平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

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「いや~映画面白かった!!」

「そうだね、よかったね」

カフェに入って、感想を言い合った。
謎めいた事件に意外な犯人。見事な伏線回収に拍手したくなる。
僕はひたすらテンションが上がっていた。

「俳優さん、超かっこよかった…!」

「………」

「すごいなぁほんとにすごいなぁ」

「………いつまで褒める?」

「?」

あれ、なんか顔が怖い。さっきまで楽しそうだったのに。

「……ごめんね。俺は今、その俳優さんに嫉妬してるんだ。光希から、あんなに褒められて……胸がざわついて、落ち着かない」

……え?嫉妬?この人が?
完璧超人みたいな隼人くんが、そんな子どもみたいなこと言うなんて。
かっこいい上に、そういう可愛いところあるんだ。
……反則じゃないか。

「あはは。そんなことだったんだ。大丈夫だよ!隼人くんが一番かっこよくてかわいい!」

そう言ったら、彼は恥ずかしそうに目を逸らした。
その横顔に、変な胸のドキドキが走った。

――そこへ。

「あっれぇ、ハヤトじゃん。」

振り返ると、派手めな女の人。
ギャルだ。僕は条件反射で姿勢を小さくした。

「……なに?」

「ちょ、つれなーい。あんなにイチャイチャしたじゃん!誰この人?」

「……恋人だけど?」

「え、ハヤト男もいけたの?やば笑」

えっ、えっ。なに今の。僕の心臓が跳ねた。
間違いない、昔の関係者だ。隼人くん、
いいなぁ。僕なんて一年付き合ってるのに、まだキスすらないのに。この女の人は抱かれたのだろうか。
……ずるい。

「いいだろう…帰ってくれ」

「わかったわ、ったく大学生になってキャラ変しやがって。
また連絡するから遊ぼうね、あんたが一番上手かったし」

去っていく女の背中を見送って、僕は頭が真っ白になっていた。
“上手かった”って……どういう意味?いや、意味は分かるけど――想像したくない。
彼の手が、彼の声が、彼の体温が……その人にも向けられていたのかと思うと、やっぱり嫉妬してしまう。ダメだな、僕は。

「……はぁ、光希、違うんだ、あの人は…」

「ああ、知ってるよ?」

「…え?」

「隼人くんが昔、とんでもなくヤンチャだったこと!」

僕はなるべく明るく言った。冗談っぽく言えば、深刻にならずに済むと思ったから。

「……なんで?」

「えへへ、優希に聞いたんだ!」

言った瞬間、隼人くんの眉間に深い皺が寄った。

「……あの野郎…言わなくていいことを…」

「?」

明らかに機嫌が悪くなってる。
チャンスだ。僕はなんとなく口をついて出た。

「……隼人くんの初めては…僕じゃないってことくらいわかってるよ…でも…今は…僕のものだよね…?」

ちょっと言いすぎたかも。けど、言ったあとスッキリした。
普通なら引かれるんだろうなー、と軽く思っていた。

けれど――

「違う!!あの時はまだ光希に出会ってなくて……若気の至りなんだ!!
こんなに暖かい気持ちになれたのも、こんなに人を愛せたのも、全部光希が初めてだ!!
俺は光希のものだからな???」

必死すぎる。
まるで浮気疑惑で問い詰められてるみたいな必死さ。

「別れるって…別れるなんて言わないで、思わないで…、俺には…俺には光希しかいないんだ…」

……いや、待って。僕より重いこと言ってない?

「わ、わかったよ…そんなに気にしてないから大丈夫!」

「よかった…光希に嫌われたら生きていけない…」

そんな大げさな。大丈夫だって。
僕なんかいなくても、隼人くんならいくらでも彼女できるだろうし。

「……あのさ、どうせなら言うけど」

「うん?」

「石川くんの連絡先消して」

「………え?」

「消せないの?」

「あ、当たり前じゃん!友達なんだから。必修レポートとか全部助けてもらってて……あいつのおかげでなんとか生きてるんだよ」

「……何それ。彼氏差し置いて?今度から全部俺に相談して」

「学部違うじゃん!」

「……わかった。強制はしない。でも、俺の気持ちもわかってね。石川くんばっかり優先しないで」

「わ、わかった」

あれ?やっぱり僕より隼人くんの方が重くない?
大学でキャラ変したって言ってたけど……これがそうなの?

「……ほんとごめんね、俺重くて…」

「いやいいよ!」

「光希優しいね…ほんと天使だ…ずっと一緒にいたい」

彼の声が妙に熱を帯びていて、僕はくすぐったくなって目を逸らした。

気づけば外はすっかり暗くなっていた。

「送っていくよ」

……また、何もしてこないんだな。

「まだ…家行っちゃダメ…?」

「み、光希…?」

「……なんで手を出してくれないの…?」

彼の顔が赤くなるのを見て、胸が高鳴った。
言っちゃった。引かれるかな。でも、もう引き返せない。

「そ、それは……君が大切だからで」

「……わかった」

なんだよそれ。
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