夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有

文字の大きさ
48 / 65

第48話 準備は整った

しおりを挟む
「よし、運び込め」

 騎士団の詰所奥にある倉庫前に到着するとパウル隊長の号令一下、配下の騎士と共に俺とロッテも盗賊たちからの押収品を騎士団の倉庫へ運び込む。
 荷物を運んでいると手ぶらのユリアーナが近付いてきた。

「あきれたものね。騎士団の倉庫を利用しているとは思わなかったわ」

「まったくだ。灯台下暗しとはよく言ったものだ」

 盗品を隠すのだからバレても言い逃れができるように、別名義で民間の倉庫を借りていると予想していただけに驚きだ。

「ところで、第二部隊はどうしちゃったの?」

「踏み込むタイミングをどうするか、連絡が入るはずだったんだが未《いま》だに連絡がない」

 第二部隊が踏み込んでくるなら今が絶好のタイミングだと思うのだが、踏み込んでくる気配はない。

「第一部隊と行動を共にしていたから、あちらさんとしても接触する機会を逸したのかもね」

「そんなところだろうな」

「楽しみにしてたのに……」

 心底残念そうに肩を落とした。
 その姿に、第二部隊のコンラート隊長の提案を話して聞かせたとき、 踊りださんばかりの喜びようが蘇る。

『あのいけ好かないオヤジが犯罪者になる瞬間を間近で見られるのね』

 実際、軽やかな足取りでターンを決めていたな。

「そのうち接触してくるだろ。パウル隊長が犯罪者として捕えられるところを間近で見たいのは俺も一緒だ」

「そうね、そうよね……」

 そう言い残して馬車へと引き返すユリアーナを見ていると、年配の騎士が声をかけてきた。

「あの娘、孤児院から引き取ったんだって?」

 視線の先には誰よりも多くの荷物を抱えたロッテがいた。

「ええ」

「ありゃ、相当量の魔力をもっているな。うちの騎士団に欲しいくらいだぜ」

 ロッテが大量の荷物を抱えて足早に倉庫へと消えていく。
 少しやり過ぎたかな。

 彼女の魔力はかなり増強していた。それに比例して魔力による身体強化も格段に強化されており、並みの騎士など足元にも及身体能力を発揮している。

「勘弁してください。彼女はもううちの商会になくてはならない人材なんですよ。それに商人になりたいと言うのも、私たち兄妹と一緒に来たいと言うのも彼女の希望です」

 年配の騎士は『別にとったりしないから安心しろ』と言って笑うと、

「働き者だし気立てもいい。それにあれは将来美人になるぞ」

 そう付け加えた。
 同感だ。
 抜けたところもあるがそこも可愛らしいと言えば可愛らしい。元の世界に戻らなかった場合、ロッテを嫁さんにしてもいいかもしれないな。

「とてもよくやってくれています」

 将来美人になる云々について下手に言及すると不名誉な噂が広がりかねないので触れずにおこう。

「大事にしろよ。逃がしたら後悔するぞ」

「ご忠告ありがとうございます。大切にします」

 年配の騎士が照れた演技をする俺からユリアーナに視線を移した。

「それに引きかえお前さんの妹はまるで働かないな」

 同感だ。

「実家では奉公人に指示を出すだけでしたから……」

『女神様なので』とは言えない。

「俺の知っている商家の娘ってのは、どんな大商人の娘でも皆働き者なんだがな」

「国が違うので、その辺りも違うのかと」

「まるで貴族のお嬢さんみたいだな」

 言わんとしていることは分かる。

「父親に甘やかされて育ちましたからね」

 ボロがでないうちに切り上げたいと思ったところに、若い騎士見習いに声を掛けられた。

「シュラ・カンナギはお前か? 魔術師ギルドから使いがきている」

「使いの方はどちらに?」

 騎士見習いが視線で扉の一つを示した。
 俺が視線を向けると扉のすぐ側に立っていた男が軽く会釈を返してよこした。

「兄ちゃん、手伝いはいいから行ってきな」

 年配の騎士に促されて、扉の側に立つ男の方へと歩を進めた。
 魔術師ギルドの使者を名乗る男は握手をするなり本題を切り出した。

「代官様がカンナギ様との面会を承諾くださいました。時間は今夜、二十時から一時間とのことです」

「お骨折り頂き、ありがとうございます」

 急がせておいて何だが、予想していたよりも随分と早く面会できる。正直なところに三日先になると思っていたが、こちらとしてはありがたい誤算だ。

「十九時過ぎに宿へ迎えの馬車を差し向けます」

「そこまでして頂かなくとも――」

「万が一遅れるようなことがあっては当ギルドとしても面目が立ちません」

