高塚くんと森くん

うりぼう

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嬉し恥ずかし

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今日は嬉し恥ずかし、17歳の誕生日。

夜中、時計の針が12に差し掛かった瞬間にこれでもかとデコられたメールを受け取り、朝も朝でモーニングコールのようにおめでとうの電話がかかってきた。
差出人はもちろんこの男。

「森ちゃん、誕生日おめでとー!」
「……うわ」

朝一番でそう言いながら駆け寄ってくる高塚である。
その手には小振りだが可愛らしい、黄色と白をベースにした花束。
男相手にまさかの花束。
思わず出てしまった第一声を誰が咎められようか。

だがしかし、周りの反応は当然ながら違う。
特に女子。

「わーっ、綺麗!」
「作ってもらったの?」
「誕生日に花束なんてロマンチックー!」
「森くん愛されてるねー、羨ましい!」

きゃあきゃあと黄色い声をあげて取り囲まれた。
いや女子ならそうかもしれないけどオレだぞ?
花束なんて似合わないにも程があるだろ。

有無を言わさず手渡された花は確かに綺麗だけど。

「……てかお前今日そればっかだな」

朝からのお祝い攻撃にそう言うと。

「だって大事な日じゃん!」

臆面もなくそう言う高塚に言葉に詰まる。

嫌な訳じゃない。
誕生日を祝われるのは正直かなり嬉しいのだが、こんなにも大事に祝ってもらったのは小学校低学年以来だから照れる。

「あれ、森ちゃん照れてる?照れてる?顔赤い可愛いいいい!」
「ばっ、やめ!離れろ!」

ガッと頬を包まれ顔を覗き込まれ。
あまりの近さに、即座に腕を突っ張り高塚の顎を押す。

「ふふっ、ほんっと可愛いなあ森ったら!」
「可愛くねえから!」
「可愛い可愛い可愛い!」
「うるせえええ!」

バイト先でのあの一件以来、なんだか以前にも増して可愛いと言われている気がする。
いや、気がするどころか実際言われてんだけど。

あの後はなかなか赤みが引かなくて、やっと引いたと思って中に入り高塚の顔を見た途端にまた赤くなって。
結局ゆっくりなんて出来ないまま、飲むだけ飲んでさっさと帰ってしまった。

無意識に赤くなるもんだから始末に負えない。
なんだってこんなに高塚相手にどぎまぎしなければならないのか。
考えるとイラッとしてしまうが。

「森ちゃん?ほんとに怒っちゃった?」
「っ、怒ってねえよ」

ひょい、と再び間近に迫った高塚に、そう返すことしか出来ず。

(違う、高塚にどきどきしてんじゃねえ、男前な顔が近くにきたら誰だってどきどきするはずだ!そうだ!オレはおかしくない!)

以前キスをされそうになり、いくら綺麗でも男な時点で無理、と嗚咽を漏らしたのなどすっかり忘れ、そう言い訳をした。












そして放課後。

いつものように一緒に帰り、いらないというのに家の前まで送ってくれた高塚。
玄関の前で立ち止まり、じゃあなと声を掛けようとすると。

「あ、森ちゃん手出して」
「?手?」

なんだ、と思いつつ手を出す。
するとどこから取り出したのか、両手の平にちょうど納まる程の紙袋がその上に乗せられた。

「はい」
「へ?これ……?」

高塚と紙袋を交互に見る。

え、これって?
タイミング的には絶対に確実にそれしかないけれど。

「誕生日プレゼント」
「っ、え?」

言われ、オレの手元にやってきた紙袋をまじまじと見つめる。

ブランドとか全然わからないオレでもわかる、高校生が買うには明らかに高価そうな包み。
小遣いで買えるような代物ではないそれに、はっと気付く。

『欲しいものがあるんだよね』

そうにこやかに告げられたのは記憶に新しい。
なんでこんな中途半端な時期にバイトを始めたのかと思っていたが。

「あ……」

はっとする。

(まさか、欲しいものって)

いっぱい怒られて、覚えなきゃいけない事がありすぎて大変、なんて言っていたのに。
あんなに頑張って働いていたのに。

それが全てこれの為だったというのだろうか。

「……っ」

ぎゅうっと胸が締め付けられる。

「へへっ、お花はおまけ。こっちが本当のプレゼント」

渡せて良かった、とほっとしたように微笑む姿は紛れもなく男前。

「いらないなんて言わないでね?」
「!ばっ、言わねえよ!」

これでもかと心が込められているとわかっていて、そんな事言えるはずがない。
ないけど。

「?どうかした?」
「……いや、オレなんもしてないのに」

そう、オレは高塚の誕生日に何もしていない。
それどころかいつも通りに殴ったり蹴ったりなんかして、した事といえば街中で手を繋いで歩いたくらいだ。
恥ずかしすぎたけれど、あれしかしていないのに、こんなにまで祝ってもらうと申し訳なさが募る。

「気にしなくていいよ」
「でも」

こいつはいつもそうだ。
修学旅行の時にしろ今日にしろ、与える事に対して際限がなさすぎる。
それがオレにだけというのがわかっているから余計にやるせない。

「……」

唇を噛み締め、眉を落としてしまう。

「本当に気にしなくていいんだよ?オレがあげたいからやってるだけなんだし」

だからそうはいかないんだって。
それじゃオレの気が済まない。

どうしたらこいつが喜ぶのか、わからないわけじゃない。
自惚れではなく、オレが出来る事でこいつを喜ばすのなんて凄く簡単なことで。

「っ、も、森ちゃん!?」
「……」

ぼすっと、高塚の肩に頭を預けた。
預けたというよりも頭突きに近かったけれど。

途端にいつかと同じように慌て始める高塚。
それもそうだろう、オレからくっつくなんて普段だったらありえない。
むしろ皆無。

「え?え?あの、え?森ちゃん?」
「……」
「どうかした?え?あの」

相変わらずオレからの接触には弱いこいつに一瞬笑みが浮かぶ。
わたわたと手を上下させるのを横目にとらえ……

「……………ありがと」
「え」
「じゃあな!」

ぼそっと一言呟き、即座に離れ、脱兎の如く駆け出し。
背後で高塚の戸惑う声が聞こえたけど構わず屋内へと入る。

あんなほんの少しだけど、恥ずかしくて堪らない。
いつかのように、真っ赤になっているであろう顔。

(あー……やばい)

少し前から胸中に燻っている想いの正体が、すぐそこまできているような気がした。







end.

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