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14 元婚約者side「貧乏神が来たもんだね」
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――元婚約者side――
その日、とある店では若い店主の怒鳴り声が響いていた。
それは私の今の婚約者テリーで、何時もは人当たりの良さそうなイケメンなのに、怒りに震えるその顔は恐ろしく醜かった。
「どうしてこうもキャンセルが続くんだ!!」
「可笑しいわね……本当にどうしてかしら? 今まで請け負っていた仕事がドンドンキャンセル来るなんて」
「商業ギルドも冷たい……俺達が何をしたって言うんだ!!」
言えない。
絶対に言えない。
私がセンジュを受け取りに行こうとした翌日には、商業ギルドに話が既に行っていて……私の勝手な動きの所為で商業ギルドを怒らせたかもなんて言えやしないわ!!
「折角ナナリーの元婚約者の店を潰せると思ったのに……あっちは今普通の暮らしをしているし、聞いたか? 今日は風呂場の給湯器まで買い替えたらしい」
「まぁ!!」
「貧乏な店の癖に何処に金が……そう言えば美しい黒髪の娘をアイツの店で見たと聞いたな」
「貴族と結婚でもしたのかしら! でもあの店にそんな貴族が来ると思う!?」
「あの……私、会いました……その……元婚約者の今の婚約者に」
「へぇ……何で会いに行ったのかは、そうかセンジュを受け取りに行ったんだね」
「ええ、でもその時にはもう支払い済みでセンジュも来れなかったの」
「ッチ。間の悪い」
「でも聞いた話だと、その今の婚約者がお金を融通しているらしくって。それで今生活を立て直しているみたいなの」
そう、あの後頭に来てあっちこっちにツケのある場所に話しをしに行った。
でも翌日には「ああ、きっちりツケを返して貰ったよ」と皆笑顔で、絶対ツケ支払いまでお金は無いと思っていたのに、そこすらも余裕がある感じだった。
その上給湯器まで………。
「まぁいい、兎に角仕事を貰って来ないと……。今頃予定ならセンジュがする筈だった仕事は何とか捌けたから借金はこれ以上膨らまない筈だ。なぁ、ナナリー。君は営業がとても上手いがやりすぎだ。これでは君に店を潰されてしまう所だったんだぞ?」
「ご、ごめんなさい」
「貧乏神が来たもんだねって話していたくらいさ」
「母さん」
「っ!」
私が貧乏神ですって!?
信じられない! そんな話をしていたの!?
そう思ってテリーを睨みつけると顔を背けられた。
今まで沢山「愛してる」って言ってくれたのに……嘘だったの!?
「兎に角、もう銀も金も無い……あるのは銅鉱石くらいだ。明日は冒険者ギルドで買いに行かないと……」
「でも今とっても高いって聞いたわ」
「高くても仕入れないと仕方ないだろう?」
「そうだけど……」
「しかも今年の末にある王室付与師コンテストに最高の付与をしないといけないって言うのに、宝石も石も何もかもが不足してるんだ……。目新しい付与だって考えないといけないのに頭が痛いよ」
「目新しい付与はもう殆ど出尽くしてるからねぇ」
「新しい視点、新しい刺激がないと降ってこないんだ。愛程度じゃそんなアイディアすら湧かないって事なのか?」
「ひ、酷いわ! そこまで言う事ないじゃない!」
「そうは言うけどね? アンタはあれ欲しいコレ欲しいって言うばかりで、テリーの仕事手伝ったことあるかい? いつも友達とお茶会だとか言って碌に話も持ってこないじゃないか」
「そ、それは」
「遊んでないで、仕事の手伝いくらいしな? じゃないと、婚約破棄させるしかなくなるよ」
「こ、婚約破棄ですって!?」
「2回も婚約破棄されたんじゃ次は貰い手ないだろうな……。いや、3回目くらいまでならギリギリ」
「ちょっとテリー! 私と婚約破棄なんてしないわよね!?」
「そ、それは君次第さ! 甘えるだけの女なんて要らないし、仕事の取り方も分からないような婚約者なんていらないよ。貧乏神じゃないか!」
「酷い……」
「兎に角、今後は俺の仕事にも手伝ってくれ。いいね?」
「……」
なんで?
何で私がそこまで働かなきゃいけないのよ。
仕事だって取って来たじゃない!!
そりゃ作るのが遅れてマイナスだし、借金も少し出来たけど……。
あーあ。大口依頼でも舞い込んでくれば違うんだけど、そうもいかないのよね。
女性向けのアクセサリーを主とする付与師のテリー相手には、女性の顧客が結構ついているけど、それでも足りない。
アルメリアさんが生きていた頃は色々新商品が飛び出してたけど……そう言えばアルメリアさんと同じ着物姿で黒髪よね?
アルメリアさんの血筋の人かしら?
ううん、今はそんな事どうでもいいわ。
兎に角何かいい付与とか考えないと……。
でも私はそう言うアイディアを出すのが大嫌いなのよね!!
その日は無言で料理を食べてサッサと眠り、翌朝商業ギルドに仕事が無いか聞きに行った。
テリーは冒険者ギルドに行って鉱石を買ってくるって言っていたし、また借金が増えちゃう。
売れれば確かに儲けになるけれど。
溜息をつきつつ中に入ると、職員の人たちが私を見る目がとても厳しい。
ここ最近特に厳しいわ。何でかしら?
悪い事なんてしてないのに。
「あの、オーパールの者ですが、仕事の斡旋を」
「お引き取りを」
「あの、本当に何でもいいんです。出来れば女性向けが良いんですが」
そう頼み込むと、別の受付の人たちがコソコソと私の話をしていた。
私何か本当にやらかしたのかしら……。
すると――。
「この度、ナナリーさんには仕事を斡旋しないと商業ギルドマスターがお決めになりました」
「………え?」
「オパールの方々にそうお伝えください」
「え、待って? 私何をやらかしたんですか?」
「分からないんですか? ギルドマスターの贔屓にしている方に無礼を働いたそうですね? ギルドマスターはとてもお怒りですよ?」
「え!?」
「何故贔屓にしているのかはお教えする事は出来ませんが、兎に角貴女相手の商売は禁ずると決定したんです。引き取り下さい」
「ま、待って!? どうして!? どういう事!!」
「理解する脳すらない。本当に救えませんね。職員の方、この人を摘まみだして」
そう言うと男性の警備員が走ってきて外に放り出されて転がる。
そんな対応されるとは思わなくて震えていると、鉱石を買ってきたテリーが走ってきた。
「ナナリーどうしたんだい!? まるで追い出されるみたいに見えたよ?」
「テリー……もう私相手には商業ギルドは仕事をしないって言われて」
「何でまた……どうして!?」
「知らないわよ! ギルマスの贔屓にしている客に無礼を働いたって聞いたけど、私そんな事なんてしてないわ!!」
「ナナリー……」
「ううっ どうしたらいいの……っ」
この付与師が貴重な中で、何とか付与師と結婚出来たらラッキーな国で、もう商業ギルドから仕事を斡旋して貰えなかったら冒険者酒場にでも行って働くしかないじゃない!!
あんな乱暴者ばかりの中で働くなんて無理よ!!
「ほとぼりが冷めるまで、ナナリーは実家に帰るといい」
「え?」
「荷物は送ってあげるから、取り敢えず商業ギルドの事は大変な事だよ? 両親に相談しておいで」
「そ、そうね……分かったわ」
そう言うと立ち上がって服を叩き、荷物は後で送ると言う事だったので実家に帰り、事の内容を伝えると流石の両親も驚いていた。
家の両親は彫金師だ。
下請けとも言われる彫金師なんてダサいと思ってたけど、私にはそのスキルすら無かった。
付与師のスキルも、彫金師のスキルも無くて、スキルに関して言えば「貧相」と言われるしかないスキルしかなかったけれど、見た目の可愛さで何とかカバーしていた。
それなのに……数日後、テリーから婚約破棄された。
『商業ギルドを出入り禁止にされるような娘は要らない』と言う尤もな断り方だった。
「ナナリー……流石に2回の婚約破棄はきついわ。もう次は無いのよ?」
「婚約は3回までと言う暗黙の了解があるからね」
「分かってるわよ……」
分かっているけれど、もう私も25歳。
26歳までに結婚しないといけないのに、次があるかどうか分からない。
彫金師だけは嫌って何時も言っていたけれど、このままだと彫金師くらいしか結婚相手が出来ないかもしれない。
寧ろ彫金師すら危ういわ。
「もう……どうして?」
そう呟いてもどうしようもなくて。
一体誰が贔屓相手だったのかなんて忘れていて。
私は一人部屋に閉じこもる事が多くなっていった――。
その日、とある店では若い店主の怒鳴り声が響いていた。
それは私の今の婚約者テリーで、何時もは人当たりの良さそうなイケメンなのに、怒りに震えるその顔は恐ろしく醜かった。
「どうしてこうもキャンセルが続くんだ!!」
「可笑しいわね……本当にどうしてかしら? 今まで請け負っていた仕事がドンドンキャンセル来るなんて」
「商業ギルドも冷たい……俺達が何をしたって言うんだ!!」
言えない。
絶対に言えない。
私がセンジュを受け取りに行こうとした翌日には、商業ギルドに話が既に行っていて……私の勝手な動きの所為で商業ギルドを怒らせたかもなんて言えやしないわ!!
