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婚約解消
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その翌日、レオンからミシェルあてに手紙が届いた。
ジルベールははミシェルに見せることなく封を開けた。
『ミシェル、どうか連絡をください。あの時のことは本当に誤解なんだ。俺はミシェルの事だけを愛している。次の休みにそちらに戻るので、時間を取ってほしい』
手紙にはそう書かれていた。
「自分に惚れ切っているミシェルならどうとでも言いくるめられるとでも思っているのか。不貞をした上に子供までなしておいてまだミシェルをだまそうとするのか」
ジルベールは眉間にしわを寄せて手紙をくしゃっと丸めた。
「どうしますか、このままでは会いに来るかもしれません」
「私は今から、モンテ家へ行ってくる」
「では、正式に婚約解消を?」
「もちろんだ。話をつけてくる。破棄で慰謝料を貰いたいところだが公になりミシェルが腫物扱いされるのはごめんだからな。内内に婚約を解消し、さっさと縁を切る」
ジルベールはレオンの実家を訪問したが、モンテ子爵は婚約解消に応じなかった。
モンテ子爵は、レオンはミシェルを愛しており、不貞を働くことは絶対ないと言い切った。
ジルベールは記憶を失うほど苦しんだ息子のことを思うと、はいそうですかと引き下がることは出来ない。しかも街道で意識を失い倒れていたのだ。一歩間違えれば何か事件に巻き込まれてしまった可能性もある。
もし何か本当に行き違いがあったとしてもミシェルがひどく傷つけられたのは事実。ジルベールは婚約の解消を譲らなかった。
モンテ子爵はレオン、ミシェルと同席の上で話し合いをしたいと当然のことを提案した。
「ミシェルは心を壊してしまった、息子のそんな姿を見て、話し合いなど悠長なことを言っていられない。真実はどうであれ、私はミシェルをこれ以上苦しませたくない」
「……ミシェル君が心を?」
「ああ」
「では……私だけでもミシェル君に会わせてもらえないか。彼と話をさせて欲しい」
ジルベールはしばらく考えたが、モンテ子爵を屋敷に招くことにした。見てもらえば責任を感じ、二人の関係を修復するなんて話はできないだろうと思ったのだ。
「初めまして。ミシェルと申します」
ミシェルは初対面のようにモンテ子爵に挨拶をした。その表情には戸惑いとわずかな緊張が浮かんでいた。
「……ミシェル君。私はレオンの父親だ」
「レオン様というと……僕の婚約者だとお聞きしましたがそのお父様でしょうか」
「ああ、そうだよ。ミシェル君……すまん……愚息が大変済まないことをした」
モンテ子爵は頭を下げた。
ミシェルの状況を見てモンテ子爵はレオンをかばうどころではないと悟った。これほど人を追い詰め苦しめた側が、無理を言うことなどできない。
それに学院生時代から屋敷の庭で一緒にお茶を飲んだりして、モンテ子爵もミシェルのことを可愛がってきた。そんな子の記憶喪失を目の当たりにして非常にショックを受けたのだった。
「見ての通りだ。私たちはミシェルを最優先に考えたい」
「もちろんだ。……本当にレオンのことを覚えていないのだな」
「レオンのことどころか、親の私の顔でさえわからないんだ」
ジルベールは怒りを抑え、そして悲し気な顔で言った。
「本当にすまなかった。だが、レオンがミシェル君を想う気持ちは確かなんだ。記憶が戻れば一度話し合いを考えてやってもらえないか」
「約束はできない。すべてはミシェルしだいだ。どちらにしても婚約は解消させる」
「……わかった。今度は書類をそろえてくる。ミシェル君を大事にしてくれ、申し訳なかった」
親のことでさえわからなくなったミシェルに心を痛めた子爵は、婚約解消はやむを得ないと受け入れたのだった。
そして数日後、両家の婚約解消が果たされた。
ジルベールははミシェルに見せることなく封を開けた。
『ミシェル、どうか連絡をください。あの時のことは本当に誤解なんだ。俺はミシェルの事だけを愛している。次の休みにそちらに戻るので、時間を取ってほしい』
手紙にはそう書かれていた。
「自分に惚れ切っているミシェルならどうとでも言いくるめられるとでも思っているのか。不貞をした上に子供までなしておいてまだミシェルをだまそうとするのか」
ジルベールは眉間にしわを寄せて手紙をくしゃっと丸めた。
「どうしますか、このままでは会いに来るかもしれません」
「私は今から、モンテ家へ行ってくる」
「では、正式に婚約解消を?」
「もちろんだ。話をつけてくる。破棄で慰謝料を貰いたいところだが公になりミシェルが腫物扱いされるのはごめんだからな。内内に婚約を解消し、さっさと縁を切る」
ジルベールはレオンの実家を訪問したが、モンテ子爵は婚約解消に応じなかった。
モンテ子爵は、レオンはミシェルを愛しており、不貞を働くことは絶対ないと言い切った。
ジルベールは記憶を失うほど苦しんだ息子のことを思うと、はいそうですかと引き下がることは出来ない。しかも街道で意識を失い倒れていたのだ。一歩間違えれば何か事件に巻き込まれてしまった可能性もある。
もし何か本当に行き違いがあったとしてもミシェルがひどく傷つけられたのは事実。ジルベールは婚約の解消を譲らなかった。
モンテ子爵はレオン、ミシェルと同席の上で話し合いをしたいと当然のことを提案した。
「ミシェルは心を壊してしまった、息子のそんな姿を見て、話し合いなど悠長なことを言っていられない。真実はどうであれ、私はミシェルをこれ以上苦しませたくない」
「……ミシェル君が心を?」
「ああ」
「では……私だけでもミシェル君に会わせてもらえないか。彼と話をさせて欲しい」
ジルベールはしばらく考えたが、モンテ子爵を屋敷に招くことにした。見てもらえば責任を感じ、二人の関係を修復するなんて話はできないだろうと思ったのだ。
「初めまして。ミシェルと申します」
ミシェルは初対面のようにモンテ子爵に挨拶をした。その表情には戸惑いとわずかな緊張が浮かんでいた。
「……ミシェル君。私はレオンの父親だ」
「レオン様というと……僕の婚約者だとお聞きしましたがそのお父様でしょうか」
「ああ、そうだよ。ミシェル君……すまん……愚息が大変済まないことをした」
モンテ子爵は頭を下げた。
ミシェルの状況を見てモンテ子爵はレオンをかばうどころではないと悟った。これほど人を追い詰め苦しめた側が、無理を言うことなどできない。
それに学院生時代から屋敷の庭で一緒にお茶を飲んだりして、モンテ子爵もミシェルのことを可愛がってきた。そんな子の記憶喪失を目の当たりにして非常にショックを受けたのだった。
「見ての通りだ。私たちはミシェルを最優先に考えたい」
「もちろんだ。……本当にレオンのことを覚えていないのだな」
「レオンのことどころか、親の私の顔でさえわからないんだ」
ジルベールは怒りを抑え、そして悲し気な顔で言った。
「本当にすまなかった。だが、レオンがミシェル君を想う気持ちは確かなんだ。記憶が戻れば一度話し合いを考えてやってもらえないか」
「約束はできない。すべてはミシェルしだいだ。どちらにしても婚約は解消させる」
「……わかった。今度は書類をそろえてくる。ミシェル君を大事にしてくれ、申し訳なかった」
親のことでさえわからなくなったミシェルに心を痛めた子爵は、婚約解消はやむを得ないと受け入れたのだった。
そして数日後、両家の婚約解消が果たされた。
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