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第七部 三章「信じる者」
「ネアとの繋がり」
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しばらくして、意識を取り戻したクロトが目を開く。
感覚としては眠っていたのと同等。そのため眠気が残り、クロトは体を伸ばしながらあくびをした。
「……戻ったか。無事って事はへまはしてねぇようだな」
『あったりまえですーっ。俺を誰だと思ってるんだよ? 頼りになる炎蛇様だぜ?』
「…………ただのクソ蛇」
『起きて早々ドキツイな……』
信頼、というよりは、こうなるのは当然の事であり、ニーズヘッグを称賛するわけもなく。
眠気を消す間に調査の結果をクロトは聞かされた。
広大な屋敷。警備は多く、裏手は罠あり。エリーの場所も特定、その傍にネアがいるのは確定。
『正直、真正面から向かうのはめんどい気はするがな。わざわざ罠のある場所知って行くのもどうかと思うし、これはクソガキ使って空からってのが妥当か?』
「だが逆に隠れる場所がない。どの道見つかれば同じことだ。……それと、さっきの件だが」
『ん? ああ、電気女の件か?』
調査の中で見つけたネアの動機と思われる存在。
聞けば納得もいくものだ。それなりの理由がなければ、ネアが勝手な行動をとるはずがない。
ネアが何故裏切ったのか。その理由を理解でき、内心気が晴れた感覚はあった。
だが、わかっただけでネアが最大の壁である事に違いはない。
クロトはその話をいったん止め、本題にへと切り替える。
「突入方法は、いたってシンプル。――正面だ」
屋敷に向け、クロトは宣言した。
小細工などない。どの道来ることは向こうに筒抜けなのだ。この人数、どう攻めても同じことだ。警備を突破してもネアにぶつかる事だろう。
エリーの場所を特定し、一直線でそこを目指し、最短距離で取り戻すし、ネアをどうにかする。
決まれば後は実行するのみである。
クロトが決断したのなら、傍で様子をうかがっていたイロハも行動を始める。
「お! 先輩、もう行くの?」
退屈そうに座り込んでいたイロハはせっせと立ち上がる。
翼も広げ、飛べる準備も万端。いつでも行けると意気揚々ではあるが、飛ぼうとしたイロハをクロトは地に叩きつけて落とした。
「……え? なにするの先輩? 行くんじゃないの?」
「勝手に行こうとすんな。お前なんかが一人行けば速攻で的にされっぞ」
『いいじゃんかよクロト。こんなの的でもなんでもにして俺らは楽に侵入しようぜ?』
要は囮作戦をニーズヘッグは提案しているのだ。
確かにイロハは一般の人間にとって目を引く要素がある。なんせ人間が翼をはやして飛んでいるのだ。魔族と間違えられてもおかしくない。
それも一つの手だろう。
しかし、それにクロトは首を縦には振らなかった。
「……いや。この馬鹿には別で動いてもらう」
「……どゆこと?」
首をかしげるイロハ。
イロハに細かな命令を実行できるほどの知能性はない。
あるのは単純な命令による行動。
そのため、クロトはイロハにではなく、その補助でもあるフレズベルグに向け話を進めた。
イロハでなくとも、フレズベルグなら詳細を受け止め、事に応じてイロハに伝える事も可能だ。
表では二人の行動となるが、実質こちらは四人。いや、二人と二体だ。
以前様に悪魔が目覚めなければこうはならなかっただろう。だが、使えるものは使う。最善をとるために。
『……なるほど。イロハ。我々は別行動だ。迷った時は私が指示を出す。それに従え』
「うん……。わかった。……でも、先輩は大丈夫なの?」
「バーカ。心配される筋合いねーっての。お前はお前でしっかり行動しろ。……ネアは、――俺が相手する」
「うーん。わかった。じゃあ、後でね、先輩」
一足先に、イロハは翼を広げ飛び立つ。
イロハがさほど理解できてなかろうと、フレズベルグが正しい指示を出す。問題はないだろう。
見送った後、クロトも地上を進む。
風もなく、静止したかのような夜闇の森を進み、まっすぐ屋敷を目指した。
……が、半分まで進み切った頃。クロトは一度止まる。
「……」
『どうしたクロト? 今更怖気づいたか? なんだったら、俺が変わってやってもいいぞ?』
「うるせぇ、クソ蛇」
怖気づいたつもりはない。少し相手がネアであると思うと、どうも相手しづらいという感覚はあった。
戸惑いというなら、そうかもしれない。ネアはある意味魔女の次に関係が長くあったとも思える人材だ。
他者と共にいる期間など微々たるものがほとんど。最初は情報屋として、そしてしだいには協力関係すらあり、同行者でもあった。
友好とは呼べない。お互い嫌いで、それに納得しての関係性だった。
だが、ネアの意見や行動など、理にかなっていた事も確かだった。使える道具以外の考えでなら、おそらく頼れる存在というものだったことだろう。
それと相手するのだ。クロトという魔銃使いにも詰まるところがあった。そして、深呼吸を一度してそれらを振り払う。
落ち着いてクロトは懐から通信機を取り出した。
使い慣れたそれは、クロトが本来自身で有していた物ではない。
――ネアから渡されたものだった。
初めて会った日。事を終えた頃だ。
クロトが不死である事も知られ、それすら対価にでもした様にネアは情報を伝えた。
サキアヌでも辺境にある方角。その地に向け、流星が一つ流れて行った、と……。
「場所はあっちの方角。大まかな方角しかわからないけど確かよ」
「本当だろうな?」
「最初にも言ったけど、私の情報で目当ての子がいるかどうかは定かではないわよ。情報は情報でしかないもの。それでも、ないよりは幾度かマシでしょ?」
「それもそうだが、お前が嘘を言っていないかも定かではないよな?」
「あら心外。私は情報屋としてしっかり真実を伝えるわよ」
これでネアとの関係もようやく終わりを迎える事ができる。そう思えていたが、簡単に思い通りにはならないものだ。
「ねぇねぇっ。私、厄災の子に会ったことないんだけど、どんな子? 可愛いお嬢様? だったら見つけたら会わせてほしいんだけど」
「なんでお前と会わせる必要がある? たかだかガキ一人に……」
「だってその子、基本表には出てこないからどんな容姿かなんて世間に広まってないんだもの。それにアンタと一緒にいるとなると心配なんだし。女の子は丁寧に大事に扱いなさいよ? 泣かせるようならしばく」
「なんなんだよ……。お前はそのガキに対して妙な感情抱きすぎだろ。普通は関わらないのが無難だろうに」
「私はべつにそういう過激派系じゃないし。女の子なら守ってあげたくなるタイプだし。その子だって好きでそんな風に言われてるわけじゃないんでしょ? でなきゃとっくにこの世は終わってるし」
「……それでも自分から会いたいなんて思わんだろうが」
「どういう子かは気になるわね。お姫様でしょ? きっととびっきり可愛い子なんでしょうね~。キャー、楽しみ~♪」
――なにが楽しみだ。
そう話していると話題となった人物を思い出してしまう。
噂に名高い星の瞳。まだ小さくあるその少女は、最初っから最後まで怯え泣き顔しか記憶していない。自身の存在の在り方から逃げ、その在り方を否定した。どうしようもなくめんどくさい子供だと。
喚くのも鬱陶しいのも嫌いだ。呪いなど抱えていなければ撃ち殺してもおかしくない。そんな簡単に手にかけてしまいそうな存在。
正直会いたくもない。見たくもない。
だがそうしないと……自分は死ぬこととなるだろう。
なんだかんだと、長々と会話を続けてしまった。
ネアはクロトの事を八割は理解できたと、微笑する。
それに苛立ち、文句を言い返そうとした時、ネアはずいっと手持ちの薄板を顔面に向けてきた。
思わず口を塞がれ目を丸くさせたクロトに、更にネアは語り出す。
「ねぇ、アンタっ。連絡先教えなさい」
「……は?」
