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第37話 神聖石、一つ目
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オーガを殲滅した俺は大勢の冒険者たちに歓声で迎えられる中、防衛ラインの内側へと足を踏み入れた。
「兄ちゃん、スゲーな」
「あんな攻撃魔術、初めて見たぜ」
口々に称賛の言葉が飛び交い、一様に俺の見た目に驚く。
「こいつは驚いた、まだ子どもじゃねえか」
「遠目にも若いとは思ったが、成人前だとは思わなかったぜ」
この世界では十五歳で成人なので、数日前に十六歳になったおれは成人扱いとなる。
だが、西洋人に近い風貌をした人々の間では、俺の容姿は年齢よりも随分と幼く見えるようだ。
日本でも年よりも下に見られることが多かったからこの反応は予想していた。
どうせ小柄で幼い顔つきをしているよ、俺は。
驚きと称賛の声を適当に聞き流し、求められる悪手に応じながらユリアーナとロッテの下へと向かった。
「凄かったです!」
目を輝かせたロッテが駆け寄る。
「ロッテもよく頑張ったぞ」
「えへへへー」
嬉しそうに頬を緩ませるロッテに冒険者の一人が声をかけた。
「ロッテちゃん、ちょっと手伝ってくれ」
見ると怪我人の手当てをしている。
「知り合いなんです。手伝ってきていいですか?」
「行っておいで」
走り去るロッテと入れ替わるように近付いてきたユリアーナが笑みを浮かべる。
「お疲れ様、見事な手際だったわね」
「そっちこそ活躍だったようじゃないか」
改めて周囲に視線を巡らせると、冒険者たちが俺とユリアーナに注目しているのが分かる。
「お陰で目立っちゃったわ」
そう言って肩をすくめるユリアーナに、オーガの頭部から取り出した小粒の真珠ほどの黒い石を手渡す。
「これで間違いないか?」
「ありがとう、これよ!」
弾んだ声が返ってきた。
神聖石を大切そうに握りしめるのを見ていると、それに気付いたユリアーナが聞く。
「どうしたの?」
「いや、宝石のようなものを想像していたから……」
笑顔に見とれていたとは言えない。
「がっかりした?」
「いや、とても綺麗だと思う」
「あら、この石の美しさが分かる人がいて嬉しいわ」
ほほ笑む彼女から、つい、視線をそらしてしまった。
気恥ずかしさから話もそらす。
「ところでその石、アンデッド・オーガの頭の中にあったぞ」
魔物が所有しているというのもおかしな話だと思っていたが、頭部にあったのも気になる。
「直撃だったようね」
「何の話だ?」
「前に言ったでしょ。神聖石を地上に落としたって」
「まさか……、落とした石がオーガの死体に直撃したのか? それでアンデッド化したとかじゃないだろうな」
「その可能性もあるけ……」
そう言って思案げな表情を浮かべたユリアーナに聞く。
「聞くのも怖いが、神聖石が直撃したのが原因でオーガが死亡して、さらにその石の力でアンデッド化したなんてことは?」
「かもしれないわね」
かもしれないわね、じゃねえ!
「それって、アンデッド・オーガも被害者じゃないのか?」
「もしそうなら気の毒なことをしたわ」
「お前、もしかして邪神なんじゃないか?」
「言うにことかいて邪神はないでしょ、邪神は!」
先程までドキドキさせられた愛らしい笑顔はそこにはなかった。
あるのは失態をごまかそうとする子どもの顔だ。
そのとき、冒険者たちの間から声が上がった。
「騎士団の連中だ」
「ようやくお出ましかよ」
歓迎していないのがありありと伝わってくる。
声のする方に視線を向けると、騎乗した十数名の騎士たちがこちらへと向かってくるところだった。
「兄ちゃん、スゲーな」
「あんな攻撃魔術、初めて見たぜ」
口々に称賛の言葉が飛び交い、一様に俺の見た目に驚く。
「こいつは驚いた、まだ子どもじゃねえか」
「遠目にも若いとは思ったが、成人前だとは思わなかったぜ」
この世界では十五歳で成人なので、数日前に十六歳になったおれは成人扱いとなる。
だが、西洋人に近い風貌をした人々の間では、俺の容姿は年齢よりも随分と幼く見えるようだ。
日本でも年よりも下に見られることが多かったからこの反応は予想していた。
どうせ小柄で幼い顔つきをしているよ、俺は。
驚きと称賛の声を適当に聞き流し、求められる悪手に応じながらユリアーナとロッテの下へと向かった。
「凄かったです!」
目を輝かせたロッテが駆け寄る。
「ロッテもよく頑張ったぞ」
「えへへへー」
嬉しそうに頬を緩ませるロッテに冒険者の一人が声をかけた。
「ロッテちゃん、ちょっと手伝ってくれ」
見ると怪我人の手当てをしている。
「知り合いなんです。手伝ってきていいですか?」
「行っておいで」
走り去るロッテと入れ替わるように近付いてきたユリアーナが笑みを浮かべる。
「お疲れ様、見事な手際だったわね」
「そっちこそ活躍だったようじゃないか」
改めて周囲に視線を巡らせると、冒険者たちが俺とユリアーナに注目しているのが分かる。
「お陰で目立っちゃったわ」
そう言って肩をすくめるユリアーナに、オーガの頭部から取り出した小粒の真珠ほどの黒い石を手渡す。
「これで間違いないか?」
「ありがとう、これよ!」
弾んだ声が返ってきた。
神聖石を大切そうに握りしめるのを見ていると、それに気付いたユリアーナが聞く。
「どうしたの?」
「いや、宝石のようなものを想像していたから……」
笑顔に見とれていたとは言えない。
「がっかりした?」
「いや、とても綺麗だと思う」
「あら、この石の美しさが分かる人がいて嬉しいわ」
ほほ笑む彼女から、つい、視線をそらしてしまった。
気恥ずかしさから話もそらす。
「ところでその石、アンデッド・オーガの頭の中にあったぞ」
魔物が所有しているというのもおかしな話だと思っていたが、頭部にあったのも気になる。
「直撃だったようね」
「何の話だ?」
「前に言ったでしょ。神聖石を地上に落としたって」
「まさか……、落とした石がオーガの死体に直撃したのか? それでアンデッド化したとかじゃないだろうな」
「その可能性もあるけ……」
そう言って思案げな表情を浮かべたユリアーナに聞く。
「聞くのも怖いが、神聖石が直撃したのが原因でオーガが死亡して、さらにその石の力でアンデッド化したなんてことは?」
「かもしれないわね」
かもしれないわね、じゃねえ!
「それって、アンデッド・オーガも被害者じゃないのか?」
「もしそうなら気の毒なことをしたわ」
「お前、もしかして邪神なんじゃないか?」
「言うにことかいて邪神はないでしょ、邪神は!」
先程までドキドキさせられた愛らしい笑顔はそこにはなかった。
あるのは失態をごまかそうとする子どもの顔だ。
そのとき、冒険者たちの間から声が上がった。
「騎士団の連中だ」
「ようやくお出ましかよ」
歓迎していないのがありありと伝わってくる。
声のする方に視線を向けると、騎乗した十数名の騎士たちがこちらへと向かってくるところだった。
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