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第3章 恐ろしき陰謀渦巻く宮廷にご用心
3 捕らえられた蓮花
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「わざわざ気遣って申し訳ないけれど、今は食欲がないの。後でいただくわ」
「皇后さまは、もしかして私を疑っているの? 毒が入っていると思っていらっしゃるのね。だとしたら、ひどいわ。私たちは姉妹よ。姉のお身体を心配するのは当然ではなくて?」
どの口がそれを言う!
わざとらしく景貴妃は手巾を目元にあて、嘘泣きをする。
「それに、山参は懐妊された皇后さまに是非と私の実家から届けられたもの。皇后さまは私の実家すらもお疑いになるというのですね」
あんたを含め、あんたを皇后の座につけようとするあんたの一族だって敵よ!
皇后は小さく息をつくと、器を手に取った。
匙を手に器の中の汁物をゆっくりとかき混ぜるのを見て、景貴妃はにこりと微笑む。
皇后は匙を口元に持っていこうとする。
『飲んではだめ』
突如、蓮花の脳裏にその声が響いた。
視線を巡らせると、景貴妃の横に一人の女性の霊が立ち首を横に振っている。
例の霊!
凜妃の簪を見つけてくれた時、景貴妃から処罰を受け自ら舌をかみ切るのを止めた時と、二度も蓮花を救ってくれた女性だ。
「だめ! 飲んじゃだめです!」
蓮花は叫んで皇后の手から器を取り上げた。
「失礼な。せっかくの景貴妃さまの好意を! 毒を盛ったと疑うのか!」
景貴妃の侍女美月が怒りの声で、蓮花に指を突きつける。
蓮花はちらりと、みなには見えないその女性に視線をやる。その女は頷いた。
『間違いなく、それを飲めば取り返しのつかないことになる』
「景貴妃さまの気遣いを無駄にするとは、なんて無礼な侍女でしょう!」
「何が入っているか分からないものなんて、飲ませられないでしょ! 皇后さまに万一のことがあったら責任をとれるの!」
「そう。では、私が飲んでみればいいのね。それで納得するかしら」
そう言って、景貴妃は蓮花の手から器をとり、羹を匙ですくい一口飲む。
口元を手巾で拭い、景貴妃はにっと口角をつり上げ笑った。
「これで、私の疑いは晴れたかしら」
そんな……何でもないなんて。待って、即効性のない毒かもしれない。ううん、と蓮花は心の中で首を振る。即効性がないにしても、毒の入った汁物を、景貴妃自ら飲むなんて考えられない。
蓮花のこめかみに汗が流れ落ちる。
もしかしてあたし、しくじった?
毒なんて入っていなかった。あたしの勘違い。あるいは、はめられたのはあたし?
蓮花は再びあの女性が立っていた場所を見るが、すでに女の姿は消えていた。
「せっかくの私の好意を疑われるなんて不敬にもほどがあるわ」
「ま、待って。その汁物、もっとよく調べっ!」
景貴妃が蓮花の頬を叩いた。
「この娘を慎刑司送りにしなさい」
「待ちなさい。蓮花は私の身体を気づかっただけですよ」
皇后が蓮花を庇おうとするが、景貴妃は取り合わなかった。
「皇后がこの娘を甘やかすからいけないのだわ。これでは後宮の、他の宮女たちにも示しがつかないでしょう?」
「私がかまわないと言っているのです」
「たとえ皇后の身体を気づかったとしても、たかが侍女ごときがこの私に不敬を働くのは許せるものではない」
それでも皇后が蓮花を庇おうとするが、側にいた暁蕾がいけません、と引き止める。
「今は大切な時です。ここで興奮されてはお腹の子にも影響が」
員子、と呼んで景貴妃は側に控える太監に目配せをする。
「つれていき、罰を与えなさい」
太監に腕をとられ、蓮花は半ば強引に引きずられて行った。
「皇后さまは、もしかして私を疑っているの? 毒が入っていると思っていらっしゃるのね。だとしたら、ひどいわ。私たちは姉妹よ。姉のお身体を心配するのは当然ではなくて?」
どの口がそれを言う!
わざとらしく景貴妃は手巾を目元にあて、嘘泣きをする。
「それに、山参は懐妊された皇后さまに是非と私の実家から届けられたもの。皇后さまは私の実家すらもお疑いになるというのですね」
あんたを含め、あんたを皇后の座につけようとするあんたの一族だって敵よ!
皇后は小さく息をつくと、器を手に取った。
匙を手に器の中の汁物をゆっくりとかき混ぜるのを見て、景貴妃はにこりと微笑む。
皇后は匙を口元に持っていこうとする。
『飲んではだめ』
突如、蓮花の脳裏にその声が響いた。
視線を巡らせると、景貴妃の横に一人の女性の霊が立ち首を横に振っている。
例の霊!
凜妃の簪を見つけてくれた時、景貴妃から処罰を受け自ら舌をかみ切るのを止めた時と、二度も蓮花を救ってくれた女性だ。
「だめ! 飲んじゃだめです!」
蓮花は叫んで皇后の手から器を取り上げた。
「失礼な。せっかくの景貴妃さまの好意を! 毒を盛ったと疑うのか!」
景貴妃の侍女美月が怒りの声で、蓮花に指を突きつける。
蓮花はちらりと、みなには見えないその女性に視線をやる。その女は頷いた。
『間違いなく、それを飲めば取り返しのつかないことになる』
「景貴妃さまの気遣いを無駄にするとは、なんて無礼な侍女でしょう!」
「何が入っているか分からないものなんて、飲ませられないでしょ! 皇后さまに万一のことがあったら責任をとれるの!」
「そう。では、私が飲んでみればいいのね。それで納得するかしら」
そう言って、景貴妃は蓮花の手から器をとり、羹を匙ですくい一口飲む。
口元を手巾で拭い、景貴妃はにっと口角をつり上げ笑った。
「これで、私の疑いは晴れたかしら」
そんな……何でもないなんて。待って、即効性のない毒かもしれない。ううん、と蓮花は心の中で首を振る。即効性がないにしても、毒の入った汁物を、景貴妃自ら飲むなんて考えられない。
蓮花のこめかみに汗が流れ落ちる。
もしかしてあたし、しくじった?
毒なんて入っていなかった。あたしの勘違い。あるいは、はめられたのはあたし?
蓮花は再びあの女性が立っていた場所を見るが、すでに女の姿は消えていた。
「せっかくの私の好意を疑われるなんて不敬にもほどがあるわ」
「ま、待って。その汁物、もっとよく調べっ!」
景貴妃が蓮花の頬を叩いた。
「この娘を慎刑司送りにしなさい」
「待ちなさい。蓮花は私の身体を気づかっただけですよ」
皇后が蓮花を庇おうとするが、景貴妃は取り合わなかった。
「皇后がこの娘を甘やかすからいけないのだわ。これでは後宮の、他の宮女たちにも示しがつかないでしょう?」
「私がかまわないと言っているのです」
「たとえ皇后の身体を気づかったとしても、たかが侍女ごときがこの私に不敬を働くのは許せるものではない」
それでも皇后が蓮花を庇おうとするが、側にいた暁蕾がいけません、と引き止める。
「今は大切な時です。ここで興奮されてはお腹の子にも影響が」
員子、と呼んで景貴妃は側に控える太監に目配せをする。
「つれていき、罰を与えなさい」
太監に腕をとられ、蓮花は半ば強引に引きずられて行った。
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