コーヒーとCEOの秘密🔥他

シナモン

文字の大きさ
5 / 58
コーヒーとCEOの秘密 (完)

5

しおりを挟む
「ああ、赤石さん、これ助かるわー」

 秘書室のpcで三津子の作成したリストを元に会食スケジュールを組み立てていく。「この店はダメ、エビチリはNG…。和会席は社長に回して…」有名店のリストを照らし合わせ、予約を入れる。こういう作業は嫌いじゃない。

「今のうちに会長室の攻略法を確立しておきましょう」
「お願いするわ」
「でも後はみんなで頑張るのよ。私がここにくるのもせいぜい半年」
「怖いこと言わないで……」

 三津子の任務、それは…日本に馴染みのないCEOの秘書として助役として山と積まれた書類を彼とともに一つ一つ片付けていく。絶対に漏れちゃいけない根回し調査中の買収案件、訴訟中の事案、重要人物との会食…。


「これは私の出番ではないだろう」


 その会食に物言いがついた。相手は大物女性代議士。
 言いながら彼はその人物のプロフィールをデスクに置いた。毎度高級スーツに身を包み、腕時計も七桁以上が当たり前。明るい会話をしろとは言わないが、黙っていればいい男なのに。


「……円山先生は女性運動の頂点にお立ちになる有名なフェミニストですわ、是非懇意にしていただかないと」三津子はさらっと目を落とし言った。

「私がか? 君が代わりに行きたまえ」

「いいえ、できません」

(私はあなたの専用執事ではありませんわ。いずれここを離れていくんだから!)

「フェミニストだと? 私と最も話が合わない人種だと思わないか」

(あら、自覚はあるのね)

「なぜ日本は女性議員の数が極端に少ないのか…などと持ちかけられても受け答えしようがないぞ」

(だから慣れておくんじゃないの。そろそろ馴染もうとして!)

「どうビジネスに関係するというのだね」

 カチンときた。

(何よ、その女を下に見る態度)

「ええ、もちろん! 大ありです。女性市場をお忘れで? 昨年我が社が催した女性ターゲットのあるイベントは円山先生の一言で開催が決まったと言っても過言ではありません。先生にお話をつけるかどうかで全然違ってくるんです」

 彼は渋い表情を中々崩さなかった。顎に手を当て書面を見つめる。

 ーー円山園子78歳。社会学者、女性論者。議員当選後は女性の社会進出に尽力し、男女共同参画局発足にも関わる。大臣、内閣参謀歴任。日本のフェミニスト代表格。テレビの討論会で男性政治家や知識人を相手に一歩も引かないトークバトルで一般にも広く知られる。

 代議士の簡素な紹介文と顔写真だが。

 …一歩も引かないトークバトル。

 …トークバトル。

 …バトル。

 人となり…十分想像がつく。

「……では君も付き添いなさい。私が余計なことを言わないように補助してくれ」

「……わかりました」

 また仕事が増えてしまった。腹の底が、堪えきれるのかというくらい煮えたぎる。表情筋を抑えるのにも慣れてきた。

(先生に打ちのめされるがいいわ。フォローなんかしてやらないんだから)

 円山園子ーー。歯に衣着せぬ発言で名だたる名士とやりあってきた。この鉄仮面が女帝にどう料理されるか、見ものだ。

(ふっ……。ふふふふふ、楽しみね)

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

妖狐の嫁入り

山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」 稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。 ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。 彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。 帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。 自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!   & 苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る! 明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。 可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ! ※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

まだまだこれからだ!

九重
恋愛
温泉が大好きなOLの暖(うらら)。今日も今日とて山奥の秘湯にひとり浸かっていたのだが……突如お湯が流れ出し、一緒に流されてしまった。 気づけば異世界で、なんと彼女は温泉を召喚した魔女の魔法に巻き込まれてしまったらしい。しかもそこは、異世界でも役立たずとされた病人ばかりの村だった。――――老いた関節痛の魔女と、腰を痛めた女騎士。アレルギーで喘息持ちの王子と認知症の竜に、うつ病のエルフなどなど―――― 一癖も二癖もある異世界の住人の中で、暖が頑張る物語。 同時連載開始の「勇者一行から追放されたので異世界で温泉旅館をはじめました!」と同じプロローグではじまる物語です。 二本同時にお楽しみいただけましたら嬉しいです! (*こちらのお話は「小説家になろう」さまサイトでも公開、完結済みです)

運命の番より真実の愛が欲しい

サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。 ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。 しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。 運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。 それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

前世の記憶なんていらなかった……

ミカン♬
恋愛
日本から西洋風の異世界に転生したローゼリアの物語です。幸か不幸か、前世の記憶は彼女に何をもたらせてくれたのか。 ヒロインのローゼリアは前世の『香帆』の記憶を持って生まれ消せないでいた。過去の恋人への恋慕と今世の婚約者への好意。揺れ動く中で彼女に待っていたのは婚約の解消という悲運だった。 自由奔放な妹ミゼットに全て奪われたローゼリアに婚約者候補が二人現れた。それは年下の少年ハーシェルとオッドアイの青年デミアン。傷ついたローゼリアの心を癒すのはどちらなのか。ハッピーエンドです。 さくっと進みます。 小説家になろう様にも投稿。5/27

処理中です...