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王女殿下、追放
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「っ!! エレナ様! な、何が…何があったのですか!?」
「その前に、水で濡らしたタオルと、氷嚢を作ってきてもらえるかしら」
悪いことなんてしてないのにコソコソと侯爵家の馬車まで戻り、熱湯紅茶をかけられた場所には冷たいタオルを、たんこぶには氷嚢で冷やそうと、ソフィーに厨房まで走ってもらうことにした。
「それで、どうされたのですか?」
「たんこぶも火傷も、お茶会の相手にやられたの。ねぇ、ソフィー? この火傷、痕に残るかしら?」
「そんなっ! 火傷痕は大丈夫です。料理人が愛用している火傷に効く塗布薬があるので、必ず治します!」
「ふふ。心強いわ。ありがとう、ソフィー」
塗布薬がほしいのはもちろんだけど、ちょうど今お父様が王都に来ている。今日のことはできるだけ早く報告したかったのもあって、学園の寮ではなく侯爵家の王都邸へと馬車を走らせた。
*
*
家令からの連絡で王都邸に到着したお兄様と共に、お父様の執務室へと向う今、お兄様のシスコンが炸裂中。
「許せない」
「あの、お兄様? ちょっと離れてくださいませ」
「エレナ! なんて酷いことを言うんだ。お茶会に行くと今日になって知らされ、また酷いことを言われやしないかとずっと心配していたんだよ? そんな日に緊急で呼び出された俺の気持ちが分かるかい? 痛みは? まだ痛むか?」
「それは…心配かけてごめんなさい。早めに冷やせたお陰で痛みはもうありません」
でもね、後ろから抱きしめられながら歩くのってすっごく歩き辛いの。お兄様じゃなくルーク様なら……って、こんな時に私ったら何考えてるのかしら。
「エレナ? 顔が赤いよ? 熱が出てきちゃったのかな」
「だ、大丈夫です。それにもし熱があったとしても、報告を後回しにはできません」
「無理はしちゃダメだからね?」
結局執務室の前までお兄様に抱きしめられてしまった。なんだかなぁ。
「ライナス…」
「なんです? 父上、エレナは熱があるので早く話を進めましょう。さぁエレナ、お兄様にもたれなさい」
「………」
あーあ。お父様、呆れて頭を抱えちゃったじゃない。学園に入ってからシスコン具合が落ち着いていたのにコレだものね…。でも今日に関しては私も心配かけた自覚があるし、お兄様に甘えられるのもあと少しだから…ご希望通りもたれてあげよう。
……決して私がブラコンだからじゃないよ?
報告を終え、お兄様と一緒に部屋に戻ると、早々にベッドに寝かされてしまった。どうやら本当に熱があったみたい。
さすがお兄様ね、というべきなのか…。
*
*
そして驚くことに3日間も熱が下がらず、私が寝ている間にここ数ヶ月の悩みが一気に解決していた。
コンコン
「エレナ? 入るよ」
「っ!! ちょ、ちょっと待ってください」
えっ!? えっ!? 今のってルーク様よね?
待って待って。私、この3日間湯浴みをしていないのよ!? それに顔も髪もぐちゃぐちゃだし…ソ、ソフィーを呼ばなきゃ!!
「失礼いたします」
「ちょっ! ってソフィー」
「はい、ソフィーです。ルーク様には応接室でお待ちいただいていますのでご安心ください。準備が整い次第お呼びしましょう」
せっかく来ていただいたのだし、私が応接室に行くよって伝えたら全力で拒否られてしまった。病み上がりだから私が移動する必要はないらしい。きっとお兄様の指示ね。
「とはいえルーク様にお会いする前に顔と髪を整えたいかと思いまして」
「さすがね」
「好きな人には可愛い姿で会いたいってやつですね」
「っ!! ソフィー気付いてたの?」
ふふ、じゃないわよ。私ってそんなに分かりやすいのかしら?
