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どこから聞いてきたのか、オブライド王子殿下が騒ぎ立てた。
「大丈夫か、セシリア。何もされていないか?」
なぜ、平凡な私に近寄ってくるのかわからない。
「オブライド王子殿下。申し訳ありませんが、これ以上関わらないでいただけますか?」
この際だから、思い切って言ってみた。
私は平和的に学園生活を送りたいだけなのだ。貴族に、ましてや、王族に関わりたくはないのだ。
「イザベルにそう言えと言われたのか?」
「はあ?」
間抜けな声が出たのは仕方ないだろう。
何故そうなるのかわからなかった。
「あいつ。セシリアに嫉妬しているのか?いや、こうなれば・・・、僕は君を護る!!」
意味がわからない。
この方の脳内は花でも育成しているのだろうか?
私はそっとして欲しいだけだ。
「あの?言っている意味がわかりませんが?」
「イザベルが君を虐めているんだろ?」
「虐められていません」
「?。では、どうして?」
どうして?
わからないと言うのか?
頭の中に蝶々まで棲みついているのか?
「王子殿下が、平民たる私をお構いになるからです。私も身分と言うものを重々理解しておりますので、声をかけないでいただけますでしょうか」
「なぜ?僕は君が気に入っているんだ」
「それが困るんです」
何故わかってくれないのか?
埒があかない。
頭が痛くなってくる。
「私は皆様のように教養の一環としてこの学園に入っていません。将来のためにここにいます。この学園を卒業後、私は私を育ててくれた孤児院のために働きたいのです。恩返しをしたいんです。
ですので、あなた様に関わる暇はありません。放っておいてください!」
お願いだから、もう、いい加減にして欲しい。
だが、王子殿下の反応は違った。目をキラキラさせるばかりだった。
いや、キラキラだけならまだしも、その目の奥に不気味なものを見た気がした。
「やはり、君は凄いね。僕はますます君が気にいったよ。孤児院のためか・・・。なら、僕の側妃になればいい。そうすれば苦労せずに孤児院に恩返しができるよ」
へっ?
何言ってるの?
背筋がゾワゾワした。
頭がおかしいのでは?と思いたかったが、自分の直感が「違う」と言っている。
「・・・嫌です」
「王子たる、僕の意見にはむかうなんて、おもしろいよ、君は・・・」
何故楽しそうに笑う?
「うっとり」と言う表現が正しいのかもしれない。
目つきが怪しすぎる。
これは、整った顔立ちと不思議な色の瞳の所為ではない。
ゾッするような、悪寒が走った。
「ますます、君が欲しいな・・・」
ジリジリと近づいてきた。
私は一目散で逃げることを選んだ。
やばいやつだ。
頭の中で警鐘がなっていた。
逃げなくては!捕まってはならない。
そう思って一目散で走って逃げた。
寮に帰り布団に潜り込み、身体を抱えた。
震えが止まるのを待つ。
バイトに行かなくては・・・。
休みたい。でも、バイトは休みたくない・・・。
王子殿下は王宮に帰るから、食堂にはこない。
だから、大丈夫。
大丈夫だ。
重い身体を引きずるようにして、バイトに向かった。
「大丈夫か、セシリア。何もされていないか?」
なぜ、平凡な私に近寄ってくるのかわからない。
「オブライド王子殿下。申し訳ありませんが、これ以上関わらないでいただけますか?」
この際だから、思い切って言ってみた。
私は平和的に学園生活を送りたいだけなのだ。貴族に、ましてや、王族に関わりたくはないのだ。
「イザベルにそう言えと言われたのか?」
「はあ?」
間抜けな声が出たのは仕方ないだろう。
何故そうなるのかわからなかった。
「あいつ。セシリアに嫉妬しているのか?いや、こうなれば・・・、僕は君を護る!!」
意味がわからない。
この方の脳内は花でも育成しているのだろうか?
私はそっとして欲しいだけだ。
「あの?言っている意味がわかりませんが?」
「イザベルが君を虐めているんだろ?」
「虐められていません」
「?。では、どうして?」
どうして?
わからないと言うのか?
頭の中に蝶々まで棲みついているのか?
「王子殿下が、平民たる私をお構いになるからです。私も身分と言うものを重々理解しておりますので、声をかけないでいただけますでしょうか」
「なぜ?僕は君が気に入っているんだ」
「それが困るんです」
何故わかってくれないのか?
埒があかない。
頭が痛くなってくる。
「私は皆様のように教養の一環としてこの学園に入っていません。将来のためにここにいます。この学園を卒業後、私は私を育ててくれた孤児院のために働きたいのです。恩返しをしたいんです。
ですので、あなた様に関わる暇はありません。放っておいてください!」
お願いだから、もう、いい加減にして欲しい。
だが、王子殿下の反応は違った。目をキラキラさせるばかりだった。
いや、キラキラだけならまだしも、その目の奥に不気味なものを見た気がした。
「やはり、君は凄いね。僕はますます君が気にいったよ。孤児院のためか・・・。なら、僕の側妃になればいい。そうすれば苦労せずに孤児院に恩返しができるよ」
へっ?
何言ってるの?
背筋がゾワゾワした。
頭がおかしいのでは?と思いたかったが、自分の直感が「違う」と言っている。
「・・・嫌です」
「王子たる、僕の意見にはむかうなんて、おもしろいよ、君は・・・」
何故楽しそうに笑う?
「うっとり」と言う表現が正しいのかもしれない。
目つきが怪しすぎる。
これは、整った顔立ちと不思議な色の瞳の所為ではない。
ゾッするような、悪寒が走った。
「ますます、君が欲しいな・・・」
ジリジリと近づいてきた。
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頭の中で警鐘がなっていた。
逃げなくては!捕まってはならない。
そう思って一目散で走って逃げた。
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震えが止まるのを待つ。
バイトに行かなくては・・・。
休みたい。でも、バイトは休みたくない・・・。
王子殿下は王宮に帰るから、食堂にはこない。
だから、大丈夫。
大丈夫だ。
重い身体を引きずるようにして、バイトに向かった。
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