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10.土の公爵家テーレ家のプラテリア
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逃げ去った先は、魔導図書館。 そこには魔導研究者として地の公爵家であるテーレ家から選出された学友プラテリアがいる。
陛下よりも2歳年下で、学友になったのはヨミよりも5年ほど遅い。 公爵家の遠縁にあたる息子で、公爵家の養子として迎えられているが、当主争いには関係のない子だ。 現在18歳であるが、小柄な彼はヨミよりも少し背が高い程度、ずいぶんと童顔で未成年にあたる15歳だと言っても通じる甘い容姿をしている子だ。
「どうかなさったのですか? ヨミ姉様」
そう言いながら突然に訪れたヨミに、ミルクタップリの少し濃くに出した紅茶の準備をする。
「大変なんです!!」
「どうなさったのですか?」
「陛下が、陛下が!!」
この時点で、プラテリアには特に大変なことが無い事が理解できていた。 本当に大変なことが起きているなら、ヨミは自分の元にやってこないだろうと。
「はいはい、まずは落ち着いてお茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
「いえいえ、姉様のためなら僕は何時でもお茶をいれますよ」
ミルクで少しだけ温くなったお茶を、三口飲み込んだのを喉の動きで確認したプラテリアは、ヨミに改めて問いかけた。
「それで、陛下がどうなされたのですか?」
「ぁ、その……」
少しだけ冷静になったのだろう、かなりためらいがちになっている。 プラテリアは他の人の前では凛々しく完璧な5つ年上の幼馴染が、自分には隙を見せる様子が可愛らしくて仕方がないと思っていた。
ニッコリ猫のように愛らしくプラテリアは笑って見せる。
「陛下が、その……発情されたの」
「……ぇ?」
「その……」
言い難そうに頬を赤らめるヨミは可愛らしくはあるが、内容に頭が痛くなった。
「いえ、その……状況を順番に話していただけますか?」
コクコクと頷き話してくる。
もし、ヨミの努力家なところや、賢く判断力に優れたところを知らなければ、こんな馬鹿娘を相手にするのは面倒だと思ってしまうだろうなぁ……と思いつつ、必死に少し前に怒った出来事を真っ赤な顔で語るヨミにウンウンと笑顔でプラテリアは頷いて見せた。
「それで、陛下が欲情したから大変だと?」
「むしろ、好きな女性とそんな状況でありながら、何の反応も示さないのが常識だったら、世界から人間は消えてしまいますよ? 僕だって、恥じらいながら姉様が身体を触ってくれると言うなら興奮すると思いますよ」
プラテリアは、にゃぁと鳴きそうな笑みを浮かべる。
「そんな冗談は面白くありませんわ!!」
「いやいや、本当ですとも。 なんでしたら試してみます?」
そう言いながら上着を脱ぎだそうとすれば、逃げだそうとする。 ヨミはこの手の話になると一気に、頭の悪い子になってしまうから面倒で、逃げてくれるならソレはソレで楽だと考えていたが、入り口で大きな障害物にぶつかり、ヨミは逃亡を阻まれていた。
「あんな逃げ方をしたから、どこかで事故っているんじゃないかと思ったが無事で良かったよ嬢ちゃん」
「エル……兄様」
側にプラテリアとエルオーネしかいないと知っているヨミは、世間体を気にせず身内としてエルオーネへと呼びかけた。
「で、どうした? リアにいじめられたか?」
よしよしと大きな手でエルオーネはヨミの頭を撫でる。
「失礼ですね。 僕はこれでも兄様方と比較し紳士として通っているんですよ。 炎猛の将エルオーネ兄様、冷激の将ネーヴェ兄様」
ニッコリと微笑めば、エルオーネは最年少の学友の額に軽くデコピンをした。
「っ、酷いですねぇ~。 僕は、ヨミ姉様を愛している陛下が、ヨミ姉様相手に欲情するのはいたって当然の事だと伝えただけですよ。 まぁ、信頼していけないので、僕も同じ風に肌を撫でられれば欲情しますよと」
「後半が余計だ」
てへっと誤魔化し笑っておく。 本気で怒らせると筋肉ゴリラは知性派だと言う僕まで訓練だと引っ張りまわしかねないから、引き時が肝心と言う奴だ。
「でも、エル兄様は、私が触れても欲情なんてしませんわ」
「そりゃぁ、まぁ、保護すべき妹として見ているからなぁ……あ~~~、なるほど、う~ん。 ようするに、そう言う事か……これは、厄介かも……」
「何を一人分かったふりをしているんですか? 筋肉ゴリラの癖に生意気ですよ兄様」
「口が悪いぞチビ。 いや、ようするに……どれだけアピールしても陛下が嬢ちゃんに真に受けられない理由が、身をもってわかったと言う事だ」
「それは?」
「俺や、ネーヴェは、嬢ちゃんを大切に思っても欲情しない」
「「されても困りますが」」
「……おまえらはぁ……」
エルオーネは本気で頭を抱えだした。
陛下よりも2歳年下で、学友になったのはヨミよりも5年ほど遅い。 公爵家の遠縁にあたる息子で、公爵家の養子として迎えられているが、当主争いには関係のない子だ。 現在18歳であるが、小柄な彼はヨミよりも少し背が高い程度、ずいぶんと童顔で未成年にあたる15歳だと言っても通じる甘い容姿をしている子だ。
「どうかなさったのですか? ヨミ姉様」
そう言いながら突然に訪れたヨミに、ミルクタップリの少し濃くに出した紅茶の準備をする。
「大変なんです!!」
「どうなさったのですか?」
「陛下が、陛下が!!」
この時点で、プラテリアには特に大変なことが無い事が理解できていた。 本当に大変なことが起きているなら、ヨミは自分の元にやってこないだろうと。
「はいはい、まずは落ち着いてお茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
「いえいえ、姉様のためなら僕は何時でもお茶をいれますよ」
ミルクで少しだけ温くなったお茶を、三口飲み込んだのを喉の動きで確認したプラテリアは、ヨミに改めて問いかけた。
「それで、陛下がどうなされたのですか?」
「ぁ、その……」
少しだけ冷静になったのだろう、かなりためらいがちになっている。 プラテリアは他の人の前では凛々しく完璧な5つ年上の幼馴染が、自分には隙を見せる様子が可愛らしくて仕方がないと思っていた。
ニッコリ猫のように愛らしくプラテリアは笑って見せる。
「陛下が、その……発情されたの」
「……ぇ?」
「その……」
言い難そうに頬を赤らめるヨミは可愛らしくはあるが、内容に頭が痛くなった。
「いえ、その……状況を順番に話していただけますか?」
コクコクと頷き話してくる。
もし、ヨミの努力家なところや、賢く判断力に優れたところを知らなければ、こんな馬鹿娘を相手にするのは面倒だと思ってしまうだろうなぁ……と思いつつ、必死に少し前に怒った出来事を真っ赤な顔で語るヨミにウンウンと笑顔でプラテリアは頷いて見せた。
「それで、陛下が欲情したから大変だと?」
「むしろ、好きな女性とそんな状況でありながら、何の反応も示さないのが常識だったら、世界から人間は消えてしまいますよ? 僕だって、恥じらいながら姉様が身体を触ってくれると言うなら興奮すると思いますよ」
プラテリアは、にゃぁと鳴きそうな笑みを浮かべる。
「そんな冗談は面白くありませんわ!!」
「いやいや、本当ですとも。 なんでしたら試してみます?」
そう言いながら上着を脱ぎだそうとすれば、逃げだそうとする。 ヨミはこの手の話になると一気に、頭の悪い子になってしまうから面倒で、逃げてくれるならソレはソレで楽だと考えていたが、入り口で大きな障害物にぶつかり、ヨミは逃亡を阻まれていた。
「あんな逃げ方をしたから、どこかで事故っているんじゃないかと思ったが無事で良かったよ嬢ちゃん」
「エル……兄様」
側にプラテリアとエルオーネしかいないと知っているヨミは、世間体を気にせず身内としてエルオーネへと呼びかけた。
「で、どうした? リアにいじめられたか?」
よしよしと大きな手でエルオーネはヨミの頭を撫でる。
「失礼ですね。 僕はこれでも兄様方と比較し紳士として通っているんですよ。 炎猛の将エルオーネ兄様、冷激の将ネーヴェ兄様」
ニッコリと微笑めば、エルオーネは最年少の学友の額に軽くデコピンをした。
「っ、酷いですねぇ~。 僕は、ヨミ姉様を愛している陛下が、ヨミ姉様相手に欲情するのはいたって当然の事だと伝えただけですよ。 まぁ、信頼していけないので、僕も同じ風に肌を撫でられれば欲情しますよと」
「後半が余計だ」
てへっと誤魔化し笑っておく。 本気で怒らせると筋肉ゴリラは知性派だと言う僕まで訓練だと引っ張りまわしかねないから、引き時が肝心と言う奴だ。
「でも、エル兄様は、私が触れても欲情なんてしませんわ」
「そりゃぁ、まぁ、保護すべき妹として見ているからなぁ……あ~~~、なるほど、う~ん。 ようするに、そう言う事か……これは、厄介かも……」
「何を一人分かったふりをしているんですか? 筋肉ゴリラの癖に生意気ですよ兄様」
「口が悪いぞチビ。 いや、ようするに……どれだけアピールしても陛下が嬢ちゃんに真に受けられない理由が、身をもってわかったと言う事だ」
「それは?」
「俺や、ネーヴェは、嬢ちゃんを大切に思っても欲情しない」
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「……おまえらはぁ……」
エルオーネは本気で頭を抱えだした。
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