「折角ナナリーの元婚約者の店を潰せると思ったのに……あっちは今普通の暮らしをしているし、聞いたか? 今日は風呂場の給湯器まで買い替えたらしい」
「まぁ!!」
「貧乏な店の癖に何処に金が……そう言えば美しい黒髪の娘をアイツの店で見たと聞いたな」
「貴族と結婚でもしたのかしら! でもあの店にそんな貴族が来ると思う!?」
「あの……私、会いました……その……元婚約者の今の婚約者に」
「へぇ……何で会いに行ったのかは、そうかセンジュを受け取りに行ったんだね」
「ええ、でもその時にはもう支払い済みでセンジュも来れなかったの」
「ッチ。間の悪い」
「でも聞いた話だと、その今の婚約者がお金を融通しているらしくって。それで今生活を立て直しているみたいなの」
そう、あの後頭に来てあっちこっちにツケのある場所に話しをしに行った。
でも翌日には「ああ、きっちりツケを返して貰ったよ」と皆笑顔で、絶対ツケ支払いまでお金は無いと思っていたのに、そこすらも余裕がある感じだった。
その上給湯器まで………。
「まぁいい、兎に角仕事を貰って来ないと……。今頃予定ならセンジュがする筈だった仕事は何とか捌けたから借金はこれ以上膨らまない筈だ。なぁ、ナナリー。君は営業がとても上手いがやりすぎだ。これでは君に店を潰されてしまう所だったんだぞ?」
「ご、ごめんなさい」
「貧乏神が来たもんだねって話していたくらいさ」
「母さん」
「っ!」
私が貧乏神ですって!?
信じられない! そんな話をしていたの!?
そう思ってテリーを睨みつけると顔を背けられた。
今まで沢山「愛してる」って言ってくれたのに……嘘だったの!?
「兎に角、もう銀も金も無い……あるのは銅鉱石くらいだ。明日は冒険者ギルドで買いに行かないと……」
「でも今とっても高いって聞いたわ」
「高くても仕入れないと仕方ないだろう?」
「そうだけど……」
「しかも今年の末にある王室付与師コンテストに最高の付与をしないといけないって言うのに、宝石も石も何もかもが不足してるんだ……。目新しい付与だって考えないといけないのに頭が痛いよ」
「目新しい付与はもう殆ど出尽くしてるからねぇ」
「新しい視点、新しい刺激がないと降ってこないんだ。愛程度じゃそんなアイディアすら湧かないって事なのか?」
「ひ、酷いわ! そこまで言う事ないじゃない!」
「そうは言うけどね? アンタはあれ欲しいコレ欲しいって言うばかりで、テリーの仕事手伝ったことあるかい? いつも友達とお茶会だとか言って碌に話も持ってこないじゃないか」
「そ、それは」
「遊んでないで、仕事の手伝いくらいしな? じゃないと、婚約破棄させるしかなくなるよ」
「こ、婚約破棄ですって!?」
「2回も婚約破棄されたんじゃ次は貰い手ないだろうな……。いや、3回目くらいまでならギリギリ」
「ちょっとテリー! 私と婚約破棄なんてしないわよね!?」
「そ、それは君次第さ! 甘えるだけの女なんて要らないし、仕事の取り方も分からないような婚約者なんていらないよ。貧乏神じゃないか!」
「酷い……」
「兎に角、今後は俺の仕事にも手伝ってくれ。いいね?」
「……」
なんで?
