【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未

文字の大きさ
214 / 274

214 お泊り保育①

しおりを挟む
それから一週間後。
本日は焼肉屋のオープンでカイルは其方に行っていますが、今日は初めての試み! お泊り保育の日ですわ!
本日のお泊り保育では、6歳児20名が参加することになりましたの。
件の問題ある親のお子さんも参加だそうで、ホッと一安心したのも束の間。


「リリリリリ……リディア様大変です!!」
「どうしましたの、ミレーヌさん!」
「こここ……この手紙を読んでください!!」


そう言われクシャクシャのチラシの裏に掛かれた手紙とも呼べない紙を手渡され、裏を見てみると、件の親からの手紙でしたの。
今後、子供を引き取りに来るつもりが無い事や、生活が苦しい状況などが書かれてありましたわ。


「まぁ……恐れていた事態になりましたわね。件の男の子はなんと?」
「それが……『ここにいる方が幸せだと僕も思う』と言って、家に帰りたがらない事が多かったそうなんですが……流石にこの手紙を見て驚いた職員が話してしまったらしく」
「それで」
「『僕は箱庭の子になれますか?』と……一度リディア様に会って頂きたく」
「分かりましたわ。その子を園長室へ連れて来て下さい。ミレーヌさんとわたくしは一緒に行きましょう」
「はい!」


こうして、波乱のお泊り保育が始まったのです。
急ぎミレーヌさんの箱庭に入り、三階の園長室で待っていると職員に連れられた男の子が入ってきましたわ。
食事に関しては責任もって食べさせていたからか、健康状態には問題は無さそうです。


「リディア様、この子です」
「初めまして、園長先生のお友達のリディアよ。お名前言える?」
「……ロニエル」
「そう、ロニエルというのね。お話はもう聞いてしまっているようだけれど、箱庭の子になれるかどうかが心配なの?」
「うん」
「他の子供達と仲良くしてくれるなら、箱庭の子になっても構いませんよ」
「本当?」
「ええ、この託児所はその役割も持っているの」
「じゃあ僕は、箱庭の子になれるの? リディア様の箱庭の子たちみたいになれるの?」
「ええ、なれますわ」
「――ありがとうございます! 僕はもうウンザリだったので助かります!」
「ご実家と仲が悪かったのね」
「父は僕の本当の父じゃなかったから……母は死んじゃったから仕方なく育ててくれてただけなんです」
「そう……辛かったわね」
「僕も優しいお爺ちゃんやお婆ちゃんたちと一緒に過ごしたい。今日から箱庭の子になれますか?」
「ええ、でも今日はお泊り保育。今日しか味わえない事も多いから、しっかりお泊り保育を楽しんでから箱庭の子になりましょうね」
「はい!!」


本当の父親ではなかったのなら、あの扱いは頷けますわ。
それに、身寄りのない子を育てていたと言う事でもありますし、一先ずは安心材料かしら。
殴られたり蹴られたりと言う外傷はないにしろ、後で【破損部位修復ポーション】だけは使っておきましょう。


「では、御泊り保育が終わったらミレーヌ先生と一緒にわたくしの箱庭に来てね。あなたの事情を説明して預かってくれる場所があるので、そこには沢山の子供達が暮らしています。小さい赤ちゃんもいるから、優しくしてあげてね?」
「はい!」
「じゃあ、明日待っていますよ」
「―――はい!!」


元気よくそう言うと、ロニエルは手を振りながら職員に連れられ外に出て行きましたわ。
残されたわたくし達は、小さく溜息を吐くと部屋に入ってきた職員にロニエルの普段の様子を聞くことになりましたの。
元々頭が良い子らしく、物静かではあったものの、下の子の面倒も率先してみてくれる優しい子であることも分かりましたわ。
勉強も好きで、特に仕事をしている方々を見学するのが好きらしく、将来は箱庭で仕事がしたいとさえ言っていたのだとか。
性格や行動に問題がある子ではないですし、ホッと一安心ですわね。


「わたくしはロニエルの事を、子供達を総括して預かっているロックに話をしてきます。皆さんは今日のお泊り保育の成功を祈って頑張りましょう!」
「「はい!」」


こうしてわたくしは一足先に自分の箱庭に戻ると、ロック達がダンノージュ侯爵家に行っているのをスッカリ忘れていましたわ。
どうしようかと悩んでいると――。


「リディア姉、どうしたの?」
「マルモさん、良い所に! 実は――」


こうして、絵師のマルモさんに話をすると、マルモさんは「新しい子だね、面倒見るから大丈夫だよ」と言ってくれてホッとしましたわ。
そして、ロック達が帰ってきたら事情を説明して受け入れる体制を整えてくれるそうで、流石ロックを支えて来てくれたマルモさんに感謝しましたわ!