準備が整い、ベッドの上で起き上がって待っていると、慌てた様子で部屋に入ってきたルーク様。
「エレナっ!」
私に駆け寄り、優しく抱きしめてくれるルーク様は、今まで見たことがないくらいに憔悴している。私の前髪や後髪を持ち上げ、額や顔、首に火傷の痕が残っていないかを確認し、ようやく安堵のため息を吐かれた。
「本当に良かった…」
「ご心配おかけしました」
私の肩に隠すように顔を埋めたルーク様は……今にも泣きそうだった。こんな事になるなら、お茶会の招待が来た時点でお兄様かルーク様に相談すればよかったわ。
「ルーク様、目の下にくまができています。ちゃんと眠れていますか?」
「いや。心配で心配で…全く眠れなかったんだ」
不謹慎だけど…こんなにも心配してくださるなんて、ちょっと嬉しいかもしれない。
「怪我をした上体調も悪くなったし、仕方ないと分かってはいるんだ。でもエレナに何かあった時、一番に俺を頼って欲しいと、今回のこともライナスではなくエレナから聞きたかったと、そう思ってしまう自分も許せなかったんだ」
「ルーク様…」
ダメだわ。いつも頼りになるルーク様が弱っている姿を見て、可愛いなんて思ってしまう。
しばらく抱きしめられたまま過ごし、落ち着きを取り戻したルーク様からあの後の話を聞かせてもらった。
「実はね、王女殿下が帰国されることになったよ。もちろん、我が国の第三王子殿下との婚約も白紙だ」
「えっ!!」
どうやら王女であるサナ様を迎えに来た騎士が、あの後王太子殿下に報告をしたそう。なんでも侯爵令嬢である私が、王女とのお茶会の場で紅茶まみれになっているにも関わらず、その事が城内で一切話題にならないことを不思議に思ったようだ。
「あの騎士は王太子殿下付の近衛だったのですね」
「あぁ。それに学園在学中は友人として共に過ごしていたそうだよ」
騎士からの報告があった直後にお父様から至急で謁見の申込みがあり、以前から相談を持ちかけていたこともあって、陛下も含めて話し合いを行い、結果王女殿下に沙汰を下すことになったそう。
「来国されたばかりの頃とは人が変わったようだ、と王族の皆様も思っていたそうだ」
「それはきっと、中々お兄様を手に入れられなかったからでしょうね」
「だろうね」
本当はお兄様狙いだって事も詐欺行為に当たるけど、私の証言しかないから問題にできなかったみたい。録音や録画機器があればに立派な証拠になったんだろうけど、この世界にはカメラすらないものね。
「元々あちらの強い希望で結ばれた婚約だったし、侯爵令嬢への暴力も看過できない。婚約は問題なく白紙にできたから、エレナは何も心配することないよ」
「はい。お気遣いありがとうございます」
王女との婚約がなくなったとはいえ、第三王子殿下の婚約者が元通りになることはないそう。
「何もしていないとはいえ、協力関係になってしまったことに変わりないからね」
元婚約者の令嬢も第三王子殿下も可哀想だけど、これは声をかけられた時点で先に相談しなかった伯爵家の落ち度。自国より他国の王族の言う事を優先しちゃうのは良くないし、残念だけど自業自得。
それにしてもサナさんさぁ…被害者の私が言うことじゃないけど、本当、もっと色々バレないように動こうよ。
彼女には許し難いことをされたし国に帰ってくれて良かったとしか思わないけど、お米の存在を教えてくれた事だけは感謝するわ。国に帰ったら幽閉されちゃう可能性もあるけど、もっと王族らしく振る舞いなね。
「その前に、水で濡らしたタオルと、氷嚢を作ってきてもらえるかしら」
悪いことなんてしてないのにコソコソと侯爵家の馬車まで戻り、熱湯紅茶をかけられた場所には冷たいタオルを、たんこぶには氷嚢で冷やそうと、ソフィーに厨房まで走ってもらうことにした。
「それで、どうされたのですか?」
「たんこぶも火傷も、お茶会の相手にやられたの。ねぇ、ソフィー? この火傷、痕に残るかしら?」
「そんなっ! 火傷痕は大丈夫です。料理人が愛用している火傷に効く塗布薬があるので、必ず治します!」
「ふふ。心強いわ。ありがとう、ソフィー」
塗布薬がほしいのはもちろんだけど、ちょうど今お父様が王都に来ている。今日のことはできるだけ早く報告したかったのもあって、学園の寮ではなく侯爵家の王都邸へと馬車を走らせた。
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家令からの連絡で王都邸に到着したお兄様と共に、お父様の執務室へと向う今、お兄様のシスコンが炸裂中。
「許せない」
「あの、お兄様? ちょっと離れてくださいませ」
「エレナ! なんて酷いことを言うんだ。お茶会に行くと今日になって知らされ、また酷いことを言われやしないかとずっと心配していたんだよ? そんな日に緊急で呼び出された俺の気持ちが分かるかい? 痛みは? まだ痛むか?」
「それは…心配かけてごめんなさい。早めに冷やせたお陰で痛みはもうありません」
でもね、後ろから抱きしめられながら歩くのってすっごく歩き辛いの。お兄様じゃなくルーク様なら……って、こんな時に私ったら何考えてるのかしら。
「エレナ? 顔が赤いよ? 熱が出てきちゃったのかな」
「だ、大丈夫です。それにもし熱があったとしても、報告を後回しにはできません」
「無理はしちゃダメだからね?」
結局執務室の前までお兄様に抱きしめられてしまった。なんだかなぁ。
「ライナス…」
「なんです? 父上、エレナは熱があるので早く話を進めましょう。さぁエレナ、お兄様にもたれなさい」
「………」
あーあ。お父様、呆れて頭を抱えちゃったじゃない。学園に入ってからシスコン具合が落ち着いていたのにコレだものね…。でも今日に関しては私も心配かけた自覚があるし、お兄様に甘えられるのもあと少しだから…ご希望通りもたれてあげよう。
……決して私がブラコンだからじゃないよ?
