【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)

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「マルス様、私に御用は何でしょうか?」

 私が名前を呼んだだけで彼は目を輝かせてきた。

「迎えにきたんだ」

 晴れやかな答えに私は首を傾げてしまう。
 何を言っているのだろうか?私が帝国に来たのは留学のためである。もう少しすればはっきりした期間がわかるだろうが、まだ正式に決まっていない。それに・・・、マルス様に迎えに来てもらう義理はない。

「なにを仰っていますか?私は留学のために帝国ここに来ています。トルスター国に帰るのはまだ先の話ですし、ましてや、あなた様に迎えに来てもらう通りもありません」
「留学をやめて僕と結婚しよう」

 爽やかな笑顔を向けられ、寒気が走った。
 話が噛み合ってない?

「僕の態度がいけなかったのだろう。改めるよ。これからは君を護る。君がいなくなって、僕は気づいたんだ。ノエル愛してるって」

 怖かった。目の前にいるのが私が知っているマルス様でないように感じる。
 アーサー様も怪訝な顔をしていた。

「お待たせしました」

 場を読めない声がかかる。店員が飲み物を持ってきたのだ。無言の私たちに構いもせず、持ってきたものを並べる。

「以上になりますぅ」
「あ、ありがとう。持ち帰り用は・・・」
「今準備しておりまぁす」

 アーサー様が確認すると、コーヒーに口をつけた。

「では、何かありましたらお呼びください」

 店員が出て行くと、室内は再び静寂に包まれる。
 

 重苦しい雰囲気をどうにかしたくて、口を開く。

「マルス様・・・、どんなことをいわれようと、あなた様との婚約はすでに解消しています」
「だから何だ。僕は君が好きなんだ・・・。愛してる。だからこそ、君に会いたくてここまで来たんだよ。君に花を贈っていた。僕の気持ちに気づいて欲しくて・・・。なのになぜ・・・。なぜ、そんな姿で・・・そんな男と?どうして目を隠していないんだ。その傷は僕だけが知っていればいいのに・・・」 

 まさか、あの花はマルス様が?
 ぞっとする。
 言っていることだって無茶苦茶だ。
 
 私からすれば、なぜ今更そんなことを聞かされなくてはならないのかわからない。せめて留学前なら、いえ、学園に入学した頃に言われたならまだ違っていたかもしれなかった。
 今はマルス様の言葉、行動や態度、私を見る眼差しさえ怖いだけだ。

「なぜ?そんな片眼鏡ものをつけているんだい?ノエルには似合わない。髪で隠し、静かに僕の隣でいればいいんだよ。」
「それが君の知っているノエル嬢か?馬鹿馬鹿しい」 

 陶酔するマルス様に辛辣な声をアーサー様はかけた。
 厳しい眼差しでマルス様をみている。

「ノエル嬢はまっすぐな女性だ。物事に真剣に向かい合い、信念がある。それでいて優しい。君は理想を押し付けているだけだろう。本当のを知っているのか!」
「あなたには関係ないね。ノエルは僕のだ。その証拠に目の傷がそうだ。それがあるからこそ誰にからも相手にされない。醜いといわれ、傷つくノエルを僕が癒してあげる。それをノエルは求めているんだ」

 独りよがりなことを言わないでほしい・・・。確かに傷があることで嫌な思いもした。だけど、今は違うー。
 
「傷があるから君のもの?」
 
 アーサー様は鼻で笑う。

「君は傷だけでノエルを見ているのか?」

 その口調は強い。
 
「傷など個性にすぎない。見た目より中身が大切だろう。君はノエルの何を見ている、何を知っている!?」
「うるさい!ノエルは僕のだ。僕のである証があるんだ!」

 マルス様は反射的にアップルパイの皿にあったナイフを握りしめて立ち上がった。
 
「もう一度・・・傷をつければ・・・」
「やめろ!」
「ノエル!!」

 マルス様がナイフを振りかざす。怖くて動けない私をアーサー様は抱きしめるように庇ってくれた。それでも怖くて反射的に目を閉じる。

「ああああっっっ!!」

 マルス様の悲鳴。

「何やってんですかぁ?」

 呑気な声が聞こえ目を開けると、あの店員がマルス様を押し倒し、背中で腕を捻り上げていた。

「遅い・・・。ノエル大丈夫か?」

 アーサー様の熱い吐息が首元にかかる。

「だ、大丈夫・・・」
「よかった・・・」
 
 深い息とともに、ゆっくりとアーサー様の体重が肩にかかった。
 どうしたのだろう?

「アーサー様?」
「動かさないで!」
「えっ・・・?」

 店員が静止をかけてきた。
 その時、私の手が濡れているのに気づく。赤くなって手に・・・・・・。
 
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