怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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83)畑に埋まるもの(千葉県)

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1. 夜にうごめく畑
 千葉県のとある村には、決して夜に近づいてはいけない畑があるという。

 「夜になると、畑の土が動く」
 「誰もいないはずの畑から、すすり泣く声が聞こえる」

 そんな噂が昔から囁かれていた。

 村の老人はこう言う。

 「あの畑には、昔、人が埋められたんじゃ……」

 これは、実際に起こった話である。

2. 廃れた畑
 Tさん(40代・男性)は、千葉県の郊外で小さな農場を営んでいた。

 ある日、隣接する畑の持ち主が突然亡くなり、土地を手放すことになった。

 Tさんは、格安でその畑を買い取ることにした。

 しかし、地元の人々は一様に顔を曇らせた。

 「あの畑だけは、やめたほうがいい……」

 「昔から、あそこには“何か”がいるんだ」

 Tさんは、迷信だと笑い飛ばし、その畑を使うことにした。

3. 畑の異変
 Tさんが新しい畑を耕し始めると、奇妙なことが起こった。

 畑の土を掘り返すと、古びた木の札が出てきた。

 **「供養」**と書かれた札。

 「なんだ、これは……?」

 さらに掘ると、白い布に包まれた何かが出てきた。

 Tさんは、布をめくった。

 すると——

 中には、人間の骨のようなものが入っていた。

4. 畑の声
 Tさんは、慌てて骨を元の場所に戻し、そのまま作業を続けた。

 しかし、その夜——

 「ガサ……ガサ……」

 寝ていると、外の畑から音がした。

 「……風か?」

 Tさんは、窓から畑を覗いた。

 そこには——

 誰かが土の中から這い出ようとしていた。

5. 土の中の手
 Tさんは、目を疑った。

 畑の一角の土がボコボコと膨れ上がり、黒い手がゆっくりと伸びていた。

 まるで、何かが地中から這い出ようとしているように——。

 「……なんだ、あれ……」

 Tさんは、急いで玄関を開け、畑へ向かった。

 しかし、畑に近づくと——

 そこには、何もなかった。

 土は、何事もなかったかのように、静まり返っていた。

 「……気のせいか?」

 Tさんは、恐る恐る家に戻った。

6. 夢の中の畑
 その夜、Tさんは奇妙な夢を見た。

 夢の中で、Tさんは畑を耕していた。

 しかし、鍬(くわ)が何か硬いものに当たった。

 掘り起こすと——

 白い布に包まれた死体が出てきた。

 そして、死体がゆっくりと顔をこちらに向けた。

 その顔は——

 Tさん自身だった。

7. 土の下の囁き
 Tさんは、夢から飛び起きた。

 全身が汗でびっしょりだった。

 しかし、まだ夢は続いているようだった。

 「……かえせ……」

 耳元で囁く声が聞こえた。

 Tさんは、恐る恐る足元を見た。

 すると——

 布団の下から、黒い手が伸びていた。

8. 村の老人の話
 Tさんは、翌日、村の老人を訪ねた。

 「この畑、何かあったんですか?」

 老人は、重い口を開いた。

 「昔、この畑には墓があったんじゃ……」

 「墓……?」

 「戦時中、身元不明の遺体を村人が埋めたんじゃよ……」

 Tさんは、震えた。

 「じゃあ、あの骨は……?」

 「掘り起こしたんじゃな……だから、怒っとるんじゃ」

9. 畑の封印
 Tさんは、急いで畑へ戻り、元の場所に供養の札を戻した。

 さらに、僧侶を呼び、お祓いをしてもらった。

 すると、その日以来——

 畑の異変は、ピタリと止んだ。

 しかし、Tさんにはひとつ、忘れられないことがあった。

 僧侶が祈祷を終えたとき、こんなことを言ったのだ。

 「これで、しばらくは大丈夫でしょう……」

 「しばらく……?」

 「この地は、一度動かすと、また誰かを引き込むのです……」

***********************************

 もし、あなたが千葉県の古い畑を訪れることがあれば——

 決して、夜に畑を覗いてはいけない。

 そして、もし——

 土の中から、誰かの囁く声が聞こえたら。

 その瞬間、あなたの足元には——

 土の中から伸びる手があるのだから。
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