「お姉さんが野郎と連絡先交換するなんて滅多にない貴重なことよ? それにアンタの秘密も事情もおおかた知ってる。必要とあらば情報だってあげる。今後からはお金でお願いね。お姉さんもビジネスってものがあるから。アンタだって役に立つものは必要でしょ?」
「……それは共闘した俺に対する好意か?」
「好意ぃ? あっはは、違う違う。私は会ってみたいの。だったらアンタと繋がっていた方がいいし、仕事にもなる。一石二鳥」
「自分のためか」
「ええ、自分のため」
「……そこは同意だな。悪くない。……だが、俺はこういうのを持っていない」
よくよく見れば、それはただの薄板ではない。
軽量化された魔科学による通信機だ。
これまでで他者とこの様なもので連絡を取り合った事のないクロトにとっては物珍しくもある。だが、必要か不必要かなら、不必要と言える事だ。
若者のくせに、と。ネアは不満げに眉を下げた。
「ええ!? 結構流行ってるのに……。アイルカーヌの最新版で便利よ? ……あ、ちょっと待って」
待ったをかけて、ネアは手早く薄板をいじりだす。その間はさほど長くもなく、すぐにそれをクロトに差し出した。
「――あげる」
容易く自身の通信機をクロトに渡した。
こういう物はそれなりの高値が付くものだろうに、それを平然と譲るとはいったいどういう事か。
困惑中にも関わらず、ネアは話を続ける。
「お姉さん予備も持ってるから、あげる。これで連絡先を聞く手間も省けるし、ついでにお姉さんのを残しておいてあげたわ。これでお互い連絡もとれる。寂しくなったら話し相手くらいはなってあげてもいいわよ?」
……と。戯言を言っていた気がする。
少しいじれば、登録された連絡先が表示された。
そこには、ネアだけが記されている。
思えばこの通信機でやり取りする相手など、ネア以外にはいなかった。
クロトは数秒それを眺め、そして…………。
***************************
『やくまが 次回予告』
クロト
「まさか予想外のものが見つかるとはな」
ニーズヘッグ
「ああ、俺も予想外だった。……いや、どこかそんな気はしてたんだよな」
クロト
「ほぉ……。意外だな。お前は無関心でいたと思ってたが」
ニーズヘッグ
「いやいや、我が主。この世にはテンプレってもんがありましてね。いや~、あの屋敷に行く前から思ってたんっすよ」
クロト
「まあ、あれならネアの動機は理解できるな」
ニーズヘッグ
「あ、いや、そっちじゃなくて。予想通りのごてごてしい悪趣味満載な屋敷だったな~って」
クロト
「そっちかよ!」
ニーズヘッグ
「だってマジで吐き気するくらいの内装でしたよ!? ああいう、金に物言わせたような空間マジでキモいんで。それを数体の蛇たちの目で眺める俺の身にもなってみろよ? 蛇の数だけキモイは倍増してんだよ!? マジキチーわ」
クロト
「……確かに、それは目に毒だな。聞いてるだけで胃もたれしそうになってきた」
ニーズヘッグ
「わかってくれてなによりだ。それを考えると、次回から突入すんだろ? 相手が電気女だけでなく、視界にはキモイ空間が広がってる。過酷なのは間違いない!」
クロト
「そういう悪趣味な奴に限って、なんか他にも隠し持ってそうだよな。表向きは豪邸。地下には牢獄。この温度差があるのなら、更に悪趣味なもんがあってもおかしくない」
ニーズヘッグ
「此処で超魔科学兵器とか出てきたりしてな。見た感じ、レガルというよりはアイルカーヌみてーな側の人間っぽいと思うぞ? 精霊に好かれなさそうなイメージが湧きすぎてる感じ」
クロト
「なるほど、一理あるな。昔、アイルカーヌでは人型を模した魔科学兵器の製造も考えられてたそうだ。巨大ロボットってやつ」
ニーズヘッグ
「豪邸の前の庭が解放されてロボ出現とかもテンプレってやつだな! 我が主わかってるー」
クロト
「これでも元アイルカーヌ出身だからな(昔本でその書物に熱中してた時期があったな……」
ニーズヘッグ
「次回、【厄災の姫と魔銃使い】第七部 四章「魔銃使いと半魔」。ラストに電気女の巨大ロボ出てきたらもうやべーと思うんだが、どうよクロト?」
