わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。

楠ノ木雫

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◇16 緊張しないわけがない。

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 側室はいらない。そんな言葉の後にいろいろと想像してしまったせいで、夜までずっとそわそわしてしまった。

 だって、結婚式後旦那様は邸宅に帰ってこれなくて……初夜をしていない。

 今日帰ってきたという事は……だよね。

 この時間が近づいていくにつれて心臓の音がどんどんうるさくなっていて壊れてしまうのではないかと思うくらいだ。

 寝室でソファーに座って旦那様を待っているけれど……もう寝ていい? いいよね? というところでいきなりドアが開かれた。旦那様だ。バレた? というくらいのグッドタイミングだった。

 そして、私を視界に入れた旦那様は微笑みつつ近くに来て、よっこいしょと隣に座ってきた。

 ……今、絶対顔真っ赤になってる。大げさなくらいに肩上がっちゃったもん。絶対に変に思われてる。


「ははっ、緊張しなくてもいいよ」

「……はい、ありがとうございます」


 ……笑われた。だいぶ緊張して気にしてるって、バレた。うわぁ、恥ずかしい……

 けど……顔を覗き込んで微笑んでくるの、やめてもらっていいですか。余計赤面しちゃうんですけど。


「招集がかかったとはいえ、ほったらかしにてごめんな」

「あ、いえ、お忙しい事は理解していますからお気になさらないでください」

「……」


 旦那様は、私の顔を覗きつつも、頭を撫でてきた。やばい、それだけで照れる。


「せっかく夫婦になったんだから、そんなに堅苦しくしたくないって思ってるんだけど、スイランちゃんはどうかな」

「え? あ、はい、私も……」

「うん、ありがとう」


 また、頭を撫でられた。

 ……子ども扱い、というやつか、これ。

 まぁでも、19歳の私に対し、旦那様は今30歳だ。11歳も差があると、旦那様にとって私は子供も同然か。

 となると……今日は初夜はない?


「だから、これからはスイランちゃんの事たくさん教えてほしいな。俺も色々と知ってもらえるよう努力するし」

「……あ、ありがとうございます」

「うん」


 楽しい結婚生活、って言ってくれたことは嬉しいし、私の事をたくさん知りたいとも言ってくれたことも嬉しい。けれど……こんな変態思考は絶対に知られたくないな。

 ガウンを着ていらっしゃる旦那様の腹筋を見ないようにだいぶ頑張ってるんだから。こんなに容姿端麗で優しくて最高すぎる旦那様に幻滅なんてされたくないに決まってる。

 せっかく、私の事気遣ってくれたりしてくれたのに。アホか、私。


「あぁ、さっき話は聞いたんだ。知らなかったとはいえ迷惑をかけちゃって悪かったよ。ごめんな」

「あ、いえ……」

「あのいとことは公式の場でしか顔を合わせた事がないし、泊まった事も今まで全く・・なかったから安心して。だから、あの伯母上達の事は全て・・忘れてくれていいから」

「え……」

「忘れていいよ」

「……はい」


 なんか……圧が凄い。しかも、全く、とかだいぶ力が入っているような気がする。まぁ、これで離婚に繋がってしまえば国際問題だから何となく気持ちも分かるけれど、私はその気は全くない。


「緊張はとれたかな?」

「……え?」

「ちゃんと会ったのは今日が初めてだし緊張するだろ? もう大丈夫?」


 まぁ、おにぎり事件の時はこの人がのちの旦那様だって知らなかったわけだから、今日が初めてだって言葉は嘘ではない。けれど、その件に関してのことが聞きたくても、それどころじゃない。


「……すみません」

「はは、やっぱ難しいか」


 そう言いつつ笑顔を見せてくれた。

 ……やっぱりやるんだ、初夜。これから? え、本当に? 私心の準備全く出来てないんですけど?

 本当に初夜をやるのかとドキドキな私に気が付いたらしい、旦那様はクスクス笑っていた。それを聞いて余計恥ずかしく感じてしまう。


「はい、じゃあ失礼して」

「わっ」


 いきなり手を伸ばしてきたかと思うと、そのまま持ち上げられてしまった。お姫様抱っこなんてこんな歳で、しかもこんなイケメンにだなんて恥ずかしいに決まってる。

 顔が大噴火しそうなくらいに熱くなってしまっていたら……ベッドに到着し、座った旦那様の膝にまたがるような形で乗せられた。困惑し下がろうとしたけれど、腰に腕を軽く回されたので動けない。

 重いかな、と思いつつも顔が熱々になって旦那様の顔が見られない。視線を下に降ろすけれど、そうすると少しはだけた旦那様の胸板が視界に入るため余計恥ずかしくなる。


「俺、成人男性より体デカいからいきなり押し倒したら怖いだろ。これなら怖くない?」

「えっ、あ、は、はぃ……」


 顔が整いすぎている。少し遠くから見ても顔が整っているのがよく分ったのに、こんなに近くだったら眩しすぎて鼻血が出そうだ。やばい、顔緩んじゃってるのバレたらどうしよう……


「抱きしめていい?」

「ドゾ……」


 肩に顔を埋めつつぎゅ~っと抱きしめてきた。私の身体が小さいのか、旦那様が大きいのかすっぽり収まってしまった。やばい、イケメンに抱きしめられてる。そう思うと顔が熱くなってくる。

 早く冷めろ冷めろと顔の熱を冷まそうと念じて耐えていたけれど、離れては頭を撫でられる。笑顔が、眩しい……


「やっぱり可愛いな」

「……」

「ん?」


 顔が近づき、キスをされてしまった。いきなりの事で思考が停止し、数秒後には頭から湯気が出そうなくらいに顔が熱くなってしまった。

 そんな私の様子に、クスクス笑われてしまう。


「結婚式でもキス、したと思うんだけど?」

「う……」


 したけど……したけど! それとこれとはわけが違うんだって! こんなに近くでされたらどうしたらいいか分からないんだって!

 またキスをされると、続けてもう一度。それが何度も何度も角度を変えてキスをされて、どんどん密着する時間が長くなって。


「うん、上手」


 またキスをされ、今度は後頭部に触れられて少し押されてしまい、逃げられなくなってしまった。口内でも、旦那様の舌が私の舌を追いかけてくる。

 私を見てくる、旦那様の瞳。私のピンクの瞳とは違う、金色の瞳が印象深く見えてくる。

 薄暗い部屋の中で、一際光ってる。

 ゾクゾクして、変な声が口から漏れそうで、恥ずかしくて逃げたくなる。けれど許してくれなくて、更に動きを大胆にしてくる。

 ようやく唇同士が離れた頃には、もう頭がくらくらして溶けそうになっていた。


「かわい」


 息切れが止まらない。この感覚は私の知らないもので混乱してしまう。

 頬を撫でられた。目の前の旦那様は微笑んでくる。


「優しくするから、安心して」

「っ……」


 一応初夜の事は知っている、本で学んだ。けれど、これは……ある意味私は子供だったんだと思い知らされるほどに濃密だった。
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