石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

文字の大きさ
13 / 106

13 作って貰った【体感温度を下げる付与】はオリジナル付与!? アクセ売れますね!!

しおりを挟む
「兄上、良かったですね!」
「ああ!」
「それと、一つご依頼があるんですが良いですか?」


 そう言ってお団子にしていた簪を取り、それを見せると二人は首を傾げていた。
 此方の世界に来た時につけていた、母の形見の簪だ。


「愛用している簪なんですが、これをプラチナか銀で作れます?」
「作れるが、付与する内容は? 宝石は何にする?」
「日差しを感じにくくするか、遮るみたいな付与って難しいですよね?」
「この地域は日差しが強いですからね。母上も持っていましたし作れますよ」
「本当ですか!?」
「ええ、意外と女性にとってはポピュラーな付与なので作れます。他のアクセサリーもあれば作りましょうか?」
「でも、宝石のついた髪ゴムとかはなぁ……」
「確か姉上はシュシュ? とか言うのを持っていましたよね? それに隠れるみたいに宝石を入れ込んで作れば作れますよ」
「それは有難いです。シュシュ持ってきますね」
「その間に簪を作っておくよ」
「ありがとう御座います」
「兄上、宝石は何が良いでしょうねぇ」


 そんな声を聴きつつシュシュを着物に合わせて買ったので5つほど持ってくると、布地への定着作業も出来ると言う事だったのでお願いした。
 無論彫金の技も必要だが、二人は私の為に色々今日は尽くしてくれたおかげで、髪留めには日差し防止の付与がされてホッとする。


「あ――助かりますぅぅ!! ギルドに行くまでの間が本当に苦痛だったので」
「少し距離がありますからね」
「早速髪留め付けさせて貰いますね」


 そう言って新しく作って貰った簪でお団子を作り、簪にはプラチナに軽量付与がされていて、石には大粒のルビーを使っており、シッカリとUV対策が施されていた。
 他のシュシュにも布地の所に小さな宝石を埋め込む円形の台座が付いていて、そこにカッティングしたダイヤを使ったUV対策。
 これで日差しに負けない私が爆誕したのだ!

「これは有難いです……。もうダリルシェイドについてから日差しの強さが大変で」
「でしょうね」
「そう言えばお父様は?」
「今お風呂の工事に付き添っています」
「おお、今日からお風呂のお湯が使えるわね!」
「あのスーッとする入浴剤は神アイテムですよ……」
「アレは良かったなぁ……」
「ふふっ ダリルシェイドでは必須アイテムですね」
「お昼は俺が作ります。野菜だけお願い出来ますか?」
「ええ、【お取り寄せ】ですね」


 こうして私とセンジュ君が台所に移動すると、その様子を嬉しそうに見ているエンジュさんには気が付かず、ただ過ごしやすくなった事にホッとしながら野菜を各種出したりして冷蔵庫に入れたり、お肉も入れたりしながら過ごした。
「昼が出来るまでは兄上と」と言われ、真剣に色々作業をするエンジュさんの前に座り、私も加工の技術を上げる作業をする。
 すると――。


「身体は楽だろうか?」
「え? ええ、とても楽です。やはり体まだ慣れてない事もあって……この涼しさはホッとしますね」
「良かった……。初めてちゃんとしたものを作れたよ」
「ふふ、これからは色々彫金しないとですね」
「ああ、これからスキルも上げつつ頑張る。でも、さっき言った体感の付与は初めて聞いたから、良かったらこれからもセンジュにアドバイスを与えてくれないか?」
「それは構いませんよ」


 そう会話しながら加工レベルを上げるんだけれど、中々上がらない。
 気分転換に違う事をしようかなと思い「ステータスオープン」と口にするとブオンッという音と共に私のスキルが出て来た。
 どれどれ……。

【石スキルレベル:鉱石加工レベル7・宝石加工レベル4・貴金属加工レベル4・宝石細工2】

 うーん、上がりにくいな……。やっぱり回数個数を重ねないと駄目ね。
 まだまだスタートラインだし頑張らなきゃ。
 でも【宝石細工】って言わば【カッティングスキル】の事よね。
 コツコツ上げていたら別のスキルが生えたでござる。
 でも、凄いカッティングとかあるって聞いたし、頑張りたいな。
 これからもスキル上げ頑張ろう。