クロト
「――いや、それはないだろ。常識的に考えて」
ニーズヘッグ
「……ですよね~(急な温度差やめて」
感覚としては眠っていたのと同等。そのため眠気が残り、クロトは体を伸ばしながらあくびをした。
「……戻ったか。無事って事はへまはしてねぇようだな」
『あったりまえですーっ。俺を誰だと思ってるんだよ? 頼りになる炎蛇様だぜ?』
「…………ただのクソ蛇」
『起きて早々ドキツイな……』
信頼、というよりは、こうなるのは当然の事であり、ニーズヘッグを称賛するわけもなく。
眠気を消す間に調査の結果をクロトは聞かされた。
広大な屋敷。警備は多く、裏手は罠あり。エリーの場所も特定、その傍にネアがいるのは確定。
『正直、真正面から向かうのはめんどい気はするがな。わざわざ罠のある場所知って行くのもどうかと思うし、これはクソガキ使って空からってのが妥当か?』
「だが逆に隠れる場所がない。どの道見つかれば同じことだ。……それと、さっきの件だが」
『ん? ああ、電気女の件か?』
調査の中で見つけたネアの動機と思われる存在。
聞けば納得もいくものだ。それなりの理由がなければ、ネアが勝手な行動をとるはずがない。
ネアが何故裏切ったのか。その理由を理解でき、内心気が晴れた感覚はあった。
だが、わかっただけでネアが最大の壁である事に違いはない。
クロトはその話をいったん止め、本題にへと切り替える。
「突入方法は、いたってシンプル。――正面だ」
屋敷に向け、クロトは宣言した。
小細工などない。どの道来ることは向こうに筒抜けなのだ。この人数、どう攻めても同じことだ。警備を突破してもネアにぶつかる事だろう。
エリーの場所を特定し、一直線でそこを目指し、最短距離で取り戻すし、ネアをどうにかする。
決まれば後は実行するのみである。
クロトが決断したのなら、傍で様子をうかがっていたイロハも行動を始める。
「お! 先輩、もう行くの?」
退屈そうに座り込んでいたイロハはせっせと立ち上がる。
翼も広げ、飛べる準備も万端。いつでも行けると意気揚々ではあるが、飛ぼうとしたイロハをクロトは地に叩きつけて落とした。
「……え? なにするの先輩? 行くんじゃないの?」
「勝手に行こうとすんな。お前なんかが一人行けば速攻で的にされっぞ」
『いいじゃんかよクロト。こんなの的でもなんでもにして俺らは楽に侵入しようぜ?』
要は囮作戦をニーズヘッグは提案しているのだ。
確かにイロハは一般の人間にとって目を引く要素がある。なんせ人間が翼をはやして飛んでいるのだ。魔族と間違えられてもおかしくない。
それも一つの手だろう。
しかし、それにクロトは首を縦には振らなかった。
「……いや。この馬鹿には別で動いてもらう」
「……どゆこと?」
首をかしげるイロハ。
イロハに細かな命令を実行できるほどの知能性はない。
あるのは単純な命令による行動。
そのため、クロトはイロハにではなく、その補助でもあるフレズベルグに向け話を進めた。
イロハでなくとも、フレズベルグなら詳細を受け止め、事に応じてイロハに伝える事も可能だ。
表では二人の行動となるが、実質こちらは四人。いや、二人と二体だ。
以前様に悪魔が目覚めなければこうはならなかっただろう。だが、使えるものは使う。最善をとるために。
『……なるほど。イロハ。我々は別行動だ。迷った時は私が指示を出す。それに従え』
「うん……。わかった。……でも、先輩は大丈夫なの?」
「バーカ。心配される筋合いねーっての。お前はお前でしっかり行動しろ。……ネアは、――俺が相手する」
「うーん。わかった。じゃあ、後でね、先輩」
一足先に、イロハは翼を広げ飛び立つ。
イロハがさほど理解できてなかろうと、フレズベルグが正しい指示を出す。問題はないだろう。
見送った後、クロトも地上を進む。
風もなく、静止したかのような夜闇の森を進み、まっすぐ屋敷を目指した。
……が、半分まで進み切った頃。クロトは一度止まる。
「……」