 男は最後まで言わせずにクギを刺した。

「承知いたしました。準備万端整えて宿で待たせて頂きます」

「それでは私はこれで失礼いたします」

 男は深々とお辞儀をして去って行った。

 ◇

  第一部隊から解放され、宿へ戻るとすぐに第二部隊の騎士から接触があった。
  俺は騎士に呼び出されるまま、近くの酒場へと入る。

「こんな格好ですまないね」

 第二部隊の騎士を名乗った男は街中で見かけるゴロツキのような恰好をしていた。少なくともまっとうな仕事についている人間には見えない。
 オーガ討伐の際に見かけていなかったら、紀章を見せられても信用しなかっただろうな。

「いいえ、騎士だと知られると不都合なこともあるでしょう」

「それで、押収品の保管場所は分かりましたか?」

 注文したビールが運ばれるや否や騎士が小声で訊いてきた。

「騎士団の詰所奥にある倉庫です」

「まさか!」

 驚く騎士に向けてさらに言う。

「信じられない気持ちも分かります。まさか騎士団の施設を、それも詰所の中にある倉庫を犯罪に利用しているとは思いませんでした」

「ご領主や代官に知られたら大ごとだ……」

 騎士の独り言を聞こえなかった振りをして、俺は接触してきた騎士に盗品を隠した倉庫と、倉庫の床下が隠し場所になっていることなど詳細を伝えた。
 一通りの情報提供を終えると、騎士が静かにささやく。

「今夜踏み込むので君には案内を頼みたい」

 パウル隊長の逮捕劇を特等席で見るのを半ば諦めていただけにこの申し出は願ったりかなったりだ。
 二つ返事で飛び付きたいところだが、ここは出来るだけ高く恩を売っておこう。

「どうしても、という事であればご協力はさせていただきます。しかし、私が案内したのがバレたら、そちらが不利益を被りませんか?」

「むしろ証人としての君が必要なんだ」

「証人ですか……。証言をするために『保護』という名目で、身柄を拘束されるようなことはないでしょうね?」

「証言までこの街を離れないでもらいたい」

「私たちは行商人なので移動できないと商売ができません」

「代官の裁きがある当日以外は自由にできるはずだ。第二部隊としても、ある程度の便宜は図れると思う」

『はずだ』と『思う』、か。

 何ともグレーな答えだ。
 というか、明言を避けるあたり絶対に不利益を被るよな。

「この辺りで商売をするならラタの街の騎士団の覚えがよくなるのは金銭に換算できない利益があると思うが、どうかな?」

 思案している俺に騎士が強い口調で言った。
 なるほど。
 協力しないと後々に禍根を残すことになると言うわけか。

「分かりました。協力させて頂きます」

「では、私は隊長に報告をしなければならないのでこれで失礼する。踏み込む時間は追って知らせる」

「その時間ですが、二十時から二十二時まで先約があります」

「申し訳ないが我々を優先させて欲しい。先約は断ってもらえないだろうか」

 言葉は丁寧だが口調と雰囲気が高圧的だ。

「先約は代官様との商談です。実は献上品をお持ちすることになっております。お断りするとなれば第二部隊の隊長のお名前を出さないとなりませんがよろしいでしょうか?」

「代官様との約束だと先に言え!」

 本性を現した感じだな。

「如何しましょう」

「代官様との面会は二十二時には終わるのだな!」

「はい、遅くともその時間には終わる予定です。とは言え、時間が来たからと言って私から面会を切り上げるというのも……」

 眼前でイラついている騎士をさらにからかう。

「もういい! 夜中だ! 夜中に踏み込めるよう、私の方から隊長へ進言する」

 用事は済んだとばかりに立ち上がる騎士に問い掛ける。

「料理が来るのはこれからですが?」

「急いでいる! 料理は勝手に食べてろ!」

 吐き捨てるようにそう言うと、騎士は足早に酒場を出て行った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。  効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。  日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。    青年は今日も女の子を口説き回る。 「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」 「変な人!」 ※2025/6/6 完結。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...