37 / 71
後ろの抱っこちゃん
しおりを挟む答えが見えてきそうな気がした矢先。
「席替え!?やだやだ森と離れるなんてやだー!!!」
空き時間にくじ引きの準備万端でやってきた担任のセリフにいち早く反応したのは真後ろの高塚。
そういえば一度したっきりでずっと同じ席だったから、てっきりこのまま最後まで行くのかと思ってた。
「しょうがないだろー、いっつも同じ顔触れじゃ飽きるんだよ先生だって」
「飽きるとか言わないで先生!オレ全然飽きてないから!むしろ足りないくらいだから!」
「はーい、じゃあ端から順番にくじ引きにおいでー」
「スルー……!スルーされた……!」
絶対移動したくないという高塚の願い虚しく担任が促す。
以前意気投合したはずだが(脳味噌のしわ~参照)それはそれ、これはこれ、らしい。
席替えが避けられないと悟るや否や。
「やだやだ離れたくないよ森ちゃん!」
「ばっ、やめろ!」
がばりと背後から抱きついてくる高塚。
反射的に手を突っ張るが離れない。
「森ちゃんんん」
「……っ」
それどころかぐりぐりと背中に頬擦りをされ、鼓動がひとつ大きく跳ね上がり。
かきり、と緊張で身体が固まってしまった。
嫌で気持ち悪くてとかではなく、恥ずかしくて。
何故恥ずかしいのかは、なんとなく今はまだ気付きたくないので考えない事にする。
「離せって!」
「やだ離れたくない!」
そうこうしているうちに順番があっという間に回ってきた。
「森ー、後ろの抱っこちゃん連れてさっさとおいでー」
「ほら行くぞ!」
「あ!」
くっついたままでいいから早く来いと手招きをする担任に、高塚を力任せに引っ剥がして一人教壇前に向かう。
どうせ後ろからすぐ着いてくるのだろうという予想通り、高塚はすぐさま追い付き再び覆い被さってきて、オレを挟んだまま最後の紙を抜き取った。
「重い!離れろ!」
「やーだー。てか森ちゃんどこになった?見せて見せて!」
「あー?」
言われて手元の紙と黒板に書かれた番号を照らし合わせ。
「「……あ」」
高塚とオレと。
二人の声が重なった。
*
新しい席は窓際隣の前から二番目。
しかも前の席は。
「おー、森。またよろしくな」
「うん、よろしく石野」
そう、石野である。
前回までの隣といい、石野とは縁があるようだ。
そして一方高塚はというと。
「森ちゃあああん遠いよおおお!!」
「うっさい!静かにしろ!」
廊下側の一番端、後ろから二番目である。
オレとは軽く対角線上で、まあ遠いといえば遠い。
最後に残されていた二枚がまさかこんなに離れているとは。
ちなみに高塚の隣には佐木がいる。
「ちょ、佐木、森ちゃんと席変わってもらってよ!」
「いやあ、変わってあげたいのは山々なんだけどさあ、森が譲らないんだよねー」
「ちっ、じゃあ石野!オレと席変わって!」
「やだ。面倒」
「石野の馬鹿あああああ!!!」
「……おーい、授業始めていいかー?」
すでにみんなが席を移動し終えた後な上にどっかりと座ってしまっていた石野がそう返すと、盛大に嘆く高塚。
その声に、休み時間が終わり、やってきた教師の小さい訴えが被せられた。
「……」
新しい席はなんだか慣れない。
まだ一時間も座っていないんだから当たり前といえば当たり前なんだけど。
後ろの席にあいつがいるはずもないのに。
見ているはずもないのに。
ちょっかいをかけられている訳でもないのに。
(……なんか、むずむずする)
背中がむずむずする。
今にも背後から手を伸ばされそうな。
声をかけられそうな、そんな感じ。
(いや、別に、して欲しいわけじゃねえけど)
むしろ妙なちょっかいをかけられなくて良いはずなのに。
なんでこんな事を考えてしまうのだろうか。
『森ちゃん』
(……え?)
ふいに呼ばれた気がした。
いやまさかと思い、反射的に後ろを振り返ると。
「……っ」
真後ろを振り返る前に遥か遠くに感じる高塚が目に入り。
しかも向こうもこちらを見ていたらしく。
「(森ちゃーん!)」
周りに聞こえないようにオレの名前を呼び、手を振る高塚。
してない。
どきっとなんかしてない。
なんかちょっと鼓動が速まった気がするけど気のせいだ。
一瞬の内にそう考え、思い切り無視してしまった。
(……今のは、感じ悪いか?)
と、少し気になって直後にちらりと盗み見る。
「……」
机に両手をつき頭を項垂れ、あからさまに落ち込んでいる高塚。
オレが無視しただけであんなに素直な反応をする高塚に、オレはつい……
「ふっ」
ちょっと可哀想だけれど可愛いかも、と頬が緩んでしまった。
しかし直後。
(っていやいやいや!可愛くねえから!ねえよ!)
そんな血迷った考えに、即座に頭を横に振った。
一連の流れを見ていた佐木にからかわれるのは、授業が終わってすぐのことだった。
end.
0
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~
上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。
ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。
「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」
そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。
完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか?
初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる