推しの悪役令嬢を幸せにします!

みかん桜

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再び王女殿下とお茶会

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 全く待ち望んでいない日がやってきた。無能判断されたと思って安心していたのに、ついに王女殿下に呼び出されてしまったのだ。

「はぁぁ。何を言われるんだろう」

 物凄く帰りたい。何でこういう時ってスムーズに移動できてしまうんだろう。馬車が壊れるとか、王城の入口で止められるとか、そういうの期待していたのに。

「お待ちしておりました。ご案内いたします」
「ええ。お願い」

 王女様の気が変わってお茶会なくなりました、とかにならない………みたいね。案内された東屋には既に王女が席に着いているから。

「お待たせして申し訳ありません」
「いいから早く座りなさい」
「はい」

 むしろ気を使って少し遅れてきてよね。なんて言えないけど。

「何故ナターシャが予定と違う行動をしているの?」
「えっ!?」

 席に座った瞬間、いきなりそれですか。

「だからっ、なんでナターシャが攻略できてないのって聞いてるのよ」
「ハーロウ伯爵令嬢様は、お兄様と婚約関係になりたいと思っていないようですが…」
「それがなに?」

 えぇ……。

「ナターシャの気持ちなんてどうでもいいのよ。早くライナスを攻略してくれないと、私がライナスと婚約できないじゃない」

 色々と理解し難い…。お兄様との婚約は既定路線のように話しているけど、そもそも第三王子殿下の婚約者だって自覚ないの?

「私、協力してっていったわよね?」
「えっと…」
「転生者でもないくせに物語を変えるなんてありえないわ」
「そう言われましても…」

 王家も王家だよ。なんで婚約前にもっとちゃんと調べないかなぁ。

「去年はナターシャがライナス攻略に動いていたし、あなたもライナスと離れて兄離れをしていたから安心していたけど、全くナターシャに靡いてないじゃない」

 知らねーよって言いたいわ。

「お兄様やニーナ様と会う時間が中々取れず、お二人の近況を私はよく知らないのです」
「確かに…。今まで義姉になるからとニーナと仲良くしていたみたいだけど、ここ数ヶ月はニーナとの接触も控えているみたいね」

 この人…もしかしてずっと私に監視を付けてたの? ルーク様やお兄様に言われた通り、接触を控えておいてよかったわ。

「私に協力するって言ったんだから、ちゃんとしなさいよ」

 えぇっと、私って協力するって言ったっけ? 濁したよね?

「とりあえず、軌道修正なさい」
「あの…ちなみにですが、ハーロウ伯爵令嬢様からどのようにお兄様を奪う予定なのですか?」
「伯爵令嬢でしょう? なんとでもなるわ」

 おぉ、それはまた……力技で奪うってことなのね。でもそんな簡単に上手くいくとは思えないけど。

 ナターシャが譲る譲らないの前に、特に問題のない公爵令嬢との婚約を解消し伯爵令嬢と婚約。その時点で公爵家が黙っているはずがないし、更に伯爵令嬢との婚約も解消して我が国の王子の婚約者である他国の王女を奪うって…マーリン侯爵家終了しますが。

 そもそも、お兄様抜きにしたって今更ニーナ様を漫画通りの悪役令嬢になんてさせないわよ?

 ん? ちょっとまって? 王女殿下が何かしら問題行動を起こせば…第三王子殿下との婚約を解消できたりしちゃう? 国が絡むから難しいかしら? でもねぇ…この人お兄様を手に入れるためなら何でもしそうだし。
 正直なところ、ルーク様とナターシャの関係の方が私は気になっているのだけど。

「この1年で何とかなさい」

 おっと、危ない危ない。自分の世界に入り込んでしまっていたわ。

「1年ですか?」
「えぇ。だって卒業したらライナスが悪役令嬢と結婚しちゃうじゃない。好きでもない人と結婚させられるなんて、可哀想」

 お兄様はニーナ様を婚約者として大切にされているし、良い関係ではあると思うよ? そもそも貴族なんだから政略結婚なんて当たり前だし。なにより、まるでお兄様が王女殿下を好いているような言い方、やめてほしいわ。

