7 / 65
第7話 魔力感知
しおりを挟む
「神界にいればお腹が空くこともないわよ。そもそも不老不死だからね」
違った。
今の状況が特殊なのか。
「もしかして、人間界に降臨した今の状態だと、怪我したり、その、死んだりするのか?」
「そう、そうね。そうなるかしら」
どこか困ったような曖昧な微笑みを浮かべた。
彼女の表情に俺は言葉を詰まらせる。
「……ユリアーナ」
「自己犠牲とかじゃないから。その、誰かがやらないとならないでしょ?」
慌てたユリアーナが不意に視線を逸らした。
「……元気出せよ。俺も頑張るからさ」
「ありがとう」
世界を守るために頑張る少女。
眼前の健気な少女の味方が自分だけだと思うと、胸が締め付けられるような気がした。
「その、なんだ……俺がここにいる状況には納得できないところもあるけど、ユリアーナがそんな危険を冒してまで頑張ってるんだ。男の俺がいつまでもクダクダ言っていられないかならな」
「たっくんのそういうところ、大好きよ」
不意討ちの笑みに心臓が大きく波打つ。
「お、おう」
ゆっくりと歩きだした彼女の背中を視線で追う。
「それじゃ、そろそろ身体強化の練習をしましょうか」
そう言って不意に振り返った。
「錬金工房が十分に戦力になることは分かったけど、魔物が脅威であることは変わりないわ。自分の身を守るうえでも身体強化は重要よ」
ユリアーナが真剣な眼差しを俺に向けた。
「手を抜くつもりはないから安心してくれ」
当面は二人の能力を活かして戦う。
本格的に武器や防具、アイテムが作成できるようになったら、それぞれの弱点を補うアイテムを作成する。
隙が少なくなれば生存確率は上がるはずだ。
そんなことを考えた瞬間、俺の中で何かが閃いた。
「さっき、飛行能力があるとか言ってたろ? なら、俺を抱えて飛べば魔物に遭遇しなくてすむんじゃないのか?」
「空を飛ぶ魔物だっているわよ」
「そう、か……」
「それにたっくんを抱えて飛ぶなんて無理よ。今のあたしが持っているのは低レベルの飛行能力だもの」
「でも、上空から街を探すくらいはできるんじゃないのか?」
大まかな方向が分かるだけでも、無闇に森の中を歩き回るより安全で確実だ。
「エッチ」
「何を言っているんだ?」
予想外の反応に思考が鈍る。
「あたしを宙に浮かせて、下から覗くつもりなんでしょ」
恥ずかしそうに頬を染めるユリアーナに俺の心臓が再び大きく跳ねた。
「しないって! そんなことする訳ないだろ!」
「ふーん。怪しい……」
ほんのりと頬を染めた彼女が上目遣いで見つめる。
疑惑の眼差しだと分かっていても、心臓がまるで早鐘を打つように高鳴る。
「違うから。やましいことは考えてないからな。俺は純粋にお互いの弱点を補えあればと考えただけだから」
自分でもしどろもどろになっているのが分かる。
「そう言うことにしておいてあげる」
「そう言うこと、ってなんだよ――」
なおも抗弁しようとする俺の言葉を遮る。
「この話はここまでよ。少し離れているけど雑魚が集まってきたわ」
「魔物か?」
ユリアーナが神妙な顔でうなずいた。
違った。
今の状況が特殊なのか。
「もしかして、人間界に降臨した今の状態だと、怪我したり、その、死んだりするのか?」
「そう、そうね。そうなるかしら」
どこか困ったような曖昧な微笑みを浮かべた。
彼女の表情に俺は言葉を詰まらせる。
「……ユリアーナ」
「自己犠牲とかじゃないから。その、誰かがやらないとならないでしょ?」
慌てたユリアーナが不意に視線を逸らした。
「……元気出せよ。俺も頑張るからさ」
「ありがとう」
世界を守るために頑張る少女。
眼前の健気な少女の味方が自分だけだと思うと、胸が締め付けられるような気がした。
「その、なんだ……俺がここにいる状況には納得できないところもあるけど、ユリアーナがそんな危険を冒してまで頑張ってるんだ。男の俺がいつまでもクダクダ言っていられないかならな」
「たっくんのそういうところ、大好きよ」
不意討ちの笑みに心臓が大きく波打つ。
「お、おう」
ゆっくりと歩きだした彼女の背中を視線で追う。
「それじゃ、そろそろ身体強化の練習をしましょうか」
そう言って不意に振り返った。
「錬金工房が十分に戦力になることは分かったけど、魔物が脅威であることは変わりないわ。自分の身を守るうえでも身体強化は重要よ」
ユリアーナが真剣な眼差しを俺に向けた。
「手を抜くつもりはないから安心してくれ」
当面は二人の能力を活かして戦う。
本格的に武器や防具、アイテムが作成できるようになったら、それぞれの弱点を補うアイテムを作成する。
隙が少なくなれば生存確率は上がるはずだ。
そんなことを考えた瞬間、俺の中で何かが閃いた。
「さっき、飛行能力があるとか言ってたろ? なら、俺を抱えて飛べば魔物に遭遇しなくてすむんじゃないのか?」
「空を飛ぶ魔物だっているわよ」
「そう、か……」
「それにたっくんを抱えて飛ぶなんて無理よ。今のあたしが持っているのは低レベルの飛行能力だもの」
「でも、上空から街を探すくらいはできるんじゃないのか?」
大まかな方向が分かるだけでも、無闇に森の中を歩き回るより安全で確実だ。
「エッチ」
「何を言っているんだ?」
予想外の反応に思考が鈍る。
「あたしを宙に浮かせて、下から覗くつもりなんでしょ」
恥ずかしそうに頬を染めるユリアーナに俺の心臓が再び大きく跳ねた。
「しないって! そんなことする訳ないだろ!」
「ふーん。怪しい……」
ほんのりと頬を染めた彼女が上目遣いで見つめる。
疑惑の眼差しだと分かっていても、心臓がまるで早鐘を打つように高鳴る。
「違うから。やましいことは考えてないからな。俺は純粋にお互いの弱点を補えあればと考えただけだから」
自分でもしどろもどろになっているのが分かる。
「そう言うことにしておいてあげる」
「そう言うこと、ってなんだよ――」
なおも抗弁しようとする俺の言葉を遮る。
「この話はここまでよ。少し離れているけど雑魚が集まってきたわ」
「魔物か?」
ユリアーナが神妙な顔でうなずいた。
70
あなたにおすすめの小説
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中
異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました
まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。
ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。
変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。
その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。
恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる