【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)

文字の大きさ
3 / 76

3.

しおりを挟む
 初めのうち、マルス様は庇ってくれた。独りぼっちにならないよう私に声をかけてくる。
 誰もいないところでは抱きしめてなぐさめてくれた。

 だが、日が経つごとにだんだんと声をかけてくれなくなる。近づいてもこなくなった。酷い言葉をかけられる私を遠巻きで見ているだけ。

 そして、とうとう今日は触ることを拒否された。

 わかっている。
 この醜い傷のせいだと。
 マルス様が悪いわけではない。

 入学からまだ一ヶ月とはいえ、彼は彼なりの世界ができたのだ。この学園で多数の親友ができ今、私が入り込む隙はない。

 ここで繋がりを作るのが大切なのは私もわかっている。
 私のせいでチャンスをふいにしてはいけない。

 でも・・・。

 この傷の原因はーー。

 この先は言ってはならない言葉だ。げんに私は彼を恨んではいない。

 責任をとってとは言わないが、それでも私の味方になって欲しかった。婚約者として護って欲しいと願ってしまう。
 あなたがいてくれたなら、それだけで私は強くなれるのに。

 ー傍にいて・・・・・・。

 それを伝えてしまえば、彼を縛りつけそうで言葉にできなかった。

 苦しくて、涙が溢れる。
 この思いをわかってほしい・・・。

 母の言葉に従えば楽だったのだろうか?
 あの狭い屋敷の中で閉じこもっていれば、こんな思いを感じなかったのかもしれない。


 集中ができず、読んでいた本を閉じ立ち上がった。

 本を元の場所に戻すと、カウンター横の出入り口に向かう。

「どうしたの?」

 学園内で唯一私のことを受け入れてくれている、司書の女先生が声をかけてくる。

「気分が優れなくて」
「確かに顔色が悪いわね。無理をせず帰りなさい。担任の先生には伝えておくから」
「ありがとうございます」 

 好意を素直に受け取り。私は帰るため馬車乗り場へと向かった。


 早めの、帰宅に母は驚く。
 毎日、何があったのかを聞いてくる。
 ありのままを語れば、また母は泣くだろう。叫びながら学園に乗り込むかも。そんな姿を見るのは辛くて、嘘をついてしまう。

「今日は先生の都合で授業が早めの終わりだったの」

 眉を寄せながら心配そうに見てくる母に向かって、嘘をついた。嘘をつく罪悪感を押し隠し無理やり笑って誤魔化す。

「本当に大丈夫?何かあったら言ってよ」
「大丈夫だから。お母様は心配性よ」
「そう??」 
 
 まだ心配してくる母を近くの侍女に任せて、自室に戻った。

 服を着替えると机の上に教科書を開く。

 私には予習復習は不可欠なものだった。私はあまり授業にでていない。そのため自分で勉強する。

 私が授業にでれば、ひそひそと会話が起こる。

「一緒の教室なんて最悪」
「へんな匂いしない?」

 雰囲気が悪くなり授業にならないため、先生から図書室での自習を勧められた。
 好都合と逃げ込み先にしたが、きちんとした授業を受けたのは指で数えられるほど。
 母を思うと何がなんでも自力でやり遂げるしかなかった。

 
 
 

 
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

さよなら 大好きな人

小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。 政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。 彼にふさわしい女性になるために努力するほど。 しかし、アーリアのそんな気持ちは、 ある日、第2王子によって踏み躙られることになる…… ※本編は悲恋です。 ※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。 ※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...