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213 ナスタの最期。
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――ナスタside――
愛しい姉を奪われ。
領地の大きな収入源だったテントも奪われ。
今俺は、裁判に掛けられている。
弁護人が言うには「最早負け戦でしょう」との事だったが、実際そうだった。
侯爵家への殺人未遂にテントの値段を吊り上げていた事、嘘の供述に領での少女買春等、数えきれない程の罪を裁かれた。
結果、俺に出された判決は死罪。
王家を騙した事と殺人未遂が主な理由だった。
そして、両親を殺した罪も……。
これで、マルシャン公爵家はこの世からなくなる。
公爵家が没落するなんて前代未聞だ。
――全ては初めて会った時から愛した姉の為だったのに。
何時から歯車は狂ってしまったのだろうか?
養子に来た時から?
きっとそうだろう、あの時姉を見た瞬間から、全てが動き出し狂ったのだから。
リディアに俺を見て欲しかった。
リディアにさえ愛されれば満たされるのに、俺を見てくれることも、愛してくれることもなかった。
美しい姉の為に色々したけれど、結局彼女は去って行った。
取り戻したくて色々動いても、手からすり抜けるばかり。
それなのに、カイルだけは違った。
カイルは常に姉を守り、俺の手から奪っていった。
邪魔だった。
だから暗殺者を雇って殺して――姉を取り戻そうとしたのに。
牢屋に入れられたまま、凍えるような寒さを耐えながら刑の執行を待つ時間は余りにも長く感じられる。
吐く息も白いのに、牢屋には掛布団すらない。
冷たい地面で眠ることも出来ず、食欲は失せ、窓から入ってくる雪に凍え、手足が凍傷になっても治療されることなかった。
家族なんていらなかったんだ。
リディアさえいてくれれば。
そう心で告げても、伝わる事もない。
執着して、依存して、愛して、愛して……見向きもされなかった自分は、何て寂しい人生だったんだろうか。
姉を追い出した両親を殺した時だけは、胸がスッとしたのに。
嗚呼……俺の命の灯火がもうすぐ消えようとしている。
その時だった。
二人の足音が聞こえ、もしや姉が会いに来てくれたのかと顔を上げたが――いたのはこの国の王太子殿下と、その側近だった。
「これがリディア嬢の弟か?」
「義理の……ですが」
「ははは! 随分とカイルとはタイプが違うな」
「カイルは元々Bランク冒険者ですから、背丈もありますしガッチリとした体系ですからね」
「もやしみたいに痩せちまってるな」
「元々痩せていたそうですよ」
「そりゃリディア嬢が見向きもしない訳だ」
好き勝手に言われているのも癪に障る。
だがもう起き上がるだけの気力も残っていなかった。
「さて、ナスタに聞きたいことがある。お前は領内で違法薬物を作ったりはしてないだろうな」
「……」
「どうなんだ」
「して……ない……」
そこまで俺は落ちぶれていない。
確かに貴族の中にはそう言う輩もいるらしいが、俺はそれには手を出さなかった。
「現在、貴族の間で違法薬物が問題になっている。使うと依存性が高いらしいが……マルシャン家では作ってなかったか。それならいい、それだけを聞きたかったんだ」
「全く、早く尻尾を出してくれないと困りますね」
「本当になー。一体どこの貴族が作っているのか……」
「違法薬物を使った者たちは口を割りませんし。聞ける状態でもありませんしね。副作用が強すぎて寝たきりの者たちが何人いることやら……」
「どっかに聖女が作ったって言う薬でもないもんかね」
「【破損部位修復ポーション】ですか?」
「アレがあれば一発で治るらしいんだが……」
「そこまで上げている者はいないでしょう」
「いや、あながちリディア嬢なら作ってるかも知れん。今度聞いてみよう」
「それが宜しいかと。望みは薄いですが」
そう言いながら二人は俺の元から去って行った。
リディアが手に入らないのなら、俺も使えばよかった……。
作っている貴族の名は何と言ったか……ダ……ダ……ダル……。
そこまで考えてから、目の前が真っ暗になった。
耳も聞こえず、息も最後に吐いただけで……もう冷たさも感じない。
嗚呼……死ぬのか。
来世では、必ず、リディアを…手に……。
――雪が降りしきる中、その日、ナスタは死んだ。
最後は誰にも看取られず、寂しい最後だった。
愛しい姉を奪われ。
領地の大きな収入源だったテントも奪われ。
今俺は、裁判に掛けられている。
弁護人が言うには「最早負け戦でしょう」との事だったが、実際そうだった。
侯爵家への殺人未遂にテントの値段を吊り上げていた事、嘘の供述に領での少女買春等、数えきれない程の罪を裁かれた。
結果、俺に出された判決は死罪。
王家を騙した事と殺人未遂が主な理由だった。
そして、両親を殺した罪も……。
これで、マルシャン公爵家はこの世からなくなる。
公爵家が没落するなんて前代未聞だ。
――全ては初めて会った時から愛した姉の為だったのに。
何時から歯車は狂ってしまったのだろうか?
