【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)

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36.アーサー視点

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 彼はトルスター国から来た外交官でライールと名乗った。
 学園には学園視察のために上司と共に来たのだと。
 
 自分の兄と変わらない年齢で外交官だということを聞いて驚く。
 帝国でも、外交官の職に就いたとしても、上司の付き人として雑用から始り、国外に随伴するようになるまでに時間がかかる。
 なのに、この人は・・・こうやって視察までついて来ている。どれだけ優秀なんだ。

 叔父の兄以外の他の人にすごい思った。

「その年齢でどうやって・・・?」
「そりゃぁ、よくない言い方をすれば媚を売ったんだ」

 嫌な言葉に眉を寄せる。だが、彼はあっけらかんとしていた。

「俺自身が使えることを証明した。相手が何を求めているかを常に考えて先回りして準備をしたんだ。そうすれば相手は俺を必要とする。仕事ができるやつを傍に置きたいものだろう。言われたことをやるだけ、言われるまで待つ奴が出世できるわけない」

 不適な笑みを向けてくる。水色の目が鮮やかな色に見えた。

 彼との出会いは僕を変える。
 彼の見る世界を見てみたい。そう思って、彼の後を付き纏うようになる。
 
「お前、いい加減にしろよ!」

 犬のようにしっしっと追い払われたりもしたが、しつこいほど後を追う。そうするうちに次第に受け入れてくれた。
 見るもの食べるもの、生活の知恵、当たり前だけど、僕にとってははじめてかのことを教えてくれる。
 知識だけがあっても実践するのはまた違った。
 帝国にいたころ、同級生たちはこんなことをしていたのか、と気づく。

 僕は勿体無いことをしていたのかー。
 
 世界が広がると楽しかった。
 
 彼と出会い二十日ばかりした頃ー。

「十日後には次の国に行くことになった」
「えっ・・・」

 ショックだった。
 
 そうだ・・・。ライールは他の国からきた外交官・・・。仕事として次の国へと行くのは当たり前ー。

 まだ僕は何も学べていない。彼の元でまだ学びたい・・・。

「付いてくるか?」
「いいの?」
「あぁ。そうなると・・・手続きが必要か?帝国からの留学生を勝手に連れていくのはまずいよな・・・?」

 そうだ。僕は留学に来ているのだった・・・。ダメだろうか・・・。

「なんとかなるかぁ?うん、聞いてみよう」

 ライールはポムと手を打ったあと、僕を帝国の駐在大使館の元へと買い物に行くような気軽さで連れてゆく。

 そこからは早かった。
 にこにことライールは笑いながら説明をする。
 僕を自分の助手という形にして、他の国へも留学できるビザを一年でいいから発行して欲しいと。責任は自分が取るようにするとまで言い切った。

 なんの関わりのなかった僕にここまでしてくれるとは・・・、嬉しい。

 しかし、手続きはスムーズにはいかなかった。
 どんなにいそいでもライールが出発するまでに手続きが終わらないと言われる。


「仕方ない。先に行ってる。きちんと済ませてから、来い」
「待っててくれますか?」

 僕は不安そうな顔をしていたのだろう、彼は・・・兄が時たまみせる『仕方ないなぁ』という顔を僕に見せて、髪をぐしゃぐしゃにしてくる。
 
「待っといてやるから、気をつけてこいよ」
「はいっ!」

 僕は元気に返事した。
 ライールに遅れること一週間。無事に手続きを終えると、急いで彼の跡を追った。
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