コーヒーとCEOの秘密🔥他

シナモン

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コーヒーとCEOの秘密 (完)

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「……(株)五十六社長との接待は副社長に代わってもらえました。本日の来訪予定は3時にJSF美影様。以上です」

 読み上げると会長ははあーと息を吐き、「今日は一日缶詰か。業務がはかどるな」大きな高級椅子の背もたれにもたれた。

 いつもの光景だがいよいよ見納め。
 明日はもう会長室には来なくていいと言われてる。

「どうした?」
 じっと眺めていると気づかれた。
「この景色も今日が最後だと思って。しばらく見れないとなると名残惜しいです」

 改めてみるにすごい借景だ。
 都庁に西新宿高層ビル群…52階から見える新宿摩天楼。
 合間の木々の緑が強い日差しに映え、この前に立ってやり取りするだけでドラマになりそう。

「へえ? キミもそんな風に思うんだな」

 ええ、もちろんよ。今まではバトル中心で目もくれなかったけど。
 あのビルが密集して見えるあたり、あそこで思わぬ人物に出くわした。
 しかも目の前の彼の元婚約者…。こんな偶然ある?
 マヤさん、無事に帰ったのかしら。

「『そんな風に』って随分な言い回しですわ。そりゃマンハッタンにはかなわないでしょうけど」

 セントラルパークは新宿中央公園の何倍も広く、そこ以外に島のあちこちに大きな公園が点在している。
 ビル群も新旧立ち並び築90年経ても現役な高層ビルが何棟もある。
 東京にも新宿御苑や明治神宮などうっそうとした森のような緑地が点在しているが、近年は皇居を中心にしたエリアで景観を重視した開発が進んでいる。

「どうかな。こんな高さから見ればそうかもしれないな。きっとニュースや映画で見るとおりだよ」
 そっけないこと。
「見る暇もなく忙しく過ごされていた、という意味ですか?」
「いや、どうだろう? 忙しいのは今の方がよほど忙しいよ」
 あら、そうなの?
「メディソンにいらしたんですよね?」
「ああ」
「ほぼミッドタウンですよね」
「……そういう意味か。上階は役員フロアだよ。まあ、ここと同じだが。カフェテリアがあったがそれも上階だったな。あんまり行かないね」
「そうですか」
 ずっと暮らしていると興味もなくなるのかしら。確かにいい大人が都会のビューに見とれるなんて子供っぽいけど。
 ああ、やっぱり話が続かないわ、とっとと退散ね。あいさつして下がろうと、(失礼します、今までお世話になりました…)言いかけた。
「そんなに景色が拝みたいなら、今日はキミが代わりにハンコ押しをするか?」
 え? 言葉が引っ込んだ。
「キミがやった方が早く終わったりしてな」
 ほんの少し口角を上げ、困ったふうに眉を下げて両掌をかざした。
 これはアメリカンジョークかしら。このジェスチャー。
「いえいえそんな」
 大した言葉返しができないのは自分も同じか。
「ふっ…。キミ、明日の夜は空いてるか?」
「えっ? ええ……」
 トーンダウン…ときてなぜかどきっとした。
「あけておいて。何か食べに行こう」
 !?
「最後くらいはな、世話になった礼に。……好きな店があればそこでいいよ。不安なら予約しておいて」
 返事をするまで3秒くらいかかった。
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