3 / 71
席替えと変態とダチ
しおりを挟む「お、らっきー」
引いたくじの番号と、黒板に書かれた番号とを見て呟く。
今日は六時間目が自習になったので、席替えをする事になったのだ。
オレの新しい席は窓際の後ろから二番目。
一番後ろじゃないのは残念だけど十分良い席だ。
「いいなあ森。オレと変われよ」
「やーだね。つかお前ど真ん中かよ!可哀想ー」
「くっそー恨むぞ森」
「何でだよ」
ガタガタと机と椅子を移動させている最中に友人の佐木に声を掛けられる。
教卓の真正面に次いで嫌な席を当ててしまったらしい佐木に吹き出し大声で笑う。
ざまーみろ。
オレは自分のくじ運の良さにガッツポーズだ。
これはきっとあの変態に付き纏われているオレに対する神様からの贈り物だ。
神様ありがとう。
鼻歌を口ずさむ勢いでうきうきと移動する。
前は女子で、隣は確か変態と仲の良い奴だ。
さて、窓際最後尾の特等席をゲットしたのはどこのどいつか、と振り返り、固まった。
「……ゲ」
「あれ、前の席って森?」
何故なら物凄く嬉しそうな笑みを浮かべた変態こと高塚が机を移動していたからだ。
何でだ。
何でよりによってコイツだ。
せっかくの素敵昼寝スポットが台無しだ。
いらねえ、こんな偶然なんか全っ然いらねえ。
神様のばかやろう。
「らっきー!!これからは遠慮なくいちゃいちゃ出来るね森ちゃん!」
にこにこしてんじゃねえ。
こっちの心中はお前の笑顔とは全く正反対の位置にある。
「……誰か席変わってくんねえかな」
ぼそりと呟くと。
「あ、じゃあ私が……」
「森、諦めろ男らしくねーぞ!」
「……っ」
せっかく。
せっかく前の席のコが申し出てくれたのに。
誰だ今のセリフ言いやがったのは。
声の方を見ると、犯人は佐木。
他の連中をはやし立てていやがる。
あのやろうさっき笑った事根に持ってるな。
その女子ともどもそいつに殺気のこもった視線を寄越す。
結局はそこの席に決まってしまった。
ニヤニヤと笑っているのが気配でわかる。
「後ろから視線感じても心配すんなよ、オレだから」
「お前だから心配だ」
「森がオレのコト心配してくれるなんて……!」
「心配なのはオレの繊細な硝子のハートがテメェのそのねっとり絡みつく視線に耐えられるかどうかだボケ」
「じゃあそのハートが壊れないようにずーっと見守ってるね!」
「人の話を聞けえええ!!」
誰かコイツに理解力というものを躾てくれ。
マジで。
「高塚、ちょっと来いよ!」
「えーせっかく森といちゃいちゃしてんのにー」
「とっとと行け」
胸倉を掴みそうになったところで廊下側からお声がかかり、渋る高塚を無理矢理にそちらへ行かせた。
「ははっ、大変だなあ森ー」
大きな溜め息を吐きずるずると背もたれに凭れたところで、隣の奴が笑いながら言ってきた。
そう思うんならなんとかしてくれあのバカを。
「あ、ちゃんと話すの初めてだよな?オレ、石野。変態のダチ」
変態、という言葉に笑ってしまった。
オレも毎日言っているがまさかツレにまで言われるとは。
「はははっ、変態って!」
「その通りだろ?」
「確かに」
顔を見合わせ笑い合う。
なんだ、高塚の友達だから同じようなタイプだと思っていたのに良い奴じゃないか。
見た目は派手だが話しやすい。
というか、何だか波長が合うというか。
意外にも音楽の好みや好きなテレビが被っていて、話していて楽しい。
そういえば最近は高塚に追われて、周りとの会話もその事に集中していたからこういう会話は久しぶりだ。
凄い癒されている気がする。
隣が石野で良かった。
後ろはアレだけど。
「あー!ちょ、何森と話してんだよ!」
「あ?オレが誰と話そうが関係ねえだろ」
「はッ!!石野、もしかしてお前も森の事狙っ……」
「「お前と一緒にすんなボケ」」
「な……!?」
ツッコミのセリフが重なり再び顔を見合わせ笑い合う。
「ぶはっ、ハモってるし!」
「真似すんなよ森ー」
「どっちが!」
「な、な、なんなんだよハモっちゃってさ!仲良しかよ!何、オレだけ除け者!?森ってばオレというものがありながら!浮気者!!!」
「お前と付き合った覚えもなけりゃ浮気した覚えもねえっつんだ勘違い野郎」
はっ、と鼻で笑い冷たく言い放つ。
すると何を思ったか高塚は背後からオレの頭を抱え込むように抱きついてきて。
「こんなに愛してるのに!」
「抱きつくなー!!」
「ぐふっ……も、森の愛が痛いぜ……っ」
もちろんすぐさま鉄拳制裁。
腹に肘をめり込ませた。
女子からのブーイングが聞こえた気がしないでもないが、気にしちゃいられない。
顔の形が変わるくらい殴ったわけでもあるまいし、そもそも本人に大したダメージがないのだ。
気にするだけ無駄というもの。
「……お前マジで森の事好きなんだなあ」
今のやりとりを間近で見た石野が苦笑いを浮かべて言う。
「当然!手出すなよ?」
「出さねーよ。興味ねえし」
「……」
じと、と疑いの目を向ける高塚。
心配しなくても男のオレを口説きたがる頭イカレてる輩はお前くらいのものだ。
なんでもかんでも自分を基準に考えるんじゃねえ。
「でもさ、何で森?何かきっかけとかあったワケ?」
「え」
そういえば。
何で高塚はオレなんかに。
きっかけと言われてもオレに思い当たる節なんて全くない。
オレもつい気になって、石野共々高塚を見つめた。
「……っ」
視線がかち合った瞬間、高塚が物凄い勢いで顔を逸らした。
手で真っ赤になった顔の下半分を覆っている。
あれ、なんかこの光景前にも見た事があるような。
「……高塚?」
「やっばい……!」
「あ?」
「上目遣い……上目遣いやばい、超かわいっ」
「「………は?」」
言われれば確かに。
椅子に座った状態のオレと立ったままの高塚との視線が合えば、必然的に上目にはなる。
なるがしかし男の上目遣いなんかでそこまで顔を真っ赤にさせて悶える必要が一体どこにあるというのだ高塚。
戻ってこい。
正気に戻れ。
「やっばいマジもえた超可愛い最高今の森で余裕で五回はいけ」
「し、下ネタ反対!!!」
皆まで言う前にオレの声で掻き消す。
教室でなんて事言おうとしていやがるんだコイツは。
本当にもう誰かこいつをなんとかしてくれ。
もう何度思ったかしれないそんな思いにうなだれるオレの横で。
「……つーかきっかけは?」
「ナイショ」
「ははっ、何それうざ」
人差し指を唇に当て、ハートマークが飛び散らんばかりにウィンクをして答える高塚に対して冷静かつ満面の笑みでもって返す石野に、コイツとは仲良くなれそうだなと思った。
この時あっさりと流されてしまった、高塚がオレに惚れたきっかけ。
それをオレが知るのは、まだもう少し先の事。
end.
18
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~
上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。
ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。
「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」
そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。
完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか?
初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる