【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未

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199 ファビーの温泉宿オープン(下)

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――ファビーside――


朝から宿屋では赤い暖簾、寄り合い所では赤の暖簾が掲げられる頃には、既に着替えを持った女性達で溢れていました。
男性から話を聞いた女性達が大勢やってきた感じで、子供もとても多いです。
そして、時間になってオープンすると、あっという間に温泉は大賑わいとなりました。

庶民用の温泉宿では子供達が初めて見る畳の上を走って楽しんでますし、冒険者の方では我先にと温泉に向かっていらっしゃいます。
今日は女性の日と言う事で、フォルは池鏡には居ません。
フォル曰く「女性の休んでいる姿を見るのはボクの主義に反する」のだとか。
私がだらしなく温泉から出て休んでいても何ともないのに、この差はなんでしょうね。
少しプンプンしていると、リディア姉は何かを察したのか微笑ましく去って行くフォルを見送っていました。


「私が温泉から出てゆったりしてても『だらしないぞ』って言う癖に」
「フォルはファビーのそう言う姿は大丈夫だけど、他の女性のは見たくないって考えているんじゃないかしら?」
「何で見たくないんですか?」
「ほら、フォルも年頃の男の子だから」
「年頃なら私も一緒ですー」
「だからこそよ?」
「そうなんですか?」
「言うなれば、ファビーのは見てもいいけど、他の女性のは見たくないって事かしらね」
「意味が分からないです! 差別反対です!」
「そこは差別があって喜ぶべきところだけど……まぁ、今日は一緒にどうなるか見ましょう?」
「はい!」


こうしてリディア姉と一緒に池鏡から温泉を見させて貰う事になりました。
お子さんは偶に裸で畳の部屋に来たりしてますけれど、直ぐに母親に呼ばれて温泉に走って行ってました。元気ですね!
そして、女性とは長湯だと聞いたことありますが、確かに女性は長湯でした。特に冒険者の方々は中々出てきませんでしたが、庶民の方では子供にあわせて出てくるのが早いお母さん方もいらっしゃいました。


『日頃の疲れが取れる温泉だったねぇ!』
『本当、お肌もモチモチになって』
『子供用の乾燥対策の乳液がタダってのも大きいね!』
『何より、アタシたちは御風呂なんて早々入れないからねぇ……』
『そうなんだよねぇ。安い金額でアレだけの温泉に入れるなんて夢の様な事だよ』
『毎日入りたいくらいだよ本当に。母親こそ子育てや家の事で疲れが溜まるんだから』
『でも、旦那も旦那で仕事で疲れているだろうから温泉に入りたいのも理解出来るねぇ』
『毎回入るのは無理でも、週に2回の贅沢と思えば最高じゃないか』
『しかも子供料金見たかい? 成人するまでタダだって!』
『子供達だけでも毎日温泉に入って欲しいくらいだよ』
『解る、汚れて帰ってくるし、汗疹対策も考えると綺麗にして欲しいからねぇ』


お母さんたちの会話、良く解ります。
実際、子供料金はどうしようかと話し合った際、リディア姉の案で成人するまではタダと言う事にしたんです。
そっちの方が、子供の衛生上とても良くなるからと。
事実、子供達も大勢訪れて汚れや汗を流した事で綺麗になってますし、衛生上綺麗になれば病気に掛かりにくくなります。
それはとても大きな貢献なんです!


『何より、草臥れていた髪に艶も出たし、化粧水っていうのを使ったら肌が若返ったよ』
『化粧水を売っているらしいんだけど、お値段もあまり高くないらしいよ』
『毎日使うモノだし、これくらいの贅沢はしても問題はないよねぇ?』
『ポイントも温泉の商品は1つ買うと1ポイント付くらしいからお得だしね』
『それね、本当お得なの。アタシこれで銀貨1枚分がタダに出来るよ』


と、概ね良好です!
子供達は炬燵に入って母親を呼んでますし、これは良い宣伝になりそうですね!
子供の発見から大人が欲しいと思えば、その内レンタルショップが出来た時に温泉の中にポスターを貼って、レンタル出来るのだと知って貰えれば、リディア姉の考えたレンタルショップも潤うはずですから!
温泉が宣伝塔を担う事は、リディア姉への恩返しに繋がるんです!
そう意気込んでいると、冒険者用の温泉から声が聞こえてきました。


