怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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39)消えた高校生(岐阜県)

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岐阜県には、数多くの高校が点在している。
 その中の一校、Y高校——。
 県内でも歴史のある進学校のひとつで、生徒たちは日々、勉学に励んでいた。

 しかし、その学校には決して語られてはいけない噂があった。

 「深夜0時に旧校舎の3階へ行ってはいけない」

 それを破った生徒は——

 翌朝、教室から消える。

 この話を教えてくれたのは、Y高校の卒業生であるSさんだった。

 「在学中、俺たちは先生に口を酸っぱくして言われたよ。**“夜中に旧校舎の3階へ行くな”**って」

 「旧校舎? 使われていないのか?」

 「そう。十年以上前に新校舎が建って、旧校舎はほぼ廃墟みたいになってた。
 だけど、なぜか取り壊されずにそのまま放置されてたんだ」

 「それで、誰か行ったのか?」

 Sさんは、少し沈黙したあと、ゆっくりと語り始めた。

 「……俺の同級生が、一人、消えた」

***********************************

 Sさんの同級生、Kは怖いもの知らずだった。

 噂を聞いて、「本当に何かあるのか確かめてやる」と言い出した。

 そして、放課後——

 Kは一人で旧校舎に忍び込んだ。

 友人たちは止めたが、Kは笑ってこう言った。

 「お前ら、ビビりすぎ。明日、何もなかったって証明してやるよ」

 だが、翌朝——

 Kは、学校に来なかった。

 Kの両親が警察に捜索願を出し、大騒ぎになった。

 だが、Kはどこにもいなかった。

 唯一の手がかりは、Kのロッカーに残されたメモだった。

 そこには、こう書かれていた。

 「3階の奥の部屋……女がいた……助けて……」

 その文字は、かすれ、震えていた。

 Sさんたちは、どうしてもKの行方が気になり、深夜に旧校舎へ向かった。

 懐中電灯の光を頼りに、埃まみれの廊下を進む。

 そして——

 3階の奥の部屋の前で、立ち止まった。

 ドアには、古びたプレートがかかっていた。

 「3年D組」

 しかし——

 Y高校には、3年D組など存在しない。

 友人の一人が、意を決してドアを開けた。

 ギィ……

 中は、薄暗く、机と椅子が整然と並んでいた。

 しかし、部屋の中央に——

 誰かが座っていた。

 それは、制服を着た女子生徒だった。

 顔はうつむき、長い髪が垂れている。

 友人の一人が震えた声で言った。

 「……K……?」

 すると、女子生徒がゆっくりと顔を上げた。

 だが、それはKではなかった。

 女子生徒の顔は——

 目も鼻も口もない“のっぺらぼう”だった。

 Sさんたちは、悲鳴を上げて部屋を飛び出した。

 しかし、廊下を走る途中——

 教室のドアが次々と開いた。

 そこから、同じ制服を着た生徒たちが、無表情でこちらを見ていた。

 全員、顔がない。

 全員、こちらを見ている。

 Sさんは、必死で階段を駆け下り、旧校舎を飛び出した。

 そして翌朝——

 3年D組の教室は、跡形もなく消えていた。

 Kは、それ以来見つかっていない。

 しかし、ある日、学校の旧校舎で奇妙なものが発見された。

 「3年D組 出席簿」

 そこには、古びた字で数十人分の名前が記されていた。

 そして、一番下に——

 Kの名前が書き加えられていた。

***********************************

 もし、あなたが岐阜県の高校で「使われていない旧校舎」を見つけたら——

 決して、3階には行ってはいけない。

 なぜなら、そこには——

 「今も出席を待つ生徒たち」がいるのだから。
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