報告を終え、お兄様と一緒に部屋に戻ると、早々にベッドに寝かされてしまった。どうやら本当に熱があったみたい。
さすがお兄様ね、というべきなのか…。
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そして驚くことに3日間も熱が下がらず、私が寝ている間にここ数ヶ月の悩みが一気に解決していた。
コンコン
「エレナ? 入るよ」
「っ!! ちょ、ちょっと待ってください」
えっ!? えっ!? 今のってルーク様よね?
待って待って。私、この3日間湯浴みをしていないのよ!? それに顔も髪もぐちゃぐちゃだし…ソ、ソフィーを呼ばなきゃ!!
「失礼いたします」
「ちょっ! ってソフィー」
「はい、ソフィーです。ルーク様には応接室でお待ちいただいていますのでご安心ください。準備が整い次第お呼びしましょう」
せっかく来ていただいたのだし、私が応接室に行くよって伝えたら全力で拒否られてしまった。病み上がりだから私が移動する必要はないらしい。きっとお兄様の指示ね。
「とはいえルーク様にお会いする前に顔と髪を整えたいかと思いまして」
「さすがね」
「好きな人には可愛い姿で会いたいってやつですね」
「っ!! ソフィー気付いてたの?」
ふふ、じゃないわよ。私ってそんなに分かりやすいのかしら?
準備が整い、ベッドの上で起き上がって待っていると、慌てた様子で部屋に入ってきたルーク様。
「エレナっ!」
私に駆け寄り、優しく抱きしめてくれるルーク様は、今まで見たことがないくらいに憔悴している。私の前髪や後髪を持ち上げ、額や顔、首に火傷の痕が残っていないかを確認し、ようやく安堵のため息を吐かれた。
「本当に良かった…」
「ご心配おかけしました」
私の肩に隠すように顔を埋めたルーク様は……今にも泣きそうだった。こんな事になるなら、お茶会の招待が来た時点でお兄様かルーク様に相談すればよかったわ。
「ルーク様、目の下にくまができています。ちゃんと眠れていますか?」
「いや。心配で心配で…全く眠れなかったんだ」
不謹慎だけど…こんなにも心配してくださるなんて、ちょっと嬉しいかもしれない。
「怪我をした上体調も悪くなったし、仕方ないと分かってはいるんだ。でもエレナに何かあった時、一番に俺を頼って欲しいと、今回のこともライナスではなくエレナから聞きたかったと、そう思ってしまう自分も許せなかったんだ」
「ルーク様…」
ダメだわ。いつも頼りになるルーク様が弱っている姿を見て、可愛いなんて思ってしまう。
しばらく抱きしめられたまま過ごし、落ち着きを取り戻したルーク様からあの後の話を聞かせてもらった。
「実はね、王女殿下が帰国されることになったよ。もちろん、我が国の第三王子殿下との婚約も白紙だ」
「えっ!!」
どうやら王女であるサナ様を迎えに来た騎士が、あの後王太子殿下に報告をしたそう。なんでも侯爵令嬢である私が、王女とのお茶会の場で紅茶まみれになっているにも関わらず、その事が城内で一切話題にならないことを不思議に思ったようだ。
「あの騎士は王太子殿下付の近衛だったのですね」
「あぁ。それに学園在学中は友人として共に過ごしていたそうだよ」
騎士からの報告があった直後にお父様から至急で謁見の申込みがあり、以前から相談を持ちかけていたこともあって、陛下も含めて話し合いを行い、結果王女殿下に沙汰を下すことになったそう。
「来国されたばかりの頃とは人が変わったようだ、と王族の皆様も思っていたそうだ」
「それはきっと、中々お兄様を手に入れられなかったからでしょうね」
「だろうね」
本当はお兄様狙いだって事も詐欺行為に当たるけど、私の証言しかないから問題にできなかったみたい。録音や録画機器があればに立派な証拠になったんだろうけど、この世界にはカメラすらないものね。
「元々あちらの強い希望で結ばれた婚約だったし、侯爵令嬢への暴力も看過できない。婚約は問題なく白紙にできたから、エレナは何も心配することないよ」
「はい。お気遣いありがとうございます」
王女との婚約がなくなったとはいえ、第三王子殿下の婚約者が元通りになることはないそう。
「何もしていないとはいえ、協力関係になってしまったことに変わりないからね」
元婚約者の令嬢も第三王子殿下も可哀想だけど、これは声をかけられた時点で先に相談しなかった伯爵家の落ち度。自国より他国の王族の言う事を優先しちゃうのは良くないし、残念だけど自業自得。
それにしてもサナさんさぁ…被害者の私が言うことじゃないけど、本当、もっと色々バレないように動こうよ。
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