に、周囲は盛大に湧いた。
ダンノージュ侯爵家の傘下に入った酒屋、肉屋や布団店、服屋は余りの言葉に呆然とし、それでも周囲の奴らから沢山の「おめでとう!」に押され我に返った様だ。
そして、涙する者もいれば喜びに雄叫び上げる者、抱きしめ合って喜びを噛み締める者と様々だったが、アタシはその光景を隣に立つライトの手を握って見つめ合った。
「あんたの爺さん最高」
「ええ、私のお爺様ですからね」
「皆喜んじまってまぁ」
「煮え湯をずっと飲まされ続けてきたんですから、やっと解放されたんでしょうね」
「さて、あちらがどう動くのか楽しみだねぇ」
「ある種の断罪でしたからね」
この放送は街全体に流れた放送だ。
酒場の奴らも聞いているだろうし、道具屋も聞いているだろう。
自分たちこそが一番だといっても、所詮は庶民。
ダンノージュ侯爵家当主からの言葉とは、とても重いし、何より停滞していたのは名を出さなくとも誰が原因なのかは一目瞭然だった。
「ロキシー殿にライトくん」
「ナインさん」
「先の放送を聞いたかい? 君たちはこの街の誉だ!」
「はい、そうあり続けたいと思います。兄もこの場にいたら喜んでいた事でしょう」
「カイル君は未だに激務かい?」
「ええ、王太子領の改革も任されているので、あちらこちらに走り回っています」
「流石カイル君だ。だが、シッカリ者の弟がいてこそだと私は思うよ」
「有難うございます」
「昨夜の話をしたいのだが、奥の商談スペースは空いているかな?」
「空いています、どうぞ」
ここでアタシが口を挟むと、後でライトの目が濁るから声を敢えてかけない。
だが、昨夜の事となると冒険者の視点で言葉を出すことになりそうだ。
濁った眼のライトが誕生しない事を祈るよ。
そんな事を思いながら沢山の人々に「おめでとう」と言われ、アタシたちも笑顔で店に入り店員に店を任せると、奥の商談スペースへと入った。
すると――。
「昨夜、見回り中の秋の空のメンバーが5人の荒くれ者を捕らえた。彼らは雇い主の事は頑なに話そうとはしなかった為、自白剤を飲まされ、雇い主が道具屋であることを話したそうだよ」
「へぇ……。やはり動いていましたか」
「サルビア商店街の箱庭師を捕まえる為に、人質を取ろうともしたと言っていたそうだ。何処にも姿を出さない箱庭師を呼び出す為には手段は選んでいられないと言っていた。君たちは箱庭師について何かしっているかい?」
「そうですね、知っています」
「アタシも知ってるよ。カイルの婚約者さ」
「なっ」
「つまり、道具屋はダンノージュ侯爵家の孫、カイルの婚約者を捕らえようとしていたと言う事になる。これは調べが進んだら大変なことになるんじゃないかねぇ?」
「そうですね、ダンノージュ侯爵家の呪いを知らぬ人はいないでしょうから」
「道具屋……終わったな」
「ええ、後は終焉に向けて動くだけでしょうが、逃走させる気はありません。道具店の店主は既に捕まったんですか?」
「今憲兵が動いて捕らえに向かっているそうだ」
「では、もう時間の問題ですね。ジワジワ追い詰める予定でしたが仕方ありません。箱庭師を捕らえる為なのは理解しますが、その相手の事を調べていなかったのはアチラの盲点です」
「侯爵家の跡取りの孫であるカイルの婚約者となれば、罪の重さは計り知れないからな」
「ええ、下手をすれば斬首刑でしょう」
「そうなるだろうな」
「ですが、さらなる取り調べは入るんでしょう?」
「勿論。繋がりは纏めてと言った感じだ」
「では、もう暫く様子を見させてもらいましょう。ナインさん、引き続き商店街の護衛をお願いします」
「承った」
――こうして話が終わるとナインは外へと出て行ったが、ライトは静かに後ろを振り返ると、口元を手で覆いボソリと呟いた。
「芋づる式に悪い芽は潰せるときに潰しましょうかね」
「大きな蔓は酒場だろうね。他はどうなっているのか分からないけれど」
「ジックリ炙り出しましょう。尋問もそうですが、アチラからコンタクトを取ってくる可能性もあります」
「確かにそうだね」
「そう言えば、ロキシーに私のスキルを話していませんでしたね」
「いや、誰も聞いてないと思うけど、アンタのスキルって何なのさ」
「鑑定士だそうです」
「……最強の布陣だね」
「ふふふ」
相手が悪意を持って近づくならそれが分かるのが鑑定士のスキルの一つ。
そして、相手の事を詳しく知る事、覚えられるのも鑑定士のスキルの一つ。
確かに……カイルには最高の弟だろうよ。
「さて、放送も終わった事ですし商店街は忙しくなりますよ! ロキシー、一緒に気を引き締めて頑張りましょう!」
「そうだね、売り上げは凄い事になりそうだ。気合を入れるよ!」
エプロンの紐をきつく縛り直し、アタシたちは店へと戻ったその頃――。
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