養子に来た時から?
きっとそうだろう、あの時姉を見た瞬間から、全てが動き出し狂ったのだから。
リディアに俺を見て欲しかった。
リディアにさえ愛されれば満たされるのに、俺を見てくれることも、愛してくれることもなかった。
美しい姉の為に色々したけれど、結局彼女は去って行った。
取り戻したくて色々動いても、手からすり抜けるばかり。
それなのに、カイルだけは違った。
カイルは常に姉を守り、俺の手から奪っていった。
邪魔だった。
だから暗殺者を雇って殺して――姉を取り戻そうとしたのに。
牢屋に入れられたまま、凍えるような寒さを耐えながら刑の執行を待つ時間は余りにも長く感じられる。
吐く息も白いのに、牢屋には掛布団すらない。
冷たい地面で眠ることも出来ず、食欲は失せ、窓から入ってくる雪に凍え、手足が凍傷になっても治療されることなかった。
家族なんていらなかったんだ。
リディアさえいてくれれば。
そう心で告げても、伝わる事もない。
執着して、依存して、愛して、愛して……見向きもされなかった自分は、何て寂しい人生だったんだろうか。
姉を追い出した両親を殺した時だけは、胸がスッとしたのに。
嗚呼……俺の命の灯火がもうすぐ消えようとしている。
その時だった。
二人の足音が聞こえ、もしや姉が会いに来てくれたのかと顔を上げたが――いたのはこの国の王太子殿下と、その側近だった。
「これがリディア嬢の弟か?」
「義理の……ですが」
「ははは! 随分とカイルとはタイプが違うな」
「カイルは元々Bランク冒険者ですから、背丈もありますしガッチリとした体系ですからね」
「もやしみたいに痩せちまってるな」
「元々痩せていたそうですよ」
「そりゃリディア嬢が見向きもしない訳だ」
好き勝手に言われているのも癪に障る。
だがもう起き上がるだけの気力も残っていなかった。
「さて、ナスタに聞きたいことがある。お前は領内で違法薬物を作ったりはしてないだろうな」
「……」
「どうなんだ」
「して……ない……」
そこまで俺は落ちぶれていない。
確かに貴族の中にはそう言う輩もいるらしいが、俺はそれには手を出さなかった。
「現在、貴族の間で違法薬物が問題になっている。使うと依存性が高いらしいが……マルシャン家では作ってなかったか。それならいい、それだけを聞きたかったんだ」
「全く、早く尻尾を出してくれないと困りますね」
「本当になー。一体どこの貴族が作っているのか……」
「違法薬物を使った者たちは口を割りませんし。聞ける状態でもありませんしね。副作用が強すぎて寝たきりの者たちが何人いることやら……」
「どっかに聖女が作ったって言う薬でもないもんかね」
「【破損部位修復ポーション】ですか?」
「アレがあれば一発で治るらしいんだが……」
「そこまで上げている者はいないでしょう」
「いや、あながちリディア嬢なら作ってるかも知れん。今度聞いてみよう」
「それが宜しいかと。望みは薄いですが」
そう言いながら二人は俺の元から去って行った。
リディアが手に入らないのなら、俺も使えばよかった……。
作っている貴族の名は何と言ったか……ダ……ダ……ダル……。
そこまで考えてから、目の前が真っ暗になった。
耳も聞こえず、息も最後に吐いただけで……もう冷たさも感じない。
嗚呼……死ぬのか。
来世では、必ず、リディアを…手に……。
――雪が降りしきる中、その日、ナスタは死んだ。
最後は誰にも看取られず、寂しい最後だった。
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