「それに、今日お泊り保育でしょう? うちのチビ達も参加できるって喜んでるよ」
「そうね、人数は多いに越したことは無いから、子供用のテントも寝袋も十分にあるし、何より今日は現役Sランク冒険者からの冒険譚も聞けますものね」
「アタシたちもソレ楽しみにしてて、きっと沢山の人たちが参加すると思うよ」
「そうね、楽しみね!」
「だからそのロニエル君の事はアタシたちに任せて、リディア姉は好きなことしてて良いよ。アタシも休憩がてら子供達の面倒みるし」
「ありがとうマルモさん」


こうしてロニエル君の事は何とかなりそうですしホッとしましたわ。
そして昼食後――早速始まったお泊り保育本番に、6歳の20人は説明が終わると一斉に靴と靴下を脱ぎ捨て、裸足で箱庭の子供達と同じように遊び始めましたわ。
無論、箱庭にいる幼い子供達も同じように遊び始め、近くには今回薬局を休んで担当してくれるドミノさんもいらっしゃるし、何かケガが起きても直ぐに対応できるようにしてますの。

件のロニエル君も笑顔で走り回ってますし、一先ずは安心かしら。
そう思っていると、カイルが帰ってきたようで声を掛けられ、件の話をすると眉を寄せたものの、それでも「まだ放棄された子が一人で良かったと喜ぶべきだな」と少し寂しそうに口にしていましたわ。

最悪、10人程は放棄されるのではないかと話し合っていましたが、今のところロニエルだけで済んでいるのは、子供が愛されていると言う証拠でしょう。


「さて、嘆くのはここまでにして、本日はやらねばならない事がありますわ!」
「ああ、そうか……屋台の爺様たちの孫のスキルチェックか」
「ええ。15時に皆さん集まるようにしてますから、もう少しで集まりますわね」
「スキルチェックをする時は俺も毎回ドキドキするよ。ファビーも見たかっただろうけど、今日から王太子領での日帰り温泉スタートだからな。フォルは何処にいるんだ?」
「決まっているでしょう?」
「納得だ」


こうして、15時になるまでカイルと休憩所で会話をしながら過ごし、厨房からはお菓子を作る香りや屋台組のお爺様お婆様たちが集まって、今か今かと孫が来るのを待ちつつ、夜の屋台用の準備をしていますわ。
それから15分後――お爺様たちのお孫さんたちが集まってやってこれましたの。
小さいお子さんから成人直前のお子さんまで18人が集まると、元気よく挨拶する子もいれば、オドオドとしている子や無表情の子と個性的ですわね。


「ようこそいらっしゃいました。今から貴方がたのスキルチェックを行いますわ。将来手に職を持つ事で随分と生活も変わりますし、王太子領では専業エリアも出来ますから、そこで働くときにも便利です。では、年上の方々からスキルチェックをしていきましょう」
「僕も見たいです」
「あら、ロニエル」
「寧ろ、僕もしたいです。今日から僕も箱庭の子になります。駄目ですか?」
「良いわよ、順番に並んでやりましょうね」
「はい!」


気が付けばロニエルがやってきていて、他の子供達も興味津々で集まってきてますわ。
さて、皆さんどの様なスキルをお持ちでしょう。
楽しみですわね!


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ
ファンタジー
少年マキトは、目が覚めたら異世界に飛ばされていた。 野生の魔物とすぐさま仲良くなり、魔物使いとしての才能を見せる。 しかし職業鑑定の結果は――【色無し】であった。 適性が【色】で判断されるこの世界で、【色無し】は才能なしと見なされる。 冒険者になれないと言われ、周囲から嘲笑されるマキト。 しかし本人を含めて誰も知らなかった。 マキトの中に秘める、類稀なる【色】の正体を――! ※以下、この作品における注意事項。 この作品は、2017年に連載していた「たった一人の魔物使い」のリメイク版です。 キャラや世界観などの各種設定やストーリー構成は、一部を除いて大幅に異なっています。 (旧作に出ていたいくつかの設定、及びキャラの何人かはカットします) 再構成というよりは、全く別物の新しい作品として見ていただければと思います。 全252話、2021年3月9日に完結しました。 またこの作品は、小説家になろうとカクヨムにも同時投稿しています。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...