『どうしたクロト? 今更怖気づいたか? なんだったら、俺が変わってやってもいいぞ?』
「うるせぇ、クソ蛇」
怖気づいたつもりはない。少し相手がネアであると思うと、どうも相手しづらいという感覚はあった。
戸惑いというなら、そうかもしれない。ネアはある意味魔女の次に関係が長くあったとも思える人材だ。
他者と共にいる期間など微々たるものがほとんど。最初は情報屋として、そしてしだいには協力関係すらあり、同行者でもあった。
友好とは呼べない。お互い嫌いで、それに納得しての関係性だった。
だが、ネアの意見や行動など、理にかなっていた事も確かだった。使える道具以外の考えでなら、おそらく頼れる存在というものだったことだろう。
それと相手するのだ。クロトという魔銃使いにも詰まるところがあった。そして、深呼吸を一度してそれらを振り払う。
落ち着いてクロトは懐から通信機を取り出した。
使い慣れたそれは、クロトが本来自身で有していた物ではない。
――ネアから渡されたものだった。
初めて会った日。事を終えた頃だ。
クロトが不死である事も知られ、それすら対価にでもした様にネアは情報を伝えた。
サキアヌでも辺境にある方角。その地に向け、流星が一つ流れて行った、と……。
「場所はあっちの方角。大まかな方角しかわからないけど確かよ」
「本当だろうな?」
「最初にも言ったけど、私の情報で目当ての子がいるかどうかは定かではないわよ。情報は情報でしかないもの。それでも、ないよりは幾度かマシでしょ?」
「それもそうだが、お前が嘘を言っていないかも定かではないよな?」
「あら心外。私は情報屋としてしっかり真実を伝えるわよ」
これでネアとの関係もようやく終わりを迎える事ができる。そう思えていたが、簡単に思い通りにはならないものだ。
「ねぇねぇっ。私、厄災の子に会ったことないんだけど、どんな子? 可愛いお嬢様? だったら見つけたら会わせてほしいんだけど」
「なんでお前と会わせる必要がある? たかだかガキ一人に……」
「だってその子、基本表には出てこないからどんな容姿かなんて世間に広まってないんだもの。それにアンタと一緒にいるとなると心配なんだし。女の子は丁寧に大事に扱いなさいよ? 泣かせるようならしばく」
「なんなんだよ……。お前はそのガキに対して妙な感情抱きすぎだろ。普通は関わらないのが無難だろうに」
「私はべつにそういう過激派系じゃないし。女の子なら守ってあげたくなるタイプだし。その子だって好きでそんな風に言われてるわけじゃないんでしょ? でなきゃとっくにこの世は終わってるし」
「……それでも自分から会いたいなんて思わんだろうが」
「どういう子かは気になるわね。お姫様でしょ? きっととびっきり可愛い子なんでしょうね~。キャー、楽しみ~♪」
――なにが楽しみだ。
そう話していると話題となった人物を思い出してしまう。
噂に名高い星の瞳。まだ小さくあるその少女は、最初っから最後まで怯え泣き顔しか記憶していない。自身の存在の在り方から逃げ、その在り方を否定した。どうしようもなくめんどくさい子供だと。
喚くのも鬱陶しいのも嫌いだ。呪いなど抱えていなければ撃ち殺してもおかしくない。そんな簡単に手にかけてしまいそうな存在。
正直会いたくもない。見たくもない。
だがそうしないと……自分は死ぬこととなるだろう。
なんだかんだと、長々と会話を続けてしまった。
ネアはクロトの事を八割は理解できたと、微笑する。
それに苛立ち、文句を言い返そうとした時、ネアはずいっと手持ちの薄板を顔面に向けてきた。
思わず口を塞がれ目を丸くさせたクロトに、更にネアは語り出す。
「ねぇ、アンタっ。連絡先教えなさい」
「……は?」
「お姉さんが野郎と連絡先交換するなんて滅多にない貴重なことよ? それにアンタの秘密も事情もおおかた知ってる。必要とあらば情報だってあげる。今後からはお金でお願いね。お姉さんもビジネスってものがあるから。アンタだって役に立つものは必要でしょ?」
「……それは共闘した俺に対する好意か?」
「好意ぃ? あっはは、違う違う。私は会ってみたいの。だったらアンタと繋がっていた方がいいし、仕事にもなる。一石二鳥」
「自分のためか」
「ええ、自分のため」
「……そこは同意だな。悪くない。……だが、俺はこういうのを持っていない」
よくよく見れば、それはただの薄板ではない。
軽量化された魔科学による通信機だ。
これまでで他者とこの様なもので連絡を取り合った事のないクロトにとっては物珍しくもある。だが、必要か不必要かなら、不必要と言える事だ。
若者のくせに、と。ネアは不満げに眉を下げた。
「ええ!? 結構流行ってるのに……。アイルカーヌの最新版で便利よ? ……あ、ちょっと待って」
待ったをかけて、ネアは手早く薄板をいじりだす。その間はさほど長くもなく、すぐにそれをクロトに差し出した。
「――あげる」
容易く自身の通信機をクロトに渡した。
こういう物はそれなりの高値が付くものだろうに、それを平然と譲るとはいったいどういう事か。
困惑中にも関わらず、ネアは話を続ける。
「お姉さん予備も持ってるから、あげる。これで連絡先を聞く手間も省けるし、ついでにお姉さんのを残しておいてあげたわ。これでお互い連絡もとれる。寂しくなったら話し相手くらいはなってあげてもいいわよ?」
……と。戯言を言っていた気がする。
少しいじれば、登録された連絡先が表示された。
そこには、ネアだけが記されている。
思えばこの通信機でやり取りする相手など、ネア以外にはいなかった。
クロトは数秒それを眺め、そして…………。
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『やくまが 次回予告』
クロト
「まさか予想外のものが見つかるとはな」
ニーズヘッグ
「ああ、俺も予想外だった。……いや、どこかそんな気はしてたんだよな」
クロト
「ほぉ……。意外だな。お前は無関心でいたと思ってたが」
ニーズヘッグ
「いやいや、我が主。この世にはテンプレってもんがありましてね。いや~、あの屋敷に行く前から思ってたんっすよ」
クロト
「まあ、あれならネアの動機は理解できるな」
ニーズヘッグ
「あ、いや、そっちじゃなくて。予想通りのごてごてしい悪趣味満載な屋敷だったな~って」
クロト
「そっちかよ!」
ニーズヘッグ
「だってマジで吐き気するくらいの内装でしたよ!? ああいう、金に物言わせたような空間マジでキモいんで。それを数体の蛇たちの目で眺める俺の身にもなってみろよ? 蛇の数だけキモイは倍増してんだよ!? マジキチーわ」
クロト
「……確かに、それは目に毒だな。聞いてるだけで胃もたれしそうになってきた」
ニーズヘッグ
「わかってくれてなによりだ。それを考えると、次回から突入すんだろ? 相手が電気女だけでなく、視界にはキモイ空間が広がってる。過酷なのは間違いない!」
クロト
「そういう悪趣味な奴に限って、なんか他にも隠し持ってそうだよな。表向きは豪邸。地下には牢獄。この温度差があるのなら、更に悪趣味なもんがあってもおかしくない」
ニーズヘッグ
「此処で超魔科学兵器とか出てきたりしてな。見た感じ、レガルというよりはアイルカーヌみてーな側の人間っぽいと思うぞ? 精霊に好かれなさそうなイメージが湧きすぎてる感じ」
クロト
「なるほど、一理あるな。昔、アイルカーヌでは人型を模した魔科学兵器の製造も考えられてたそうだ。巨大ロボットってやつ」
ニーズヘッグ
「豪邸の前の庭が解放されてロボ出現とかもテンプレってやつだな! 我が主わかってるー」
クロト
「これでも元アイルカーヌ出身だからな(昔本でその書物に熱中してた時期があったな……」
ニーズヘッグ
「次回、【厄災の姫と魔銃使い】第七部 四章「魔銃使いと半魔」。ラストに電気女の巨大ロボ出てきたらもうやべーと思うんだが、どうよクロト?」
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