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◇32-3 お久しぶりの次は修羅場
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ようやく私達はダルナード邸宅に戻ることが出来たのだが……ミルシス王国第二王子殿下と、近衛騎士団副団長をお迎えする事となってしまった。
私達のいる客間のローテーブルに置かれているのは、今回裏オークションで購入したガラス細工の置き物と壺、そして捕まえた男性が持っていた箱だ。
そういえば、あの捕まった男性はどうなったんだろう。旦那様には「スイランは気にしなくていいよ」とさらっと流されたけれどさ。
「ダルナード卿には助けられました。請求先は我が国の王室にお願いいたします」
「私としては壺の代金は大したことないですが、これは国を交えた事ですからね。早急に送らせていただきます」
助けられた……もしかして、壺の代金という事か。旦那様があの壺を買った事を知っていたという事は……もしかしてあのオークションで壺を落札した者達の最後の一人が王子だったのでは……?
でも、さ……流石に王族なんだからそのお金は出せるはずだ。となると……目立つな、という事だろうか。……いや、ちょっと待て。
「国内での問題が知られてしまっていたとは実に恥ずかしい事ではありますが、まさか名前を貸してくださるとは思いませんでした。これで、少しは大人しくなりそうです」
「それはよかった」
……ちょっと待て、なによこれ。一体どんな国内問題が起こってるのよ。確か王子の国とシャレニアってあまり交流がなかったわよね。それなのに、わざわざ第二王子が直接ここまで来てあの男を追ってきた。となると……確かに何か面倒くさい事情がありそうではある。
その解決策に旦那様の名前を貸してもらった。という事よね……? 何だか、私だけ置いてけぼりにされてない?
「やっぱり、この壺か」
「ちゃんと匂いは残ってますよ。証拠はこれで十分かと思います」
「えぇ、これならすぐに片づきそうです」
匂い……? 片付く……?
一体何の事だ、これは。
「……で、ダルナード夫人よ。これは一体なんだ。あのシルクハットじいさんからの依頼って事はどうせ面倒臭いもんだろ」
「……まぁ、そう、ね」
この王子には会うたびいつもスイランスイランと呼ばれていたから、何となく調子が狂うな。とはいえ、旦那のいる前で気安く妻の名前を呼ぶのはアウトだと分はわきまえているという事か。さすが王子だ。
でもこれ、ここで話しちゃっていいのだろうか。一応ダルナード邸だけど、知られちゃまずいかな。
とりあえず、一応知っているリーファ以外の使用人を下がらせた。その行動に旦那様は少し驚いているようだ。そして、王子は呆れている。
「……ミシェル、お前も下がれ」
「……」
「トワイニス副団長、早急に下がれ」
「……かしこまりました」
あぁ、これはこいつに聞かせちゃいけないやつだと判断したのね。うん、賢明な判断かもしれない。
「それで?」
「……はぁ。スラディ大公がどうして私を裏オークションに参加させたのか。それは、これを探してほしかったんだと思う」
「あぁ、じゃあこれは結構人目についてはまずいものだったという事か」
「まぁ……確かにこれを作った理由がバレるのはまずいわね」
いやな予感がする、と顔に書かれてるぞ。そこの王子。お前も部屋出るか?
「これを作った製作者はかなりの腕の人だったんじゃないか? スイラン」
なるほど、旦那様もテリサ王国との交流はなくとも知っているのね。
「実はこれ、このまま置くものではないんです。これは大きな生け花の一部なんですよ」
そう、これだけでも十分大きくはあるけれど、これは一部分で、本当はもっと大きなものなのだ。
「大きなお皿の形をした花瓶に、溢れるほど大きな花がいくつも乗せられたガラス細工の置き物なんですよ。このように花が取り外し可能で、花瓶と花5個で全部で6つに分けることが出来ます」
「……お前、やけに詳しいけど……見た事があるのか?」
「いや? 絵に描かれたものを見ただけよ。そして、それはテリサ王国の王城にあるコレクションルームに置かれたうちの一つ」
それだけで、二人は予測が出来たらしい。そんな顔を見せてきた。
「なるほどね、じゃあ盗まれたと」
「はい。一緒に入ってた手紙によると、偽物とすり替えられたそうです。一応犯人は捕まえたようですが、問題はその本物がもう手放した後だったという事です。だいぶ探したようですが見つからず、手掛かりとして裏オークションに出る可能性があったからと私に依頼したのでしょうね」
「開催国がシャレニア王国だったからだとしても、何故スイランに?」
そう、例えシャレニア王国が開催国だったとしても、自分達で参加すればいいだけの事だ。参加者の中にだって他国からの者達もいるはずだ。
それなのに、私に依頼してきた。
「見た事があるからです」
「えっ?」
「本物のひとかけらを持っているからですよ」
「持ってるって、事は……」
「おいおい、あのじいさん、まさか……!?」
そう、母国である暁明王国に保管されているのだ。その一部である花が王宮に保管されている。
まぁ色々あって貸しを作り、その感謝の気持ちとして贈られてきたうちの一つだ。話にも聞いていたし、テリサ王国の国王陛下も愉快な人だから仕方なかった。
「そしてこれは、テリサ王国の先代国王が、愛妾のために作らせて贈った品です」
「……」
「やっぱりかぁぁぁぁぁぁ!! あんのクソジジイィィィ!!」
そう、テリサ王国の先代国王には愛妾がいた。それはそれは気に入って溺愛したとまで聞いている。まぁ、王妃殿下もいらしたが、あの人は死ななきゃこれは治らないと嫉妬以前に諦めていたそうだ。それはそれで怖い話である。
とはいえ、国王陛下が愛妾にご執心とあればよく思わない者達もいる。それに何よりその愛妾はあまり身体が良くなかったと聞いた。確か、30代で病死してしまったと言っていたような。だからこれが王城に残ったというわけだ。
けれど、この一部が外に出回ると、その事実も広まってしまう可能性があるからと内密に探し回っていたそうだ。だから、テリサ王国の者が裏オークションに参加しこれを落札するのはあまりよくないと思い、この事実を知っている内の一人である私に回ってきたというわけだ。
そして、何故母国にプレゼントしてしまったのかというと……テリサ王国はガラス細工で有名な国だからと持ってきてくれた最高級品の一部である一つの花を幼かった私に見せてくれて、「きれい!」って言ってしまったがためにそうなってしまったのだ。
その時は幼かったとはいえ、お母様の顎が外れるくらいの驚きように疑問を持たなければいけなかった。16歳の頃にこのガラス細工の事を聞いた時には、丁重にお返ししたいと思ったのに別にいいと言われれば厳重に保管するしかない。はぁ、今思い出すだけでも恐ろしい話だ。
ということで、まずはこの恐ろしい代物を早くテリサ王国に送ってしまわなければならない。
「いかがなさいました! テモワス殿下!!」
いきなり開かれた、この部屋のドア。王子が大きな声を出すから、というよりお前が耳を澄ませていたから、の方が正解か。そして、待機していたらしいアドラやセドリックまで入ってくる始末。
この事は他言無用でお願いしますと旦那様と王子に釘を刺したかったけれど、まぁお二人も分かっているだろうからいっか。
それよりも、おいおチビちゃん。まだ旦那様の事睨み散らすか。まぁ、結婚はちょっとドタバタしててミルシス王国の使節団の方々の来訪すらなかったから風の噂で私が結婚したと聞いたみたいだし……
「ミシェル、落ち着け」
「スイランさぁん……」
あーあ、ここにも一人いたよわんこが。しょんぼりすんなこの野郎。
「私が男だったら……って、何回後悔したか……」
「それでもスイランは渡さないけど」
「なっ!!」
「旦那様」
ちょっと旦那様、そこ張り合うところじゃないですからね。黙ってて、お願いだから。
はぁ、本当にミシェルは懲りないわね……
「はぁ……ミシェル、私は結婚したけれど、ミシェルを嫌いになったわけではないんだから。それに、今回の件でミルシス王国と関わりが出来たのだからまた会う事もあるでしょ。その時は、また楽しくお話してくれない?」
「スイランさん……! はいっ!! お話しますっ!!」
おい、しっぽ振るな。どんだけ嬉しいのよこの子は。
これで一件落着? と思っていたのに……あろうことか隣に座っていらっしゃるわんこが軽く抱きしめてきたのだ。
これは、マズい。そう悟った時には、遅かった。
「スイラン、愛してる」
だ、だ、旦那様ぁ!? 何でこんなところでそんな事言ってくるのよっ!! しかもそんなにいい笑顔でっ!!
「お、前っ!!」
「スイランは? 俺の事好き?」
のしかかってくる旦那様と、騒ぎ出すミシェル。これ、どうしたらいいの……!? というか、旦那様、これ絶対分かっててやったな? 絶対そうよね、顔に書いてあるし!!
「スイラン」
「う……」
「スイラン」
これは、絶対に言わせるぞとでも思ってるな……じゃあ、言わなきゃ、終わらない……?
ちらり、と向かい側のソファーに座る王子と、その向かい側に立つミシェルに視線を送ったけれど……すぐに旦那様に戻した。あの、そこにいらっしゃるリーファさん、助けていただけないでしょうか。
「あ、まぁ、だ、大好きですけど……」
「嬉しい、ありがとう」
これで満足か? と思って油断していたら、あろうことか、キスをしてきた。は、恥ずかしすぎる……
「……俺さ、第二王子だから婿入りでもしてのんびりやろっかなって思ったけど、それだとスイランが王女になるからないなって思ってよかったかも。あんな獣に立ち向かう勇気ないわ」
「スイランさんっ!!」
「ミシェル、諦めろ」
聞き捨てならない事を聞いたような気がするけれど、恥ずかしすぎてそちらを向けない。バシバシと旦那様の肩を叩くけれど、にこにこと離れてくれない。
「スイラン、お客様さっさと帰して夫婦の時間にしよっか」
「旦那様ぁ!?」
「テモワス王子、今回の件は早くそちらの国王陛下にご報告された方がよろしいかと存じます。国を交えた案件ですから早急に対処するべきかと。こちらもすぐ陛下にお伝えする所存ですのでご安心ください」
おい、旦那様。そういう事は私を離してから言ってくれ。お願いだから。
「……はぁ、はいはい、そうするよ。いろいろとごちそうさまだ。トワイニス副団長、早急に団員達を招集し戻るように」
「……」
「トワイニス副団長」
「……かしこまりました、テモワス王子」
「よし」
……だいぶしょんぼりだな、おチビちゃん。いや、泣きそう?
「ミシェル、またね」
「っ!? は、はい、スイランさん!」
バイバイ、と手を振って二人を見送った。
色々と話をしたいところではあったけれど、今回は仕事のようだったから仕方ないな。今度は、これから行われるシャレニア国王誕生祭になるかな。一応招待するよう私の方から提案させていただいてるし。
きっと、ミシェルは一番に手を上げそうだし、また会える事だろう。
……で。
「旦那様」
「……」
「わざとですか」
「……」
黙ってしまった旦那様は、私の肩に頭を乗せてきた。髪の毛が当たってくすぐったい。
なるほど、いじけてしまったという事か。流石わんこ、可愛いな。
「……大人げない?」
「そんなことないですけど、恥ずかしいので人前ではやめてください」
まぁ、奪っただのなんだのって言われてたし……しょうがない、で済ませていいのか?