「付与師の付ける付与の事例あげた本とか無いんですか?」
「一子相伝のもあるから早々ないな」
「なるほど」
「それこそ、さっきの体感温度が下がるなんて付与は誰かに教えたりしちゃいけない。アレは絶対に売れる付与だ」
「ほお……これ一つで幾らくらいするんでしょう」
「紫ヒスイ自体希少価値が高いんだ。それだけで金貨200枚はすると思う」
「ひえ」
「今は石も入ってこないし貴金属も高いから仕方ない」
「な、なるほど」
「それに体感温度を下げる石は大きめの石じゃないと出来ないらしい。詳しくは分からないがセンジュはそう言っていたな」


 は――……奥が深いわ。
 これに魔物素材とかも使う時があるんでしょう?
 付与師って凄いのね……無論その台座だってキッチリ作れないとモノにならないけど。


「その……婚約指輪は出来れば付けて欲しい」
「え、付けますよ?」
「一応5になったから……作ろうと思えば作れるんだが」
「婚約指輪ですか?」
「あ、ああ」


 頬を染めてそう告げるエンジュさんに、私は頬を染めて笑顔になった。
 途端目を見開いてこちらを見てくるエンジュさんに「そうですね! どんな石がいいかな!」と喜ぶと嬉しそうに微笑んでくれた。


「誕生石が丁度いいが」
「私一月なのでガーネットですね」
「店の名前もガーネットだから縁起がいいな」
「なら、質のいいガーネット出せるようになったら作って貰って良いです?」
「ああ」
「実は宝石加工スキルをゲットしまして。それのスキルも上げたいのでもう暫く待って下さい」
「分かった。納得のいくものが出来たら作るよ」
「はい!」


 こうして私の当面の目標は、ガーネットを沢山出してスキルを上げ、更にガーネットを加工することで宝石加工スキルを上げることに決まった。
 ガーネットは色々な付与に使われるらしく、重宝するのだとか。
 すると店のドアが開きお父様が帰ってきた。


「ふう、昼前に何とか風呂の工事が終わったぞ」
「やった――!」
「ユリ、さっきのネックレスと簪を父上に見せてやってくれ」
「はーい」
「お、何か作ったのか」
「はい、作って頂きました!」


 そう言って簪を取って手渡すと、UVカットな魔法付与にお父様は「アルメリア……」と涙ぐみ、ネックレスを見せると驚かれた。


「いや、待て、この大粒のルビーも凄いがその紫ヒスイも希少価値だぞ!」
「出しました!」
「そうか、出したのか! なら仕方ないな!」
「こちらのヒスイには体感温度を下げる付与と、ダイヤに涼しい風を感じる付与をして貰いました」
「それはまた……オリジナル付与じゃないか」
「作って欲しいと言ったのはユリだ。それを付与したのはセンジュだが。父上、これは売れるぞ」
「ああ、売れるな……」
「店内今何もないですもんね」
「今から沢山作るさ。ユリも沢山宝石や石を出して欲しい」
「はい!」
「賑やかな店に戻ると良いな……本当にあの娘と婚約させたばかりに家が一気に傾いて」
「貧乏神だったんですね。その方の今いる店大丈夫でしょうか?」
「さてな? まぁうちには福の神が来た訳だが」


 そう言って私を撫でるエンジュさんに私も微笑むと、素敵な笑顔を見せてくれた。
 何でも、戦争の所為で全く貴金属は手に入らないのでスキル上げも出来ないし、宝石もあるにはあるが質が良い物は買えなかったらしく、かなり苦労したらしい。
 うう……我が家が苦労人達すぎるっ!
 頑張らなきゃ!! 頑張って幸せにしてあげなきゃ!!

 その日の夜、忘れていたと思い出し連絡用の魔道具を机に置き、便箋を購入して手紙を書き始めた。
 此方の世界の文字って書けるのかなって思ったら意外と書けた。オプション的になっているんだろうか?


「えーっと、ダンさんには無事就職出来て、商業ギルドと冒険者ギルドで契約した事書かないとね」


 その事も加えて戦争がどうなっているのかも不安だと言う事を書きて封をして送り、ノヴァ様はまだ到着してないだろうと思って書くのは止めた。
 取り敢えずダンさんだけにでも無事を知らせたかったのだ。
 返事が来ないと言う事は忙しいのだろう。
 それならばと寝ることにし、涼しい気持ち良さの中でグッスリと眠ったその頃――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。

向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。 幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。 最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです! 勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。 だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!? ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

処理中です...