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那須隼人2
カフェ『Kuuki』
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カフェに至る道すがら、隼人は町のあちらこちらにカメラのレンズを向けてみた。しかし、人影どころか森の影すら写らない。
「どこでも森が写るというわけじゃないのか」
最初に森の影が写った住宅のあたりと、カフェのあたりだけが特別な場所なのかもしれない。もし高梨の同僚の友人が人影を撮った場所もカフェ周辺だったとすれば、その影はこの土地に縛られている可能性もあるのではないか。
断定を避けつつ思考を重ねるが、どうしてもあの人影が美月であるように思えて仕方がない。カフェの近くまで戻ると、隼人は知らず知らずのうちに小走りになっていた。
先ほど写真を撮った場所を思い出し、同じ位置から同じ構図でシャッターを切る。
カフェのベージュ色の外壁には、やはり濃い色の樹影が写り込んでいた。はやる気持ちで液晶画面を拡大する。
……しかし、そこに人影はなかった。
木々の影はまるで冷たい湿度まで感じられるかのように黒々としているが、先ほど見たはずの一際濃い影は見つけられない。
隼人はもう一度レンズを構え、シャッターを切った。すぐに確認するが、やはり人影はない。
角度や位置を少しずつ変えながら、撮っては確認するのを何度も繰り返した。
しかし、人影は写らない。
「……俺は失敗したのか」
膝から崩れ落ちそうになる。
写真に現れたのは、美月からのメッセージだったのかもしれない。だが、自分はそれを消去してしまった。取り返しのつかないことをしてしまったのではないか――。
「……違う、そうじゃない」
高梨の話に出てきた写真が、ここで撮られたものだというのは、隼人自身の憶測に過ぎない。撮影した場所が重要でないのならば、この町の撮影を続けることで、再び人影が写るかもしれない。
町の写真を撮る――当初の目的通りではあるが、美月を探すためにも、より入念に撮影を続けよう。
そう決意した隼人は、カフェの店内をまだ撮影していなかったことに思い至った。
むつもりヒルズの風景については隼人に任されていたが、取材する店舗については高梨からの指示があった。目の前のカフェ『Kuuki』もその一つだ。
明るい色の無垢材の扉を押して店内に入る。
広くはないが、壁は明るいグレーと白で統一され、高い位置にある窓から日差しが静かに差し込み、深い色の木製の床を照らしている。
静かで穏やかな空気が流れる店だった。
「空いているお席にどうぞ」
カウンターの中にいた女性の店主が、優しく声をかける。
空いている席といっても、隼人以外の客は老夫婦が一組だけ。
窓から入る光の加減を見て、隼人は窓際を避けてテーブル席を選んだ。
黒いアイアンの脚の木製テーブルの上には、白い紙ナプキンとシンプルなデザインのメニュー立てが並んでいる。
メニューを手に取る前に、取材のために店内の写真を撮らせてもらえるか確認しようと、カウンターに顔を向ける。
カウンター奥の壁に控えめな装飾が施された棚には、数冊の小さな本と、小さな植物の鉢が並んでいた。
――美月が好きそうな店だな
隼人がそう思った瞬間、店主と目が合う。
「ご注文はお決まりですか?」
店主は穏やかな笑顔で、水の入ったグラスとおしぼりを持ってカウンターから出てきた。
「どこでも森が写るというわけじゃないのか」
最初に森の影が写った住宅のあたりと、カフェのあたりだけが特別な場所なのかもしれない。もし高梨の同僚の友人が人影を撮った場所もカフェ周辺だったとすれば、その影はこの土地に縛られている可能性もあるのではないか。
断定を避けつつ思考を重ねるが、どうしてもあの人影が美月であるように思えて仕方がない。カフェの近くまで戻ると、隼人は知らず知らずのうちに小走りになっていた。
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隼人はもう一度レンズを構え、シャッターを切った。すぐに確認するが、やはり人影はない。
角度や位置を少しずつ変えながら、撮っては確認するのを何度も繰り返した。
しかし、人影は写らない。
「……俺は失敗したのか」
膝から崩れ落ちそうになる。
写真に現れたのは、美月からのメッセージだったのかもしれない。だが、自分はそれを消去してしまった。取り返しのつかないことをしてしまったのではないか――。
「……違う、そうじゃない」
高梨の話に出てきた写真が、ここで撮られたものだというのは、隼人自身の憶測に過ぎない。撮影した場所が重要でないのならば、この町の撮影を続けることで、再び人影が写るかもしれない。
町の写真を撮る――当初の目的通りではあるが、美月を探すためにも、より入念に撮影を続けよう。
そう決意した隼人は、カフェの店内をまだ撮影していなかったことに思い至った。
むつもりヒルズの風景については隼人に任されていたが、取材する店舗については高梨からの指示があった。目の前のカフェ『Kuuki』もその一つだ。
明るい色の無垢材の扉を押して店内に入る。
広くはないが、壁は明るいグレーと白で統一され、高い位置にある窓から日差しが静かに差し込み、深い色の木製の床を照らしている。
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空いている席といっても、隼人以外の客は老夫婦が一組だけ。
窓から入る光の加減を見て、隼人は窓際を避けてテーブル席を選んだ。
黒いアイアンの脚の木製テーブルの上には、白い紙ナプキンとシンプルなデザインのメニュー立てが並んでいる。
メニューを手に取る前に、取材のために店内の写真を撮らせてもらえるか確認しようと、カウンターに顔を向ける。
カウンター奥の壁に控えめな装飾が施された棚には、数冊の小さな本と、小さな植物の鉢が並んでいた。
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