『ヤバい』
『マジでヤバい』
『なにあの温泉』


聞こえてきた声に私とリディア姉がそちらに目線を向けると、若い女性冒険者達が畳の上で寝転がり、机には水の入った紙コップを置いたまま話をしています。


『お肌ツルスベなんだけど』
『日頃の疲れぶっ飛ぶし、ヤバい』
『昨日出来た軽い傷も治るとかヤバすぎっしょ』


傷が治るのは初めて知りました。
そう言えばリディア姉の温泉に初めて入った時、指のひび割れとかが瞬時になくなったのは覚えています。


『回復の湯とか……おとぎ話じゃなかったんだね』
『それを安い値段で入らせてくれるサルビア万歳じゃん……言う事ないよ』
『しかも化粧水の凄い事。肌に吸い付くんだよ手が』
『10代の若い肌に戻ったって感じだよね』
『マジでそれ。しかも売ってるらしいから後で買いに行こうよ』
『絶対買うしかないじゃん!』
『アタシたち、日々肌には気を付けてたけど……大元が傷ついてたんだね』
『ソレ。元から癒さないと肌も復活しないっていうか』
『凄いそれを実感したね』
『こんなん、神の湯だよ……明日男の日とか止めて女性の日にして……』


と訴える女性達の声に、私とリディア姉は手と手を合わせると強く頷きあいました。
声を大にして言いたい。
大成功と!!!

その後も代わる代わる人は来ては温泉で癒されて行き、気が付いた人は炬燵や温熱ヒーターに感心し、夜は外で行われる軽い軽食のおでんを食べて中から温まって帰って行かれました。


「リディア姉、もうこれは」
「ええ!」
「「大成功!!」」


声を大にして叫ぶとフォルとカイル兄がやってきて、二人とも嬉しそうな笑顔です!


「温泉は大成功みたいだな。俺達だって入りたいくらいだからなぁ」
「今度の日の曜日は皆さんに貸し出しますからね!」
「楽しみにしてるよ」
「リディアの温泉以外だと初めてだから楽しみだ」
「わたくしの箱庭だと、一つ一つが小屋になってますものね」
「それはそれで趣があっていいんだよ。それに温泉施設じゃないんだし、小屋になってないと裸を見られたりするのは年頃の女性には辛いだろうからな」
「それは無論ですわ!」
「ボクとしては、温泉から上がった女性が少しはだけて居る姿は……少々刺激が強くて」
「刺激が強いから私に文句言ってたの?」
「ボクもそれなりに年頃だからな!」


そう言って腕を組んで私から目を反らすフォルに、何となく可愛さを感じて笑ってしまったのは許して欲しいな。
小さい頃から一緒にいるのに、恥ずかしいって感覚が生まれるのは年頃だからだったのね。


「ファビーだって」
「ん?」
「湯上りの男の上半身とか……恥ずかしいだろ?」
「いいえ? だってお爺様たちは上半身裸で笑いながら涼んでるじゃない」
「そうじゃなくて……そうでもあるか」
「ええ」
「そうか……」
「?」
「男として見られたい年頃は誰にだってあるもんだぞ? 俺もリディアには手を焼いたからな」
「まぁ!」
「リディア姉とそんな大変な事がカイル兄にはあったんですか?」
「ああ……アレは戦いだったな。男はそういうふうに出来ているのかもしれない」
「鈍感な女性相手だと苦労すると言う事ですね」
「そうだな」
「まぁ! 酷い言い方です事!」
「私たちが鈍感みたいな言い方じゃないですか!」
「鈍感じゃないって言いたいのだったら、それは思い違いだと思うぞ」
「ファビーは鈍感だ」
「むぐうう……」


何やら腑に落ちませんが……落ちませんがリディア姉と同じだと言うのなら問題ありません!!


「鈍感でも今は置いておきましょう! まずは温泉の成功を喜ぶべきですもの!」
「そうですよねリディア姉!!」
「確かに温泉成功おめでとうファビー」
「有難うございます!」
「ボクも手伝ったんだからな!」
「ありがとうフォル!」


こうして、大満足の大成功で終わった温泉の出だしはその後も順調よく伸びていき、その週には『ダンノージュ侯爵領でのみの温泉稼働を』という嘆願書が山のように届くことになろうとはこの時までは思ってもいませんでしたが、王太子領でも開くと言う約束を破ることは出来ないと言う事で却下されるのは、もう少し後の事――。
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