何で私がそこまで働かなきゃいけないのよ。
仕事だって取って来たじゃない!!
そりゃ作るのが遅れてマイナスだし、借金も少し出来たけど……。
あーあ。大口依頼でも舞い込んでくれば違うんだけど、そうもいかないのよね。
女性向けのアクセサリーを主とする付与師のテリー相手には、女性の顧客が結構ついているけど、それでも足りない。
アルメリアさんが生きていた頃は色々新商品が飛び出してたけど……そう言えばアルメリアさんと同じ着物姿で黒髪よね?
アルメリアさんの血筋の人かしら?
ううん、今はそんな事どうでもいいわ。
兎に角何かいい付与とか考えないと……。
でも私はそう言うアイディアを出すのが大嫌いなのよね!!
その日は無言で料理を食べてサッサと眠り、翌朝商業ギルドに仕事が無いか聞きに行った。
テリーは冒険者ギルドに行って鉱石を買ってくるって言っていたし、また借金が増えちゃう。
売れれば確かに儲けになるけれど。
溜息をつきつつ中に入ると、職員の人たちが私を見る目がとても厳しい。
ここ最近特に厳しいわ。何でかしら?
悪い事なんてしてないのに。
「あの、オーパールの者ですが、仕事の斡旋を」
「お引き取りを」
「あの、本当に何でもいいんです。出来れば女性向けが良いんですが」
そう頼み込むと、別の受付の人たちがコソコソと私の話をしていた。
私何か本当にやらかしたのかしら……。
すると――。
「この度、ナナリーさんには仕事を斡旋しないと商業ギルドマスターがお決めになりました」
「………え?」
「オパールの方々にそうお伝えください」
「え、待って? 私何をやらかしたんですか?」
「分からないんですか? ギルドマスターの贔屓にしている方に無礼を働いたそうですね? ギルドマスターはとてもお怒りですよ?」
「え!?」
「何故贔屓にしているのかはお教えする事は出来ませんが、兎に角貴女相手の商売は禁ずると決定したんです。引き取り下さい」
「ま、待って!? どうして!? どういう事!!」
「理解する脳すらない。本当に救えませんね。職員の方、この人を摘まみだして」
そう言うと男性の警備員が走ってきて外に放り出されて転がる。
そんな対応されるとは思わなくて震えていると、鉱石を買ってきたテリーが走ってきた。
「ナナリーどうしたんだい!? まるで追い出されるみたいに見えたよ?」
「テリー……もう私相手には商業ギルドは仕事をしないって言われて」
「何でまた……どうして!?」
「知らないわよ! ギルマスの贔屓にしている客に無礼を働いたって聞いたけど、私そんな事なんてしてないわ!!」
「ナナリー……」
「ううっ どうしたらいいの……っ」
この付与師が貴重な中で、何とか付与師と結婚出来たらラッキーな国で、もう商業ギルドから仕事を斡旋して貰えなかったら冒険者酒場にでも行って働くしかないじゃない!!
あんな乱暴者ばかりの中で働くなんて無理よ!!
「ほとぼりが冷めるまで、ナナリーは実家に帰るといい」
「え?」
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「そ、そうね……分かったわ」
そう言うと立ち上がって服を叩き、荷物は後で送ると言う事だったので実家に帰り、事の内容を伝えると流石の両親も驚いていた。
家の両親は彫金師だ。
下請けとも言われる彫金師なんてダサいと思ってたけど、私にはそのスキルすら無かった。
付与師のスキルも、彫金師のスキルも無くて、スキルに関して言えば「貧相」と言われるしかないスキルしかなかったけれど、見た目の可愛さで何とかカバーしていた。
それなのに……数日後、テリーから婚約破棄された。
『商業ギルドを出入り禁止にされるような娘は要らない』と言う尤もな断り方だった。
「ナナリー……流石に2回の婚約破棄はきついわ。もう次は無いのよ?」
「婚約は3回までと言う暗黙の了解があるからね」
「分かってるわよ……」
分かっているけれど、もう私も25歳。
26歳までに結婚しないといけないのに、次があるかどうか分からない。
彫金師だけは嫌って何時も言っていたけれど、このままだと彫金師くらいしか結婚相手が出来ないかもしれない。
寧ろ彫金師すら危ういわ。
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