とりあえず、旦那様の機嫌を直してからテリサ王国のスラディ大公へお手紙を書くとしよう。……いや、お手紙は明日になりそうな予感がする。
「それでスイラン、さっきは『好き』じゃなくて『大好き』って言ってくれたよね」
……ん?
いきなり頭を上げたかと思ったら、ニコニコと私を見てくる旦那様。
「嬉しいなぁ。じゃあもう一回言って?」
「えっ……」
「ダメ?」
思考停止し、ようやく何を言われたのか理解した頃には押し倒されてしまっていた。待って、ちょっと待って、もう一回ですって?
遠くで、「失礼します」とドアが閉まった音がした。ちょっと、待って、逃げないでよリーファ!?
「邪魔者は全員消えたようだし、さ、スイラン」
「う……」
こ、れは……どうやっても、逃げられないのでは……?
私達のいる客間のローテーブルに置かれているのは、今回裏オークションで購入したガラス細工の置き物と壺、そして捕まえた男性が持っていた箱だ。
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「私としては壺の代金は大したことないですが、これは国を交えた事ですからね。早急に送らせていただきます」
助けられた……もしかして、壺の代金という事か。旦那様があの壺を買った事を知っていたという事は……もしかしてあのオークションで壺を落札した者達の最後の一人が王子だったのでは……?
でも、さ……流石に王族なんだからそのお金は出せるはずだ。となると……目立つな、という事だろうか。……いや、ちょっと待て。
「国内での問題が知られてしまっていたとは実に恥ずかしい事ではありますが、まさか名前を貸してくださるとは思いませんでした。これで、少しは大人しくなりそうです」
「それはよかった」
……ちょっと待て、なによこれ。一体どんな国内問題が起こってるのよ。確か王子の国とシャレニアってあまり交流がなかったわよね。それなのに、わざわざ第二王子が直接ここまで来てあの男を追ってきた。となると……確かに何か面倒くさい事情がありそうではある。
その解決策に旦那様の名前を貸してもらった。という事よね……? 何だか、私だけ置いてけぼりにされてない?
「やっぱり、この壺か」
「ちゃんと匂いは残ってますよ。証拠はこれで十分かと思います」
「えぇ、これならすぐに片づきそうです」
匂い……? 片付く……?
一体何の事だ、これは。
「……で、ダルナード夫人よ。これは一体なんだ。あのシルクハットじいさんからの依頼って事はどうせ面倒臭いもんだろ」
「……まぁ、そう、ね」
この王子には会うたびいつもスイランスイランと呼ばれていたから、何となく調子が狂うな。とはいえ、旦那のいる前で気安く妻の名前を呼ぶのはアウトだと分はわきまえているという事か。さすが王子だ。
でもこれ、ここで話しちゃっていいのだろうか。一応ダルナード邸だけど、知られちゃまずいかな。
とりあえず、一応知っているリーファ以外の使用人を下がらせた。その行動に旦那様は少し驚いているようだ。そして、王子は呆れている。
「……ミシェル、お前も下がれ」
「……」
「トワイニス副団長、早急に下がれ」
「……かしこまりました」
あぁ、これはこいつに聞かせちゃいけないやつだと判断したのね。うん、賢明な判断かもしれない。
「それで?」
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「あぁ、じゃあこれは結構人目についてはまずいものだったという事か」
「まぁ……確かにこれを作った理由がバレるのはまずいわね」
いやな予感がする、と顔に書かれてるぞ。そこの王子。お前も部屋出るか?
「これを作った製作者はかなりの腕の人だったんじゃないか? スイラン」
なるほど、旦那様もテリサ王国との交流はなくとも知っているのね。
「実はこれ、このまま置くものではないんです。これは大きな生け花の一部なんですよ」
そう、これだけでも十分大きくはあるけれど、これは一部分で、本当はもっと大きなものなのだ。
「大きなお皿の形をした花瓶に、溢れるほど大きな花がいくつも乗せられたガラス細工の置き物なんですよ。このように花が取り外し可能で、花瓶と花5個で全部で6つに分けることが出来ます」
「……お前、やけに詳しいけど……見た事があるのか?」
「いや? 絵に描かれたものを見ただけよ。そして、それはテリサ王国の王城にあるコレクションルームに置かれたうちの一つ」
それだけで、二人は予測が出来たらしい。そんな顔を見せてきた。
「なるほどね、じゃあ盗まれたと」
「はい。一緒に入ってた手紙によると、偽物とすり替えられたそうです。一応犯人は捕まえたようですが、問題はその本物がもう手放した後だったという事です。だいぶ探したようですが見つからず、手掛かりとして裏オークションに出る可能性があったからと私に依頼したのでしょうね」
「開催国がシャレニア王国だったからだとしても、何故スイランに?」
そう、例えシャレニア王国が開催国だったとしても、自分達で参加すればいいだけの事だ。参加者の中にだって他国からの者達もいるはずだ。
それなのに、私に依頼してきた。
「見た事があるからです」
「えっ?」
「本物のひとかけらを持っているからですよ」
「持ってるって、事は……」
「おいおい、あのじいさん、まさか……!?」
そう、母国である暁明王国に保管されているのだ。その一部である花が王宮に保管されている。
まぁ色々あって貸しを作り、その感謝の気持ちとして贈られてきたうちの一つだ。話にも聞いていたし、テリサ王国の国王陛下も愉快な人だから仕方なかった。
「そしてこれは、テリサ王国の先代国王が、愛妾のために作らせて贈った品です」
「……」
「やっぱりかぁぁぁぁぁぁ!! あんのクソジジイィィィ!!」
そう、テリサ王国の先代国王には愛妾がいた。それはそれは気に入って溺愛したとまで聞いている。まぁ、王妃殿下もいらしたが、あの人は死ななきゃこれは治らないと嫉妬以前に諦めていたそうだ。それはそれで怖い話である。
とはいえ、国王陛下が愛妾にご執心とあればよく思わない者達もいる。それに何よりその愛妾はあまり身体が良くなかったと聞いた。確か、30代で病死してしまったと言っていたような。だからこれが王城に残ったというわけだ。
けれど、この一部が外に出回ると、その事実も広まってしまう可能性があるからと内密に探し回っていたそうだ。だから、テリサ王国の者が裏オークションに参加しこれを落札するのはあまりよくないと思い、この事実を知っている内の一人である私に回ってきたというわけだ。
そして、何故母国にプレゼントしてしまったのかというと……テリサ王国はガラス細工で有名な国だからと持ってきてくれた最高級品の一部である一つの花を幼かった私に見せてくれて、「きれい!」って言ってしまったがためにそうなってしまったのだ。
その時は幼かったとはいえ、お母様の顎が外れるくらいの驚きように疑問を持たなければいけなかった。16歳の頃にこのガラス細工の事を聞いた時には、丁重にお返ししたいと思ったのに別にいいと言われれば厳重に保管するしかない。はぁ、今思い出すだけでも恐ろしい話だ。
ということで、まずはこの恐ろしい代物を早くテリサ王国に送ってしまわなければならない。
「いかがなさいました! テモワス殿下!!」
いきなり開かれた、この部屋のドア。王子が大きな声を出すから、というよりお前が耳を澄ませていたから、の方が正解か。そして、待機していたらしいアドラやセドリックまで入ってくる始末。
この事は他言無用でお願いしますと旦那様と王子に釘を刺したかったけれど、まぁお二人も分かっているだろうからいっか。
それよりも、おいおチビちゃん。まだ旦那様の事睨み散らすか。まぁ、結婚はちょっとドタバタしててミルシス王国の使節団の方々の来訪すらなかったから風の噂で私が結婚したと聞いたみたいだし……
「ミシェル、落ち着け」
「スイランさぁん……」
あーあ、ここにも一人いたよわんこが。しょんぼりすんなこの野郎。
「私が男だったら……って、何回後悔したか……」
「それでもスイランは渡さないけど」
「なっ!!」
「旦那様」
ちょっと旦那様、そこ張り合うところじゃないですからね。黙ってて、お願いだから。
はぁ、本当にミシェルは懲りないわね……
「はぁ……ミシェル、私は結婚したけれど、ミシェルを嫌いになったわけではないんだから。それに、今回の件でミルシス王国と関わりが出来たのだからまた会う事もあるでしょ。その時は、また楽しくお話してくれない?」
「スイランさん……! はいっ!! お話しますっ!!」
おい、しっぽ振るな。どんだけ嬉しいのよこの子は。
これで一件落着? と思っていたのに……あろうことか隣に座っていらっしゃるわんこが軽く抱きしめてきたのだ。
これは、マズい。そう悟った時には、遅かった。
「スイラン、愛してる」
だ、だ、旦那様ぁ!? 何でこんなところでそんな事言ってくるのよっ!! しかもそんなにいい笑顔でっ!!
