わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。

楠ノ木雫

文字の大きさ
5 / 46

◇5 初めてのシャレニア王国

しおりを挟む
 私の嫁ぎ先は海の向こう。そのため移動は船と馬車となる。船は暁明シァミン王国のものを。そして陸地に着いたら待っていてくれているらしいシャレニア王国の馬車で移動するらしい。だから、船を降りたら付いて来てくれた皆とさようならだ。

 私は長年世話役として勤めてくれていた麗華リーファと二人でシャレニアに行く事になっている。今まで尽くしてくれた他の侍女や護衛達はついてこない。本当はしきたりで一人で嫁ぐ事になるのだが、お父様がどうしてもという事でリーファだけを連れていく事となった。


「ほ~ら出来たよ、遠慮えんりょしないでた~んとお食べ」

「ありがたくいただきます!」

「はぁ……姫様の料理は本当に美味しいです……体が温まります……心にみます……」

「それはよかった」


 付いて来てくれた皆のために毎日船の上で私が鍋をふるっている。もしかしたら嫁ぎ先で作らせてもらえない可能性があるから、今のうちに料理をしておこうという考えだ。

 でも、もうそろそろで皆との旅も終わる。あと5日くらいしたら嫁ぎ先の国に入ることになる。そこからまた首都まで何日かかかることになるんだけど……


「嫁ぎ先で食べられるご飯、美味しいといいなぁ」

「そうですね。暁明シァミンとは違ったお料理でしょうし……」


 まぁ、まだ少し時間があるんだから船の上でのご飯を堪能たんのうするとしよう。

 なんて思いつつ、今日も料理を披露ひろうした。



 それから数日後。嫁ぎ先であるシャレニア王国の港に入った。シャレニア王国は海に面しているから、この港に入ればもうシャレニア王国だ。


「お待ちしておりました、李・翠蘭スイラン様」

「ここからは我々シャレニア王国王宮騎士団がお送りいたします」


 やっとシャレニア王国に到着だ。あとは馬車で数日。この国の首都に予定通りに着いたら結婚式となる。


「じゃあまたね、皆」

「姫様っ!!」

「我々一同、姫様の幸せを願っております!!」

「どうか、お元気でっ!!」

「うん、皆も体に気を付けてね」

「姫様ぁ!!」


 あーはいはい泣かない泣かない。そこでシャレニア王国の人達見てるんだから。とにかく落ち着けお前達。


「お手をどうぞ」

「ありがとう」


 この世界に来て、ヨーロッパ風の馬車に乗るのはこれが初めてである。今までは中華風の馬車を使っていたから。マンガとかで見た事はあるけれど、いざ乗るとなると少し緊張する。

 踏み台があり、差し出してくれた手に自分の手を重ねて馬車の中へ。椅子はふかふか。座りごこちがとてもいい。きっと馬車が揺れたとしてもお尻が痛くならないかも。

 向こうの馬車だと正座だし足が痺れたから足を崩したり体育座りで我慢していたのだけれど、これなら快適ね。

 それからリーファも一緒に乗っての出発となった。

 国の王女だから大人しくしなければ、と心がけてはいるけれど、初めて踏み入れた地だから好奇心が出てしまう。そもそも、しきたりで暁明シァミンから出た事がないのだから気分が上がるのは当たり前だ。


「とても素敵な景色ですね」

「そうね、初めて来たから」

暁明シァミンと違う事ばかりではございますが、奥様のお役に立てるよう精進いたしますので、どうぞこれからもよろしくお願いします」

「リーファがいてくれてとても心強いよ」


 いや、本当に。しきたり通りに一人で嫁いだら大変な事になってたはず。だから来てくれたことが本当に嬉しい。

 お父様への感謝を噛み締めつつも、外を眺めた。国が変わると文化や雰囲気までが一気に変わる。シャレニア王国は、いわゆるヨーロッパ風だ。建物などを眺めると、何となくイギリスに旅行に来たような気分になる。まぁ、観光ではないのだから浮かれてはいられないけれど。



 その後は何事もなく決められたルートをたどり、泊まる事が予定されていた宿に無事到着することが出来た。馬車を降りて見渡すと、とても豪華な宿が見える。今日泊まるのはこの宿らしい。

 よくあるヨーロッパ系ぽい建物。二階建てで広い建物が多かった母国とは違って背が高い。窓を数えてみると、大体6階くらいだろうか。私としては、これホテルだろ、とツッコミたいところだ。


「ようこそいらっしゃいました、こちらへどうぞ」


 姫様モードを崩さずにホテルの中へ。煌びやかに室内を照らす大きなシャンデリアが天井に備え付けられている。母国だと灯籠だから、新鮮に感じる。

 部屋に案内され、高級ホテルとまではいかなかったけれど、ファンタジーマンガで出てきそうな貴族の屋敷を思わせる部屋に招かれた。

 赤を基調としたものばかりなところを見ると、きっと気を遣ったんだろうな。母国の本宮は赤が基本の建物ばかりだから。慣れない事ばかりだろうから、見慣れた色の部屋の方がいいだろう、と。

 うん、おもてなしの素晴らしいホテルだ。けれど、一番不安なものが一つ。

 食事のご準備が出来ましたと呼ばれ、とある部屋へ案内された。私の斜め後ろについてくるリーファもどこか緊張気味……というか、ハラハラしている。うん、言いたいことは分かる。

 案内されたへやには、テーブルと椅子が用意されいて、着席すると料理長が現れた。洋食の料理長のような白い服装だ。


「本日はこのホテルにお立ち寄りいただき誠に光栄でございます。僭越せんえつながら、このレストランの代表を務めております私がお食事をご用意させていただきました。シャレニア王国の特産物を取り入れたものをご用意いたしましたので、お楽しみいただけると光栄です」


 そうして私の前に並べられた料理。ここはフレンチレストランのコース料理のように出される仕組みらしく、食べ終わったら次の料理が出てくるらしい。最初に出てきたのは野菜がふんだんに使われた料理。オードブル、前菜なのかな。


「……」

「いかがでしょうか」

「……とても不思議な、味ね」


 私の口には到底合わない料理、と言いたい。それくらい、よく分からない味だった。美味しい、と言えば嘘になりそうだ。この、野菜に絡められたソースは一体何なんだ。

 その後スープを出された。見た目はポタージュのようだけれど……一口目でスプーンが止まってしまうくらい、強烈な味だった。濃い。非常に、濃い。


「……その、長旅で疲れてるみたいだから、量を減らしてもらいたいのだけれど、いいかしら」

「かしこまりました」


 食材すらよく分からず、恐らくあの野菜だろうというものはあったけれど知っている味は見つからず、その代わりに強烈な……スパイス? よく分からないけれど、私の口に合わなかった、では片づけられないくらいの衝撃的な味だった。これは、マズいぞ。と悪寒までしてしまう。

 私の様子を見ていたリーファは……青ざめていた。食材の為にちゃんと残さず食べるという私の性格を知っているから、ワインは「奥様はお疲れのようですからアルコールではなくお水でお願いいたします」と気を利かせてくれた。

 そして、お水を何杯も飲む私のコップに、空にならないよう何杯も注いでくれた。

 いやまさか。……いや、このホテルだけかもしれない。

 ……と思っていたのに、私の期待をことごとく粉々に砕いてきた。食材に失礼だぞと怒りを出しそうになってしまうほどの料理が私の目の前に出されて、料理を減らしてほしい、最終的には味を薄くしてほしいとまで言ってしまう始末。我儘ですみません。

 あぁ、家に帰りたい。

 早くも、心の中で弱音を吐いてしまった。まだ結婚式すら挙げていないにもかかわらず。


「奥様……」

「大丈夫……うん、大丈夫……」


 ほら、誰だって家庭の味って違うでしょ? 同棲とか結婚したら味をどちらかが合わせないといけなかったりするって前世で誰かに聞いた事あるし。だから、きっとそれだ。うん。これは当たり前の事、だと、思う。

 ……私……大丈夫かな……

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん
恋愛
 「氷の彫刻」と呼ばれる美貌の兄を持つ公爵令嬢のクラリッサは不審な視線に悩まされていた。  卒業を二日後に控えた朝、教室のクラリッサの机に置かれた一通の偏執狂者からの手紙。  親友イブを通じてイブの婚約者、近衛騎士団第四分団員のジョーンズに相談すると、第四分団長ネイトがクラリッサのパートナーとして卒業パーティーに出席してくれる事になって─── 〈注〉 このお話は「婚約者が記憶喪失になりました。」と「元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?」の続編になります。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春
恋愛
長年の夢である世界旅行に出掛けた叔父から、寂れた牧場を譲り受けた少女、イーヴィン。 彼女は畑を耕す最中、うっかり破壊途中の岩に頭を打って倒れた。 そして、彼女は気付くーーここが、『ハーモニーハーベスト』という牧場生活シミュレーションゲームの世界だということを。自分が、転生者だということも。 どうやら、神々の悪戯で転生を失敗したらしい。最近流行りの乙女ゲームの悪役令嬢に転生出来なかったのは残念だけれど、これはこれで悪くない。 近くの村には婿候補がいるし、乙女ゲームと言えなくもない。ならば、楽しもうじゃないか。 婿候補は獣医、大工、異国の王子様。 うっかりしてたら男主人公の嫁候補と婿候補が結婚してしまうのに、女神と妖精のフォローで微妙チートな少女は牧場ライフ満喫中! 同居中の過保護な妖精の目を掻い潜り、果たして彼女は誰を婿にするのか⁈ 神々の悪戯から始まる、まったり牧場恋愛物語。 ※この作品は『小説家になろう』様にも掲載しています。

【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました

藤原遊
恋愛
【溺愛・成長・政略・糖度高め】 ※ヒーロー目線で進んでいきます。 王位継承権を放棄し、外交を司る第六王子ユーリ・サファイア・アレスト。 ある日、後宮の片隅でひっそりと暮らす少女――カティア・アゲート・アレストに出会う。 不遇の生まれながらも聡明で健気な少女を、ユーリは自らの正妃候補として引き取る決断を下す。 才能を開花させ成長していくカティア。 そして、次第に彼女を「妹」としてではなく「たった一人の妃」として深く愛していくユーリ。 立場も政略も超えた二人の絆が、やがて王宮の静かな波紋を生んでいく──。 「私はもう一人ではありませんわ、ユーリ」 「これからも、私の隣には君がいる」 甘く静かな後宮成長溺愛物語、ここに開幕。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!

seo
恋愛
 血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。  いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。  これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。 #逆ハー風なところあり #他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!

屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。 どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。 そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。 そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。 望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。 心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが! ※あらすじは時々書き直します!

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

処理中です...