13 / 58
コーヒーとCEOの秘密 (完)
13
しおりを挟む
前会長とともに彼の後をついていくとその先に見覚えのある人物が手を振っている。
「クジョーサーン」
「おお」
「お元気ですか、ミス・アカシ」
いつか中東に野球部が遠征したときに話を交わしたサーダーン国のスポーツ相だ。関係者と思われる一団が3塁側ダックアウト上に席を陣取っている。
スーツ姿で太い黒縁の眼鏡をかけたスポーツ相と挨拶後しばらく英語で会話が進み、関矢は三津子のそばに寄った。
「実は中東~インド~アセアン諸国で野球リーグを作ろうという動きがあるんですよ」
「まあ、そうなの」
「特にサーダーンの皇太子殿下がご熱心で。自国に野球を定着させたいそうです」
「へえ」
「それで、日本の野球からいろいろ学びたいと視察団がいらしてるんです」
「視察」
ーーーそういえば、会長とご一緒したとき熱心に話されてたわね。殿下は野球がお好きだとか。
「メジャーや日本のプロ野球は敷居が高いけど、日本には社会人野球がありますからね。レベルも高くてそこから選手や指導者を派遣してほしいと」
以前からそういう流れはあった。数は少ないが親善試合を両国で開催した。
「あともう一つ目的があって。どこの国も基本暑いじゃないですか」
「そうね」
「ドーム球場を建てたいそうです。国民が大勢集って快適に長時間楽しめる施設を作りたいと言われているんです。冷房完備の」
「あら、いいお話ね」
ーードームねえ。
外国の話ね。と三津子は全く他人事に聞いていた。
ビッグプロジェクトだが今の自分は蚊帳の外だ。
「赤石さん、前言われてたのはこれじゃないですか」
「え?」
野球部の事業化の件で関矢を巻き込もうとしてたんだった。
「ああ、あれ。……現実を見ているところよ」
「いずれ戻られるんでしょう? 赤石さん、一緒にやりましょうよ」
「え、ええ」
ーーー売り込みをかけるのかしら。私は今やりたいんだけど。
「前会長にもいいお知らせができるといいのですが」
関矢は集団に目をやった。
前会長はスポーツ相と楽しそうに話している
「赤石さん、早く戻ってきてくださいよ~。中東渉外の椅子が待ってますよ」
「そんな。まだまだでしょ」
関矢はやけに明るい。そのまま彼らと一緒に観戦し、関矢らと接待に行くスポーツ相と握手をして別れた。
球場を後にし会長は穏やかな笑みを浮かべながら言った。
「ひとまず安心といっていいのかね」
「ええ。そんな感じでしたけど」
自分に丸投げ…ではなかったのだろうか。水面下で何か進行中?
関矢はまだ何か言いたそうに見えたが。
「とりあえず、野球部消滅なんてことにならなければいいんだがね」
「ええ」
ーーー存続のめどは立ったのかしら。
事業化は無理としても。ドーム球場建設は有り余るオイルマネーの使い道の一つだろう。関矢が目を輝かせていたのは球場建設のオファーがあるからか。
ーーーでもドーム球場…勝算はあるの?
「クジョーサーン」
「おお」
「お元気ですか、ミス・アカシ」
いつか中東に野球部が遠征したときに話を交わしたサーダーン国のスポーツ相だ。関係者と思われる一団が3塁側ダックアウト上に席を陣取っている。
スーツ姿で太い黒縁の眼鏡をかけたスポーツ相と挨拶後しばらく英語で会話が進み、関矢は三津子のそばに寄った。
「実は中東~インド~アセアン諸国で野球リーグを作ろうという動きがあるんですよ」
「まあ、そうなの」
「特にサーダーンの皇太子殿下がご熱心で。自国に野球を定着させたいそうです」
「へえ」
「それで、日本の野球からいろいろ学びたいと視察団がいらしてるんです」
「視察」
ーーーそういえば、会長とご一緒したとき熱心に話されてたわね。殿下は野球がお好きだとか。
「メジャーや日本のプロ野球は敷居が高いけど、日本には社会人野球がありますからね。レベルも高くてそこから選手や指導者を派遣してほしいと」
以前からそういう流れはあった。数は少ないが親善試合を両国で開催した。
「あともう一つ目的があって。どこの国も基本暑いじゃないですか」
「そうね」
「ドーム球場を建てたいそうです。国民が大勢集って快適に長時間楽しめる施設を作りたいと言われているんです。冷房完備の」
「あら、いいお話ね」
ーードームねえ。
外国の話ね。と三津子は全く他人事に聞いていた。
ビッグプロジェクトだが今の自分は蚊帳の外だ。
「赤石さん、前言われてたのはこれじゃないですか」
「え?」
野球部の事業化の件で関矢を巻き込もうとしてたんだった。
「ああ、あれ。……現実を見ているところよ」
「いずれ戻られるんでしょう? 赤石さん、一緒にやりましょうよ」
「え、ええ」
ーーー売り込みをかけるのかしら。私は今やりたいんだけど。
「前会長にもいいお知らせができるといいのですが」
関矢は集団に目をやった。
前会長はスポーツ相と楽しそうに話している
「赤石さん、早く戻ってきてくださいよ~。中東渉外の椅子が待ってますよ」
「そんな。まだまだでしょ」
関矢はやけに明るい。そのまま彼らと一緒に観戦し、関矢らと接待に行くスポーツ相と握手をして別れた。
球場を後にし会長は穏やかな笑みを浮かべながら言った。
「ひとまず安心といっていいのかね」
「ええ。そんな感じでしたけど」
自分に丸投げ…ではなかったのだろうか。水面下で何か進行中?
関矢はまだ何か言いたそうに見えたが。
「とりあえず、野球部消滅なんてことにならなければいいんだがね」
「ええ」
ーーー存続のめどは立ったのかしら。
事業化は無理としても。ドーム球場建設は有り余るオイルマネーの使い道の一つだろう。関矢が目を輝かせていたのは球場建設のオファーがあるからか。
ーーーでもドーム球場…勝算はあるの?
1
あなたにおすすめの小説
妖狐の嫁入り
山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」
稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。
ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。
彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。
帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。
自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!
&
苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る!
明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。
可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ!
※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
まだまだこれからだ!
九重
恋愛
温泉が大好きなOLの暖(うらら)。今日も今日とて山奥の秘湯にひとり浸かっていたのだが……突如お湯が流れ出し、一緒に流されてしまった。
気づけば異世界で、なんと彼女は温泉を召喚した魔女の魔法に巻き込まれてしまったらしい。しかもそこは、異世界でも役立たずとされた病人ばかりの村だった。――――老いた関節痛の魔女と、腰を痛めた女騎士。アレルギーで喘息持ちの王子と認知症の竜に、うつ病のエルフなどなど――――
一癖も二癖もある異世界の住人の中で、暖が頑張る物語。
同時連載開始の「勇者一行から追放されたので異世界で温泉旅館をはじめました!」と同じプロローグではじまる物語です。
二本同時にお楽しみいただけましたら嬉しいです!
(*こちらのお話は「小説家になろう」さまサイトでも公開、完結済みです)
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』
鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
--
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
前世の記憶なんていらなかった……
ミカン♬
恋愛
日本から西洋風の異世界に転生したローゼリアの物語です。幸か不幸か、前世の記憶は彼女に何をもたらせてくれたのか。
ヒロインのローゼリアは前世の『香帆』の記憶を持って生まれ消せないでいた。過去の恋人への恋慕と今世の婚約者への好意。揺れ動く中で彼女に待っていたのは婚約の解消という悲運だった。
自由奔放な妹ミゼットに全て奪われたローゼリアに婚約者候補が二人現れた。それは年下の少年ハーシェルとオッドアイの青年デミアン。傷ついたローゼリアの心を癒すのはどちらなのか。ハッピーエンドです。
さくっと進みます。
小説家になろう様にも投稿。5/27
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる