5 / 8
4のその後
しおりを挟む(三木視点)
ガタッ
「……」
春日が秋吉くんをトイレに連れ去った後、一つ大きな音がして静かになった。
成り行きを見守っていた店内の客が固唾を飲む。
あれだけ騒いでいたのだ、中で一体何が行われているのかが気になってしまうのだろう。
それが強面の春日と気弱そうな秋吉くんだから尚更。
(……ありゃちゅーの一つは確実だな)
ずずずー、とジュースを飲みそんな事を思う。
そもそもキスしようとしたのをオレが止めたからトイレに籠もったのだから。
止めなかったら、目の前でキスどころか服の中に手突っ込むくらいはするんじゃないかといった雰囲気を醸し出していた。
あのまま見ていても面白いといえば面白かったのだが、あいにく男同士の絡みを見てニヤニヤする趣味はない。
それにしても、春日も珍しいタイプに手を出したものだ。
どう見たって地味で真面目な眼鏡の男にしか見えないのにどこが良いのだろうか。
以前直接聞いた時はあいつもわかっていなかったみたいだけれど、どうやらいつの間にかふっきれていたようだ。
(べたぼれだねー)
隣に座っていたから気付かなかったみたいだけれど、秋吉クンがハンバーガーを口にした時のあの表情といったらもう。
あんな愛おしそうな可愛くて堪らないみたいな目は初めて見た。
そもそも春日が誰かに奢るなんて事すら見るのは初めて。
ついでにちゃっかりオレまでご相伴に預かってしまってラッキー。
(さあてどうするかなあ)
このまま置いて帰った方が春日が大喜びなのはわかるのだが、秋吉くんの鞄を放置していくわけにはいかない。
春日の鞄はどうせほぼ何も入ってないから知らん。
(あ、鞄だけ中に突っ込んで帰っちゃうか。いや、でも邪魔したら後が怖いしなあ)
鞄を届けに(といってもトイレだけど)行って、ちょうどいちゃいちゃしてる真っ最中だったらそれこそ明日の日は拝めない。
(うーん)
どうするのが得策か考えていると。
ゴンッ
ガンッ
ガチャガチャッ
「……お」
静まりかえっていたトイレからの音が響き、何人かがびくりと肩を震わせた。
ますます何が起こっているのかが気になるのだろう。
秋吉くんが殴られてるとか思っている人もいるかもしれない。
ガチャッ、バンッ!
目を向けると同時にドアが開いた。
「……あーらら」
中から出てきたのは秋吉くん。
眼鏡がずれて顔が真っ赤で目は潤んでいて制服が多少乱れている。
ああやっぱり襲ってたか。
ほんとに服に手突っ込んだか。
我慢しろよせめてちゅーまでにしとけよバ春日め。
「秋吉くん!」
「!」
一目散に逃げようと出口へ向かう姿に声を掛けると同時に、振り返った秋吉くんに彼の鞄を投げる。
「えっ、うわ!?」
「ナイスキャーッチ。頑張って逃げな」
「っ、あ、ありがと!」
眼鏡だから反射神経鈍いかと思ってたら意外と良いようだ。
「テメェ、三木!余計な事すんな!」
「ははっ、春日くんこわーい」
「!!!」
続いて出てきた春日の吠える声に脱兎の如く逃げるのを再開する秋吉くん。
猛ダッシュである。
「あ!コラ秋吉待ちやがれ!」
「うっせえばーか!誰が待つかセクハラ野郎!ばーか!」
「ばかばか言うんじゃねえええ!!!」
「ついてくんなああああああ!」
二人の声がドップラー効果で段々と小さくなるのを聞きながら、オレもその場を立ち去る。
改めて、オレでもたまに本気で怖いあの春日に、あそこまで悪態吐ける秋吉くんって凄いと思った。
翌日、怒り心頭の春日に鞄を渡すと同時に拳骨を戴いたのは言うまでもない。
end
66
あなたにおすすめの小説
彼らは××が出来ない
庄野 一吹
BL
少女漫画の悪役として転生した主人公は、自分が最低な悪役にならないため画策することにした。ヒーロー達がヒロインに惚れさえしなければ、自分が悪役になることは無い。なら、その機会を奪ってしまえばいいのだ。
僕は何度でも君に恋をする
すずなりたま
BL
由緒正しき老舗ホテル冷泉リゾートの御曹司・冷泉更(れいぜいさら)はある日突然、父に我が冷泉リゾートが倒産したと聞かされた。
窮地の父と更を助けてくれたのは、古くから付き合いのある万里小路(までのこうじ)家だった。
しかし助けるにあたり、更を万里小路家の三男の嫁に欲しいという条件を出され、更は一人で万里小路邸に赴くが……。
初恋の君と再会し、再び愛を紡ぐほのぼのラブコメディ。
知らないうちに実ってた
キトー
BL
※BLです。
専門学生の蓮は同級生の翔に告白をするが快い返事はもらえなかった。
振られたショックで逃げて裏路地で泣いていたら追いかけてきた人物がいて──
fujossyや小説家になろうにも掲載中。
感想など反応もらえると嬉しいです!
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
華麗に素敵な俺様最高!
モカ
BL
俺は天才だ。
これは驕りでも、自惚れでもなく、紛れも無い事実だ。決してナルシストなどではない!
そんな俺に、成し遂げられないことなど、ないと思っていた。
……けれど、
「好きだよ、史彦」
何で、よりよってあんたがそんなこと言うんだ…!
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる