【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未

文字の大きさ
200 / 274

200 カイル、襲撃される。

しおりを挟む
――カイルside――


リディアがファビーの日帰り温泉の成功を祈っている間、俺のすべきことはと言うと、ダンノージュ侯爵領の元道具店を買い取った事と、新しい商売として【レンタルショップ・サルビア】を商業ギルドに登録した事だ。
初めて聞く言葉に戸惑っていたようだが、追々他の箇所から話を聞くでしょうと言うと、「カイル様のお店ですから信頼してます」と言われた。
信頼や信用を失う事はとても恐ろしいことだと言うのは理解している為、気合を入れなおして新たに朝から夜までの間に二人、夜から朝方までの従業員を二名雇う事にして商業ギルドを後にした。
未だに絵師を雇う事は出来ないが、多分王都の方に沢山いるのだろう。

この事はリディアに追々話をしなくてはならないと思いつつ、商店街へと向かい道具店サルビアを通り抜けて薬局を外から見ると、薬局では薬が欲しいお年寄りや持病持ちの方々も多く入っているようで、箱庭で生活している薬師たちが走り回りながら仕事をしているのが見えた。
これからの時期は質の悪い風邪も流行ると言うし、疲れを取る事と体の芯まで温める温泉が出来たことは僥倖だと言えるだろう。

そのまま真っ直ぐ歩いていくと、ママと赤ちゃんのお店も客の入りも悪くはなく、粉ミルクや紙オムツは飛ぶように売れていると聞いたことがある。
最近はリディアが1歳からの【フォローアップミルク】なるものも作り、離乳食が始まった子供用の補助的なミルクなのだと言っていた。
そちらは3歳まで飲んでも問題のない商品らしく、乳離れの出来ない子供の救世主らしい。

次に、まだ空き店舗ではあるが、近々オープン予定の甘味屋は、今パティシエ達が箱庭で研修中だ。
夕食にお菓子が出ることが増えた為、レインとノイルは本格的に身体を絞る決意を決めたそうだ。
Sランク冒険者の腹が出ていることは許せない事らしい。
俺も気を付けようと最近思うくらいには甘い物が出ているけれど、子供達や託児所の子供達のオヤツとしても消えて行っているらしい。
子供達にとってのオヤツタイムは、宝石を見るよりも楽しい時間だろうと想像が出来る。
そして、本日の目的その一の場所に到着すると――俺は店の中に入っていった。


「凄いな……広い店内に厨房も文句なしだ」
「カイル様、お疲れさまです」
「ほぼ改装は終わりました」
「有難うございます。これなら直ぐにでも人を募集してお店が開けそうですね」
「ははは、美味い安い早い店でしたか。我々も楽しみにしているんですよ」
「もう直ぐ焼肉屋の建設も始まりますし、一度王太子領の焼肉店に行ったんですが、あれは素晴らしいものですよ!!」
「此処でもそれが食べられるようになると思うと、どれだけの金貨の雨が降るのか分かりせんね」
「そうですね、建築にはどれくらい掛かりそうですか?」
「厨房は水回りだけ作って後は其方ですると言う話でしたので、三週間もあれば出来上がると思いますよ」
「早いですね」
「後は空き地を綺麗に整地すれば俺達の仕事は終わりですからね。空き地にはサルビアの花と日よけの広葉樹でも植えますか?」
「お願いします。後は木製のベンチがあると助かりますね」
「分かりました」
「水の魔石が勿体なくないと仰るなら、噴水も作ることが出来ますよ」
「それは良いですね、夏の時期にこそ噴水を多用して少しでも涼んで頂きたいので」
「ではそうしましょう」


そこまで話が纏まると、残り3週間でやるべきことは牛丼屋を開くためにジューダスの所から一人か二人ほどヘルプ人員を貸して貰う事と、後は調理師を雇う事だな。
前もって陶芸師の方々には土鍋の大きい物を多く用意して貰うように依頼を出していたので、それもそろそろ出来上がるころだろう。
アカサギ商店とも週に一度の割合で商品の買い付けもしているが、最近はアカサギ商店も儲けの殆どがサルビアに依存している状態でもあり、新しい商品を手に入れれば真っ先に見せてくれるようになった。
今日は朝からアカサギ商店にいたのだが、リディアに頼まれていた商品の他に、お試し商品で色々貰ってきているのでリディアに見せようと思う。


俺の考え的には、ある程度このダンノージュ侯爵領は潤ったと言って過言ではないと思う。
ネイルサロンも繁盛しているし、他の店も随分と繁盛しているのは明らかだ。
そろそろ祖父からも連絡がありそうな気もするし、もしダンノージュ侯爵領が祖父から見ていい方向に進んだと見たとしたら――次は王都に行くのだろう。
だがそれまでに牛丼屋と焼肉屋はオープンさせないといけない。

後は――テント関係を売りに出すのは、焼肉屋などが軌道に乗る頃だろうと思っている。
暫くはライトとロキシーにこちらを任せて、俺とリディアは王都の方が活動拠点となるだろう。
王都での商売がどのようなものがあるのかは分からないし、どの様に過ごしていくのかもまだ分からないが……一歩ずつ進んでいくしかない。


「もう一度商業ギルドで必要な人員を頼んでおくか……」


早めに店を開くにしても、人員確保は大切だ。
そう思った時だった――。
場所は丁度道具店サルビアの前で、俺の周りにシールドが展開されたと思った瞬間、刃物が弾かれるような音と共に、リディアから常に持たされていた【身代わりの華】の花びらが一枚散った。

――敵襲!?

直ぐに剣を手にすると冒険者の姿をした男は剣を抜き俺に襲い掛かってきた。
だがその動きは冒険者と言うよりは暗殺者向きの動きだ。
悲鳴が響く商店街の通りで、まさかダンノージュ侯爵の跡取りである俺が狙われたのだから周囲は騒然としたが、俺の背後から目にもとまらぬ速さでやってきたロキシーと、男の後ろから瞬時に現れたナインさんが武器を抜いて男を剣で動きを止めさせると、俺を狙っていた男は一瞬戸惑ったようだが、そこはナインさん……あっという間に地面に叩きつけて動けなくした。


「カイル大丈夫かい!?」
「ああ、リディアのお陰で助かった……。花びらが一枚散ったが」
「貴様! 一体どこの手の物だ!!」


そうナインさんが叫んで男の頭を上げた時には、男は絶命していた。
様子を見る限り毒を歯に仕込んでいたのだろう……何とも用意周到に俺を狙ったものだ。
直ぐに憲兵が現れ男は死んだまま連行されたが、その日の夜箱庭に急遽祖父が現れ、思いがけない事実が分かる事になる――。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

【バフ】しかできない無能ちゃん。クランから追放されたら、全員を【バフ】する苦行から解放される。自分一人だけ【バフ】したら、なんか最強でした

北川ニキタ
ファンタジー
ニーニャは【バフ】と呼ばれる支援スキルしか持ってなかった。 おかげで戦闘には一切参加できない無能。 それがクラン内でのニーニャの評価だった。 最終的にクランはニーニャを使い物にならないと判断し、追放することに決めた。 ニーニャをダンジョン内に放置したまま、クランメンバーたちは去っていく。 戦えないニーニャはダンジョン内で生き残ることは不可能と誰もが思っていた。 そして、ニーニャ自身魔物を前にして、生きるのを諦めたとき―― 『スキル【バフ】がレベル99になりました。カンストしましたので、スキルが進化します』 天の声が聞こえたのである。 そして、ニーニャを追放したクランは後に崩壊することとなった。 そう誰も気がついていなかった。 ニーニャがクラン全員を常に【バフ】していたことに。 最初だけ暗いですが、基本ほのぼのです。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...