6 / 71
手は食べるものじゃありません
しおりを挟む昼休み。
一緒に食おうと誘ってくる高塚を押しのけ、友人の元へ行こうとしたら
「彼氏に悪いから」
となんともまあふざけた理由で突っぱねられた。
しかもあの野郎ども明らかに楽しみやがって。
頬に手当ててしな作ったって可愛くねえっつんだ。
その結果高塚に捕まり、ふてくされながら自分の席で食った。
元凶である変態は、前の席の女子に譲ってもらって正面でにこにこ一緒に食べたのは言うまでもない。
「へへっ、嬉しいなー森とランチー」
鼻歌でも歌いそうな勢い。
何が嬉しいだ何がランチだ告ってきてからどんな手回ししたのか悉く邪魔してきやがるくせに。
「玉子焼きうまそー」
「やらねえぞ」
「じゃあオレのカラアゲと交換しよ?」
「ぬあ!?何勝手に……!」
「はい、あーん」
「んぐ!?」
「わーっ、あーんってしちゃった!」
「ひにぇッ!!!」
「……っ!!!!!」
しね、と言おうとしたのだが口の中のカラアゲが邪魔をしてきちんと発音出来なかった。
それに対して奴は肩まで震わせて笑っていやがる。
ちくしょう。
「ひにぇって!ひにぇって……!も、まじやばっ、かわ……っっ」
「うっせッ!」
「ひにぇ……っ」
「い、石野まで……!」
傍らで石野にまで笑われて顔が赤くなるのがわかる。
あーちくしょう恥ずかしい。
「もういいよ死ぬまで笑ってろよちくしょうめ……」
男前二人にこうも爆笑されては立つ瀬がない。
ふてくされて黙々と飯を掻き食らう。
ん、今日も我が家の弁当はうまい。
母さんありがとう。
なんて思ってたら。
漸く笑いがおさまったらしい高塚にじっと見られている事に気付いた。
食べている姿を一方的に見られるのは居心地が悪い。
「なんだよ?さっさと食えよ」
「やー……なんかさ」
「何?」
「森の食い方ってえろいなーって思って」
「ぶ……っ!!!」
血迷った事を言い出した高塚に、盛大に噴き出してしまった。
「おわっ、きったねーな森」
「わ、わりっ……てか、何だって?」
石野の方にまで飛び散ってしまったものをティッシュで拭きながら、頬をひきつらせる。
聞き間違いでなければえろいと言わなかったか今。
しかも食い方って。
「んーとな、食う時にがばっと大口開けんのも良いんだけど」
大口開けて何が悪い。
男なんだからがつがついくだろう普通。
「閉じた時に、んってして唇の端っこ舐めんのとかがもうオレ的には超ツボ!」
「全然嬉しくねえ」
「しかもしかもその時にちらっと見える舌がなんとも」
「黙れマジでええ!!」
聞いたオレがバカだった。
バカ正直に嬉々として語る高塚に眉が寄り寒気が走る。
鳥肌立ったマジで。
「つか、キモイ」
「だってえろい森が悪い」
「オレが悪ィの!?今のってオレのせい!?」
「だってオレうっかり自分の舐められてる想像しちゃ」
「爽やかな昼日中に何てコト言いやがるつもりだあああ!?」
「もごっ」
とっさに高塚の口を手で塞ぐ。
ほんと、なんでこんな奴がモテるんだわけわかんねえ。
いくら顔が良くたってこんな真っ昼間から下ネタ言うような奴だぞしかも女子がいるのに堂々と恥ずかしげもなく。
信じらんねえ。
「良いか、言うなとは言わねえ。ただ時と場所を考えてもの言え今真っ昼間だどうしても言いてえなら小声でこっそりはな、」
そこまで言ったところで、ちゅっと。
手のひらにキスされた。
「っ、ぎゃあああああ!!!」
「隙あり」
「ばっ、おまっ、離せ!」
叫び手を離そうとするが手首を掴まれた。
「わ、森って手首ほっせーのな」
「うるせっ、オレが細ぇんじゃなくてお前の手がデカ………………!!??」
言葉はまたしても途切れてしまった。
そりゃ途切れるさ。
飲み込んでしまうさ。
何故なら、
「……っ」
細めた目線だけをこちらに寄越したまま。
オレの手首から指先までを、ゆっくりと。
な、なめ……!?
「っ、っ!?」
教室中が、しんと静まりかえる。
同じく一瞬フリーズしかけたが、ふいに周りから聞こえた黄色い声に我に返る。
「んなっ、何してんだああああ!!」
「ははっ、んまい」
「んなワケあるか!!!」
先程の比ではない寒気が体中を駆け巡る。
とっさに勢いのみで振り上げた拳はあっさりと止められてしまった。
むかつく。
「あれー、こっちの手も舐めて欲しい?」
「欲しくねえ!全然して欲しくねえ!!」
「まあしちゃうけどね」
「すんな!!!」
本当に唇を寄せてくるので腕を引いて少しでも距離を取る。
が、バカ力のせいで負けてしまいそう。
てゆうか何だ。
オレが何かしたか。
何だってこんな昼休みの教室で、他のクラスの奴だっているのにこんな変態に手べろべろ舐められなきゃならないんだ。
「は、な、せっ……つーのに……っ」
腕に全ての力を込めて抵抗しているからか声が上擦る。
「ああんっ、もう!森ちゃんたらえろボイス!たちそう!」
「マジ、しねよ変態……っ」
「ちゅーしたら嬉しすぎてイッちゃうかも」
そっちのイクじゃねえよと突っ込む間もなく。
一瞬のうちにうっとりとした顔が間近に迫り、迫ってきた分だけ、いやそれ以上に腕を突っ張り逃げる。
すると意外にも高塚はあっさりと逃がしてくれた。
「なあんてね」
「は?」
「無理にはしないよ」
にっこりと言いながら手を離され、間抜けな声を出してしまった。
なんだろう初めて高塚が変態でなくまともに見えた。
と、思ったのも束の間。
「初ちゅーはふたりっきりの時がいいもんね」
「――‥ッ!!」
すい、と耳元に唇を寄せられ、普段よりも低い声でそう囁かれた。
反射的に出た拳が変態の側頭部に見事入り窓に向かって吹き飛ぶまで、コンマ1秒。
end.
20
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~
上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。
ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。
「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」
そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。
完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか?
初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる