高塚くんと森くん

うりぼう

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後ろの抱っこちゃん

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答えが見えてきそうな気がした矢先。

「席替え!?やだやだ森と離れるなんてやだー!!!」

空き時間にくじ引きの準備万端でやってきた担任のセリフにいち早く反応したのは真後ろの高塚。
そういえば一度したっきりでずっと同じ席だったから、てっきりこのまま最後まで行くのかと思ってた。

「しょうがないだろー、いっつも同じ顔触れじゃ飽きるんだよ先生だって」
「飽きるとか言わないで先生!オレ全然飽きてないから!むしろ足りないくらいだから!」
「はーい、じゃあ端から順番にくじ引きにおいでー」
「スルー……!スルーされた……!」

絶対移動したくないという高塚の願い虚しく担任が促す。
以前意気投合したはずだが(脳味噌のしわ~参照)それはそれ、これはこれ、らしい。
席替えが避けられないと悟るや否や。

「やだやだ離れたくないよ森ちゃん!」
「ばっ、やめろ!」

がばりと背後から抱きついてくる高塚。
反射的に手を突っ張るが離れない。

「森ちゃんんん」
「……っ」

それどころかぐりぐりと背中に頬擦りをされ、鼓動がひとつ大きく跳ね上がり。
かきり、と緊張で身体が固まってしまった。
嫌で気持ち悪くてとかではなく、恥ずかしくて。
何故恥ずかしいのかは、なんとなく今はまだ気付きたくないので考えない事にする。

「離せって!」
「やだ離れたくない!」

そうこうしているうちに順番があっという間に回ってきた。

「森ー、後ろの抱っこちゃん連れてさっさとおいでー」
「ほら行くぞ!」
「あ!」

くっついたままでいいから早く来いと手招きをする担任に、高塚を力任せに引っ剥がして一人教壇前に向かう。
どうせ後ろからすぐ着いてくるのだろうという予想通り、高塚はすぐさま追い付き再び覆い被さってきて、オレを挟んだまま最後の紙を抜き取った。

「重い!離れろ!」
「やーだー。てか森ちゃんどこになった?見せて見せて!」
「あー?」

言われて手元の紙と黒板に書かれた番号を照らし合わせ。

「「……あ」」

高塚とオレと。
二人の声が重なった。













新しい席は窓際隣の前から二番目。
しかも前の席は。

「おー、森。またよろしくな」
「うん、よろしく石野」

そう、石野である。
前回までの隣といい、石野とは縁があるようだ。

そして一方高塚はというと。

「森ちゃあああん遠いよおおお!!」
「うっさい!静かにしろ!」

廊下側の一番端、後ろから二番目である。
オレとは軽く対角線上で、まあ遠いといえば遠い。
最後に残されていた二枚がまさかこんなに離れているとは。
ちなみに高塚の隣には佐木がいる。

「ちょ、佐木、森ちゃんと席変わってもらってよ!」
「いやあ、変わってあげたいのは山々なんだけどさあ、森が譲らないんだよねー」
「ちっ、じゃあ石野!オレと席変わって!」
「やだ。面倒」
「石野の馬鹿あああああ!!!」
「……おーい、授業始めていいかー?」

すでにみんなが席を移動し終えた後な上にどっかりと座ってしまっていた石野がそう返すと、盛大に嘆く高塚。
その声に、休み時間が終わり、やってきた教師の小さい訴えが被せられた。

「……」

新しい席はなんだか慣れない。
まだ一時間も座っていないんだから当たり前といえば当たり前なんだけど。

後ろの席にあいつがいるはずもないのに。
見ているはずもないのに。
ちょっかいをかけられている訳でもないのに。

(……なんか、むずむずする)

背中がむずむずする。

今にも背後から手を伸ばされそうな。
声をかけられそうな、そんな感じ。

(いや、別に、して欲しいわけじゃねえけど)

むしろ妙なちょっかいをかけられなくて良いはずなのに。
なんでこんな事を考えてしまうのだろうか。

『森ちゃん』

(……え?)

ふいに呼ばれた気がした。
いやまさかと思い、反射的に後ろを振り返ると。

「……っ」


真後ろを振り返る前に遥か遠くに感じる高塚が目に入り。
しかも向こうもこちらを見ていたらしく。

「(森ちゃーん!)」

周りに聞こえないようにオレの名前を呼び、手を振る高塚。

してない。
どきっとなんかしてない。
なんかちょっと鼓動が速まった気がするけど気のせいだ。

一瞬の内にそう考え、思い切り無視してしまった。

(……今のは、感じ悪いか?)

と、少し気になって直後にちらりと盗み見る。

「……」

机に両手をつき頭を項垂れ、あからさまに落ち込んでいる高塚。
オレが無視しただけであんなに素直な反応をする高塚に、オレはつい……

「ふっ」

ちょっと可哀想だけれど可愛いかも、と頬が緩んでしまった。
しかし直後。

(っていやいやいや!可愛くねえから!ねえよ!)

そんな血迷った考えに、即座に頭を横に振った。

一連の流れを見ていた佐木にからかわれるのは、授業が終わってすぐのことだった。









end.


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