石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未

文字の大きさ
14 / 106

14 元婚約者side「貧乏神が来たもんだね」

しおりを挟む
 ――元婚約者side――


 その日、とある店では若い店主の怒鳴り声が響いていた。
 それは私の今の婚約者テリーで、何時もは人当たりの良さそうなイケメンなのに、怒りに震えるその顔は恐ろしく醜かった。


「どうしてこうもキャンセルが続くんだ!!」
「可笑しいわね……本当にどうしてかしら? 今まで請け負っていた仕事がドンドンキャンセル来るなんて」
「商業ギルドも冷たい……俺達が何をしたって言うんだ!!」


 言えない。
 絶対に言えない。
 私がセンジュを受け取りに行こうとした翌日には、商業ギルドに話が既に行っていて……私の勝手な動きの所為で商業ギルドを怒らせたかもなんて言えやしないわ!!


「折角ナナリーの元婚約者の店を潰せると思ったのに……あっちは今普通の暮らしをしているし、聞いたか? 今日は風呂場の給湯器まで買い替えたらしい」
「まぁ!!」
「貧乏な店の癖に何処に金が……そう言えば美しい黒髪の娘をアイツの店で見たと聞いたな」
「貴族と結婚でもしたのかしら! でもあの店にそんな貴族が来ると思う!?」
「あの……私、会いました……その……元婚約者の今の婚約者に」
「へぇ……何で会いに行ったのかは、そうかセンジュを受け取りに行ったんだね」
「ええ、でもその時にはもう支払い済みでセンジュも来れなかったの」
「ッチ。間の悪い」
「でも聞いた話だと、その今の婚約者がお金を融通しているらしくって。それで今生活を立て直しているみたいなの」


 そう、あの後頭に来てあっちこっちにツケのある場所に話しをしに行った。
 でも翌日には「ああ、きっちりツケを返して貰ったよ」と皆笑顔で、絶対ツケ支払いまでお金は無いと思っていたのに、そこすらも余裕がある感じだった。
 その上給湯器まで………。


「まぁいい、兎に角仕事を貰って来ないと……。今頃予定ならセンジュがする筈だった仕事は何とか捌けたから借金はこれ以上膨らまない筈だ。なぁ、ナナリー。君は営業がとても上手いがやりすぎだ。これでは君に店を潰されてしまう所だったんだぞ?」
「ご、ごめんなさい」
「貧乏神が来たもんだねって話していたくらいさ」
「母さん」
「っ!」


 私が貧乏神ですって!?
 信じられない! そんな話をしていたの!?
 そう思ってテリーを睨みつけると顔を背けられた。
 今まで沢山「愛してる」って言ってくれたのに……嘘だったの!?


「兎に角、もう銀も金も無い……あるのは銅鉱石くらいだ。明日は冒険者ギルドで買いに行かないと……」
「でも今とっても高いって聞いたわ」
「高くても仕入れないと仕方ないだろう?」
「そうだけど……」
「しかも今年の末にある王室付与師コンテストに最高の付与をしないといけないって言うのに、宝石も石も何もかもが不足してるんだ……。目新しい付与だって考えないといけないのに頭が痛いよ」
「目新しい付与はもう殆ど出尽くしてるからねぇ」
「新しい視点、新しい刺激がないと降ってこないんだ。愛程度じゃそんなアイディアすら湧かないって事なのか?」
「ひ、酷いわ! そこまで言う事ないじゃない!」
「そうは言うけどね? アンタはあれ欲しいコレ欲しいって言うばかりで、テリーの仕事手伝ったことあるかい? いつも友達とお茶会だとか言って碌に話も持ってこないじゃないか」
「そ、それは」
「遊んでないで、仕事の手伝いくらいしな? じゃないと、婚約破棄させるしかなくなるよ」
「こ、婚約破棄ですって!?」
「2回も婚約破棄されたんじゃ次は貰い手ないだろうな……。いや、3回目くらいまでならギリギリ」
「ちょっとテリー! 私と婚約破棄なんてしないわよね!?」
「そ、それは君次第さ! 甘えるだけの女なんて要らないし、仕事の取り方も分からないような婚約者なんていらないよ。貧乏神じゃないか!」
「酷い……」
「兎に角、今後は俺の仕事にも手伝ってくれ。いいね?」
「……」


 なんで?
 何で私がそこまで働かなきゃいけないのよ。
 仕事だって取って来たじゃない!!
 そりゃ作るのが遅れてマイナスだし、借金も少し出来たけど……。
 あーあ。大口依頼でも舞い込んでくれば違うんだけど、そうもいかないのよね。
 女性向けのアクセサリーを主とする付与師のテリー相手には、女性の顧客が結構ついているけど、それでも足りない。

 アルメリアさんが生きていた頃は色々新商品が飛び出してたけど……そう言えばアルメリアさんと同じ着物姿で黒髪よね?
 アルメリアさんの血筋の人かしら?
 ううん、今はそんな事どうでもいいわ。
 兎に角何かいい付与とか考えないと……。
 でも私はそう言うアイディアを出すのが大嫌いなのよね!!

