高塚くんと森くん

うりぼう

文字の大きさ
42 / 71

普通の友達

しおりを挟む


あれから数日。

「……最近高塚の奴来ねえなあ」
「……っ」

ぼそりと呟いた石野のセリフがぐさりと突き刺さる。

確かに、毎時間のようにやってきていた高塚が、ここ数日は全くと言っていいほど来ていない。
避けるまでもなく、会えていないのだ。

「やっぱり飽きちゃったのかねー」

ぼそりと呟く石野。
自分から避けておいてなんだが、こうして高塚が会いに来ない事にもやもやとしたものが溜まっていく。

「……別に、クラスが違うんだからいつも入り浸ってる訳にはいかないだろ」

そうだ。
元々こっちのクラスに入り浸っていた方がおかしいのだ。
だからあいつが来なくたって良いじゃないか。

もやもやを誤魔化すように、そう言った。














意味ありげな視線を寄越してくる石野といるのがいたたまれなくて、そそくさと廊下に出ると。

「……あ」

またしても高塚を見かけた。
隣には以前にも教室で一緒にいた女の子の姿。

(……またあの子と一緒かよ)

明らかに好意を持たれているのに、二人きりでいるなんて。
オレの所には来ないくせに。

(……って、何考えてんだよ!)

自分の考えに即座に突っ込みを入れる。

別に来なくたっていいじゃないか。
来なくてせいせいする。
せいせいする、はずなのに。

膨れ出すもやもやは、一体何なのだろうか。

「ねえねえ、高塚くんって彼女いないの?」
「え?彼女?いないよー」
「ほんと?!」

そしてそんな二人の聞きたくもない会話を壁に凭れながら聞くこの虚しさ。

盗み聞きなんかでは断じてない。
オレの行きたい方向にあいつらがいて、そこで止まってるのが悪いんだ。

なんて、誰に言っているんだかわからない言い訳を心の中でした瞬間。

「そういえば、森くんって子と噂になってなかった?」
「……!」

自分の名前が出てきた事に驚く。

「森ちゃん?」
「うん。付き合ってるの?」

無邪気に問う彼女。

オレはというと、高塚がどう答えるのかわからずに思わず更に聞き耳をたててしまった。

まさか口説いてるとか言わないよな?
そんな誰だかわからない奴に、好きだとか言わないよな?
なんて思ってしまったが。

「……ううん、付き合ってないよ」
「!じゃあ普通の友達?」
「うーん、まあ、そうなるかな?」
「……っ」

そんな心配は無用だったようだ。
普通の友達だと訊ねる彼女の言葉に、僅かに首を傾げながらだが高塚は確かにしっかりと頷いた。
同時に、何故だかガッカリとした気分が襲ってくる。

(普通の、友達?)

高塚が頷いた言葉に妙な引っかかりを感じる。

そして更に……

「えーじゃあさ、じゃあ私なんてどう?付き合わない?」

なんて言う彼女。
きゃっきゃとしていて断られるなんて微塵も感じていないその言葉。
さらりと言えるそんなセリフ。
オレには絶対に言えないセリフだ。

「え?」

高塚が驚いたような声を出す。
けれどオレはそれ以上二人の会話を聞いてなんていられなくて、すぐその場から走り去ってしまった。

付き合ってはいない。
オレと高塚は普通の友達であることに間違いはない。

確かにそうなんだけど。

(……なんだこれ……っ)

もやもやが更に膨らみ、それにイライラも加わる。

高塚は何て返事をしたのだろうか。
聞いていないんだから当然知らない。
知らないけど知りたいと望んでしまっている自分もいる。

(……くそっ)

走ったからなのか。
それとも高塚の言葉にショックを受けたからなのか。

ばくばくと激しく脈打つ心臓の鼓動は、しばらく治まってくれそうになかった。





終わり
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

【完結】君の穿ったインソムニア

古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。 純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。 「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」 陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...