わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。

楠ノ木雫

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◇17 自分は子供に見えるだろうか

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 朝、暖かい日差しと温もりを感じながら目を覚ました。

 頭を誰かに撫でられてるように感じる。


「起きた?」

「……」

「おはよう、スイラン」


 旦那様が、隣にいた。

 同じベッドで、横になって。

 その瞬間、ぶわっ、と昨日の記憶が蘇り、一気に羞恥心が溢れて反対側に体をひねらせてしまった。

 昨日の事が鮮明に頭の中に映し出され、思い出すな一旦落ち着けと自分に言い聞かせてもなかなか止まらず朝から大混乱真っただ中である。


「朝から可愛いな」


 ぎゅ~っと抱きしめられ、肩が上がる。しかも私が頭を乗せてるの旦那様の腕じゃない!! 筋肉がヤバすぎる!! ……じゃなくて落ち着かせる時間をください!! と心の中で叫んだが多分彼には届いていない。

 抱きしめられてるから、背中に旦那様が密着してる。後ろからすごく体温を感じる。余計心臓の脈は大きく速くなり、旦那様に聞こえてしまうのではないかと思うと余計恥ずかしくなってしまう。


「腰は痛くない? 身体は大丈夫?」

「っ……」


 いきなり話しかけられ、額にも大きな手が添えられてしまい驚きで肩が上がってしまった。


「大丈夫?」

「え、あ、はい、ダイジョブ、デス……」

「熱はないみたいだけど……ん? ははっ」


 後ろから動き出した旦那様が、上半身を上げてこちらを覗いてきていた。驚きと恥ずかしさから顔がどんどん熱くなってきてしまう。そして、そんな私を見た旦那様が、クスクスと笑っているから、もくもくと頭から湯気が出てきそうだ。


「ちょっとお熱かな? リーファを呼ぼうか?」

「あ、いえ、あの、大丈夫、です……」

「ふはっ、可愛いな。スイランは恥ずかしがり屋さんか」

「……」


 恥ずかしがり屋さん……どうしてそれだけの言葉を旦那様が言うだけで恥ずかしくなるのか分からない。自分は決して恥ずかしがり屋さんみたいな可愛い人種ではない……はず。いや、あれは誰だって恥ずかしいでしょ。絶対そう。


「昨日は無理させてごめんな。今日はゆっくりしようか。使用人達にも呼ぶまで来なくていいと昨日言ってあるから大丈夫」

「……」

「それに俺も仕事はないしね。お腹は空いてる?」


 ……なるほど、だからリーファが来ないのか。そう納得しつつも大丈夫と答えた。

 けれど……私の長い髪を梳いてくる手に意識がいってしまって、肩が震えそうになる。いや、意識しすぎだって私。


「邸宅はどう? 暁明と全然違う建物だから驚いただろ。こっちは4階建てだからな」

「あ……階段は沢山ありますけど、少しすれば慣れると思います」

「そっか。確か、まだ邸宅内の案内はしてないんだったな。今日か明日にでも俺がしてあげるよ」

「……ありがとうございます」


 まぁ、こういう建物は前世で慣れてはいるけれど。暁明は2階建てで無駄に広い建物ばかりだったからこっちとはちょっと違うからな。


「暁明の王宮ほどではないけれど、ここは庭が広いんだ。後で行ってみようか」

「はい」


 暁明の王宮の庭は本当に広い。そして、他国には中々ない花や薬草も沢山植わっている。それ見たさにウチに来る使節団もいたほどに素晴らしい庭だ。というか、中華ファンタジーだから庭の造りも全然違うから、新鮮さが出ていたのかな。


「でも、環境が変わると体調を崩しやすいから午前中はちゃんと休もうか」

「はい……」


 ……だいぶお優しい旦那様だ。だって、昨日だって……いや、今思い出さないほうがいい。また顔熱くなる。

 でも、本当に旦那様は大人だ。まぁ、私とは11歳も違うからそもそも大人と子供なんだけど。それに、私の感覚だと19歳は未成年だし。

 かっこいいなぁ……かっこよくて、大人の余裕があって、優しさもあって、紳士でもある。そんな人が私の旦那様なのか……やばい、顔が緩みそう。

 どうせ政略結婚なんだから愛なんてない、彼には愛する者がいる、って思っていてのこれだから……余計だ。


「ん? もう起きる? 湯浴みしたいよね」

「……はい」

「じゃあアドラ達を呼ぼうか」


 これ、本当に大丈夫?

 でも、そういえば旦那様に聞きたいことがまだいくつもある。たとえば、あのおにぎり事件とか。気になるけれど、どう切り出せばいいんだろう。


「さ、行っておいで」

「はい……」


 もう湯浴みの準備は出来ていたらしく、リーファに連れられて私は隣の浴室に向かった。

 私が先でいいのかな、とも思ったけれど大人の余裕をかます旦那様にどう言っていいのか分からない。というか、その余裕に勝てない。おかしいな、前世を入れれば私の方が年上のはずなのに。


「……リーファ、私って子供に見える?」

「いえ、そんな事はございませんよ?」

「そう……?」


 いや、私が子供かどうかじゃなくて、旦那様が大人すぎるって事? 私がどうかという問題じゃなくて。

 そんな旦那様に子供に見られたくないとは思っているけれど……どう思われているのかは分からないし、これを聞いても優しい旦那様はきっとそんな事はないって言ってくれると思う。

 さて、困ったぞ。この世界での夫婦像とはどういうものなのだろうか? ……私のお父様とお母様を例にしちゃいけないのは分かってるけど。


「よかったですね、奥様」

「ん?」

「色々とございましたが、とてもお優しい方でよかったです」

「……そう、ね」


 うん、まぁ、色々とあった。結婚式、結婚披露宴後に旦那様がお仕事に行ってしまい代わりにグロンダン夫人達が来ちゃったんだから。

 とはいえ、それは終わった事。

 とりあえず、私がするべきことは一つ。旦那様に美味しいご飯を食べてもらう事だ。美味しいご飯を食べられるのは嬉しいし楽しいし、栄養もちゃんと取れて身体が元気になる。旦那様は騎士団総括なんだから、身体が主本。なら、元気にお仕事をしてもらわなきゃ!




 私は知らなかった。

 私が寝室から出た時。


「やば……可愛い……」


 旦那様が顔を手で覆って悶々としていたことを。


「どうしよう……我慢出来なそう……」


 私の耳には、届かなかった。

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