 その日は無言で料理を食べてサッサと眠り、翌朝商業ギルドに仕事が無いか聞きに行った。
 テリーは冒険者ギルドに行って鉱石を買ってくるって言っていたし、また借金が増えちゃう。
 売れれば確かに儲けになるけれど。
 溜息をつきつつ中に入ると、職員の人たちが私を見る目がとても厳しい。
 ここ最近特に厳しいわ。何でかしら?
 悪い事なんてしてないのに。


「あの、オーパールの者ですが、仕事の斡旋を」
「お引き取りを」
「あの、本当に何でもいいんです。出来れば女性向けが良いんですが」


 そう頼み込むと、別の受付の人たちがコソコソと私の話をしていた。
 私何か本当にやらかしたのかしら……。
 すると――。


「この度、ナナリーさんには仕事を斡旋しないと商業ギルドマスターがお決めになりました」
「………え?」
「オパールの方々にそうお伝えください」
「え、待って? 私何をやらかしたんですか?」
「分からないんですか? ギルドマスターの贔屓にしている方に無礼を働いたそうですね? ギルドマスターはとてもお怒りですよ?」
「え!?」
「何故贔屓にしているのかはお教えする事は出来ませんが、兎に角貴女相手の商売は禁ずると決定したんです。引き取り下さい」
「ま、待って!? どうして!? どういう事!!」
「理解する脳すらない。本当に救えませんね。職員の方、この人を摘まみだして」


 そう言うと男性の警備員が走ってきて外に放り出されて転がる。
 そんな対応されるとは思わなくて震えていると、鉱石を買ってきたテリーが走ってきた。


「ナナリーどうしたんだい!? まるで追い出されるみたいに見えたよ?」
「テリー……もう私相手には商業ギルドは仕事をしないって言われて」
「何でまた……どうして!?」
「知らないわよ! ギルマスの贔屓にしている客に無礼を働いたって聞いたけど、私そんな事なんてしてないわ!!」
「ナナリー……」
「ううっ どうしたらいいの……っ」


 この付与師が貴重な中で、何とか付与師と結婚出来たらラッキーな国で、もう商業ギルドから仕事を斡旋して貰えなかったら冒険者酒場にでも行って働くしかないじゃない!!
 あんな乱暴者ばかりの中で働くなんて無理よ!!


「ほとぼりが冷めるまで、ナナリーは実家に帰るといい」
「え?」
「荷物は送ってあげるから、取り敢えず商業ギルドの事は大変な事だよ? 両親に相談しておいで」
「そ、そうね……分かったわ」


 そう言うと立ち上がって服を叩き、荷物は後で送ると言う事だったので実家に帰り、事の内容を伝えると流石の両親も驚いていた。
 家の両親は彫金師だ。
 下請けとも言われる彫金師なんてダサいと思ってたけど、私にはそのスキルすら無かった。
 付与師のスキルも、彫金師のスキルも無くて、スキルに関して言えば「貧相」と言われるしかないスキルしかなかったけれど、見た目の可愛さで何とかカバーしていた。


 それなのに……数日後、テリーから婚約破棄された。
『商業ギルドを出入り禁止にされるような娘は要らない』と言う尤もな断り方だった。


「ナナリー……流石に2回の婚約破棄はきついわ。もう次は無いのよ?」
「婚約は3回までと言う暗黙の了解があるからね」
「分かってるわよ……」


 分かっているけれど、もう私も25歳。
 26歳までに結婚しないといけないのに、次があるかどうか分からない。
 彫金師だけは嫌って何時も言っていたけれど、このままだと彫金師くらいしか結婚相手が出来ないかもしれない。
 寧ろ彫金師すら危ういわ。


「もう……どうして?」


 そう呟いてもどうしようもなくて。
 一体誰が贔屓相手だったのかなんて忘れていて。
 私は一人部屋に閉じこもる事が多くなっていった――。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。

向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。 幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。 最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです! 勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。 だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!? ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。 というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。 私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。 だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。 戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

【完結】没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。 王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。 戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。 彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。 奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、 彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。 「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」 騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。 これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。

役立たず聖女見習い、追放されたので森でマイホームとスローライフします ~召喚できるのは非生物だけ?いいえ、全部最強でした~

しおしお
ファンタジー
聖女見習いとして教会に仕えていた少女は、 「役立たず」と嘲笑され、ある日突然、追放された。 理由は単純。 彼女が召喚できるのは――タンスやぬいぐるみなどの非生物だけだったから。 森へ放り出され、夜を前に途方に暮れる中、 彼女は必死に召喚を行う。 呼び出されたのは、一体の熊のぬいぐるみ。 だがその瞬間、彼女のスキルは覚醒する。 【付喪神】――非生物に魂を宿らせる能力。 喋らないが最強の熊、 空を飛び無限引き出し爆撃を行うタンス、 敬語で語る伝説級聖剣、 そして四本足で歩き、すべてを自動化する“マイホーム”。 彼女自身は戦わない。 努力もしない。 頑張らない。 ただ「止まる場所が欲しかった」だけなのに、 気づけば魔物の軍勢は消え、 王城と大聖堂は跡形もなく吹き飛び、 ――しかし人々は、なぜか生きていた。 英雄になることを拒み、 責任を背負うこともせず、 彼女は再び森へ帰る。 自動調理、自動防衛、完璧な保存環境。 便利すぎる家と、喋らない仲間たちに囲まれた、 頑張らないスローライフが、今日も続いていく。 これは、 「世界を救ってしまったのに、何もしない」 追放聖女の物語。 -

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

処理中です...