高塚くんと森くん

うりぼう

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大量ラブレター

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「もーりーちゃん」

何やら女子達ときゃっきゃしていた高塚が、ふふふー、と笑いながら近寄ってきた。
これはまた何かバカな事を考えている顔だ間違いない。

「はいこれ!」

そい言って差し出されたそれは、手の平に収まるくらいのハート。
もとい、ハート型に折られたピンク色の紙。

「……何これ」
「良いから読んで読んで!」
「えー?」

どうせろくでもない事が書いてあるのは一目瞭然。
しぶるが、尚も促されしつこさに根負け。
仕方がないなと思ったのだが。

上から見ても下から見ても斜めにしてみても開け方がわからない。
無理矢理に開けてしまえば破ってしまいそうだ。

「……」
「……森?」

眉を寄せ悩むオレに、高塚がどうかしたのかと問う。
どうかもなにも。

「……これどうやって開けんの?」
「っ、かわいいいいいッ!!」
「ぎゃあああああ!!!」

ちらりと伺った瞬間に抱き付かれ反射的に殴ってしまった。

「だ、だ、抱きつくなっつってんだろ!?」
「だってだって上目遣いに首傾げちゃってもおおおかわいいかわいいかわいい!」
「うぜええええ!」

というか首なんか傾げていない。
大体こんなのが可愛く見えるなんてこいつの目が相当おかしいとしか思えない。

「いいから開け方教えろよ!」
「えっとね、ここをこうして」
「おお、なるほど」

きれいに開けられたそれを再び手渡される。
読んでと言ったからには何か書いてあるのだろう。
何が書いてあるのかと目を通す。
書かれていたのはほんの一言。

「……………何だこれ」

思い切り顔をしかめて問うと、高塚はそれはもう素敵に輝いた笑顔でもって答えた。

「ラブレター!」
「…………は?」
「オレの気持ち!何回も読み返してね舐めるように!」
「……」
「ああああああああ!」

一瞬の間を置く事なく即座にそれを破った。
ビリビリではなくパンッと実に気持ちの良い音が鳴り、中央に書かれた「すき」の文字が真っ二つに割れる。

何が気持ちだ何が舐めるようにだふざけんな気持ち悪い。
大体たった二文字をどうやって舐めるように読めというんだ。

「ひ、酷!オレの気持ち受け取れないってゆーの!?」
「当たり前だろうが!」
「今までの事は嘘だったのね!?」
「妄想も大概にしろよ変態」
「っ、っ」

鼻で笑い吐き捨て、手紙だったものを投げつける。
すると、一瞬泣きそうになった高塚だったが立ち直りが早い。

「甘いな森ちゃん!」
「……まだあんのかよ」

新たにまた一つハートを出してきた。
二つも作ったのか。

「こんな事もあるかと思っていっぱい作ったんだ!ほら!」
「うっわ」

いっぱい、と言う通りに高塚のポケットからは小さな手紙が大量に出てきた。
良く見るとハートだけではなく、魚にワイシャツにいちご、それにリボンの形をしたものもある。

「何これ全部作ったの?」
「うん!頑張った!」
「……もしかして」

中身も全部同じなのだろうか。

「うん!全部オレの気持ち書いてあるよ!」
「うわーいらねー」
「え?何?毎日欲しい?」
「いらねえよ!なーにがラブレターだ告白すんなら直接言葉で言うのが一番だろうが!」
「直接言って欲しいの?」
「………ん?」

あれ、なんかおかしい事言ったかオレ。
そんなつもりなかったけれど高塚の雰囲気が変わったような。

「森」
「――‥」

目が合う。
いつになく真剣なそれを逸らせない。

「何」
「好き」

ぞわっと何かが背筋を伝う。

と、同時に女子からは大歓声。
そして男子からはひゅーひゅーとはやしたてる口笛。
教室中が爆発したみたいにうるさくなった。

当の本人はそんなの聞こえてないみたいにまた一歩こちらに歩み寄り続ける。

「森が好き、大好き」
「っ、っ」

これは駄目だ。
鳥肌が立った。

「好きだよ」
「……っ」
「ねえ、森」
「っ、だああああああああ気持ち悪いいいいいい!!」

何度も何度も告げる高塚の、オレを呼ぶ声を遮り叫んだ。

いくら高塚が学校一の色男だとしても無理。
どんなに真剣に見つめられようがどんなに色気たっぷりに好きだと言われようが相手は男だ気持ち悪い以外の何ものでもない。

「森ちゃんったら照れちゃって」
「照れてねえよボケえええええ!」

大量にあった小さな手紙達は謹んで受け取りを拒否したにもかかわらず、暫くの間、制服のポケットや鞄に下駄箱など至る所に忍び込ませられ、その処分に頭を悩ませたのは言うまでもない。










end.

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