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那須隼人2
日替わりランチ
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「あの、人を探しているんです」
自分の口から思わぬ言葉が出てきて、隼人は驚いた。 店主も戸惑ったようで、目をぱちくりさせている。
「……すみません。変なことを言ってしまって」
隼人は慌てて取り繕うが、店主は柔らかく微笑んだ。
「いえ、どなたをお探しなんですか?」
思いがけず優しい声に、隼人は少しだけ肩の力を抜くことができた。
目の前に立つ店主は、柔らかな空気を纏った美人だった。年齢は三十歳くらいだろうか。シンプルな白いシャツにエプロンを身に付け、穏やかな笑みを浮かべる彼女の姿には、このカフェの落ち着いた雰囲気がよく似合っていた。
「藤原美月という女性です。三年前に失踪したんですが……彼女の痕跡を探していて」
隼人はスマートフォンに保存してあった、大学時代の美月の写真を見せた。
柔らかかった店主の表情が微妙に曇った。
「取材の方、ですか?」
声にもどこかしら警戒するような硬さがある。
「いえ、これは取材というわけじゃなくて個人的な話で……」
言いながら、隼人は自分の説明の胡散臭さに気づく。個人的に若い女性を探しているなどと、まるでストーカーのようではないか。
「あの、オレ、那須隼人といいます。矢隈市役所の広報課の仕事で、このお店の写真を撮らせていただくために来ました。でも、それとは関係ない話で、三年前にこの町でいなくなった恋人の行方を探しているんです」
そう付け足しながらも、これでは怪しさが増すばかりだと隼人は内心で頭を抱える。
ところが、店主の顔にはふんわりとした笑顔が戻ってきていた。
「市役所の広報ってことは高梨君のお知り合いの方ですね。それに美月ちゃんの彼氏さんなんですか」
「美月を知っているんですか!?」
隼人は思わず身を乗り出した。
「美月ちゃんはよくこのお店に来てくださいました。いなくなってもう三年も経つんですね……」
店主は控えめな微笑みを浮かべながら、隼人を見つめてそう言った。
それから少し思案する顔を浮かべ、言葉を続ける。
「とりあえず、ご注文はいかがですか? 取材で来ていただいたのでしたら、サービスさせていただきますので、お好きなものをご注文ください」
「あ、注文、そうですよね」
隼人は慌ててメニューをめくる。
そしてふと思いついて顔を上げた。
「まだ時間早いですけど、ランチのメニューってできますか?」
「大丈夫ですよ」
「KUUKIランチって、どんな内容ですか?」
メニューを指さしながら訊く。
「いわゆる日替わりランチなんですけど、今日は自家製デミグラスハンバーグがメインで、サラダなどの副菜が付いて、パンかご飯がお選びいただけます」
「じゃあ、パンでお願いします。お料理の写真を撮らせてもらっても大丈夫ですか?」
「はい。よろしくお願いします」
実のところ、それほど食欲があるわけではなかった。しかし高梨からの依頼がある。
飲食店の取材なので、店の外観と店内の写真の他に、料理の写真も必須だ。
店名を冠したKUUKIランチは、この店のいち推しだろう。そもそも複数の品が並ぶランチプレートは写真映えしやすい。念のために写真を撮らせてもらうことも伝えた。これで盛り付けにもより力が入るだろう。
「コーヒーか紅茶が付きますが、どうなさいますか?」
「コーヒーでお願いします」
「お持ちするのは食後でよろしいでしょうか?」
「はい」
やり取りを終え、店主はカウンターへと戻っていった。
その後ろ姿を見送りながら、隼人はなぜ急に美月を探しているなどと言ってしまったのかと、自分自身を訝しんでいた。
自分の口から思わぬ言葉が出てきて、隼人は驚いた。 店主も戸惑ったようで、目をぱちくりさせている。
「……すみません。変なことを言ってしまって」
隼人は慌てて取り繕うが、店主は柔らかく微笑んだ。
「いえ、どなたをお探しなんですか?」
思いがけず優しい声に、隼人は少しだけ肩の力を抜くことができた。
目の前に立つ店主は、柔らかな空気を纏った美人だった。年齢は三十歳くらいだろうか。シンプルな白いシャツにエプロンを身に付け、穏やかな笑みを浮かべる彼女の姿には、このカフェの落ち着いた雰囲気がよく似合っていた。
「藤原美月という女性です。三年前に失踪したんですが……彼女の痕跡を探していて」
隼人はスマートフォンに保存してあった、大学時代の美月の写真を見せた。
柔らかかった店主の表情が微妙に曇った。
「取材の方、ですか?」
声にもどこかしら警戒するような硬さがある。
「いえ、これは取材というわけじゃなくて個人的な話で……」
言いながら、隼人は自分の説明の胡散臭さに気づく。個人的に若い女性を探しているなどと、まるでストーカーのようではないか。
「あの、オレ、那須隼人といいます。矢隈市役所の広報課の仕事で、このお店の写真を撮らせていただくために来ました。でも、それとは関係ない話で、三年前にこの町でいなくなった恋人の行方を探しているんです」
そう付け足しながらも、これでは怪しさが増すばかりだと隼人は内心で頭を抱える。
ところが、店主の顔にはふんわりとした笑顔が戻ってきていた。
「市役所の広報ってことは高梨君のお知り合いの方ですね。それに美月ちゃんの彼氏さんなんですか」
「美月を知っているんですか!?」
隼人は思わず身を乗り出した。
「美月ちゃんはよくこのお店に来てくださいました。いなくなってもう三年も経つんですね……」
店主は控えめな微笑みを浮かべながら、隼人を見つめてそう言った。
それから少し思案する顔を浮かべ、言葉を続ける。
「とりあえず、ご注文はいかがですか? 取材で来ていただいたのでしたら、サービスさせていただきますので、お好きなものをご注文ください」
「あ、注文、そうですよね」
隼人は慌ててメニューをめくる。
そしてふと思いついて顔を上げた。
「まだ時間早いですけど、ランチのメニューってできますか?」
「大丈夫ですよ」
「KUUKIランチって、どんな内容ですか?」
メニューを指さしながら訊く。
「いわゆる日替わりランチなんですけど、今日は自家製デミグラスハンバーグがメインで、サラダなどの副菜が付いて、パンかご飯がお選びいただけます」
「じゃあ、パンでお願いします。お料理の写真を撮らせてもらっても大丈夫ですか?」
「はい。よろしくお願いします」
実のところ、それほど食欲があるわけではなかった。しかし高梨からの依頼がある。
飲食店の取材なので、店の外観と店内の写真の他に、料理の写真も必須だ。
店名を冠したKUUKIランチは、この店のいち推しだろう。そもそも複数の品が並ぶランチプレートは写真映えしやすい。念のために写真を撮らせてもらうことも伝えた。これで盛り付けにもより力が入るだろう。
「コーヒーか紅茶が付きますが、どうなさいますか?」
「コーヒーでお願いします」
「お持ちするのは食後でよろしいでしょうか?」
「はい」
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