「ちょっと! 聞いてるの!?」
「も、もちろんです」
「なら私が今なんて言ったか言ってみなさい」
「学園卒業後、お兄様がニーナ様と結婚すると…」
「聞いてないじゃない!」

 ゴンッ

「いたっ」

 えっ……今私、紅茶の入ったカップを投げつけられた? ちゃんと聞いていたのに? カップが額に当たってすごく痛い。紅茶が冷めていたのが不幸中の幸いね。

「っ! サナ様っ」

 あぁ…このメイド、名前で呼ぶことを許可されているのね。

 我が国の王宮では、メイドは給仕くらいしか主人と接点がない。そもそも殿下は母国から侍女を連れてきているしね。その侍女がメイドの態度を容認するほど、王女がこのメイドを気に入っているってことかしら。
 
「熱い紅茶が飲みたいわ」
「かしこまりました」

 拭く物を差し出すこともなく、着替えを誘導することもなく、私なんていないと思っているのか一切心配しないメイド。殿下専属でもないくせに。

 従順すぎる彼女がお気に入りなのね。

 はぁぁ。当たったところがたんこぶになってるじゃない。冷やせば治ると思うけど、前世と違って令嬢の怪我って悪いイメージが付いてしまうんだから! 本当やめてほしい。

 早く帰って冷やしたい。でもきっとまだ退席の許可をもらえないわよね。…なんて思っていたら、熱い紅茶を頼まれた先程のメイドが戻ってきた。嬉々としてカップに注ごうとしたメイドの手を止め、ティーポットを奪い取った王女。

「あなたは下がっていなさい」
「はい!」

 えっ? 何? なんでこっちに…何をする気なの!?

「きゃあ」

 あっつ! いくら身分が上だからってその行動は人としてどうなの? 王女が熱々の紅茶を私の頭に注ぎ始めたのだ。メイドも事前に知っていたのか、熱湯をかけられている私を楽しそうに見ている。

「で、殿下、お、おやめくださいっ」
「あなたが悪いのよっ!」

 いや、私は何も悪くない。熱湯をかけられるほど悪いことなんて一つもしてないじゃない。

「今後、努力いたしますのでっ」
「チャンスは長くあげたはずよ」
「今年中と先程っ」

 私が逃げられないよう腕を掴み、広範囲に火傷を負わせたいのか、ゆっくり的確に私に注いでくる。意地が悪すぎるわ。

「気が変わったわ。一ヶ月以内に何とかなさい。王族である私の話を聞いていなかったあなたが悪いのよっ!」

 何なのよこの人! 何で私がこんな目に合わなきゃいけないのよ。

「そもそもこの国にいるあなたが悪いのよ。ティーポットが小さかったことに感謝するのね」

 小説のように私が誘拐されなかった事を責められる筋合いなんてないわ!
 それにティーポットが小さいなんてことはない。だってどう見たって2人用の物ではなく、5~6人用の大容量のティーポットだから。

 全てをかけ終わったあと、一人の騎士が私達がいる東屋にやってきた。

「失礼いたします。王女殿下、そろそろお時間です」

 王女を呼びに来た騎士は私を見て一瞬驚いた顔をしていたけど、無視することに決めたみたい。仕方ないわよね。加害者と被害者が逆ならまだしも、この状況、自分を守るためには無視が一番正しいわ。

「すぐ行くわ。……いいわね、今度はちゃんとやるのよ」

 絶対火傷した。顔が痛いもん。たんこぶだけならまだ良かった。許しはしないけど痕は残らないから。火傷は…痕が残らないと言いけど…。

 流石に我慢ならないわ。お兄様と、お父様にも報告しましょう。……一応、ルーク様にもお伝えしたほうがいいわよね。



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