【完結】あなたに抱きしめられたくてー。

彩華(あやはな)

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閑話、狂気(オブライド殿下視点)

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 刺激がない。
 それがずっと続いていた。

 僕が望めば、なんでも叶う。
 欲しいものもやりたいことも、食べたいものも、一言いえば、その通りのものがでてくるのだ。

 幼い頃はそれは嬉しかった。
 でも成長するに従って、それは物足りなくなっていった。
 誰もが僕に服従する。誰しもが僕の顔色を伺ってくる。
 世の中がつまらないものに見えた。

 当時、祖父は国王。父が王太子。
 この国で一番偉い二人。
 だから、僕が気に入らないことがあれば、二人に相談した。
 祖父が国王であった時はあまり協力的ではなかったが、2年前に祖父が倒れ、父が国王に即位してからは、僕の要望を聞き入れてくれるようになった。
 
 母上は、僕を可愛がってくれる。
 だが、一番好きなことはドレスや化粧品を買い漁り、お茶会をして自慢をすること。自分の優越感を刺激することが好きだった。

 一つ下の弟は・・・興味はない。はっきり言って口をだしてくるので、嫌いだ。
 母上もいる。が悪いらしいから。。その証拠に父からも構われることはない。
 父上の側妃に子育てを。そのせいか、重臣たちは側妃の機嫌をとるかのように弟を構う。それがまた、気に食わない。

 側妃は、公務をするためだけの存在。父もそう思っている。
 母上とは仲が悪く、ギスギスすることもあるが、彼女は一切関わってはこない。
 あの女の母上や僕を見る目が気に食わないから、目に入ってこないならいい。

 婚約者であるイザベラも、同じような目をしていた。まあ、イザベラの場合は目つきが悪いので、可愛くないといった方が正しい。
 婚約者なのだから、くらいの触れ合いはかまわないだろうに、指一本触らせてもくれない。

 事あるごとに、『自覚をお持ちください』やら『お立場をお考えください』などと言ってくるのが、うざい。
 
 わかっている。
 僕は将来の国王だ。

 皆がひざまづくのを玉座からいずれ眺めるのだ。

 僕の一声で国が動く。想像しただけで心地よい。
 
 それがなんだと言うのだ。

 だが、今は父の世。
 
 面白くなかった。
 やりたいことはほぼやり終えたから、刺激がなかった。
  
 虫から始まり鳥や猫、犬を殺したこともある。人間を拷問したことも。
 あっけない命につまらなく思った。

 皆、僕を遠巻きにする。
 頭を最大限に地につける。
 つまらない。
 すぐに壊れる玩具に等しかった。

 だが、学園に入って面白い物を見つけた。
 はじめは目に入れる価値のない物だと思っていたが、はキラキラと輝いているように見えた。

 貴族に対してへつらうこともない。

 だから、馬鹿にする様に近づいた。

 は、僕には対しては嫌そうな顔をした。本人は気づいていないかもしれないが、すぐに表情に出ているのでわかった。
 
 面白かった。

 それから、を観察する。
 毎日楽しそうに動き回っている。

 貴族の中を上手く立ち回っている。

 僕が構えば構うほど、立場が悪くなっている。
 それを見るたび、ゾクゾクした。

 僕に助けを求めて来ればいいのに・・・。

 楽しかった。
 自分の手元に置いておきたくなった。

 なんだろう・・・。
 この気持ちは・・・。
 
 がイザベラに連れて行かれたと聞いて、腹が立った。
 僕のを勝手に手を出して欲しくない、と。
 

「大丈夫か、セシリア。何もされていないか?」

 はびくっと肩を震わした。その目は恐怖が浮かんでいた。それでも強気に言ってくる。

「オブライド王子殿下。申し訳ありませんが、これ以上関わらないでいただけますか?」
 
 その言い方に、ゾクゾクした。

 イザベラのやつ、何を吹き込んだ?今までなら、戸惑って逃げて行くくらいで終わっていたのに。
 王族の僕に向かって関わらないでとは・・・、面白い。面白い。面白い・・・。

 欲しい・・・。

「イザベラにそう言えと言われたのか?」
「はあ?」

 間抜けな声がまた可愛いらしい。

「あいつ。セシリアに嫉妬しているのか?いや、こうなれば・・・、僕は君を護る!!」
 
 君は僕のそばでいればいい。僕だけを見ていればいいのに。

「あの?言っている意味がわかりませんが?」
「イザベラが君を虐めているんだろ?」
「虐められていません!」
「?。では、どうして?」

 だけは、僕の言う事を聴かない。虐められた言えば、僕が報復してあげるのに。
 
 「王子殿下が、平民たる私をお構いになるからです。私も身分と言うものを重々理解しておりますので、声をかけないでいただけますでしょうか」
「なぜ?僕は君が気に入っているんだ」
「それが困るんです」

 困る?
 初めて言われたよ。
 くくくっ・・・。
 僕に取り入ろうとするものは多いのに・・・、困るとは・・・。こんな人間初めてだ。

「私は皆様のように教養の一環としてこの学園に入っていません。将来のためにここにいます。この学園を卒業後、私は私を育ててくれた孤児院のために働きたいのです。恩返しをしたいんです。  
 ですので、あなた様に関わる暇はありません。放っておいてください!」

 やっぱり、君はいい。最高だ。

「やはり、君は凄い。僕はますます君が気にいったよ。孤児院のためか・・・。なら、僕の側妃になればいい。そうすれば苦労せずに孤児院に恩返しができるよ」

 口が勝手に動いていた。

 そうだ。僕の側妃にしよう。
 そうすれば、ずっと楽しめる。嫌がる姿を見るのはいい。そして、僕なして生きれなくなればいいのに・・・。
 
「嫌です」
「王子たる、僕の意見にはむかうなんて、おもしろいよ、君は・・・」

 あぁ、本当に楽しい。
 
「ますます、君が欲しいな・・・」

 ジリジリと近づいてみれば、彼女は走って逃げて行った。
 
 その後ろ姿をながめた。

 どうすれば、君が手に入るんだろう・・・。
 絶対に君を手にいれる。

 なんとしても・・・。

 
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