「お、前っ!!」
「スイランは? 俺の事好き?」
のしかかってくる旦那様と、騒ぎ出すミシェル。これ、どうしたらいいの……!? というか、旦那様、これ絶対分かっててやったな? 絶対そうよね、顔に書いてあるし!!
「スイラン」
「う……」
「スイラン」
これは、絶対に言わせるぞとでも思ってるな……じゃあ、言わなきゃ、終わらない……?
ちらり、と向かい側のソファーに座る王子と、その向かい側に立つミシェルに視線を送ったけれど……すぐに旦那様に戻した。あの、そこにいらっしゃるリーファさん、助けていただけないでしょうか。
「あ、まぁ、だ、大好きですけど……」
「嬉しい、ありがとう」
これで満足か? と思って油断していたら、あろうことか、キスをしてきた。は、恥ずかしすぎる……
「……俺さ、第二王子だから婿入りでもしてのんびりやろっかなって思ったけど、それだとスイランが王女になるからないなって思ってよかったかも。あんな獣に立ち向かう勇気ないわ」
「スイランさんっ!!」
「ミシェル、諦めろ」
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「スイラン、お客様さっさと帰して夫婦の時間にしよっか」
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「テモワス王子、今回の件は早くそちらの国王陛下にご報告された方がよろしいかと存じます。国を交えた案件ですから早急に対処するべきかと。こちらもすぐ陛下にお伝えする所存ですのでご安心ください」
おい、旦那様。そういう事は私を離してから言ってくれ。お願いだから。
「……はぁ、はいはい、そうするよ。いろいろとごちそうさまだ。トワイニス副団長、早急に団員達を招集し戻るように」
「……」
「トワイニス副団長」
「……かしこまりました、テモワス王子」
「よし」
……だいぶしょんぼりだな、おチビちゃん。いや、泣きそう?
「ミシェル、またね」
「っ!? は、はい、スイランさん!」
バイバイ、と手を振って二人を見送った。
色々と話をしたいところではあったけれど、今回は仕事のようだったから仕方ないな。今度は、これから行われるシャレニア国王誕生祭になるかな。一応招待するよう私の方から提案させていただいてるし。
きっと、ミシェルは一番に手を上げそうだし、また会える事だろう。
……で。
「旦那様」
「……」
「わざとですか」
「……」
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なるほど、いじけてしまったという事か。流石わんこ、可愛いな。
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「それでスイラン、さっきは『好き』じゃなくて『大好き』って言ってくれたよね」
……ん?
いきなり頭を上げたかと思ったら、ニコニコと私を見てくる旦那様。
「嬉しいなぁ。じゃあもう一回言って?」
「えっ……」
「ダメ?」
思考停止し、ようやく何を言われたのか理解した頃には押し倒されてしまっていた。待って、ちょっと待って、もう一回ですって?
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