僕、天使に転生したようです!

神代天音

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 ギルマスがアンジュを遠ざけた。ここからの話はきっとアンジュに聞かせていいものではなくなる。だから、ギルマスはサブマスにアンジュを頼んだのだろう。

「まだ、隠してあることがあるな?」
「ああ」

 そして、アンジュが天使である可能性があることを話す。

「アンジュは種族特性が欠けているんだ。今はアレンの作ったアクセサリーで隠しているが、髪の飾り羽がない。他の種族と同じような髪なんだ。なのに羽がある」
「種族特性がかけるなんてあり得ない、そうずっと言われていたのに……。まさかこんなに身近に現れてしまうとは……」

 ギルマスはそういって頭を抱えている。俺たちがこれを話したのは、どうしてもギルマスを俺たちの問題に巻き込んでしまうということ。聞いただけでは済まないのがギルマスもわかっているのだ。

「すみません。私たちの問題に巻き込んでしまって」

 ノクトがそう謝る。俺たちみんな申し訳ないと思っている。だが、アンジュを守るために俺たちでは手が足りないのだ。
 ノクトの謝罪を聞いて、ギルマスは頭を抱えたままゆるゆると首を振る。

「いや、お前らの身内なら、もうアンジュはギルドの一員みたいなものだ。何より、さっきの一瞬で俺もサブマスもアンジュに心を掴まれた。俺もできる範囲で守りたいと思う」

 アンジュの人タラシがすごかった。あんなに一瞬しか接していないのに、もうアンジュ信者にしている。
 これは天使の力なのか。……いや、アンジュ本人の魅力だな。あのほやんとしている可愛さと、なんだかんだ言って真の強いところに惹かれてしまうんだろう。
 そんなことを考えていると、頭を抱えていたギルマスが頭を上げた。その顔には笑みが浮かんでいる。

「アンジュは可愛いな。お前らじゃなくてギルドで預かりたいくらいだ」
「「「「だめです!」」」」

 早速ふざけ出した。ギルマスにはこういうところがある。シリアスな話をしているのに、突然ふざけて、またシリアスな話に戻る。ということはこれ以上に大変な話がこの後来る。

「それはおいおい話し合うとして」
「「「「話し合わない!」」」」
「もうすでにアンジュが狙われていることは知っているか?」

 思わず驚いた顔をしてしまう。他の3人も驚いた顔をしている。全く知らなかったらしい。
 アンジュが天使であることは外に出る時は隠している。なのにな狙われるのが早すぎる。
 いや、一つだけ心当たりがある。

「アンジュを売ろうとした両親と、買おうとした奴隷商らしきやつが声高に話しているのか?」
「そうだ」

 ギルマスがいうのには、街中で人間と鳥獣人の夫婦が天使の子を産んだことを、奴隷商がその子を買おうとしたのに逃げられたことを声高に話しているらしい。報告が上がってきているという。

「流石にみんなが顔を顰めて聞いている。奴隷は合法ではあるが、廃止に向けて動かれているし、何より親が子を売ろうとしているんだからな。気分が悪くならないほうがおかしい」

 街の中は天使の子という部分は嘘だという噂が回っているらしい。街は問題なさそうだ。

「問題は奴隷商の方だ」
「どういうこと?」

 なんでも、アンジュの両親(便宜上)がアンジュを売ろうとした違法奴隷を扱っているという噂があるらしい。奴隷の扱いも目に見えて悪い。
 しかも、その奴隷商は珍しい特徴を持った人物に固執するらしい。アンジュは特に危険だ。

「その奴隷商……アノイド奴隷商は手段を選ばないことだ有名だ。アンジュは1人にしてはいけない」
「わかった」

 アンジュを危険とわかっているところにやる気はない。気を引き締めなければ。
 そして、もう一つ解決していない問題がある。

「だが、問題がある。仕事の間俺らはどうしてもアンジュのところにいられない。どうすればいい?」

 今日までにどうにかしなければいけなかった問題。後回しにしていたが。余計に後回しにするわけにはいかなくなった。

「それなら、ギルドに預ければいい。俺らが面倒を見るし、ギルドの職員もアンジュなら喜んで世話するだろう」
「でも、贔屓にならないかな? 他の子は8歳まで預かりで、12歳になる頃には仕事をするよね? 特別扱いはまずい」
「お前らはS級だ。今こそその特権を使え。アンジュを守るために使え」

 そういえば、S級冒険者はなんでも一つ、ギルドに要求することができるんだった。使っていないから忘れていた。その特権を使ってアンジュを預かって貰えば安心だ。
 ……これをもっと早く思い出していれば、アンジュに叫ばれることもなかったんじゃないか? 

「では、それを使いましょう。ギルマス、私たちの要求はそれで通してください」
「わかった。今日の細かい内容はサブマスにも共有するがいいか?」
「ああ」

 これで問題は解決した。

「とりあえず今の問題は解決するか明確になった。そろそろ坊主が寂しがってる頃だろうし、呼んでくるか」
 
 フィンがちょうどそう発言する。俺たちの内密の話はとりあえずこれでお開きだ。



 
 みんなのお話が終わったらしい。シュヴァルツさんと一緒に下から上に階段を登る。
 さっきはソレイユに抱き上げてもらって登ったから気づかなかったけど、段差が大きい。全然登れなくて、一段登るのにとても時間がかかる。

「うん、しょっ」
「「がんばれ、頑張れー!」」

 後ろからなんだか応援されている。開けっぱなしの扉の向こうから聞こえるから、きっと職員さんが応援してくれているんだろう。嬉しくて羽がパタパタしてしまう。

 何分かかけて、やっと階段を登り終わる。すると——。

「おおー!」

 後ろから今度は拍手の音が聞こえる。なんだか恥ずかしい。

「あ、ありがと!」

 恥ずかしくなって、やけくそでお礼を言って廊下をかける。そして、シュヴァルツさんに扉を開けてもらう。

「アンジュ、ジュースは美味しかったか?」
「うん!」

 ソレイユに早速声をかけられる。ジュースはとっても美味しかったです。

「みんなは何を話してたの?」

 気になっていたことを尋ねてみる。するとヴァイスさんがニヤニヤした表情をして——。

「こいつらの恥ずかしい話を掘り返してたんだ。アンジュ、ソレイユは初対面の相手にはフィンの口調になるし、アレンは初対面だと無駄に元気アピールをするんだ」
「そうなんだ!」
「何言ってくれてんだ……」

 確かにソレイユは初めて会った時と口調が少し違うし、アレンは落ち着いたイメージだ。ヴァイスさんのいう通りだ!
 ぼくは新しい一面を知れて嬉しいけど、2人は恥ずかしそうにしている。

「あ、あと、アンジュ、アンジュになって欲しいものがあるんだ」
「なって欲しいもの?」

 ヴァイスさんの言葉に思わず聞き返す。なんだろう。僕は何になるんだろう。

「アンジュ、冒険者になって欲しい」
「ええー!」

———————————————————————————

 ギルマスの口調は対冒険者だと粗野ですが、対子供だと柔らかくなります。


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