【完結】あなたに抱きしめられたくてー。

彩華(あやはな)

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5.

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 どこから聞いてきたのか、オブライド王子殿下が騒ぎ立てた。

「大丈夫か、セシリア。何もされていないか?」

 なぜ、平凡な私に近寄ってくるのかわからない。

「オブライド王子殿下。申し訳ありませんが、これ以上関わらないでいただけますか?」
 
 この際だから、思い切って言ってみた。

 私は平和的に学園生活を送りたいだけなのだ。貴族に、ましてや、王族に関わりたくはないのだ。

「イザベルにそう言えと言われたのか?」
「はあ?」

 間抜けな声が出たのは仕方ないだろう。
 何故そうなるのかわからなかった。


「あいつ。セシリアに嫉妬しているのか?いや、こうなれば・・・、僕は君を護る!!」
 
 意味がわからない。
 この方の脳内は花でも育成しているのだろうか?

 私はそっとして欲しいだけだ。

「あの?言っている意味がわかりませんが?」
「イザベルが君を虐めているんだろ?」
「虐められていません」
「?。では、どうして?」

 どうして?
 わからないと言うのか?
 頭の中に蝶々まで棲みついているのか?

「王子殿下が、平民たる私をお構いになるからです。私も身分と言うものを重々理解しておりますので、声をかけないでいただけますでしょうか」
「なぜ?僕は君が気に入っているんだ」
「それが困るんです」

 何故わかってくれないのか?

 埒があかない。
 頭が痛くなってくる。

「私は皆様のように教養の一環としてこの学園に入っていません。将来のためにここにいます。この学園を卒業後、私は私を育ててくれた孤児院のために働きたいのです。恩返しをしたいんです。  
 ですので、あなた様に関わる暇はありません。放っておいてください!」

 お願いだから、もう、いい加減にして欲しい。

 だが、王子殿下の反応は違った。目をキラキラさせるばかりだった。
 いや、キラキラだけならまだしも、その目の奥に不気味なものを見た気がした。
 
「やはり、君は凄いね。僕はますます君が気にいったよ。孤児院のためか・・・。なら、僕の側妃になればいい。そうすれば苦労せずに孤児院に恩返しができるよ」

 へっ?
 何言ってるの?
 
 背筋がゾワゾワした。

 頭がおかしいのでは?と思いたかったが、自分の直感が「違う」と言っている。
 
 
「・・・嫌です」
「王子たる、僕の意見にはむかうなんて、おもしろいよ、君は・・・」

 何故楽しそうに笑う?
 「うっとり」と言う表現が正しいのかもしれない。
 目つきが怪しすぎる。

 これは、整った顔立ちと不思議な色の瞳の所為ではない。

 ゾッするような、悪寒が走った。
 

「ますます、君が欲しいな・・・」

 ジリジリと近づいてきた。

 私は一目散で逃げることを選んだ。

 やばいやつだ。

 頭の中で警鐘がなっていた。
 逃げなくては!捕まってはならない。

 そう思って一目散で走って逃げた。


 寮に帰り布団に潜り込み、身体を抱えた。
 震えが止まるのを待つ。

 バイトに行かなくては・・・。
 休みたい。でも、バイトは休みたくない・・・。
 
 王子殿下は王宮に帰るから、食堂にはこない。

 だから、大丈夫。
 大丈夫だ。

 重い身体を引きずるようにして、バイトに向かった。
 

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