【完結】研究一筋令嬢の朝

彩華(あやはな)

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マルクの回顧録

アイリ嬢

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 そこは、アイリ嬢の実験の真っ只中だったのだ。

 アイリ・マクアリス伯爵令嬢。中等科、高等科を三年で卒業し、特例措置を取り、十五歳で研究科に入学。殿下の弟君、ロディク殿下の後婚約者。マクアリス伯爵家の長女で四つ上の変わり者の兄がいると言う。黒髪に紫の瞳を持つ綺麗な少女。

 ただ、研究科のソファーで寝るは令嬢としてアウトだろう。
 誰か止めてあげろ。

 殿下も唖然としていた。
 珍しい。殿下の意表を突くものがあるとは。

 「ライディン、詳しく話してもらおうか?」

 彼女がいなくなってから、ライディンに詰め寄る殿下。

 「はははっ。すみません。ここにこられたのは苦情の事ですよね。最近盛り上がりすぎまして「ライディン!」・・・ははっ、すみません・・・」

 ライディンそっと手渡したのーとには「アイリ嬢 観察日記」と書かれていた。
 観察日記?
 やばくないか?

 「やましい事は書いていませんよ」

 ライディンは慌てて首をふった。
 ノートを読む殿下の唇が弧を描いた。
 ライディンもそれに気づいたのか顔を見合わせた。そして、敢えて楽しそうに言う。

 「いや~、彼女面白いですね。特に徹夜させると、笑えますよ」

 研究科が彼女の面白さを語る。
 
 「面白くてみんなが代わる代わる書いていたら、面白いことに気づきまして、今日はその実証実験だったんです」

 殿下は珍しく食い付いた。

 「どんな実証実験です?」

 アイリ嬢の研究内容を聞いてますます楽しそうにしている。目が笑ってますよ。

 「殿下・・・?」
 「面白そうだな。これからも、報告を頼もうか。だが、面立って騒ぐな。他から苦情がはいっている。やるなら静かにやれ。あと残業はほどほどにしとけ」

 そう呟くとノートをそのまま持ってでていった。その顔は興味のあるオモチャに出会った様な笑みだった。いつ以来だろうか。

 「アル様、久しぶりにいいお顔されていますね」

 自分の表情に気づいていないらしい。無意識のようだ。少しムッとした表情でこちらを見た。

 嬉しく思う。
 それが続くのなら、自分は何でもしよう。

 部屋に帰る途中、アイリ嬢にあった。

 まだ、髪が濡れている。ちゃんと侍女はいるのか?
 令嬢として、はしたない。やんちゃな歳の離れた妹でもしないぞ。

 ハラハラしながら見ていると、彼女は殿下の事を知らないようだった。
 殿下と同じ人種か?!

 殿下と目をつい合わせた。言いたい事は同じのようだ。

 「僕はアル。研究室室長だよ。よろしくね」

 嘘じゃないけど少し違う。
 殿下、遊ぶ気ですか?

 「室長ですか。すみません。研究以外だとあまり気にならないたちで、よく怒られてしまうんです。わたしはアイリです。よろしくお願いします。こちらから来られたのなら、室長、もうご覧になられました?昨夜、やっと魔術変換式ゴミ吸い取り機ができたんですよ」

 魔術変換式ゴミ吸い取り機?なんだ?報告書は、きてないな。
 殿下が確認を取るように見てきたので知ら首を振った。

 「報告に上がってないけど、なにかな、それ?」
 「あっ?言っちゃダメなやつかな?あの~、聞かなかったことにしていただけませんか?」

 へろりんと笑って誤魔化そうとする。
 うわぁ~、表情豊かな子だ。妹みたく庇護欲がわく。

 「ライディンに、僕の部屋にくる様に言ってくれるかい?」
 「・・・はい」

 捨てられた子犬か?
 殿下が笑った。まじ笑いしたよ。


 部屋に帰ると殿下はさっそ「アイリ嬢観察日記」に目を通していた。

 「アルフリード様、楽しそうですね」

 入れた紅茶に口をつける。

 「そうか?」
 「えぇ。その様なお顔をするのは久しぶりです。兄も最近心配してました」
 「ラズが?」
 「はい。この数年、表情筋が機能していないのではと言っていました」

 定期的に心配してくる、兄。ズバズバ思った事を言うが、殿下を心配しての事。だから、包み隠さずに言う。

 「ラズには敵わないな」
 「何をおっしゃいますか」

 兄は殿下の力になりたいと思っている。でも今の殿下には魅力はないらしい。
 殿下と兄が事を起こせば楽しいだろう。見てみたいものだ。

 殿下は見ていたノート見て、少し思案した後、俺に言った。

 「楽しそうはともかく、もう少しアイリ嬢の事は知りたいかな。マルク、この際だ折角だから、ロディクの事も調べてきて。アイリ嬢が僕の事知らないのにもビックリしたしね」
 「畏まりました」
 
 一礼して部屋を去る。

 殿下が動き出した。何かが起こる予感がした。

 

 
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