戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石

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第7話 アメリア

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「ほら、ミリーナ。こっちよ」

母親だろう。年の頃は30位。青い髪が後ろで一本に結われている。

子供がいるとは思えない見事なプロポーションで、彼女一人でいたら声を掛ける男が後を絶たないだろう。

事実、そんなことばかりなので一人で出歩くのはなるべく控えていた。

手には白い花束を2つ持っている。

今は振り返り、娘を呼んでいた。

「はぁい、お母様」

返事をしたのは美しい金髪をツインテールにした十代半ばの美少女である。

すらっとしたスレンダーな体型で小動物のようなすばしっこいイメージが全身から溢れている。

2人はしばらく並んで歩くと目的の場所にたどり着いた。

そこは墓標であった。

そこには名前の他に

『勇敢なる夫婦、息子と共にここに眠る』

と書いてある。

母親の女性・・・アメリアはルークやルークの両親が眠る2つの墓標に花束をそれぞれ置き、目を瞑る。

アメリアは故郷を離れてからもルークのお墓参りに毎年来ていた。

ルークの両親が亡くなってからは当然、二人のお墓参りも行うようになっていた。

(ゾイドさん、ミリーさん、・・・そしてルーク。今年も来ちゃいました。皆はきっとここに来なくていいから前を向いて生きろと仰るのでしょうが、大丈夫です。私は前を向いて生きてます。なので、せめて年に1回くらいは顔を出させてください)

しばらくしてからアメリアは目を開けて隣をみると、ミリーナはまだ目を瞑っていた。

(ミリーナはゾイドさんやミリーさんが亡くなるまでルークのお墓参りに来るたびに可愛がって貰っていたからなぁ)

アメリアがふと下を向くと、そこで初めて地面にちょうど大人の男性位の足跡があることに気づく。

(あら、珍しい。誰かいらっしゃったのかしら)

そこはまさしくルークが立っていた場所であった。





アメリアとミリーナは墓地を出ると家があった場所に向かう。

いつものことなのでミリーナも何も言わずに付いて行く。

到着し家があった場所を眺めていると今回は普段とは違うことが起こった。

「あら?アメリアちゃんとミリーナちゃんじゃない?」

中年の女性が話しかけて来たのだ。

「・・・あ、タバサ姉さん!」

アメリアが中年の女性が昔ご近所だったタバサたと分かると駆け寄った。

「お久しぶりです!!」

「本当にね、綺麗になっちゃって」

「いえ・・・そんなことないですよ」

「相変わらず褒められるのに弱いわね、あなた」

タバサが少し呆れる。

「初めまして娘のミリーナと申します」

タイミングを見計らってミリーナが礼儀正しく挨拶をする。

「礼儀正しいわね。あたしはタバサ。昔あなたのお母さんの実家のご近所だったのよ。それにしても大きくなったわね~」

「すみません。お会いしたことがあったのですね」

ミリーナがタバサの言葉に申し訳そうにあやまる。

アメリアはルークの両親に会うときに偶然タバサに会うこともあったがここ十年くらいは会っていなかったのでミリーナが覚えていなくても無理はない。

「いいや、小さかったから無理もないよ。気にしないどくれ」

タバサが手をパタパタさせながらフォローする。

「それにしても今日は珍しい人によく会うもんだ」

「私達の他にもどなたかに会われたんですか?そういえばミリーさんたちのお墓参りに行ったときにどなたかが来ていたみたいですし、同じ人でしょうか?」

アメリアがタバサの言葉に反応する。

「さぁ、どうだろうね。あたしが会ったのは古い友人だったけど、ミリー達のお墓参りに行った人は違うと思うよ」

タバサはとっさに嘘をつく。

(いけない。口が滑るところだった。ルークが生きていたことを教えてやりたいけど既に今更だ。わざわざ言う必要はない。かえってアメリアには酷だろう。世界は広いんだ。もう二度と二人が会うことはないだろうし)

「そうでしたか。ではこのあたりで失礼致しますね」

アメリアは疑う素振りも見せず、タバサの言うことを信じると二人はお辞儀をしてから歩いていった。

二人の姿が見えなくなってからタバサは呟く、

「ルーク、あんたが来たときにアメリアが来るなんてね。恋愛物語なんかだったら最高だったんだが、、、やるせないね」

タバサは今はどこにいるともしれないルークの不憫さを思い嘆くのであった。
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