夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有

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第6話 錬金工房

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 能力の詳細は追々確認するにしても、現状の戦力把握は必要だよな。
 俺は現時点で自分が理解している範囲の能力を伝えることにした。

「錬金工房の中を幾つもの空間に区切って、その空間毎に時間を止めることも、加速することもできるし、自在に重力を制御することもできるみたいだな」

 錬金工房の中でクマが宇宙遊泳をするようにジタバタしている様子を彼女に告げた。

「自由自在ね」

 どこか感情が消え失せたような声のトーンだ。

「あと、取り込んだモノの鑑定と解体ができるみたいだ」

「至れり尽くせりのスキルで心強いわ」

 乾いた笑いを漏らしている彼女に聞く。

「異空間収納の上位互換って感じなのかな?」

「まったくの別ものよ」

 呆れたようにそう言うと異空間収納の基本的な能力を教えてくれた。

「異空間収納は魔力量に応じて収納できる重量が増し、内部の時間は停止している状態。機能はそれだけよ」

 俺は最後に錬金部分について簡単に触れる。

「錬金工房のスキルで何か作成するには、錬金工房に素材を取り込んでその中で作成するしかないらしい」

「ちょっと、信じられないスキルね……」

 ユリアーナがどこか疲れ切ったような表情を浮かべてかぶりを振った。

「百聞は一見にしかず、だ。早速試しに何か作成してみよう」

 俺自身、錬金工房の力を試してみたくて仕方がなかったのもあって提案するが、

「錬金術のようにどんなものが作成できるのかも知りたいけど、真っ先に知りたいのは攻撃手段としての錬金工房の能力よ」

 ユリアーナが即座に反対した。
 
 もっともだ。

 優先順位は生き残るのに最も必要な能力の確認なのは間違いない。
 俺は彼女の言葉に従うことにした。 

 よし、早速始めるか。

「それじゃ、あの大岩とこの硬い木を同時に取り込んでみる」

 数メートル先にあった直径一メートル程の大岩とかたわらに生えていた大木を錬金工房へと取り込む。
 大岩と大木が瞬時に消え、大木に巻き付いていた蔦が地面に落ちた。

 バランスを失なった鳥が、なんとか空中で姿勢を正して飛び去って行く。
 それを目で追っていたユリアーナが、

「見事に消えたわね」

 大木が生えていた場所に空いた大きな穴を、呆れたような表情で覗き込んだ。

「そして、出来上がり」

 俺は鋼の短いナイフを錬成し、それを右手に取り出してみせた。

「それ……」

「錬金工房の能力で作成した。岩から鋼と軟鉄を抽出して刀身を造り、木で造った柄にはなめしたクマの革を巻き付けてある」

「クマの革?」

「錬金工房内でクマを解体した」

「まさか、生きたまま……」

 ユリアーナがちょっと引き気味に後退る。

「そんな残酷なことはしないって。窒息死させてから解体したんだよ」

 多少の忌避感はあったが、それでも剣や斧で倒すことを考えればずっと少ないはずだ。
 続いて錬金工房内のクマの状態を告げる。

「肉と内臓、骨に皮とちゃんと分類もできている」

『驚くばかりだわ』、とのつぶやきに続いて言う。

「異空間収納と錬金術、両方の上位互換を兼ね備えたスキルなのは間違いなさそうね」

「次は収納容量がどれくらいあるか確かめたいんだけど、この辺りの岩や木を適当に取り込めばいいかな?」

「収納力は魔力量に比例するから、この世界の住人がもつ異空間収納なんて足元にも及ばないはずよ」

「世界トップクラスの性能ってことか」

「ええ、恐らくあたしと同程度……。ううん、それ以上の収納力があるはずよ」

 そう言って、無駄に岩や木を収納することを止められた。

「桁外れの異空間収納持ちが二人。これで異世界を巡る旅も、だいぶ楽になりそうだな」

「戦闘もね」

「俺の錬金工房なら、遠距離からの狙撃や不意討ちさえ対処できれば無敵なんじゃないか?」

「どんな特殊なスキルを所持している相手が敵になるか分からないのよ。あんまり調子にならいでね」

 ユリアーナが心配そうに諫めた。

「OK。慎重に行動するよ。俺も死にたくないからな」

 ユリアーナがため息を吐いて話題を変える。

「身体強化の訓練をする間にクマの血抜きをしようと思っていたけどそれも必要なさそうね」

「血抜き?」

「そうしないと臭くて食べられないでしょ?」

 さも当然という顔で返した。

「ちょっと待て。女神なのにクマを食べるのか?」

「女神だってお腹くらい空くわよ。できればクマよりも美味しいものが食べたいけど、贅沢が言える状況じゃないでしょう?」

「随分と人間臭い女神だな」

 いや、神様って供物を要求するよな。
 やっぱり人間と同じように美味いものを食べたいと思うものかもしれないな。
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